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『ガールズ&パンツァー』ブートキャンプ1

 世評は聞き及んでいた『ガールズ&パンツァー』、先日、地上波で放映していた劇場版を折角だからと見てみたところ、なかなか面白くて興味が再燃していた所に、最寄りのレンタルショップの半額デーに行き合って、勢いスイッチが発動。時間の都合でざっくり気味ですが、TVシリーズ全12話の感想その1(1〜4話)です。
 なお、以前にバンダイチャンネルの無料分で第1話は見た事あり。また、インターネットをふわふわしていると自然と見聞きする範疇で、一部設定など――特に、要するに「少年マンガの部活もの」構造らしい――は知った上での視聴となっています。
◆第1話「戦車道、始めます!」
 冒頭、戦車主観(砲塔の下辺り?のカメラ位置)の映像から始まり、状況がよく飲み込めないまま、とりあえず、学生服の女の子が戦車に乗り込む、という導入。正直、改めて見ても“わけのわからなさ”がやや過剰に思えるのですが、最初に映る登場人物――女子高生? 最初に目に入る文字列――(戦車のボディに書かれた)「バレー部復活!」で、これはとにかく学園物であるというサインを提示しており、そこは小気味よく計算された作り。
 迫り来る砲弾を前に時はしばらく遡り、少々鈍くさくて内気でひとりぼっちの転校生・西住みほは、明るく物怖じしない性格だがモテ願望が空回り気味の同級生・武部沙織と、その友人で大人びた華道家元の娘・五十鈴華、から学食に誘われ、はじめての友達が出来る事に。
 「へぇ、誕生日まで覚えててくれたんだー」
 「うん、名簿見て、クラスの全員、いつ友達になっても大丈夫なように」
 なんか怖いよこの娘……!
 ……この後明かされる諸々の設定から考えると、
 「ジョニー、確か今日は、おまえさんの結婚記念日だったな。早く帰って、かみさんに上手いものでも食わせてやりな(さっとポケットから数枚の紙幣を渡す)」
 「あ、ありがとうございます大佐……!」
 的な、西住流人心掌握術の無意識の応用でしょうか。
 沙織と華はボケとツッコミの関係かと思いきや、ぐさぐさツッコむ華(特に沙織のモテ妄想に厳しい)の方も、ナチュラルに超大盛りのご飯を平らげていたり、みほの過去に血なまぐさい骨肉の争いを期待したりと似たり寄ったりのボケ具合を交え、はじめての友達に浮かれるみほが、悪い先輩達にからまれて目からハイライトが消えるまで、コミカルかつテンポ良く展開。
 沙織と華は、みほの家庭の事情を知り……そしてぶち込まれる、乙女のたしなみ・戦車道というトンデモ設定。
 個人的には、右下に書いてある「仙道」忍道が、凄く気になりますが。
 戦車道PVにより、とにかくそういう世界観だから! と鋼鉄の直球を投げつけた後、家元の家に生まれ、幼い頃から戦車戦車で圧迫されていた生活からようやく抜け出したというみほの事情を聞いた筈なのに、それぞれ戦車道に興味を持ってみほを誘う沙織と華が、けっこう酷い(笑)
 翌日、なにやら戦車道に重いトラウマを抱えるらしいみほが別科目を選択すると迷わずそれに合わせ、会長が強引に戦車道を選ばせようとするのに対し、みほの手を握って励ましながら徹底反論するという篤い友情が描かれるのですが……漂う微妙にマッチポンプ感。
 いやまあここでは、みほは“家庭の事情”は話しても、“過去のトラウマ”は話していないので、物語としてそれは切り分けられている為に、当初二人にその深刻さが伝わっていなかった、という事ではあるのでしょうが。
 後、二人が戦車道に興味なし→みほが強引に戦車道に勧誘される→じゃあ一緒にやります、だと、みほの自発性が出ないので、みほが嫌なら戦車道はやらない→みほが強引に戦車道に勧誘される→暗に脅迫を受けてもみほを守ろうとする→二人は本当は戦車道に興味ある筈なのに……とみほが覚悟を決める、というプロセスが必要だったのでしょうし。
 結局ここでは、みほが友達の為に自らの意見を口にする、という形で一歩踏み出しているものの、同時にどこかで自分を犠牲にしてしまっているのですが、みほの決断を劇的に描きつつ、みほの抱える、今後克服すべき課題、が上手く盛り込まれています。
