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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第24話

◆Space.24「俺は戦う盾になる!」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
 一週間経ったら、「あんな奴キュウレンジャーなんて認めねぇ!」と意地を張っているのがラッキーだけ、という扱いになっているのですが…………えーと……あー……あなた方、もう、ラプター損傷の件は水に流したの??
 まあそもそも傷ついたラプターを放置して帰ってきているので、アンドロイドの損傷なんてどうでもいいのかもしれませんが、チャンプ爆死の時と態度が違いすぎてクラクラします。
 基本的に後ろを振り返らない前のめりさはキュウレンジャーの長所として設定されているようですが、一つ一つの物事に対して個々人の感情が希薄すぎて、なんだか段々、全員揃って革命を遂行する為のマシーンめいて参りました。
 まあそれこそが革命闘士に求められる性情ではあるのですが、問題は「ツルギをキュウレンジャーとして認めるか」ではなく「キュウレンジャーの存在がツルギに認めれていない」事であるのすら忘れているようで、一度全員、リベリオン本部に戻って精密検査を受けた方が良いのでは。
 地上で暴れ回る鉄柱に立ち向かうキュウレンジャーだが、手も足も出ずに敗北し、階段を滑り落ちて難を逃れたラッキーを覗く7人(青・緑・黒・金・銀・橙・空)が、鉄柱腹心の代官の体内に飲み込まれてしまう。駆けつけた鳳凰もラッキーをかばって負傷し、ホログラムで登場したアルマゲは鉄柱達を下がらせると、ツルギを嘲笑うだけ嘲笑ってストレス解消。
 鳳ツルギを消す目的でわざわざ副将軍を地球に送り込んだ筈なのですが、急な人事異動の後処理とか放送局と大学における新たなテロ対策の予算計上とか、溜まりに溜まった書類仕事を片付けきった徹夜明けのハイテンションで、そんな事はすっかり忘れてしまった模様です。
 偉い人だって、ただふんぞり返っているだけではないのです。
 どこかの喧嘩馬鹿のサソリ仮面がひゃっはーするだけして投げっぱなしにした残務処理とか大変なのです。
 この一週間、眠眠打破が手放せない修羅場で、カフェインがちょっとキまってしまっていても仕方ないのです。
 ショーグン様だって、美少女剣士とセールスレディのお姉さんとダークゾーンな宇宙人に挟まれてうはうはしながら、カープラーメン片手に趣味のDVDを見てニート生活を満喫したくなる時もあるのです(他局です)。
 かくして仕事の疲れで色々見失っていたアルマゲの気まぐれで九死に一生を得たツルギだが、応急処置を済ますや鉄柱を探すとオリオン号を出て行き、その態度にまたも怒りを募らせるラッキー。
 「もしかして……一人で助けに行こうとしてるんじゃないかな」
 とツルギの心中を見透かすような事を言う司令は、どうしてそんなに他人事なんですかね?!
