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『仮面ライダー555』感想23

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第34話「楽園からは何マイル」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
「これで邪魔者はいなくなった。いよいよだな。行くぜ。ケリをつけてやる」
鎧武者Bは逃亡し、デルタのベルトを外す草加の姿に、若干の余裕を取り戻す澤田。
「やっぱり君には、カイザのベルトの方が使いやすいようだね。いいよ、相手になってやる」
歯をむき出して獰猛に笑う草加だが、そこでベルトの電話が鳴り、ちょっとタイム。電話の向こうで啓太郎が告げたのは、残酷な凶報であった――園田真理、死亡。
「嫌だよ。俺もう嫌だよこんな事。帰らなくっちゃ、家に」
「馬鹿野郎! 逃げられると思ってるのか?! 俺たちはな、今大変な問題に巻き込まれているんだ。生き残る為にはな、戦わなくちゃならないんだ」
前回から関わりたくないと主張していた男・三原(やっと名前が判明)が逃げ出し、里奈と太田はそれを追いかけ、一人残った草加は、不思議な事を呟く。
「真理……まだ望みはある。おまえはきっと戻ってこれる」
勇治を呼び出した巧は勇治に一方的に殴られ、霊安室に駆けつけては草加にも殴られ、心身ともにズタズタな、一種の自傷行為へと走る。
「一つだけ教えてやる。見てろよ。真理は生き返る。俺が真理を生き返らせてみせる」
ヒロイン死亡という驚愕の展開で、五代ウィルス感染者みたいな事を言い出す草加(笑)
前回の医者の見立て通り、真理はかつて アマダムを埋め込まれ スマートブレインで現代医学を超えた特別な治療を受けた事があり、その手を借りれば蘇生のチャンスがあるかもしれない。3本のベルトを交換条件にふーふー社長との交渉を考える草加だったが……その足は社屋の一歩手前で止まる。
「……俺にとって一番大事なのは、スマートブレインを潰す事だ」
これが本当の本当の目的なのかはまだ確定しませんが、唯一といえる心を許す存在である真理よりも、優先する目的があるという事で、手段を選ばぬ草加の行動とその意志を補強。
「……君にはわからないだろうな、俺の気持ちは」
かつて巧に向けた非難を自己憐憫に用いながら走り去った草加は、しばらくしてバイクを止めると、絶叫と共にベルトセットを地面へと叩きつけ、膝から崩れ落ちる。
「許せ……真理……!」
草加は極めて利己的で身勝手な男で、基本的には破滅へ向けて突き進んでいるのですが、ここで苦悩を呑み込んでベルトを渡さない事を選び、幽鬼のような表情の巧よりもむしろ、ヒーローらしい意志の強さを見せているのが、ただただ状況を引っかき回すだけの嫌な奴にしない、今作の奥行き。
その頃、度重なる電話に根負けした海堂は、火事で助けた少年が保護されている福祉センターを訪問。ところがそこで海堂を待っていたのは、自分だけが助かって両親を失った少年からの激しい罵倒であった。
……て、あれ、これ、九死に一生を得た子供?
取っかかりがFP兄弟のギャグだったので油断していたのですが、続けて出てきたという事は、終盤の重要なキーキャラクターなのかもしかして。
そこがそんな形でアクロバットに繋がってしまうのか。
一方、巧は藁にもすがる思いでふーふー社長の元を訪れて真理の蘇生治療を頼み込むが、ファイズギアの返却を交換条件に持ち出されていた。
「そうそう、もう一つだけ方法があります。ラッキークローバーの一員になれば、スマートブレインのあらゆる施設を自由に使う事ができる」
「ラッキー、クローバー?」
仇役としては何かと微妙なラッキークローバーを、ここで劇中における特権階級、ステータスシンボルとして意味を持たせてきたのは秀逸。
返却されたファイズギアを渡した海堂は役立たず、上の上と評価するオルフェノク達は揃ってぐだぐだ、ようやく確保した新人は不届き者、と人を見る目が節穴な事には定評のある社長は、澤田を排除した者にはラッキークローバーになるチャンスがある、とほのめかす。
「……冗談ですよ。ラッキークローバーに入る為には、オルフェノクでなければならない。君には無理な話だ」
社長は交渉を打ち切り、従来的な位置づけになぞらえると、
〔「ヒーロー」が「悪の秘密結社」の「ボス」に直接面会して「ヒロイン」の蘇生をお願いし、「怪人」の話題を普通にしながら、「変身アイテム」の返却か、「四天王」の一員になれば可能であると説明を受け、五体満足で正面玄関から帰ってくる〕
というシチュエーションを――冷静に突き詰めていくとツッコミ所は生まれますが――物語のパワーで成立させてしまっているのが、実に凄まじい。
こんな手法もあるのか、というより、ねじくれ曲がった末に気がつくとこんな所へ辿り着いてしまった、という4年目にして《平成ライダー》の一つの極点であるな、と改めて。
その頃、病院を飛び出した三原に、里奈と太田が追いついてた。
