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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第30話

◆Space.30「ヨッシャ!奇跡のキュータマ」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:毛利亘宏)
 「俺様は死ぬつもりはない。おまえを死なせるつもりもな。だから賭けに出る」
 アルマゲの攻撃で瀕死となったラッキーを救う為、鳳凰キュータマの生命エネルギーを使おうとするツルギの、命を賭けるけど、命を捨てないという姿はとても格好良かったのに、その同じ回でオライオンを殺してしまうという、この一点だけで最悪の展開。
 過去の戦いで数多の仲間を犠牲にしながらも、勝利の為に仲間の屍を踏み越えて生き残らざるを得なかった罪悪感から、ともすれば自己犠牲(或いはその余地を生まない為のドライさ)に流れがちなツルギが、「一緒に戦う」という意志でそれを乗り越えて生まれ変わる話だったのに、同僚が同じ回でツルギが否定した道を選んでしまっては、何もかも台無しです。
 勿論、オライオンにはオライオンとしての戦士の覚悟と満足があるわけですが、だからこそ黙ってラッキーの盾になる事を、物語が肯定してしまったわけで、これは大変いただけないと思います。
 これも個人の好き嫌いになりますが、それは否定されるべきではなかったかな、と。
 90年代東映ヒーローでは特攻魂を超肯定的に描いてしまった『重甲ビーファイター』という作品もありましたが、ヒーローを描くという事がしばしばそちらへ流されがちな危うさを抱えているからこそ、現代においては、細心の注意を払って扱うべき要素ではないかと思うのです。
 恐らく(遠い)家族を守る父親、というニュアンスを含ませる事でそこにクッションを挟んではいるのですが、避けてほしい展開でした。
 そしてツルギからすると、(改変前の世界ではツルギが眠っている間に復活したショーグンの相手をしてもっと非業の死を遂げた可能性はあるにしても)過去に戻って当初はタブーにしていた歴史を変えてでもショーグンを倒すという選択をした結果、かつての戦いで生き延びた友人が妻子の元に戻れずに死ぬ事になってしまった、という新たなトラウマ案件だと思うのですが。
 そんなツルギは今回通して格好良く、ラッキーについて
 「そうだ、こいつは奇跡を起こせる男だ」
 と、精神的に生まれ変わったツルギがラッキーを次の段階に導くという流れは綺麗で、どんな逆境でも光明を見出す「よっしゃラッキー!」はやがて奇跡も呼べるかもしれない、という位置づけは悪くないだけに、謎の持ち上げ期間とか、そもそもツルギの前で「よっしゃラッキー!」あまりやってないとか、ここまでの積み重ねの不足が悔やまれます(^^;
 ここに来て再びラッキーに焦点が当たるほど、2クール目のサソリ兄弟編で作り手の思い入れが暴走しすぎた事による蛇行で、作品の柱を歪めてしまったな、としみじみ。
 「もう既に、奇跡は始まってるんだ」
 奇跡という言葉をラッキーとオライオンの共闘に当てはめたのも、マジックワードを物語の中に収める手法として割と良かったのですが……
 「ドン・アルマゲぇ……! これが、貴様が否定した奇跡だ!!」
 スティンガーが腹から振り絞るように叫んだ、大ボスが否定するレベルの奇跡=ラッキー復活だったのは、さすがに吹きました(^^;
 どれだけ世界における存在が巨大なんだ、ラッキー。
 「いや、まだだ……これから始まるんだよ!」
 「さあ……ようやくメインディッシュの登場だ」
 「まったく……待たせやがって……!」
 あなた方のその、前菜としての自覚、凄いな。
 「「宇宙は、宇宙に生きるみんなのものだ!!」」
 ラッキーはオリオン座星系と獅子座星系の二つの血統を併せ持つ、オライオンの遠い子孫であり、ラッキーとオライオンの気持ちがシンクロする事で、オリオン! 獅子! ベストマッチ!により、サイコーキュータマできあがり。
 前回ちらっと生じた未曾有のコズミックエナジーの正体はラッキーに「二つの星座系の力が流れている」からで、仲間の存在意義は、時間稼ぎの盾でした。まあ多分、輸血された鳳凰キュータマのエネルギーは入っているのでしょうが。
 サイコーキュータマを使ったラッキーは、白い星人・ビィッグ獅子! じゃなかった、ミラクルスター・シシレッドオリオンに変身。
 「おまえの運、ためしてやるぜ」
 次元を歪める能力を持つビッグ獅子はイソギンチャク男を一刀両断して瞬殺し、その無惨な光景を「おお、すげー」と見つめる前菜達……あ、前菜達はこの後、ショーグンの力で復活した3体の巨大フクショーグンとの戦いで活躍しました!
