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『ウルトラマンジード』感想・第12話

◆第12話「僕の名前」◆ (監督:田口清隆 脚本:安達寛高
「キングジョーとゼットンが融合したものと思われます。名称は、ペダニウムゼットン
割と地球が大ピンチの時に、かなりどうでもいい情報を提供するレム(笑)
まあいついかなる時でも、呼び名は大事です。
破壊の限りを尽くすキングゼットンは、体内に取り込んだウルトラカプセルのエネルギーを制御しきれずに自ら放ったビームの反動でダメージを受け、自己修復で一休み。リクはその間に、天文台に届いた手紙の差出人の元へと向かい、そこでやたらと気さくな老人――朝倉錘と出会う。
その老人こそ19年前に天文台で拾われたリクの名付け親であり、3ヶ月前に宿したリトルスターにより、銀河の果てまでも見たいものを見る力を得た人物であった。
「勿論、君たちが暮らしている地下の施設も、隅々まで、見える」
ライハーーー! ライハさーーーーーん!! 斬ってーーーーー!! 今すぐこの老人を斬ってーーーーーーー!!
リクは勧められるがままに『鉄拳』で対戦をしながら、老人の話を聞く事に。
曰く、リクがウルトラマンであり青春のトンネルを彷徨中なのを知っている事、、19年前に町長であった錘がリクを養子として引き取ろうと考えていた事、しかし直後に妻が事故死した為に引き取るのを諦めた事、遠くが見えるようになって真っ先にリクの事が見えた事、あと、ベッドの下の秘密のコレクションの事。
……本当に、お父さんが全て見ていた。
この事実に生みの親としてのプライドを刺激されたのか、目を覚ましたキングゼットンは、錘の中のリトルスターを求めて行動を再開。ここで錘に「これまでバリアで誤魔化していた」みたいな台詞があるのは、ちょっと謎。リトルスター覚醒後も狙われていなかった理由付けなのでしょうが、錘のリトルスターのもう一つの能力と解釈しておけばいいのか。
リクとペガは病身の錘をリヤカーに乗せて逃走し、影の中から手と顔を出したペガがリヤカーを後ろから押しているのがいい味。最初そこだけ映されたので、凄いぞペガエンジン! と誤解しましたが、リクは前でちゃんと引っ張っていました。忘れがちだけど、そういえば超人的な身体能力を持っているのか。
だが所詮はスケールが違いすぎ、辛くもゼットン光線の直撃は避けるも、リヤカーを壊されたリク達は瓦礫の中に投げ出されてしまう。
「リク……私と、家内とで、考えた名前なんだ。男の子が生まれたら、付けようってね。この大地に、しっかりと、足を付けて、立つ。そして、どんな困難な状態にあっても、絶対に再び、また、立ち上がる。そういう想いを込めて」
自分を置いて逃げるように促す錘と、それを拒否するリクは押し問答。
「諦めたら終わりでしょ?! ウルトラマンになんかなれなくても、こんな所で錘さんを死なせたりしない!!」
「リク……頼む、生きてくれぇ!」
その時、錘の中のリトルスターが、リクへの祈りに反応する。
おお成る程、ここでリトルスターが、ある種曖昧なシンボルとしてのウルトラマン(遺伝子情報により模倣された存在)ではなく、朝倉リクという個人をウルトラマンとして認識する、というのは美しい展開。
なればこそ、ウルトラカプセルを起動する為だけに生み出されたウルトラマンの模造品としてではなく、真実、朝倉リクは朝倉リクとして、ウルトラマンになる事が出来る。
「絶対に、守ってみせる!」
錘の宿していたリトルスターからウルトラの父カプセルを入手したリクは、敢然とキングゼットンに立ち向かい、ゼロカプセルと父カプセルにより、変身。テーマ的には納得の人選なのですが、ライザー音声の「ウルトラの(一拍)父!」でどうしても笑ってしまいます。
ジードの得た新たな姿――その名を、ウルトラマンジード:マグニフィセント。
何者でもない思春期の葛藤から大人の階段をすっ飛ばしすぎて一気に立派なヒゲをたくわえたジードは、ゼットン光線を受け止めるファザーシールドを発動。父の力たるマグニフィセントが一番最初に見せるのが、守るための力を発揮する、というのは位置づけとして良かったです。
