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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第25話

 先週分。
◆Space.25「惑星トキ、少年の決意!」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
 見所は、いつの間にか花柄の帽子でスネ出しルックのスパーダ。
 そんなスパーダとラプターの救援要請で惑星トキに向かったキュウレンジャーだが、そこでは先回りした鉄柱に二人が攻撃を受けていた。たぶん前回の反省を活かしてキュウレンジャーが全員出撃した事で鉄柱は一時撤退するが、時計キュータマを手に入れるにはもう1つの関門があった……キュータマにかけられた封印を解く為には、惑星トキの各所に配置された12のゼンマイを、全て30分以内に回さなくてはならないのである。
 メンバーが増えた所で“12人が必要な仕掛け”を持ち込んできたのは良かったのですが、副将軍・鉄柱(8人がかりでもかなわない)が乗り込んできているのがわかっているのに、躊躇なく12人バラバラになって単独行動を取る、という頭の痛くなる展開で、最初に鉄柱を出さない方法は無かったものか。
 この後、惑星トキに起こる異常について最初の戦いによる爆発を理由にするのですが、そこは何とでも誤魔化せたと思いますし、キュウレンジャーの警戒感の無さは不自然を通り越して頭のゼンマイの喪失を疑うレベル。まあそもそも、ちょっと地球を離れると敵の支配地域で無警戒に行動しすぎなのですが、今作の細かいリアリティ補強の下手さとコンセプトの活かせなさは、毎度ながら出血多量。
 これは元来、もう一つのコンセプトである、そんな悪に支配された世界に立ち向かう一騎当千のスーパースター達、なので周囲全て敵の環境でもガンガン行くぜ! という事なのでしょうが、実際の戦績を見るとキュウレンジャー個々人はそれ程強くないので、それを納得させるには一握りの強敵相手を除いた戦いにおいて、もっとキュウレンジャー個々をとんでもないヒーローとして描いておく必要があったと思います。
 今作は全般的に、劇中で狙い通りに描けていない事柄に応じて物語に修正を加えるのではなく、狙い通りに描けたつもりで机上の予定通りに物語を進めてしまう、というのが問題点の1つ。
 そんなこんなで無警戒に12人バラバラにゼンマイに向かった救世主達だが、ゼンマイの前で異変が起こる。ラッキーの前に射手座家老、スティンガーの前にサソリ仮面様、スパーダの前にタコ、ハミィの前にネッシー怪人、ツルギの前にカラス参謀……死んだ筈の者達が姿を現したのだ! 鉄柱の巻き起こした爆発が、封印された時計キュータマに影響を及ぼし、それぞれの過去の記憶が具現化されてしまったのである。
 12人をバラバラにしたところで、定番の自分の過去と向き合い乗り越える試練の形式を取るのですが、ハミィのマッチアップ相手がネッシー怪人という現実に、涙を禁じ得ません。
 惑星トキに向かう途上、過去に絡んで亡き母の事を思い出した小太郎が「辛い過去を背負っているのはみんな一緒」と気持ちを切り替えるのですが、ハミィの過去からやってきた相手は、ギャグ怪人でした。
 そして、スパーダとタコには、何の因縁もない。
 涙の海が乾いて砂漠になるぐらい、力強いキャラ格差が浮かび上がります。
 そして赤橙緑は過去からの敵を片付けると速攻でゼンマイを回し…………いやあなた方、全てを30分以内に、という条件が肝心なのだから、通信機で合わせて回しましょうよ! まだ、ゼンマイに辿り着いてさえいない人達も居るんですよ?
