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『超人バロム・1』感想20

◆第31話「魔人カミゲルゲは悪魔をつくる!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:村山庄三)
「猛くん、人間すべてが幸せとは限らないのよ」
先生に甘え、高級車で送り迎えされる同級生、田村財閥の御曹司・田村賢治に嫉妬の炎を燃やす猛と健太郎だが、いっけん恵まれた環境にいる賢治にも母を亡くしたという辛い過去があるのだ、と積極的に現実のままならなさを突きつけていく『バロム・1』スタイル。
その賢治が魔人カミゲルゲに襲われ、殺人鬼計画のサンプルとされてしまう。魔人の髪を植え付けられたものは殺人鬼となり、今まで最も愛していた者にその殺意を向ける事になる……賢治が殺意の眼差しを向けたのは、慕っている井上先生!
太い髪の毛の先に目玉が一つ付いている(全体のイメージとしては『寄生獣』のミギーぽい)というデザインはどちらかといえばユーモラスで、「伸びろ〜、髪!」はどうも間抜けなのですが、少年少女を周囲の知らぬ内に殺人鬼に仕立て上げる、という計画自体は非常に凶悪。
井上先生が招待された賢治の誕生パーティの日、様子のおかしい賢治をいぶかしんだ猛と健太郎は田村家へと潜入を試みるが、相次ぐ小学生の蒸発事件を警戒して、不審者を見張る日雇いパトロールに雇われた、と主張する松五郎に猛が門前で捕まってしまう。
自家製の手錠で、蒸発事件の関係者としてはどう考えても圏外の猛を拘束する松五郎……これ、日雇いパトロールに雇われたつもりの妄想なのでは。
もはや完全に、松五郎が容疑者。
木戸刑事は手遅れにならない内に、松五郎を座敷牢に入れた方がいい。
一方、首尾良く邸内に潜入した健太郎は、庭の片隅に作った小さな墓に賢治が手を合わせているのを目撃する。
ナレーション「カミゲルゲに操られた賢治は、自分の手で、愛するアスターを殺したのだ」
いきなり愛犬の斬殺シーンがざっくりと挿入され、2話続けて、犬の扱いが酷い。
「ごめんよ、アスター
「自分で殺しておいて泣いてる……」
……いつどこでそれを(^^;
視点が時空を越えてしまった健太郎に背後から髪ゲルゲが襲いかかるも、松五郎を振り切った猛がボップを投げてバロムクロス。髪と戦うバロムワンがショベルカーのショベルにすくいあげられてしまい……CM開けると何故かショベルの上で猛と健太郎に分離していた所を松五郎に助けられ、誕生パーティに直接乗り込んだ2人が井上先生に直接「ドルゲ魔人」だの「田村くんに狙われる」だの言い出し、さすがに滅茶苦茶(^^;
そして、2人が叩き出された誕生パーティの出席者は、当人、父、めかしこんだ井上先生、女中頭(カミゲルゲに憑依されている)、という酷い絵で、もうこれ、父さんが再婚相手として先生を狙っているようにしか見えません。
「この子は母親に死なれてからというもの、先生を母親のように慕ってるんですからね」
モーションかけてきた!!
