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『ビーファイターカブト』感想15

◆第23話「誇りの荒野を走れ!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:扇澤延男)
見所は、少年を鉄鎖で柵に縛りつけるカブトン。
クラスで仲間はずれにされない為、いじめられない為に、悪ガキグループに加わってリーダーの言う事に従っている少年・関口俊と出会う甲平。例え嫌々タチの悪い悪戯を命令されても、誰かの仲間に加わっている方がマシだと言う俊に、人間は一人で歩いていかなければならないんだ、と諭す甲平の声は果たして届くのか……?!
テーマ云々以前の段階で、丁寧にオコゼ怪人の能力を説明するデズル、それをオウム返しに繰り返す甲平、など雑な見せ方のシーンが続き、気持ちが物語に入っていかないレベル。三ツ村×扇澤タッグでのこの出来は、『ブルースワット』の悪夢を思い出す所ですが、突然なにがどうしたのか(^^;
後半、強化されたオコゼ毒によって行動不能になってしまうシーンも、攻撃を受けて倒れた後に、即座に毒の説明を始めるクワガー(起き上がろうともしない内からアーマーの機能が麻痺と判定)、それを聞いたのに真っ正面から突撃してオコゼ毒を喰らうテントウ、と非常に頭の悪い展開が連発。
トドメに、一人残ったカブトンが回避したオコゼ毒が、背後で倒れっぱなしのクワガーに追い打ち、というシーンは描いて良かったのか(^^; ヒーローが回避した攻撃が背後で動けない身内に当たる、てかなり酷いと思うんですが。しかもその直線上の背後には、カブトンが縛り上げた少年が居るというレッドゾーン。
この辺りはアクション監督の領分と重なっている所でしょうが、とにかく今回、やたらと配慮のない映像が目立ってクラクラしてきます。
カブトンも遂にオコゼ毒に倒れ、メルザードに連れ帰って奴隷にしてやる、と現れるデズル。
「誰が……誰が奴隷なんかになるもんか!」
(どうして? 殺されるより、奴隷になる方が……)
「誓え、奴隷になると」
「ならん!」
(奴隷になれば楽じゃないか!)
奴隷、という単語が直球で飛び交っていて強烈ですが、扇澤延男が好んで描く“社会から落伍したアウトサイダー”が時に“奴隷にならなかった者”あるいは“奴隷にさえなれなかった者”であると考えると、ヒーローの言葉を通して、社会システムの奴隷になるよりも、己の個性を貫いて荒野を歩け、というエールは、なかなか際どい。爪弾きにされても負けるな! という意も含んではいるのですが。
解毒剤を届けるまでの時間稼ぎに、奴隷になるって言っちゃえよ、と博士まで通信で促してくるが、それを拒否したカブトンは気合いで麻痺毒を克服して立ち上がると、気合いで反撃から気合いでオコゼ怪人をフィニッシュ。雑魚水軍も気合いで薙ぎ払い、その気合いに恐れをなしたデズルとドードは泡を食って逃亡するのであった……。
前作だったら、昆虫魂、怖い! という話であり、拓也達の自然や生命への愛がその発動の背景となる所なのですが、今作は何故か「昆虫魂」から目を逸らそうとしている為、今回はそこに“甲平の誇り”を代入。結果として、甲平が突然、男は一人で行くものさ〜みたいな事を語り出すというかなり強引な構成になり、昆虫魂に代わって、ヒーローの説得力となる作品の背骨とは何か? を物語として見失っている現状が赤裸々に。
根本的な所で、世界観が地続きである以上、昆虫魂を無視すればするほど不自然なのですが、商業的事情で(?)続編設定になったものの前作と同じ事はしたくない、という作り手の意識が非常に悪い方向出てしまっている気がします。
勿論、ワンパターンに陥りすぎないようにする姿勢は素晴らしいと思うのですが、そもそも最初に思いっきり前作の設定に乗っかって登場したヒーローなので、背骨を取り替えるならもっと大胆な切除手術をするしかないのでは。
カブトン(甲平)の姿に荒野を一人で行く誇りを見た俊は、悪ガキグループと決別を宣言。袋だたきに遭うも甲平から渡された無線機は使わず、
「僕、呼べば必ず来てくれるって信じてた。信じてたから呼ばなかったんだ」
というラストの台詞と、甲平に無線機を返すのは良かったのですが。
ところで、
「倒せたからいいものの、どうして私の言う事が聞けなかった!」
信頼度が0だからではないでしょうか!