 ラッキーは、口では人命を軽視し、仲間を「盾」呼ばわりしながら、その実ラッキーをかばうような行動さえ見せたツルギを追いかけてその過去を問い質し、結局、自分で1から10まで語ってしまうツルギ。
 かつての戦いで次々と仲間達が倒れ、特にむしろ守る対象であった参謀役が自分の盾になって死んだ事が最大のトラウマという悲劇の内容はまあともかくとして、それを自ら口にする事で、ツルギの背負う重い過去に対する悲哀がおおよそ半減してしまいました(^^;
 属性でいうと、「俺はこれから自分に絶対助からない毒を撃ち込んで兄貴との決戦に挑むぜ!」とメッセージを残していくスティンガーと同じフォルダです。
 前回ラプターとスパーダへの自分語りの時点で危うい気配はあったのですが、オリオン号まで乗り込んできたのに始まって、本当のところ寂しいので話を聞いてもらいたい数百歳、と考えると納得できない事はないのですが、せめてもう少し「おまえになら話してもいい……」ぐらいの精神的歩み寄りの段階を踏んで欲しかったところ。
 司令から鉄柱発見の通信が入ると、もう二度と仲間を失いたくないツルギは、獅子キュータマを奪い取って独りで戦いへと向かう。
 「どんな状態だろうと戦うんだよ。じゃないと、伝説にならねぇだろ!」
 果敢に鉄柱と代官に立ち向かう鳳凰だったが、先ほどのダメージが重く、変身解除。
 「さあ、貴様の伝説とやらを、終わりにしよう」
 しかしその時、雲をかきわけて飛来したリュウボイジャーが不意打ちの火炎放射を直撃させ、ツルギを助けに降り立つ司令とラッキー。
 …………どう見ても司令、情報を伝えたらツルギが先行するのがわかっていて、オリジナル救世主を囮に使いやがった。
 うん、まあ、司令の、そういう所は好きです(笑)
 「あんたが盾になれって言うならなってやる。だが覚えておけ! 俺は戦う盾だ!! あんたの前にいる敵は、俺が全部ぶっ倒してやる!」
 「……なんてこった。盾が戦うなんて」
 ガルを説得した「俺は死なない」宣言を踏まえてラッキーの言葉らしくはしているのですが、そもそもツルギ、仲間を「盾」と称するのは本意ではない筈ですし、最大のトラウマは参謀役のカラスだったとはいえ、「戦う力を持った仲間」が自分を生かす「盾」となって犠牲になってしまった事(中途半端な強さが死を呼ぶ事)を引きずっているように思えるのに、「戦う盾」に感銘を受けてしまうのが、どうもピンと来ません(^^;
 ツルギが求め、キュウレンジャーが証明するべきだったのは、自分たちが盾に収まらない強さを持っている事なのでは。
 「うちのラッキー、凄いでしょ? 考えてもみない事を言い放つ」
 続く司令の言葉は完全に言わぬが花でメタ的なフォローをしてしまっているのですが、まあ最近非常に衝撃的だった「地球は俺たちが救ってやる!! だからおまえらは、黙って隠れてろ!!」は確かに考えてもみませんでしたね。
 合わせてみるとツルギの反応は、「盾になれ」と言えば嫌がるだろうと思っていたら斜め上の発想で逆手に取ってきた、という事への驚きかもしれませんが、それだとやはり「ツルギが一緒に戦う理由」にはならないので、トンチに驚いている内に心の隙間に潜り込まれたみたいな感じに。
 「今の救世主と、昔の救世主が力を合わせる。俺たちで、新しい伝説を作るんだ!」
 「なんてこった……新しい伝説か。いいぜ、一緒に戦ってやる。一緒に宇宙を救うぞ!」
 魂に忍び込むラッキーの言葉にツルギは賛同し、そう、今こそ、一人じゃ出来ねぇから仲間が居る事を証明する時!!