 ビッグ獅子の全武器一斉使用は格好良かったですが(魔法陣から武器が飛び出してくる絵に何か既視感ありましたが)、急にフード外してふらっと直接出馬してきたショーグン様がさくっとやられるのは一人で勝手に格を落としていて、どう受け止めていいのか困ります(^^;
 これは前半からの悪の組織としてのジャークマターの欠点にも繋がりますが、ショーグン様、悪事が全て間接的すぎるので撃破のカタルシスが不足しており、ここでざくっと倒すのなら、ビッグ獅子の存在感を際立たせる為にも、もう少し直接的な残忍さを積み重ねておいてほしかった所です。
 「この私が負けるだと?! おぉわぁぁぁぁぁ!!」
 ツルギ達との最終決戦でもいい感じの断末魔の台詞を遺してたショーグン様ですが、もしかして、死に芸の達人なのか。
 フクショーグン御三家はキュウレンオーとギガントホウオーが粉砕、将軍ドン・アルマゲはビッグ獅子ボンバーで消滅し、宇宙幕府ジャークマターの上層部は壊滅。だがその時、将軍の攻撃からリポビタンシールドで皆を救った代償として、既に致命傷を負っていたオライオンの命の灯は燃え尽きていたのだった……。
 そして、宇宙規模でも東映名物・勝手にお墓。
 妻子が居るのがわかっているのに、形見の品一式を墓にして自分たちだけで満足していて、勝手にお墓史上に残る鬼畜度。
 ところが、オライオンの死により救世主伝説が語り継がれない→キュウレンジャーが未来に存在しない→歴史修正による消滅の危機、に陥ってしまうラッキー達。
 ……この件に関しては、ツッコミどころがありすぎて書き上げていると大変面倒くさいので、スルーします!(笑)
 そこで司令が、救世主伝説の語り部として過去に残ると宣言。
 「現代で平和に暮らしてほしい……それが、私からの最後の命令だ」
 これは革命運動の負債を引き受ける立場の司令らしくて格好良くはあるんですが、ここでもまた、覚悟と満足があれば盾にする事に躊躇がなくて、それを回避する意識がある事も含めて、本来ならここに残るのは同時代人であるツルギがふさわしいのでは(^^;
 過去で調べたい事がある、と未来へ戻る方法探しの可能性も含めて同じく居残りを宣言するチャンプの器が相変わらず大きいのですが、全員揃って、もはや歴史を変える事に1ミリも躊躇が無いゾ(笑)
 皆さんが勝手にオライオンの墓を建てた事で、300年後の未来では惑星が10個ぐらい消し飛んで本来は発展する筈だった16の種族が絶滅して3つの星間戦争が引き起こされている可能性もあるんですよ!!
 ……色々考えると、これなら最初から「全員で過去に戻って弱ったショーグンをぶち殺しにいく」事にして、歴史を変える事をあまり重大に扱わない世界観で進めた方が良かったのでは。中途半端に「歴史変えるの禁止」と入れたのが、かえって良くなかったように思えます(^^;
 或いはいっそ、「歴史を変える覚悟で過去でアルマゲを倒したのだから、ここで消えても一片の悔い無し!」まで突き抜ければ作品としての面白みになりうるのですが、その手前で立ち止まってしまうのでどうも勢いが足りません。
 かくして司令とチャンプを333年前に残し、「宇宙が解放された」筈の未来へ戻るラッキー達だが、無人の街でようやく出会ったハミィが指さす先に映るのは、闇の貴公子ヘビメタナーガと二人のフクショーグン、そして、高笑いするドン・アルマゲであった!
 「ドン・アルマゲ……どうして?」
 ……だからあなた方、それを調べに過去に行ったのでは。
 ショーグンは俺様ダイナマイトで倒した筈→へたれだからトドメを刺せていなかったと雑に断言→弱っている想定のショーグンをビッグボンバーで撃破→今度こそ倒した筈と雑に断言、の結果……
 ふ り だ し に も ど る
 というかあのフードの中身、ショウ司令ですよね?
 約2名を置き去りにしたりと幾つか状況は変わっているので物語の布石としては全く意味が無かったわけではないのですが、ラッキー達視点で見た場合、あまりにも筋肉が脳細胞を圧迫しすぎて目眩がします(^^;
 結果としては、過去に行った目的はオライオンとショウ司令とチャンプを墓地に送って獅子レッドの融合超進化、という事になったビッグ獅子ですが、、今作、(とりあえず登場初回は)滅茶苦茶強い新キャラが出てきたぞ! というのが既に3回目になるので、正直ちょっと食傷気味。しかも全員揃っていない過去で99%甦るであろう敵を撃破する、というシチュエーションもあいまって、心の針が+にも−にも振れてくれませんでした。
 ショーグン様は十中八九、宇宙のどこかに(以下略)ネタかとは思っていますが、次回――ハミィ、起死回生のヒロインムーヴ?!