 「仲間」とはいったいなんなのか、深遠な哲学的問題です。
 ……と思っていたらこの後、持ち分を片付けたメンバーがそれぞれ他のメンバーの所に向かい、となるとますます最初から12人バラバラに行動する必要が皆無であり、「ギミックの条件」と「エピソードの重点」が凄くちぐはぐ。
 ガルの前には女装ガル、司令の前にはビッグベア、など12人がそれぞれの過去と向き合う、というギミック自体は面白かったので、「12人がバラバラに行動する必然性」の方にエピソードの重点を置けば、もっとまとまり良く面白くなった気がしてなりません。
 「ナーガ! やっぱり僕のところに出てくるのは、ナーガだよねぇ! へへへーん! ハイ! あげぽようぇーい! さ、巻きましょー」
 無表情なナーガとBNタッチを交わすバランスの、乗り越えるべきトラウマとか因縁の敵とか居ない! というのも面白かったですし(笑)
 まあナーガが完全無表情なので、二人の出会いの時には一悶着あったのかも、という想像も出来ますが、そこが広がるのも良し。
 一方、カジキは何故か一人だけ、本物と同じように再生したタコ@令嬢フォームと続けて戦う羽目になっていた。
 ろくな絡みが存在しなかった筈なのにやたら濃い記憶で結びつけられているのですが…………あれか、爽やか変態シェフは、(タコ足の脚線美がたまらない、ハァハァ)と密かに熱視線を送っていたのか。
 もうこの変態路線を誰も止める事ができない僕は変態界の星になると爆走するシェフが悶絶している頃、チャンプの前にはアントン博士が現れていた(今回、新規着ぐるみが投入されない分かゲスト声優は豪華なのですが、さすがに役者さんは呼ばれず白衣だけで特徴付け)。記憶アントンは何故かダイカーンを繰り出し、同時に謎のフリーズを起こしてしまうチャンプだが、オレンジが駆けつけて事なきを得る。
 チャンプの不調はリベリオンの手抜き修理の可能性もありますが、記憶アントンが記憶代官を繰り出したのは、チャンプのメモリーの中に、代官に指示を出すアントンの姿があったのか? と、ちょっと伏線。
 そしてもう一人、ゼンマイの前で立ち尽くす男の姿があった……。
 「俺の所には……誰も出てこなかった。俺には心が無いという事か」
 深刻に打ちひしがれるナーガは真剣そのもので、この後の落ち込みも含めて掘り下げとしては秀逸だったのですが、ギャグ怪人が出てくるのとどちらが良いのかは酷く悩ましい問題です。
 ツルギはカラスをさくっと殺っており、各所で順調に回っていくゼンマイだったが……
 「わたし、選べませーん!」
 ラプター283は、ラッキー、スパーダ、ツルギ、司令から一斉に結婚を申し込まれて困っていた。
 もはや記憶ではなく妄想ですが、コスプレ成分を補ったり、面白かったので良し(笑)
 ところでこの4人、ラプターからの好感度上位4名と思われるのですが、その顔ぶれから判明するのは、スティンガー、問題外という、割と衝撃の真実。
 悪く取れば、スタッフがスティンガーをちらっとでも崩したくない(そういうポジションのキャラだと思っていない)という事なのでしょうが、むしろこういう時こそ、スティンガーにコスプレとかさせるチャンスだったと思うのですが。
 一方、こちらも記憶というより煩悩の産物であるタコ@セクシーフォームに迫られて満更でもない変態シェフの元には、赤青緑が駆けつけるが、そこに鉄柱が再生させた本物のタコ@萌えフォームが乱入して緑にしつこく迫ってくる。
 さらっと再登場しているタコですが(もはやタコ足の存在価値がデスワーム並)、個人的に今回の新フォームは見ていて不快なだけで非常に残念でした。この手のギャグネタは脚本ベースでない場合も多いので誰が考えたのやらですが、ある意味では強引にハミィを持ち上げようとして、一緒に地獄の底まで転がり落ちた感じ。
