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『ガールズ&パンツァー:劇場版』感想(前編)

 TV本編終了からおよそ2年半後、2015年11月に公開された劇場版は、画面大写しのティーカップからスタート。
 「イギリスのこんな言い伝えを知ってる? 茶柱が立つと、素敵な訪問者が現れる」
 「お言葉ですが、もう現れています。素敵かどうかはさておき」
 戦車内のダージリンオレンジペコの会話から、引いていくカメラが砲塔を通って外に出ると包囲され砲弾を浴びる戦車を映すというのは、本編第1話のセルフオマージュという趣向でしょうか。
 聖グロリアーナの戦車を包囲しているのは、西住みほ率いる大洗女子学園。行われているのは、大洗女子学園優勝記念エキシビションマッチ。そして、歓声のあがる観戦席からは離れた所に、試合を見つめる新キャラが2人。
 「戦車道は、人生の大切な全ての事が詰まってるんだよ。でも、ほとんどの人はそれに気がつかないんだ」
 「なによそれ?」
 帽子を被っている方がカンテレを弾き、言動がスナフキンな事から、フィンランド関係者である事は伝わってきます(笑) OVA版でちらっと言及がありましたが、継続高校、如何にも影の実力者な出方。
 一方、真の実力があるのか無いのかよくわからない聖グロは、十字砲火の真っ只中であった。
 「いくら親善試合とはいえ、油断しすぎたのでは?」
 「この包囲網は、スコーンを割るように、簡単には砕けません」
 OPに力強く立っていたのにTV版では喋った記憶が無い金髪のアッサムさんが喋り、開始早々、新キャラにTV版の補完にと、サービス充実。
 ところで最近読んだ香港を舞台にした小説で、ヒロインの名前が「アッサム」だったのですが、香港ではそこまでおかしくないのか、小説的なちょっと変わった名前だったのか、気になっています。今作のアッサムさんは「麻美」さんだったりするのかもですが。
 「落ち着きなさい。如何なる時も優雅。それが聖グロリアーナの戦車道よ」
 大洗女子と、エキシビションで連合を組むこれまた新登場の知波単学園は戦車前進して包囲を縮め、「パンツァー・フォー!」から、マーチに乗せてスタッフロールとともに大洗戦車軍団が紹介されていくOP。
 バンカーに固まって潜む聖グロへ十字砲火を浴びせ、圧倒的優位に戦いを進める連合軍だが、1両撃破した歓喜のあまり、知波単学園の変なスイッチが発動。
 「西殿! 後は突撃あるのみです」
 「その通り。突撃は我が校の伝統です!」
 「突撃以外、何がありましょうぞ!」
 「いや……どうかな……?」
 隊長が悩んでいる間に、包囲陣形を無視して我先にと突撃していく知波単戦車部隊(笑)
 「突撃ー!」「突撃ー!」「突撃して潔く散りましょうぞー!」
 「いやいやいや、散ったらダメだろーーーー!」
 一発で、嗚呼この人達はダメな人達だ……とわかりやすく伝わって、素晴らしい掴み(笑)
 「知波単魂を世に知らしめよ!」
 「勝利は我にありー!」
 「あの……まあいいか。よし、突貫!!」
 そして隊長も流される。
 「え? あの、西さん!」
 事態が飲み込めずに慌てるみほに向かい、勇壮なマーチをバックに振り返って凜々しく敬礼する西隊長、のシーンは何度見ても爆笑。知波単学園の特性を示すと共に、戦車道のなんたるかがよくわからなくても笑える場面としてパンチが利いており、映画的な導入のフックとして、見事に機能。TV版を視聴前の今作初見時は、ここで一気に作品世界に入る事が出来ました。
 「勝手にスコーンが割れたわね」
 「後はおいしくいただくだけですか」
 「……それに、もうすぐサンドイッチも出来上がるわ。――砲撃」