「やめてよ……帰らなきゃ。俺はうちに帰らなきゃいけないんだよ!」
「何度言ったらわかるんだおまえ! 逃げちゃいけないんだ。俺たちは力を合わせて、俺たちの運命と戦わなくちゃいけないんだ」
だがそこへ、逃亡中の澤田が現れる。
「なんで俺たちが戦わなくちゃならないんだ?! 流星塾生の仲間だった俺たちが!」
「君たちの顔は見たくないんだ。それに不自然なんだよ。君たちが生きてる事自体が」
やはり同窓会の日に塾生達は一度死んでいるのか? 謎めいた発言から澤田は変身し、まさかの鼻の穴から触手を突っ込まれた太田は焼却され、里奈と三原はバイクで逃げる……。
スマートブレインを辞して思い詰めた表情の巧が店に戻ると、そこには啓太郎から巧への疑念を否定された勇治が待ち受けていた。
「俺は……何を、信じていいのかわからない。本当なのか、君が園田さんを守ろうとしたって」
ここで言う事がそれなのか。
ファイズ事件が大きな重しになっているのは確かなのですが、ここまで来て、啓太郎を信じるでも信じないでもなく、巧を自分自身の心で判断する事も出来ずに答をその当人に求めるという勇治のぼんくらぶりが凶悪で、誰とも本気で繋がろうとしてこなかった事が、勇治に深く突き刺さります。
「……そんな事はどうでもいい。……今となってはな」
勇治が眼中にない巧は、生前の真理を思い起こして突然のいちゃいちゃ回想(下手すると妄想)を始め……たっくんあれだよね、実は、だよね。
迫り来る河童の追撃を受け、琢磨と並ぶ本編屈指のサバイバーである里奈はバイクから振り落とされ、リタイアにしては地味すぎるので、たぶん気絶。追い詰められる三原だが草加が駆けつけ、デルタギアを三原へと投げる。
「変身しろ! 戦うんだ!」
「いやだ……俺は帰るんだ。家に帰るんだ!」
「俺たちに帰る家なんかない。帰る場所を見つける為に、俺たちは戦わなければならないんだ」
今作前半は特に、“居場所”を失った者がそれを見つけようとする物語だったのですが、終盤戦を前にそのテーマをかなりストレートに強調。
草加が巧に対して必要以上に攻撃的になるのは、自分の居場所とは“勝ち取らなければならないものである”という、ある種の強迫観念の故であるのかもしれません。
「戦え!! 三原! 戦え!!」
草加はくしくも、父さんと同じ言葉を口にし、覚悟を決めてデルタギアを身につける三原。
「――変身」
三原はデルタとなって河童に立ち向かうが、そこにエビが乱入。
「頑張りなさい。ベルトを取り戻せばきっと村上くんも許してくれるわ」
……やはり冴子さんは、ちょっと駄目な子が好きなのか(笑)
どこかやるせない表情から草加もカイザに変身し、そのカイザから勇治に救援要請の電話がかかってくる……のはかなり強引というか戦闘中に勇治に電話かけるカイザが器用すぎるのですが、他にやりようがなかったのか(^^;
三原が戦いに慣れていないせいか、余計な電話をかけていた為か、カイデルコンビは、河童&今日は絶好調のエビの水棲コンビに苦戦。……エビは最近、気がつくとファイズにのされている役ばかりだったのでどうも不自然なのですが、カイザ(くさ属性)は、エビ(みず属性)と相性が悪いのか。つまりファイズは、ほのお属性。
戦いの場に集う勇治、そして啓太郎と巧。啓太郎は巧にファイズベルトを渡すが、巧は何故か、それを捨ててしまう。
「たっくん……?」
「澤田。俺はおまえを倒す。ラッキークローバーに入る為に」
苦節34話、遂に定職につく事を決意した巧は腹から振り絞る気合いを入れ――


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

一同の注目が集まる中、その姿はオルフェノクへと変身する。
長石監督は時々、印象強いシーンで背後に飛行機を飛ばしてくるのですが(監督デビュー作である『ザ・カゲスター』のOP、『超光戦士シャンゼリオン』など)、巧のオルフェノク変身時のバックの飛行機は、大きすぎて少々やりすぎだった感(^^;
あと、次回予告で巧オルフェノクの姿を入れていたのは見せすぎだった気がしますが、これはパラレルな劇場版(『パラダイス・ロスト』)で先行お披露目していたようなので、TV本編でいよいよ! という意味合いが強かったか。
巧はさすが主人公というか、イメージとしては非常にはまる狼オルフェノクの姿を見せ、驚愕する一同、でつづく。
今回かなり、これまで散りばめてきた色々の収束が始まっているのですが、その大きな要として、乾巧=オルフェノクであったという衝撃の事実が判明。
ヒーローの姿はベルトの所在で移り変わり、善悪が不明確に描かれる今作において、これまで物語の視点を貫く軸となっていたのが乾巧だったわけですが、その乾巧が「オルフェノク」であり「ラッキークローバーになろうとする」事により、物語の中心軸までもが空中分解し、視聴者はとうとう無重力の空間に投げ出される事に。
ここで、
「俺は……何を、信じていいのかわからない」
と、散々ぼんくら扱いしてきた勇治の気持ちにさせられるという、酷い罠です!