そして先生も、満更ではなさそうだった。
重要なのは資産である、と積極的に現実のままならなさを突きつけていく『バロム・1』スタイル。
誕生プレゼントを渡したい、と庭に誘い出した先生に賢治はナイフを向け、それを止めるバロムワン。
「賢治くん、思い出すんだ、あの涙を。戦うのだ、悪い心と」
愛犬の死に涙を流した賢治の中には、悪に汚染されていない良心が残っている筈……と《説得》を試みるバロムワンだが、賢治を操る洗脳毛髪に気付くと、それに慌てて正体を現した髪ゲルゲをダッシュで追い、説得そのものの意味が消滅(笑)
犬を殺すという伏線を用意しておきながら、人間の持つ正義の心が植え付けられた悪の意志に打ち勝つ、という王道を場外に放り捨て、いったいどうしてそうなった。
なんだか久々な気がするマッハロッドのカーチェイスを挟み、髪ゲルゲを追い詰めるも毛髪攻撃でエネルギーを吸われるバロムワンだったが、ボップで逆転して爆弾パンチ。賢治少年の洗脳は解け、ドルゲの殺人鬼計画は失敗に終わるのであった。
脚本の出来も良くなかったのでしょうが、演出で修正できそうな箇所や、編集段階でおかしくなったと思われる箇所が放置されており、さすがに田口監督に働かせすぎでは(31話目にして、21回目の演出、なお5連投中)。


◆第32話「魔人トゲゲルゲが死の山へまねく!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:滝沢真理)
誘い合わせて紅葉狩りに向かう木戸家と白鳥家だが、その山では毒イバラの化身・トゲゲルゲが近づく者を次々と毒のトゲの犠牲にしていた! トゲゲルゲは、食虫植物+鋼鉄の処女、といった感じのデザインで、右手で胴体を覆う蓋部分を操作し、その内部に犠牲者を挟み込んでトゲを突き刺す、というのがなかなか面白いギミック。今作のこの、スーツアクターの手を手以外の要素に使う怪人デザインの工夫は、中盤以降の見所の一つになっています。今回のアントマンの手持ち武器、トゲソードも格好良かった。
白鳥母、ゲスト少女・かよ子、かよ子祖母が次々と犠牲になり、ここまで最長の出番となった白鳥母がひたすら苦悶の演技を続けるのは、あまりに強調しすぎて描写としてはくどくなった感(^^;
それを見つめる健太郎の心境に焦点が当たったのは良かったですが、母の苦悶の叫びでAパートが終わり、Bパート入ったらやたらコミカルなBGMの探索シーンになり困惑した所で、
健太郎のママ達はもう少ししか持たない。それまでにドルゲ魔人を見つけて倒さなくては」
小学生ながらドライな状況判断はいつもの正義のエージェント!
トゲゲルゲと遭遇した松五郎、更にかよ子の母親も犠牲となり、登場人物の顔に次々とトゲが突き刺さっていくというハイテンションな展開。
マッハロッドで空中から魔人を発見したバロム1はトゲミサイルを受けてしまうが、ドリラーの遠心力でそれを抜き取り、悲壮なBGMまで流した割には、毎度の事ながらあっさり(^^;
だが、トゲゲルゲには更なる巨大トゲミサイルという切り札があり、それを喰らったバロム1は、今度こそ絶体絶命のピンチに陥ってしまう。
「バロム・1倒れたり」
エネルギーを吸われ、苦痛に呻くバロムワンだが、その脳裏にトゲゲルゲの毒で苦しむ人々の姿がよぎる。
(私は負けられないのだ……くっ……よし、岩……)
藻掻き苦しみながらも頭上に手を伸ばしたバロムワンは、勝負あったと近づいてきたトゲゲルゲにバロム投石で逆襲。渾身のフルパワーで体に刺さったミサイルを粉砕すると、トゲミサイル返しからの爆弾パンチで大逆転勝利を収めるのだった。
健太郎が回復した母の元へと駆け寄り抱き合う姿を物陰から見つめ、「甘えちゃって」と笑った後に、「そうだ松おじは……」と身内を気にする猛がいい味。
その松五郎は猛姉と、姿を見せない猛について言い争っており、猛が「相変わらずだなぁ」みたいにコメントするのですが……いやこんなやり取り、初めて見たのですけど!
家族愛から猛と健太郎の心情に焦点を当てていったのは良かったのですが、内部人格とバロム統合人格の関係の曖昧さの為に、変身しないとどうしようもないが、変身すると2人の心情を掘り下げきれない、というジレンマに陥ってしまったのは残念。
序盤に正体バレと身内狙いを真っ先にやってしまった事で、身動き取りにくくなった末に中盤色々無かった事にして家族から目を逸らさざるを得なかった為、松五郎以外のキャラクターの関係性が定まっていないのも響き、惜しい一本でした。
ところで、最初の犠牲者が猟師風だったり、衣装などゲストのかよ子周りが『赤ずきん』モチーフになっているのですが、後半はその要素が全く消えており、初期プロットから途中で話が変わったのかなぁ……。