 ……
 …………
 ………………
 7名:代官の胃袋の中
 2名:絶体絶命の危機だというのに所在不明
 リュウコマンダーを誕生させた「新しい伝説」を踏まえて、いっけん20数話のテーゼを積み重ねているのですが、肝心な所でここしばらく主要なテーマに掲げていた「仲間」の存在が消失しているという亜空間殺法。スコルピオ退場時の大惨事を多少なりともフォローできるチャンスだったのですが、ラッキー個人の決意表明がキュウレンジャーの総意(或いは無力な連中の意見は聞く必要が無いのでこれでいいのだ)にすり替えられてしまい、「仲間」不在の身勝手な合意が締結されるウルトラC。
 ……もしかしたら前回クライマックスバトルの、「あいつは俺に任せろ!」で、ツルギに仲間の存在を証明した事になっているのでしょーか。
 加えてもう一つ致命的なのは、ラッキーがツルギを認める理由が極めて不可解な事で、「仲間を犠牲にしたくないから一人で戦う」のは「一般市民を巻き込む可能性をいとわず戦う」のを許す理由にはならないゾ(笑)
 ツルギの真意から、大を救う為なら迷わず小を切り捨てるという発言は口だけと判断されたのかもしれません、実際前回、結果的にとはいえ(多分にキュウレンジャー側のミスなのですが)一般市民を巻き込む行動を取ったわけで、その事を無視してしまうのならば、前回前々回の対立は物語都合による茶番でしかなかった事をメタに認めてしまっているも同然で、ひどく不誠実な作劇といえます。
 これに筋を通そうとすると、ラッキーがツルギに敵意を向けていたのは「俺を仲間として認めない上に勝手な行動ばかりするから」というプライドの問題であったという針山地獄が展開し、この後の獅子・鳳凰・龍の共闘も、すっかり白けた視線で見てしまう事に。
 鉄柱&代官に挑む赤と鳳凰が、ツルギの背負っていた重い過去を空き瓶に詰めてアンドロメダ銀河に流す勢いで互いが互いの盾になると押し合いへし合いするのはまだともかく、間にリュウが進み出ると「「どうぞどうぞ」」と前を開けた結果、リュウに鉄柱の攻撃が直撃する、というのはだいぶギャグにならないような。
 おまけにリュウは直撃を受けても平然としたまま「フクショーグンを引き受けるから」と一対一で互角の戦いを演じてしまい、胃の中で死にかけている7人の存在がいたたまれません。リュウコマンダーがこれまでもいざという時しか出てこなかったならともかく、散々安売りしていただけに、強敵とわかっている副将軍相手に7人送り出して自分は待機した結果、絶体絶命の危機を招くというのがまたも話の都合ありきに過ぎます。挙げ句、残った2名の戦力に連絡を取る素振りも見せない、という流れが凄まじく頓珍漢で、完全に使い方を誤ったデカマスター状態(デカマスターデカマスターで、かなり危うかったし問題もあったわけですが)。
 「仲間を犠牲にするのは、もう御免なんでな!」
 ツルギはツルギで、基本的に故意の悪態だったとしても、キュウレンジャーの力を認める明確なシチュエーションが存在していないので、やたら一方的な仲間意識を抱いているのが凄く不思議な事に。最低限、「今の救世主もなかなかやるじゃないか」とこっそり呟くに至る(だからこそますます、ツルギが一人で戦おうとする事に意味が生まれる)エピソードが1話、必要であったように思えます。
 獅子と鳳凰のコンビ攻撃が炸裂し、代官の胃から吐き出される7人。代官と鉄柱が続けて巨大化し、獅子ボイジャー鳳凰ボイジャーが出撃すると、残りのメンバーのキュータマが突如光を放ち、その周囲に飛翔。獅子、鳳凰、10のキュータマ(空っぽ)が合体し、キュータマジンが誕生する。
 まあ戦隊で、新合体ロボに話の焦点を合わせ損ねる、というのはままあるのですが、ここまでツルギとの関係性が描かれているのがラッキー、スパーダ、ラプター、の3人だけなので、ここで12のキュータマが集合するという絵が、物凄い空虚。スパーダとラプターに至っては別行動でその場に居ない為、劇的さ皆無。
 拳すら飛び出さず、噴射口で直接殴りつけるキュータ魔神は、如何にも重そうな外見通り、基本的には前進と両腕を振り回すしか出来ないようで、アクション大変そう(^^;