 妄想を相手にした2箇所の戦いが熾烈を極めている頃、最後のゼンマイに辿り着いた小太郎の前には、亡き母が現れる(なお弟は、おじの元で暮らしていると判明)。
 「ゼンマイを巻いたら、お母さんが消えちゃう?」
 半分まで巻いた所でそれに気付いた小太郎は思わずゼンマイを巻き戻してしまうが、そこに鉄柱、続けて黒橙鳳凰が現れ、3人の攻撃を受けた鉄柱は一時撤退。仮初めとはいえ母を消してしまう事がしのびない小太郎は、逃げた鉄柱を追いかける事で問題を一時棚上げにするが、追いかけてきたツルギにその葛藤を口にする。
 前回までほとんど接触の無かったツルギと小太郎を絡めたのは良かったのですが、ツルギに「おまえはどうしたいんだ?」と問われた小太郎が「ジャークマターを倒したい」と答え、平和な世界なら病院に行けて助かったかもしれないお母さんの為にも宇宙を救う、という決意を語ると「そうか」で終わってしまう為、不自然な場所移動をしてまで二人だけのやり取りを作った事に、なんの意味も無いという大惨事。
 ここ数話、ブラックホール級の大惨事続きだったので、床板が抜けるぐらいだとマシに見えるのが困ったものですが、いったいぜんたい、なんの為にツルギと小太郎に対話をさせたのか。
 劇中最も異色なメンバーである小太郎が、母親を消したくないからゼンマイを巻くのを躊躇う、という“子供らしい”足踏みをした時に、背中を押すでも覚悟を問うでもなく、やたら物わかりのいい大人として突っ立っているだけで、これなら立っているのがツルギである必要性は全くありません。
 そこにツルギならではの個性が見えてこそ面白くなり、二人の間で化学反応が起きてこその物語であるのに、「おまえはどうしたいんだ?」「そうか」しか言わない12人目に、いったいどんな物語的意義を見ればいいのか。
 或いはそう、片方が没個性に呟くだけでも、そこに二人の関係性の変化が盛り込まれているのなら良いのですが、この会話の前後を通して関係性に変化が生じているようには全く見えず、ではなんの為に小太郎はこの言葉をツルギに聞かせているのか。
 勿論、側で聞いてくれるだけで良い人、という存在も有り得るわけですが、ツルギと小太郎の間にそういった関係性が成立していない以上、これは実質的に独白であり、ここでのツルギは相槌を打つだけの案山子に成り下がってしまっています。
 故に二人の関係性は前にも後ろにも1ミリも進むわけがなく、小太郎は一人で問題の解決に辿り着いてしまう為に、ツルギの存在が劇的になりません。
 そしてツルギの存在が劇的にならない以上、一歩を踏み出した小太郎の姿も散漫になった照明に攪乱されて劇的さを減じてしまいます。
 結果として小太郎が一人で問題を克服するならば、やはり「12人がバラバラに行動する必然性」に重点を置いた、ギミック重視のストーリー構造にした方が、面白かったと思います。
 逆に本編のように、それこそゼンマイを巻くのが小太郎である必要はない、というほどメンバーが集合する形を取るのならば、この先も戦っていく為には小太郎自身が「ゼンマイを巻けなくてはいけない」という所にスポットを当てるという作劇があったと思うのですが、上述したように横に立っているツルギの存在が案山子でしかなく、背を押したり手を伸ばしてくれる仲間の存在が意味をもたらすわけでもないまま小太郎が独白1つで乗り越えてしまう為に、敢えてゼンマイを巻かなかった黒橙鳳凰の感情も一切顧みられない、という華麗なる空中分解。
 それら一つ一つに意味を乗せていった末に小太郎の行動があってこそ“物語”になるわけで、それらと関係なく小太郎にちょっと感情のこもった台詞を言わせただけで“物語”でござい、というのは言ってしまえば手抜きです。
 改めてゼンマイを巻きに戻ろうとするツルギと小太郎だが、そこに鉄柱が出現。更にタコを追ってきた赤達と、ビッグベアと一杯やっていいた司令達、小太郎母を連れた黒橙が合流してオールスター勢揃い。
 「お母さん見てて、宇宙を守る俺の戦いを」
