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『ウルトラマンジード』感想・第4話

◆第4話「星人を追う仕事」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高
愛崎モアは地球人のOLである。だが保険のセールス員は表の顔であり、本業は地球で違法に活動する宇宙人を追うエイリアンハンターだったのだ!
第1話で顔出しだけしたスーツのお姉さんとその先輩が本格登場。正体は宇宙Gメン?であるところの先輩が一切表情を変えないまま、やたら渋い声で喋る、というのは格好良かったです。
地球の文明に影響が出る事を良しとしない為に、その存在を知られないように活動しているハンター組織は、違法植物を育てていた宇宙人を地球から強制退去。……やたら大雑把な描写なのですが、これ、退去という名の宇宙漂流刑というやつなのでは。
問答無用でデリートしない分いっけん理性的に見えますが、粗大ゴミのような扱いの中に文明的配慮は本当に存在しているのか。
金色の鉄仮面的な容姿の先輩宇宙人は、この世界が“ウルトラマンキングと融合した宇宙”である事を認識しており、ジードの出現やゼロの来訪に関して宇宙各地から多数の問い合わせが寄せられていると言及。
地球人に世界の認識に関するズレが発生していると思われる一方、そうでもない宇宙人達が多数居る様子なのですが、起爆地点であり一度は完全に崩壊した地球だけが特別という事なのか、“キングと融合した宇宙”とは別の宇宙が複数存在する世界観なのか、微妙に曖昧で解釈に困ります。
先輩の
「ここは、ウルトラマンキングと融合した宇宙だからな」
という発言や、前回のゼロの登場の仕方(空間を引き裂くように現れる)を見ると多元宇宙的世界観にも思えるのですが、怪獣や宇宙人に対する認識のギャップが、謎めいていて面白いというよりも、毎回違う作品世界を見せられているようで混乱します。
これには話運びの悪さも影響していて、2話のライハはまだともかく、前回今回と続けて、主人公の行動とまるで関係ない所で外野の訳知りの人が世界について語ってしまうというのは大失敗。
この際6年前の事をおいておくとしても、“怪獣が初めて現れた世界”を描くのであれば、主人公であるリクがそれをどう認識しているのか、というのがまず視聴者の基準になるわけです(或いは、リアクション専用のキャラクターをレギュラーに配置するか)。そして自然に考えればそれは宇宙人にも適用される筈であり、今回で言うならば、リクがペガと同棲している事と、ピット星人をどう認識するのかは、違う事柄として焦点を当てなくてはなりません。
にも関わらず、宇宙人に関する認識の問題の主観を、モアの組織の側に置いて語ってしまう為、作品としての基準が行方不明。
だいたい黄金仮面先輩を法の執行者として信用する根拠が劇中に一切示されていないので、自分は正義の味方だと思い込んでいる宇宙人という可能性もあり、物語において設定を語って良い人物なのかどうか、という所から疑問もあるのですが。
前回のゼロも今回のGメン先輩も、極端に言えばナレーションによる解説も同然であり、
世界(ひいては自分自身)に対してリクの認識が変わっていく物語構造が成立していないので劇的になりえず、とにかく非常に情報の出し方が下手。
ライハと折半して購入した自転車を逃走中のピット星人に盗まれてしまったリクは、それを追跡していたモア&先輩に同行。ピット星人を追い詰めるGメンだがエレキングが登場し、ピット星人がリトルスターを宿して追われている事を知ったリクは、モアを守る為にジードへと変身する。
「いつも、僕と一緒に居てくれた。だから、僕は平気だったんだ」
モアへの感謝を通して幼少期のリクの辛い境遇が匂わされ、今は明るく笑うリクの強さとその背景にあるモアの存在の大きさが示されたのは定番ながら良かったです。
どうせなら、毎度変身の前振りとして口にするのに無理矢理感が漂う「ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!」はモアに教わった言葉、というのをここで先にリクに言わせて繋げてしまっても良かったよーな。
ジードがエレキングに立ち向かっている間に、宇宙Gメンはピット星人の身柄を確保。地球侵略をやめて封印した筈のエレキングが自分を追ってくる事に気付いたピット星人が、人口密集地帯から出来る限り離れる為に逃走していた事を知る。
ピット星人が地球侵略を止めた理由は「この星の文明が気に入ったから」と、実に唐突。
「宇宙人って……悪い人達ばかりじゃないんですね」
身の上話を聞いたモアは感極まってピット星人を抱きしめ…………先輩は、宇宙人じゃないの?
