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『ウルトラマンジード』感想・第20話

◆第20話「午前10時の怪鳥」◆ (監督:冨田卓 脚本:三浦有為子)
見所は、本編に全く関係ないルナミラクルゼロを物凄い早口で解説するウルトラカプセルナビ。
(て、文字にして気付いたけど、「伊賀栗ルミナ」の元ネタなのか?!)
毎日、午前10時になると街を襲撃する、目的不明の謎の巨大怪鳥、ギエロン星獣。突如現れる巨大怪獣とそれを倒すジードがもはや街の風物詩になりつつあったが、リクは連日の出勤に疲労困憊で、そんな事で就職できるのか?! という、ややコミカルタッチのインターミッション。
シリーズ古典を意識したと思われる一話完結色の強いエピソードで、画面の枠にエフェクトを掛け、繰り返される午前10時を幻想めかして描くなど、演出もやや特殊。5日目から始まって1日目に遡り、ルミナさんと主婦友達の井戸端会議のやり取りから怪獣の騒ぎに繋げ、それが最後に解決策のヒントになる、など構成に工夫を凝らして遊び心満載なのですが、分裂した細胞から再生を繰り返す怪獣を倒す手段は、冷凍する、というオチは特に面白くなく。
また、働くお父さんはヒーローで、社会は皆の明日と笑顔を守るヒーローで一杯だ、というテーゼを抱えた作品なので、家庭を守る主婦もまたヒーローになれると描いても良かったと思うのですが、団地の主婦仲間とお喋りを続け、夫の愚痴に相槌を打ち、ファミレスにちょっとお洒落して出かけるルミナさん(ら)の姿は、若干露悪的にも見え、作品としてバランスの悪い描写。
モアやライハが居るので、ルミナさんはあくまで日常パートの存在であり、主婦の中にもあるヒーローの姿という要素は意図的にオミットしたのかもしれませんが、それにしても、夫が仕事中に井戸端会議にうつつを抜かす風な団地の奥様方像がやたら古めかしくて、正直、脚本か演出かの軽い悪意を感じるレベルです。
それをうがち過ぎとしても、ここまでで最も出番の多くなったルミナさんを綺麗に(可愛く)撮ろうという意思がまるで感じられず、4クールならともかく、2クール作品のキャラの見せ方としてはどうかなと首をひねるところ。
やり取りの中の言葉遊び自体は悪くなかったのですが、見ていてあまり気持ちの良くない部分が目立ってしまいました。
ラストの、市民に呼びかけて怪獣の破片を回収する、というくだりを見るに、公募エキストラ企画というのが前提だった様子もありますが、それにしても、報道に市民への呼びかけを求める・冷蔵庫の無償交換を約束するというコネクションと資金源が謎だらけ。
宇宙Gメンがニコニコ保険以外にもダミー企業を持っていて、そのルートを使ったという解釈は成り立つ範囲ですが、AIBは地球人には秘密の組織だけど実は政府上層部とはパイプを持っているのだ、とかそういうあまり面白くない設定でもあるのか。
あと、ギエロン星獣との戦いで、5日目:モミアゲ、遡って一日目:仲居、二日目:スポ根、と見せたので、てっきり三日目はヒゲかと思ったらモミアゲで、4日目はゼロビヨンド、6日目はやっぱりモミアゲで結局ヒゲスラッガーの出番が無かったのはいったい何故。繰り返し現れる怪獣との対戦で全フォームを見せる趣向なのかと思っていたので肩すかしだったのですが、出さなかった理由もよくわかりません(^^;
1年物だとたまにはこういうのあるよね的なエピソードを、構成の工夫で面白く見せようとした方向性は嫌いではないのですが、ところどころスッキリしない出来。
脚本の三浦さんは、『オーブ』第19話・今作第5話・第9話、と個人的に惨事率が高いので見る前のハードル設定が低く、下手に原典のテーマを正面から取り扱おうとして踏み抜いた地雷が母屋を吹き飛ばさなかっただけ良かった、とは正直思いましたが。
(僕は多くの人に支えられ、助けられ、戦っているんだ。これから、もっと強い敵と戦わなければいけない事もあるだろう。でも、みんなと一緒なら、きっと僕は戦える)
回収に関わってくれた人々との間に絆を感じ、公のヒーローとして認められつつあるウルトラマンジード、それを支えてくれる多くの光に喜ぶリク――…………の姿を、お父さんは見ていた。
「おまえの力はこの程度か。そろそろ決着を付けよう……ウルトラマンジーーード」
前回も前々回も派手にぶっ飛ばされた事は脳内でいいように変換され、激しい自己肯定力を身につけつつあるK先生は、どうやらギエロン星獣を用いてモミアゲマスターのデータを分析していたらしく、怪獣カプセルを指先で弄びほくそ笑むその姿で、つづく。
後、K先生と情報屋宇宙人のやり取りを嬉々として見つめ、未知なる悪夢への好奇、自分だけがそれを文字に出来るという衝動に突き動かされるアリエさんの理性の吹っ飛び加減は良い具合で、この2人にどう始末をつけるのかは、引き続き楽しみです。
ところで今回の、麗しく善意を拡大解釈気味のリクのモノローグが最終章への布石だとすると、キングの宇宙で過ごす皆の心の中にはちょっとずつリトルスター因子の欠片が眠っている、みたいな展開になるのかなぁ……綺麗にまとめてくれれば、そういうの好きですが。
次回――最終章を前に、いよいよ遂にペガのターン。