 祝・聖グロリアーナ女学院TV版第4話で待ち伏せ作戦を突破して以来の攻勢シーン。
 陣形を乱した知波単学園は次々と(嬉しそうに)散っていき、僚機の玉砕を知った守備隊配置の戦車も突撃を敢行して撃破されてしまい、後退を余儀なくされた防御陣地を食い破って現れたのは、赤軍もといプラウダ学園。……ロシア民謡のメロディラインが結構好きなので、プラウダのテーマ曲はちょっとテンションが上がります。
 「待たせたわね!」
 「待ちすぎて紅茶が冷めてしまいましたわ」
 後方からプラウダの部隊がゴルフ場に侵攻した事により、フラッグ車であるダージリンの戦車も移動を開始。更に、聖グロ側の増援である、高機動の巡航戦車クルセイダー部隊も到着。また、プラウダにはノンナとロシア語で話すクラーラ、聖グロにはクルセイダー部隊を率いるローズヒップ、がそれぞれ登場し、ドンパチの合間に物凄い勢いで新キャラクターが突っ込まれていきます。
 特に聖グロ側はかなり押し出しが強いのですが、やはり“でかくて強い”か“凄く早い”は、映像的にもわかりやすいし、印象的になるなと。
 挟撃を受ける事になった大洗・知波単はゴルフ場を放棄し、戦いの部隊は市街地へ。街中を大量の戦車が走り回る市街戦は、なんだか特撮怪獣映画のノリ。
 「麻子さん、逃げてるけど逃げ切れない感じで走って下さい」
 得意の陽動と分断による各個撃破を図ろうとするみほだが、敵はあくまでフラッグ車(あんこうチーム)に狙いを集中し、それを受ける形でさらっと出している指示が殺意の布石すぎて怖い。
 一方、やり過ごした敵部隊の背後に飛び出し、重戦車キラー再びを目論んだ1年生チームは、狙った相手(ノンナ)が悪すぎて敢えなく撃破され、これ以外にもTV版を踏まえたネタが各所にサービス満点。
 大洗・知波単連合はあんこうチームを囮にした待ち伏せ作戦で敵軍の足止めに成功し、戦線は再び膠着するが……
 「突撃はいつするんだろう……」
 西さんは存在意義に悩んでいた(笑)
 「で、どうするのカチューシャ?」
 「呼び捨てにしないで! 前進に決まってるでしょ! こんなちまちましたちびっこい連中、削って削って削り取って、ピロシキの中のお総菜にしてあげるわ!」
 実際の戦史は知識がなくてわかりませんが、この屍山血河を乗り越えていく感じは、畑で歩兵が生まれてくるゲームの中のソ連ぽい……。
 ここからしばらく、走り回るあんこうチームと耐える防衛ラインの2局面で展開し、4両のクルセイダーの追撃を受けるあんこうチーム。
 「聖グロ1の俊足からは逃げられないんですのよ!」
 ダージリンの真似なのか、聖グロのデフォルトなのか、ローズヒップが手にしたティーカップの紅茶が揺れまくっているのは仙道の修行が足りていないのか。
 血気盛んなクルセイダーに追われるあんこうチームだが、急旋回からの砲撃で一両を沈め、続けてもう一両も撃破し、速度に優る敵二両に左右を挟まれながら、その殺気を読み取って急ブレーキで砲撃を回避しつつ、無防備になった横っ腹を一撃必殺と、ニュータイプ過ぎて怖い。
 一方、防衛線では強引に押し切ろうとするプラウダを相手に遅滞戦術が行われていたが、知波単隊長機に無線トラブルが発生。
 「すみません、聞き取りにくかったのですがー」
 「後退します!」
 「はい?」
 「後退です。こ・う・た・い!」
 「と・つ・げ・き……かしこまりでございます!」
 大洗女子が戦車兵として成長している分、知波単学園にわかりやすく無茶な行動が割り振られているのですが、いちいち面白い(笑) これが実際の戦闘だと洒落にならないので、戦車道は戦争ではない、という設定が活きているともいえますし。そんなわけで念願の突撃を果たした西隊長は敢闘精神むなしく撃破され、防衛線の指揮を執り視野の広さで万事に有能なところを見せていた自動車部もブリザードの直撃を受け、防衛線は崩壊。