 そういう意味では、沙織と華がちょっぴり犠牲になった、とはいえますが(^^;
 ただ物語としては、自己肯定力の低い主人公がその“長所”を周囲に認められるのではなく、むしろ“長所”から目を逸らそうとしているのに対して、友達が“そんなあなたを受け入れる”という構造になっているのは、気持ちの良い点。また、第1話の時点でみほからも(無意識に)同じボールを返している所まで畳み込まれているのは、お見事。
 かくして、思惑ありげなちびっ子生徒会長の下、大洗女子学園に復活した戦車道。総勢20人あまりのメンバーが集い、倉庫に放置されていたボロボロの戦車を目の当たりにする…………そして……学園と、その周囲の市街地は……海を行く巨大な船の上にあるのだった! と戦車道を成立させる為の方便としてのSF設定が明かされたところで、つづく。
 好き要素が特に無い事もあり、凄く面白い第1話というわけではありませんでしたが、戦車が出ます! 学園物です! 戦車道は乙女のたしなみなんです! これはSFだから! と、メカ×美少女の文脈をベースにしつつ、これがいかなる物語であり、それをどう成立させるのか、というサインの提示が徹底されているところには好感が持てます。
 その上で、みほの決断を(問題を孕みつつも)劇的に描いてしっかりクライマックスとして機能させており、人間的な要素でいえば、友情と前進の物語である、というのも暗示され……ああだから、「パンツァー・フォー!」なのか?

◆第2話「戦車、乗ります!」
 戦車道履修者たちは、学園のどこかにある筈の戦車を探し、崖の裂け目とか水底とか、明らかに封印されたプレシャス状態の戦車を次々と発見。その過程でみほ達は、癖っ毛の戦車マニア・秋山優花里とお近づきになり、4人パーティに。
 サービスシーンを中心に展開し、色々と先への布石を散りばめつつ、まずは美少女で胃袋を掴む、的な構成。
 私としてはあまり面白くなかったのですが、OPで既に暗示されている5人パーティが、沙織&華(既に関係の完成している二人)+みほ+優花里(一歩を踏み出したらみほが自ら声をかける)、という形で順々に出来上がっていくという流れはよく計算されています。
 豪快な教官が到着し、色々すっ飛ばして問答無用で実戦練習スタート、でつづく。

◆第3話「試合、やります!」
 歴女チームとバレー部チームの共同戦線に背後から追われる事になったみほチームは、学年主席の秀才だが低血圧の遅刻魔・冷泉麻子を途中で拾い、吊り橋を渡り損ねて落ちかけている戦車に追い打ちで砲弾ぶちこんでくるテンション怖い。
 華が失神するというトラブルがあるも、一通りマニュアルを読んで操縦を理解した麻子が見事に戦車を操り、反撃開始。
初めての砲撃に皆が衝撃を受けている中、一人冷静に次弾を用意しているみほが切れ味を見せ始め、話の流れとはいえ、3台の戦車を全て一撃必中で撃破している優花里は、ゲームで鍛えた腕なのか。
 前後を挟まれながらも勝利を収めたみほ達は、麻子の加入により役割分担が完成し、とりあえず、内装のクッションを買いに行く事に。他チームの戦車に至っては迷彩塗装そっちのけで魔改造され、アニメ的には視聴者に大変わかりやすくなりました。
 「38Tが、三突が、M3が、八九式がなんか別のものにーー!」
 「戦車をこんな風にしちゃうなんて、考えられないけど、なんか楽しいね。戦車で楽しいなんて思ったの、初めて」
 一応練習シーンを挟んで、強豪、聖グロリアーナ女学院と親善試合を戦う事になるが、その集合時間を聞き、麻子が離脱を宣言。
 「朝だぞ……人間が朝の6時に、起きれるか!」
 「いえ、6時集合ですから、起きるのは5時ぐらいじゃないと……」
 「人には出来る事と出来ない事がある。短い間だったが、世話になった」
 「このままじゃ進級できないよ! 私たちの事、先輩って呼ぶようになっちゃうから! 私のこと沙織先輩って言ってみ!」
 「サ・オ・リせん……」
 限界ギリギリまで抵抗する麻子であったが、幼なじみの沙織に祖母の名前を出されると白旗を揚げ、翌朝、麻子の家にそれぞれ出向く一行。