その一方で巧の正体判明は、なぜ巧が今作の主人公なのか、という絵解きになっており、ここ3話、真理の負傷と死によってこれまでになく取り乱す巧の懊悩に焦点が当たっていましたが、巧にとって真理と啓太郎は、自分を“人間の世界に引きずり込んでくれた存在”であったといえます。
故に巧は、真理を失ってしまう事に恐怖した。
それぞれ人間不信になる事情は抱えているものの、勇治達が結局はオルフェノク同士で身を寄せ合っているのに対し、巧はその外で人間と繋がっており、正邪の混沌とした今作において、一つ“正しさ”を見出すならばそれは、外へ出て他者と関わる事、なのでしょう。
帰る家は大切だけど、家の中に閉じこもったままでは人は人間になれない。
「人間でありたい」とは何かといえば、それは誰かと繋がっている事なのであろう、と。
超人や異形をテーマに据えた作品では普遍的なものとはいえますが、くしくもここで、ねじりにねじった今作に、仮面ライダークウガ』と繋がるテーゼが浮かび上がってくるのは、お互いに地球を半周してスタート地点の真裏で出会った感があります。
そしてここで、他者と積極的に繋がろうとする啓太郎の存在と、その啓太郎の株価を溶岩溜まりの底まで突き落としていた事が非常に効いてくるのですが、世界中全ての人々を幸せにしたいと願い、善なるコミュニケーションの使徒のようでありながら、女にだらしなく、最っ低の言行を繰り返し、仲間外れに耐えられない啓太郎は、決して聖人君子ではありません。
ところがそんな、俗人である啓太郎が巧を救っている。
「人生楽しく生きようじゃないか」というのは、ネガポジ両面で井上敏樹が持っているテーマですが、アンチヒーロー的要素も含め、一握りの聖人/英雄ではなく、俗世間が人を救うのではないかというのは、井上敏樹らしいなと思う所です。
同時にそこには、ヒーローとそれを支える大衆、の古典的テーゼも織り込まれているのですが。
そう考えると今作の構造において、草加にとっての「大学生活」というのは非常に大きな意味を持っていた事になるのですが、それが全く描かれなくなるのは、あまりに煩雑になるから、というのが大きいのでしょうが、〔真理−流星塾−スマートブレインとの因縁〕に縛られていく草加がバランスを失っている一つの要因であるのかとも思えます。
もう一つ、巧の正体判明により、巧のファイズへのこだわりの意味が明らかになるのですが、従来シリーズにおいて基本的には、
〔「人間」が何らかの形で「怪物」に近づき「異形の英雄」になる〕
という構図が今作においては、
〔「怪物」がベルトの力で「異形の英雄」となる事で「人間」に近づく〕
と逆転しており、つまり巧は、ファイズに変身する事で人間になっていた。
ただの衝撃の正体判明というだけでなく、改造人間テーゼをベースにした根本的な価値観の破壊が行われているのが、非常に面白い所で、さすがに30数話をかけて辿り着いただけの事はあります。
では結局、「人間」とはなんで、「怪物」とは何なのか。
人と人でなしの間を繋ぐベルトの物語、終盤戦とその結末を楽しみにしたいと思います。
次回――果たして巧は無事就職する事が出来るのか?!