◆第3話「サラリーマン ゼロ」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高)
今週の大問題:ライハは《綺麗なお姉さん》スキルを所持していない。
あの年頃の少年の手をがしっと掴んでおきながら、<説得>判定に+効果まるで無しとかどういう事なんですか?! 剣を抜いて脅さなかっただけマシだと思うべきなんですか?!
基本、子供の相手とか面倒くさくてしたくなさそうなオーラは出ていましたけど!!
そして、「手が熱くなる」は発火能力だけではなくリトルスター共通の前提らしく、ウルトラマンヒカリさんは本当に信用していいのか。
第3話にして、冒頭の戦闘で一つ目セブンに実質敗北するジードだったが、そこに現れた別のウルトラマンに助けられる。
「名前はウルトラマンゼロ。ベリアルと敵対する、ウルトラの星の戦士です」
とりあえず、ウルトラの星、という存在はリク達には認識されている、という事でいいのか……。
私が少々構えすぎている所があるかもしれませんが、1−2話を見る限り今作、怪獣もウルトラマンも初めて出現した(という認識の)世界、の筈なのに、リク達が「新たなウルトラマン」も「ウルトラの星」も平然と受け入れてしまい、それらの情報をシリーズ前提としてメタ的に扱えば良いのか、劇中人物だけが理解している固有名詞として理解すればいいのか、個々の情報におけるその境界線をどこに置いて見ればいいのかがわからなくて混乱してしまいます。
例えば戦闘後にレムにより解説されたダークルプスゼロは、見た目に関して言えばジードと同形であり、今作の世界観からすれば極端な話、ジードが親戚と誤解する可能性もありえる相手です。
つまり今作オリジナルの設定に基づくのならば、見た目は同じ巨人であるダークゼロをリクがどう認識して戦っていたのか、というのは意味のある情報だと思うのですが、そこが省かれてしまうので“みんなこいつは悪役だって知っているよね?”というメタな前提に基づいた作劇になってしまって見え、リクの持っている劇中知識と視聴者が持っていると思われるメタ知識が混濁して境界線が曖昧になってしまっています。
成り行きとしてはダークゼロが都市を破壊するなど危険行為に及んだので変身したのでしょうが、掴みのインパクトを減じる事になっても、視聴者知識とリク知識のしっかりした線引きの為には、ダークゼロに対してリクが何を考えたのか、というのは必要な描写であったように思えます。
ダークゼロを打ち倒した、ただの棒きれ、じゃなかったスラッガーランス先輩は、瓦礫の下敷きになりそうな少年を助け……ようとしてバナナの皮に滑って転んでトラックに轢かれて瀕死の重傷を負った地球人のサラリーマンに憑依。
自身の消耗を回復しつつ、本来なら生死の境を彷徨う怪我だったサラリーマンの命を繋ぎ止める共存関係を構築し、シリーズの古典を踏まえつつ軽くひねりを入れた上で、気弱で頼りなさげなサラリーマンの中に武闘派ヤクザ先輩の魂が宿るという二重生活ネタは、定番中の定番という事もあり、安定した面白さで展開。
元よりそういう計算でしょうが、決め台詞まで準備済みで、普通にこちらメインでも面白そうです(笑)
ゼロは一体化したサラリーマン・伊賀栗レイトに向けて、現在のこの宇宙は、一度は崩壊しかけてウルトラ戦士が総員棒立ちで見つめる中、飛び出したキングが宇宙と一体化する事で、その存在を保持したと説明。ゼロがレイトの命を繋ぎ止めたようにして、キングが宇宙そのものを繋ぎ止めた、とミクロとマクロを重ねた事で納得はしやすいのですが、世界観の謎で引っ張るのかと思っていたので、割とぞんざいに明かされたのはちょっとビックリ。
まあその上で、6年前に何があったのか、という所で仕掛けがありそうですが。
著書の重版決定記念に、前回ラストに登場した紳士がダークゼロを次々と召喚し、顔認識能力の問題で自信が無かったのですが、ゴモラの中の人と作家の人は同一人物という事で良い模様。
リトルスターを宿していると思われる少年を守る為にリクはジードに変身。鋼鉄のボディを誇るダークゼロに追い詰められるが、少年の祈りがセブンの力となり、セブン先輩とレオ先輩の遺伝子による新フォーム、バーニングソリッドが発動。
ベリアルさんとも因縁が深いようですが、「あの姿は親父と師匠?!」と、追加フォームと紐付けする事でゼロの存在を物語の中に落とし込んできたのは良かったです。というか、セブン→レオ→ゼロ、という師弟関係だったのか。
メカメカしいアーマーに身を包み、体の各所から蒸気を噴き出すバーニングソリッドは、次々と必殺攻撃でダークゼロを粉砕。戦いの素人であるリクではダークゼロに勝てない、とライハが繰り返し言うので特訓展開かと思いきやここまで完全スルーだったのですが、特訓より科学という勝利の方程式には、説得力がありました(笑)
リクに稽古をつけるわけでもないのに 監督の趣味で ライハのトレーニングシーンは描かれるのですが、最後に乱雑な『ドンシャイン』コレクションを直すシーンが入った事を考えると、稽古に誘うが断られる→『ドンシャイン』を見始めて呆れる、みたいなシーンが削られたりしたのかも。
現役主人公を食いかねない旧作主人公登場回に新フォーム披露回を合わせる事で、現役主人公の存在感が薄くなるのを上手く回避しましたが、ゼロ&レイトというレギュラーキャラ増員と、ゲスト少年のヒーローへの想いを同時展開で1話に収めるのは無理があり、
「ヒーローはね、必ず勝つんだよ」
「彼はヒーローだと思う?」
「もちろん!」
に至るゲスト少年の心情描写は極めて薄く、戦況を塗り替えるその祈りが全く劇的にならなかったのは残念。またその為、ジードが少しずつヒーローとして受け入れられていく初めの一歩、という印象にもなりませんでした。第2話ではそこそこ上手く行ったヒーロー物としての集約点がまた散漫になってしまったのは、脚本家の経験値の問題という気もしますが、今後に向けて不安点の一つ。今の所、その辺りの補強に使いたいのかと思われる劇中劇の『ドンシャイン』要素は空振り気味ですし(^^;
次回――今度こそ《綺麗なお姉さん》スキルは発揮されるのか?! このままでは、レイトがヒロイン一直線だ!!