「造られた道具がぁ、創造主に刃向かうというのかぁ!」
背後の錘を守り抜いたヒゲジードは、K先生半裸のイメージ映像で錯乱状態のKゼットンと激突。
「貴様の価値は、ベリアル様の遺伝子を持っている事! それ以上のなにものでもない模造品だぁ!」
「模造品なんかじゃない!! 僕はリク! 朝倉リク!! それが僕の、名前だぁ!!!」
出自を疎むゆえに、「ウルトラマンジード」という名前に大衆に認められる公のヒーローの意味を与える事で力の意味を見出そうとしていたリクが、それ自体がK先生の思惑通りであった事に絶望するも、「朝倉リク」という自分の名前に意味を得る事で自ら立つというのは鮮やかな飛翔。
これまで話の焦点が当たりきらない事も含めて薄ぼんやりとした泥濘でもがいていたリクが、一気に空へと羽ばたきました。正直言うと、ゼロ抜きで話作ってここまでを8話ぐらいまでに収めてくれれば『ウルトラマンジード』としてはもっと好みでしたが、そこはまあ、致し方ない所でしょうか(ゼロ/レイト自体は好きですし)。
「貴様の人生に価値など無い! おまえという肉片に生命を与えたのはこの私だぞ! 産声をあげる瞬間に磨り潰す事も出来たのだぁ!」
今回、名付け親・生みの親・遺伝子上の親、という朝倉リク/ジードの3人の父親が登場しているのですが、ここでK先生もまたリクの父親である事を強調。
「貴方にはわからないんだ! 人の幸せがぁ!! 僕には! 仲間が居る! 帰る場所も!!」
それに対して、ある意味ではこれまで不特定多数の誰かに振り回されていたリクは、自分という個人に向けられた想いと向き合う事で朝倉リクとして得てきたものを受け入れる――
「僕は、僕の人生を生きてる! 誰にも価値が無いなんて言わせない!!」
その積み重ねこそが朝倉リクの中身であり、だからリクは、空っぽの模造品である事を、押しつけられる価値観を否定する。
「貴様が価値あると信じている全てのものはクズだ! 薄っぺらい貴様のような存在にはお似合いだがなぁ!」
「――可哀想な人だ」
「なんだと?!」
「貴方には何もない。空っぽだ」
既にK先生の思惑を遙かに超え、自らの中身を見つめて立ち上がったジードは、Kゼットンを突き放すと、必殺ヒゲ光線を照射。直撃を受けたKゼットンは派手に吹っ飛び、伏井出ケイ、絶筆?!
一方、宇宙の彼方で触手責めを受けていたゼロは、広大な異次元空間からなんとか脱出。空間の出入り口が突入した地点しかない事を把握すると、ウルトラ接着光線で出入り口を封鎖。
「嫌がらせ完了!!」
と爽やかに言い捨てて、地球へと帰還する。
その姿を、空間の向こう側から見つめる巨大な瞳――
ウルトラマンゼロ、待っていろ。間もなく俺は強大な力を手に入れる。その時おまえは、真の絶望を目の当たりにするだろう」
地球では、Kゼットンの爆発により四散したカプセルを、なんとか皆で拾い集めて回収。……きっとヒカリ博士がこっそり、一つ二つぐらい目立つ所に置き直してくれたに違いありません。
星雲荘にはひとまず日常が戻り、洗濯そっちのけでゲーム雑誌を読みふけるリクに向け、ライハが刃物を一閃。
「貴方は、自分探しを終えました。でも、成長していません。とても、残念です」
だが切り裂かれた雑誌にも、向けられた刃にも、冷たい視線にも、悠然と構えて伸びをしてみせるリク。
「……動じてない?!」
「いつものやり取り。落ち着くなぁ」
「うん! 実家のような安心感、だね」
ヒロイン力は増したものの、代わりに何か大切なものを失ってしまったのではないかと、呆然と佇む鳥羽ライハであった。
リクはしばしば錘の家にゲームをしにいく関係となるが、無惨に爆死したかと思われたK先生は、まだ生きていた……。
「ベリアル様……ベリアル様……私の体に……何が起こっているのでしょうか?」
「案ずるな、ストルム星人。俺はおまえの側に居る」
リクが「僕の名前」を見つけたエピソードにおいて、ベリアルに忠誠を尽くすK先生が、名無しのストルム星人として扱われるのが、実に痛烈な対比。