只でさえ認識の基準が曖昧な作品なのに、こういう所でますます曖昧にしてくるのが凄く困ります(^^;
エレキングの放電攻撃を受けて麻痺していたジードだが、モアが一計を案じてエレキングの動きを止めている間に、なんとか回復。ソリッドバーニングを発動した所でバラード調の主題歌インストアレンジが流れ出し、ピット星人がエレキングを育てていた頃を思い出して「お願い……その子を楽にしてあげて!」とBGMと回想で強引にねじ込まれる泣き要素。
突然の地球侵略を中止した過去発言に始まり、ピット星人側のドラマがピット星人の主張だけで構成されている空疎さもさる事ながら、上述したようにリクからピット星人への視点というものが抜け落ちている為にピット星人とジードの間が全く糸で結ばれていないにも関わらず、“リトルスター回収の為には祈らなくてはいけない”ので、唐突にピット星人がエレキングへの思い入れを持ち出して何かドラマの積み重ねが存在していたように見せかけるという、典型的な駄目な話運びに。
後これは若干うがち過ぎかもしれませんが、脚本というより演出サイドで“ピット星人とエレキングの間には繋がりがあって当然”みたいな前提があって、物語に見えない下駄を履かせてしまっているような気がします。
ジードvsエレキングは、最初の高さのある飛び回し蹴りが格好良かったです。あと、ソリッドバーニングは派手な演出が決まっていて良い感じ。
勝利したジードは、ピット星人に宿っていたリトルスターから、青いウルトラ戦士の力を入手。一方、電波作家さんはエレキングの力を回収しながら瞳に赤い光を宿すのであった……。
立ち上がり4話で、
〔秘密基地に住む秘密のヒーロー、超人と融合した二重生活の秘密を持つサラリーマン、秘密裏に宇宙人を狩る秘密組織〕
とそれぞれメインストーリー級の設定を3つ重ね、もし自分が○○だったら……的な心躍る秘密のワクワク、というのが今作のコンセプトにあるのでしょうが、メイン級を3つ重ねた結果、物語の焦点がリクからどんどん離れてしまう事に。これはさすがに次回以降解消されていくでしょうが、リクの主観、という部分にもっとスポットを当てて展開して欲しい所です。
女の戦い(一方的に)勃発、様子見しているのが面倒くさくなったヤクザ先輩が直接会いに来る、など、キャラクターの絡みは面白くなってきたので、情報の処理に基準点が出来てくれば、もっとスッキリしてくると思いますし。
後は4話連投した割に坂本監督がどうも冴えないのも気になりますが、さすがに次回からしばらくは別の監督が入るでしょうか。
今回でいうと、
レイトが500円を川に落として嘆く(右向き) → 左向きのカットに地響きが重なり眼鏡を外してゼロ人格に
というシーンは人格変換を強調する為に左右を入れ替えたのかもしれませんが、単純に不自然に見えました。カット割らずに眼鏡外したほうがすんなり見られたような。
またモアがエレキングをギリギリまで引きつけてからトランクを開けて花を取り出すのはいいとして、間近の怪獣に背中を向けたままトランクを閉める、という一動作を挟むのも不自然な印象が強かったです。
総じてこの4話、坂本監督の長所があまり出ずに、繋ぎのテンポが妙に悪かった感じなのですが、次の参戦時にはすきっとした演出を期待したいです。
なお、《綺麗なお姉さん》スキルの発動が期待されたモアですが、幼なじみのお姉さんは距離が近すぎたようで、タイトミニスカは《ドンシャイン》によって完全無効化された事を末尾にご報告させていただきます。
次回――…………仲居さん?