 適当に痛めつけた後、ロケット噴射ビームを放つと鉄柱が代官を盾にして難を逃れ、
 「なんてこった! 盾にするなんてひでぇやつだ」
 「おまえが言うなよっ!」
 ……て、ツルギは好んで仲間を盾にした事は一度もない筈であり、一番ギャグにしてはいけない部分だと思うのですが、竹本監督回ですらこうなってしまうのか。ラッキーが相変わらず人の心がわからないのは一貫しているといえますが、それにしても最低に過ぎます。
 もしかしたら新たな仲間を得た事でツルギが300年のトラウマを克服した象徴のつもりだったのかもしれませんが、だとしたらあまりにも軽すぎて、本当に残念。
 そしてツルギはオリオン号に迎え入れられ、ラッキーのわだかまりが解消したら、他のメンバーからのわだかまりなどなかったとされてしまう、酷すぎる展開。
 これがあるからアバンタイトルにおいて、いつの間にかラッキー以外のメンバーはツルギの存在に肯定的という事にしてしまったのでしょうが、革命の為にあらゆる手段を辞さない(この3話、ツルギを「使える道具」として監視付きで泳がせていた節がある)司令は別枠としても、その他メンバーの人格がほぼ無視されるという悪夢的様相。
 キュウレンジャー=ラッキーではなく、ラッキー=キュウレンジャーでもなく、その他メンバーそれぞれにツルギに対する感情がある筈なのですが(バランスとチャンプに至っては、それが生まれるほど絡んでさえいませんが)そんなものを示す余地はどこにもなく、もしかしたら誰も彼もが「革命の為の戦力」として心を殺してツルギを受け入れているのかもしれない、300年後の宇宙もリアルは地獄。
 率直なところ現状、チームヒーロー史上究極級の大惨事に向けて直進している『キュウレンジャー』ですが、その最大の原因が誰が見てもわかる「人数が多すぎる」にあるのが、本当に悲しい。
 基本設定時点であまりも明確なこの課題をいかに工夫して見せてくるのかと思ったら何の工夫も感じられず、話が進むにつれて個性をはぎ取られて、真っ白な紙人形のようになっていく登場人物達の姿が、本当に寂しい。
 個性というのは、口癖や見た目ではなく、「その人がどんな考えを持っているのか」ではないかと思うのですが、「個性」を抹殺して「仲間」を語るという大変おぞましい方向に恐らくは意図を超えて進んでしまっており、早急かつ劇的な改善策が必要なのではとさえ思ってしまいます。
 オリオン号組は、絶体絶命の危機にも所在不明だったラプターとスパーダそっちのけで盛り上がるが、二人はツルギの指示で時計座系へ送り込まれていた事が判明。ツルギはそこに眠る時計キュータマの力によって300年前の戦いの真実を知ろうとしていたのだが、その二人から緊急通信が入るのであった……で、つづく。
 というわけで行方不明だった黄桃は冒頭時点で地球を離れていたと最後に明かされるのですが、キュウレンジャー全滅寸前(劇中最高レベルの危機)なのに一切カメラを向けられないのはただ不自然なだけでしたし、新しい伝説の場には居合わせないわ、キュータマだけワープして地球に飛んでいくわで、切り離した事のデメリットしか浮かび上がらず、“物語上の意味”よりも“画面の都合”が優先されてしまう、『キュウレンジャー』の致命的問題点がラストまで華々しく炸裂するのでありました。
 根本的な所では、反発そして歩み寄りと、前回前々回で少しずつツルギとの距離感の変化が描かれていた貴重なキャラクターであるラプターとスパーダを、3話目にして舞台の外に放り投げる、というのがあまりに酷すぎます。
 副将軍の鉄柱は、鳴り物入りで登場するも首が長い以外の個性が無いので一人称“拙僧”をアピールするもスルーされる→ツルギとキュウレンジャー抹殺のまたとないチャンスも上司の謎の介入で撤退→仕方ないので工場前でぼうっとしていた所に襲撃を受ける→いきなりの巨大化→部下を盾にして逃亡、と悪役としての格がどうこうとかいう以上に、ただの可哀想な人になってきました。
 次回、予告からすると、お盆回にちょっといい話を入れるよ! という気合いは感じるので、多少なりともリカバーしてくれるといいなぁいいなぁいいなぁ……。