「ベリアル様…………」
「だから今は眠れ。体内に宿った悪夢を育てる為にな。ふ、ふふふふふふはははは」
安らいだ表情でK先生は異次元空間に崩れ落ち、邪悪な哄笑をあげるベリアルの巨大な顔、で、つづく。
前回−今回と、冴える田口監督の演出に立ち上がり不安定さの目立った安達脚本も噛み合い、1クールの締めにふさわしい盛り上がりで面白かったです。特に今作の場合、登場人物が多い割にまとまりが悪く、話の焦点が散漫になって肝心な部分が雑に片付けられてしまう、という状況が多発していたのですが、リクとK先生を中心に置いて物語の焦点をしっかり絞り、「ウルトラマンジードとは何か」から「朝倉リクが朝倉リクとして立つ」姿へ繋げる、というスッキリした作りが良かった所。
特にK先生は、“生みの親”であるのが強調される事で、“遺伝子上の親”であるラスボス・ベリアルの前座としてふさわしい仇役となり、見事に1クール目の幕を下ろしてくれました。
そして今回を持ってして“既に乗り越えられた父”となったK先生は、同時に“ベリアルの駒”としてリクと対比されうる立ち位置となり、こうなると最終的に、K先生がベリアルから自立する、という展開も面白そうです。最後まで忠誠を貫いて無惨に破滅してもいいし、ベリアル的なものを否定するキーの一人になってもいいし、どちらに転んでもおいしい、という存在になったのは大きい。
リクの飛躍もですが、悪役としてのK先生が跳ねてくれたのは、後半戦に向けて期待大。かなり好きなキャラになってきたので、後半戦どんな存在感を見せてくれるか、楽しみです。
全体の話は現段階でいうと、結局、序盤に世界観を謎めかして見せていたのは何だったのだろう……とかはあるのですが、やはりヒーローと悪役がしっかりすると、作品の土台が強くなるな、と。
不満点を一つあげると、今回、手紙の差出人の元へ向かうリクに対して
「行ってらっしゃい」
リクと錘の会話において
「知りたい事ある? あの女の子の事かな?」
「ライハの事は別に」
「ライハなんて言っとらんよ」
とからかわれ、ヒゲ発動時には、
「リク……リクなの?」
「うん、心配かけたね」
「……お帰りなさい」
「……ただいま」
と、何者かの陰謀を感じるライハのヒロイン度爆上げキャンペーンだったのですが、そんなエピソードに、モアが全く登場しない事。
後半戦に色々考えているのかもしれませんが、モアが目立つ回はライハは出てきても空気同然だし、ライハがプッシュされるとモアは出てこないし、というのは食いつぶし合う事も懸念しているのでしょうが、何やら不公平さを感じてしまいます。お陰でライハのボーナスゾーンはなんだか、不在の相手を一方的に殴り続けているみたいな印象に(^^;
もっとお互い、フェアに殴り合ってヒロイン力を高め合ってほしいです!
あと結局、Kゼットンが吹っ飛んだ事に関しては無反応だったのですが、ライハの復讐ネタはさすがにねじ込めなかったようで、なんだかもう、このまま忘れてしまってもいいのでは感。後半戦で下手に火を付けようとすると、特大の地雷になって色々と吹き飛びそうな気がしてなりません。
マグニフィセントは、予告時点では、父?! と思ったのですが、動いているのを見たら、それほど違和感はありませんでした。ありませんでしたがどうしても、若者の喧嘩に金と権力で割り込んでいる感じがしてなりません(おぃ)
いいかねジードくん、社会に出たら、邪魔な相手は、札束で殴り飛ばせ!
……ラスボスは同期の元ライバル?なのでしょうが、むしろ更に増してしまう、光の国の派閥争いの代理戦争。株は力だ力は株だ!
あと、肩部分にどうも既視感があるなぁと思ったら多分あれだ、ヘビーメタル(『重戦機エルガイム』)のバッシュだ。
とりあえず後半戦の気になる要素としては、今のところ影も見せない「育ての親」でしょうか。今回、父と子の物語が今後の布石も含めてかなり巧く連動したので、リクの第4の親がどういった形で物語に関わってくるのかは楽しみです。
次回――たぶん総集編で、ライハさん、ポニーテール発動で引き続き確変を狙う。