 かくして12人の救世主と、鉄柱&タコ@不愉快が激突し、幕府の強大さを笠に着る鉄柱に対し、威勢良く啖呵を切る獅子レッド。
 「一人一人はちっぽけでも、それぞれがいろんな想いを背負って戦ってる! だから俺たちはスーパースターなんだ!!」
 ネッシーとか、女装とかね……。
 繰り返しますが今回、個別の伏線の仕掛けも含めギミックエピソードとしては悪くなかったと思うのですが、それを底辺を這いずる「一人一人がスーパースター」の補強に用いるには、背負っている想いにムラがありすぎて無理があり、クライマックスでこうまとめたかったのなら、全員それなりにシリアスにやるべきであったと思います(そうすると多分、積み重ねが足りずに丸ごと面白くなかった可能性が高いですが……)。
 だいたいこれを言っているラッキー自身が、露骨に数合わせの射手座家老と戦っているという始末なわけで(せめてイカに出来なかったのか)、積み重ねの不足を無視して机上だけで物語を展開しているから、台詞が空中で揮発溶解するという、わかりやすい例。
 「そんなスーパースターが12人も居る。すなわち、ジャークマターに勝ち目はない!」
 そしてそれに鳳凰が続き、貴方たち本当に、無力な一般市民に興味ゼロですね……。
 第12話の、


 「おまえの相手は、11人じゃない!」
 「なんだとぉ?!」
 「俺たちは、平和を願う全ての人の想いを背負って戦ってんだ! おまえの敵は宇宙に生きる全ての人、いや――宇宙そのものだぁ!!」
 の方がヒーローの考え方としては個人的に好きですし、同じく第12話の

 「おまえらが支配している限り、この宇宙に運のいい奴なんていない。だから――俺は言い続ける! よっしゃラッキー! てな! 言い続けて変えてみせる。宇宙を、救ってみせる!!」
 は究極の救世主の志向するスタイルとしてはかなり良いと思っていたのですが、サソリ兄弟編以降、この12話でのひとまとめの内容がまるっきり無かった事にされているのはいったい何故なのか。
 それどころか今回、背負っているものが別のものに上書きされている気がするのですが。
 そこからの地面に五芒星を描いて放つ包囲殲滅オールスタークラッシュは格好良かったですが、鉄柱がただの可哀想な人なので、大技で強敵を打ち破った爽快感は皆無。
 そして案の定、主題歌を投入するも、何の盛り上がりもない12魔神。
 1・エピソードで最も焦点の当たった小太郎は一人で問題を解決している。
 2・一応ボイジャー出すけど、合体するのは球だけ。
 3・せめて今回が初お披露目だったら……。
 と超アウェーで、いっそ魔神に対する同情の念が湧いてきます。
 前回2人で初起動させてしまった時点で球太魔神に関しては何もかも手遅れにしても、最終的に「12人のスーパスター」に繋げるなら小太郎の問題解決の仕方とあまりにも断絶が激しすぎ、ラスト20ページ、乱丁で別の回の脚本と混ざってしまったような惨劇に。
 これなら定番で、個々で試練を突破しつつ12人バラバラだけど繋がっている、みたいな描き方もあったと思うのですが、中途半端に各個で合流させた末に、小太郎は実質一人で問題を解決してしまい、そこから「全員でキュータマジンだ!」とか言われても、物語の連動性が白昼夢。
 コンセプト時点のハードルの高さが足を引っ張り肝臓を打ち真綿のように首を絞め続けてきた結果、とうとう脳に酸素が回らなくなってきた感がありますが、1エピソード単位の筋の破綻が近年まれに見るレベルです。
 もちろん今作の場合、挑戦的な事をしている分、問題点が目立つ、というのはありますが、それにしても色々と限界を感じる内容。
 可哀想な鉄柱は魔神アルティメットにより殉職、2階級特進してダイショーグンになるが、ショーグンはすかさず、残り2名のフクショーグンを送り込んでくるのであった。
 次回、ナーガの話でなんとかなってほしいなぁ…………。