 軍楽喇叭が鳴り響き、戦車の空砲で叩き起こし、市街地を通学に使われる戦車……に、声援を送る街の人達、というのが、“今作の世界観”としてカッチリ映像に収まり、事前のやり取り含めてここは非常に面白かったです。
 戦車道一行は大洗の地に降り立ち、20年ぶりの地元チームの試合に歓声を送る人々……で、次回、はじめての対外試合、スタート。

◆第4話「隊長、がんばります!」
 事前の作戦会議の席上、なにかと主導権を握りたがる生徒会広報の代わりに隊長に使命されたみほの指揮下で試合が始まり、第1話冒頭と接続。第1話時点では意味のわからなかった要素が腑に落ちるようになり、前回後半における世界のリアクションと合わせて、ここで一気に色々と噛み合ってくる造り。
 砲弾も無事に外れました。
 「そんなに身を乗り出して当たったらどうすんの?!」
 「まあ、滅多に当たるものじゃないし。こうしていた方が、状況がわかりやすいから」
 戦車道は、人の心の中の変なスイッチを入れるなぁ。
 一方の聖グロリアーナ女学院隊長・ダージリンは走行する戦車の中で優雅に紅茶をたしなみながら冷静に指揮を執っており、
 「どんな走りをしようとも、我が校の戦車は、一滴たりとも紅茶をこぼしたりしないわ」
 戦車道は、人の心の中の変なスイッチを入れるなぁ。
 戦力差をカバーする為に囮作戦を敢行する大洗だが、慣れない戦車戦に慌てたメンバーは砲撃のタイミングを外し、紅茶帝国には実力で待ち伏せを突破され、逆に包囲を受けると1年生チームは戦車を放棄して敵前逃亡。
 繰り返し丁寧に描かれる形でチームメンバーの励ましを受けたみほは、窮地を脱する為に市街地へと逃亡し、地の利を活かした待ち伏せ戦法に転換。市街戦になると、街中を走り回る戦車の図に特撮怪獣映画テイストが入って、個人的には凄く楽しいです(笑)
 隠密奇襲と機動力を活かした接近戦の末、最終的にはエース機同士の一騎打ちとなるが、ダージリン機が紙一重の差で勝利。牙を隠した気弱な転校生を擁する弱小校が、初めての対外試合でいきなりの強敵と激突、奇策で善戦するも敗北、という実に王道を行く展開。
 この結末を見つめる脱走兵たち(1年生チーム)で綺麗にAパートが終わり、あんこう踊り罰ゲームを挟んで、戦車道をやっている事を家族と話していなかった華が母親と揉める事になるのですが、この挿話はやや強引な印象。
 「わたくし、生けても、生けても、何かが、足りないような気がするのです」
 「そんな事ないわ。あなたの花は、可憐で清楚。五十鈴流そのものよ」
 「でも……わたくしは……もっと、力強い花を生けたいんです!」
 華の言葉にみほは廊下で目を見開き、しばらく先まで見ると、今作の縦軸のテーマであり、かなり重要なやり取りだとわかるのですが、話数の関係もあってか、この時点ではやや圧縮して詰め込みすぎたように思えます。Aパートにおける初の本格的戦車戦との緩急の差を上手く演出しきれなかったというか、流れが急に分断されすぎたかなと。
 「いつか、お母様を納得させられるような花を生ける事ができれば、きっとわかってもらえる」
 「お嬢……!」
 「笑いなさい、新三郎。これは、新しい門出なんだから。わたくし、頑張るわ」
 「五十鈴さん……私も、頑張る」
 船に戻ると1年生チームが揃って謝りに来て、敗北しかし善戦が、全体の転機としてしっかり機能。また、聖グロのダージリンからは贈り物とメッセージが届けられる。
 ――「今日はありがとう。貴女のお姉様との試合より、面白かったわ。また公式戦で戦いましょう」
 好敵手と認めた相手を友と呼んで紅茶を贈り、どこまでも王道をいくダージリンさんであった。
 そして早くも全国大会抽選会……みほが引き当てた一回戦の対戦相手は、名前からして金と物量にものを言わせそうな優勝候補の一角、サンダース大付属高校。
 「初戦から強豪ですね」
 「どんな事があっても、負けられない。負けたら我々は……」
 深刻そうな生徒会広報の呟きを覆い尽くす、シャーマン大戦車部隊の姿が描かれ、つづく。
 ……それにしてもダージリンさんは、トーナメント表の段階で、
 〔最初の強敵としてぶつかる金髪エリート → 好勝負を讃えライバルと書いてfriendと読む → 再戦を約束するもラスボスに準決勝で敗退〕
 までのルートが敷き詰められていて、なんという高度な技術点。