 合流した敵部隊のあんこうチーム追撃が再開する中、急カーブを曲がりきれずに建物に突っ込んだ所を更に味方車輌の追い打ちを受け、建物の崩壊に巻き込まれて、クラーラ機、多分リタイア(今回の死ぬ寸前案件その1)。歴女チームは、OVAネタでナポリターンを成功させるも肝心の砲撃を外してリタイア。
 生き残りの戦車は次々と発砲禁止区域に入り、観衆の間を走り抜けると、エスカレーターを降りたり、神社の階段を降りたりと色々な無茶を見せ、ひたすらドンパチで小休止のシーンもほぼ無い中で、次々とアイデアを盛り込んでアクセントをつけてくるのがお見事。TV版の土台というのは勿論ありますし武器としての意識も強いでしょうが、あんこう車を追撃する為にカチューシャが神社の階段を強行降車する際、背後で社殿に向けて一礼しているノンナの姿が描かれるなど、キャラクターの細かい彩りの付け方も丁寧。
 バレー部は再び立体駐車場アタック(時間差)を聖グロ機に炸裂させ、何度も突撃を敢行して潔く散ろうとしながらも止められてきた知波単メガネは 敵を殲滅する為なら手段をいとわない西住流に カルチャーショック。
 生徒会チームが呑気に外でお茶飲んでたダージリン車を発見し、攻守めまぐるしく入れ替わりながら、戦いは海岸線へ。水際からプラウダのキワモノ戦車が上陸するが、巨大砲塔の一撃は大きく外れ、ホテルを派手に破壊すると転倒してリタイア。爆発にやたら力が入っているのですが、なんかもう、特撮怪獣映画テイストの一貫としてホテルを吹き飛ばしたかったようにしか見えません(笑)
 追撃戦の最中に横から突っ込んできたローズヒップ機は、本来の狙いを大きく外した生徒会広報の砲撃を、大ジャンプ中に横っ腹に受けて空中でひっくり返って壁にぶつかってリタイア(今回の死ぬ寸前案件その2)。
 「カチューシャ、お願いできる?」
 「仕方ないわね」
 ラストはフラッグ車同士の接近戦となるが、階段を利用して前に出たカチューシャ機を撃たせたダージリン機がみほ機を仕留め、最後の最後で阿吽の呼吸を発揮した聖グロ・プラウダ連合軍が勝利。
 TV版は物語の要請として勝ち続けざるを得なかった大洗女子ですが、あまりに連戦連勝し続けると面白くなくなりますし、新たな強敵が現れる度に踏み台となる無冠の初期ライバル的な空気を溢れさせるダージリンに花を持たせる形(これはこれで、親善試合弁慶の誕生なのか?)にしつつ戦車道の奥行きを見せ、新キャラ投入とTV版のセルフオマージュをふんだんに盛り込むという、サービス満点かつバランスのいいエキシビションマッチとなりました。
 ちなみにこの感想を書くまで、「エキシビジョン」だとばかり思い込んでいて、ATOKの訂正機能に怒られた事を告白します。そしたらなんと、今作自体が当初「エキシビジョン」と書いていて、後に修正されたそうで(笑)
 戦いを見届けたフィンランド勢――継続高校――では、二つ結びの子が試合に参加しなかった事にご立腹。
 「参加する事に意義があるんじゃないのー?」
 「人生には大切な時が何度か訪れる。でも今は、その時じゃない」
 ぽろん♪
 エキシビション参加4校は慰労のスーパー銭湯タイムとなっていたが、その最中、急な呼び出しを受ける生徒会長。
 そしてみほ達一行が学園艦に戻ると、何故か船の外にはトラックの列、学園は立入禁止に。
 「もう君たちは生徒ではない」
 「大洗女子学園は……8月31日付けで、廃校が決定した」
 戦車道大会に優勝したら廃校取り消しはあくまで確約ではなく口約束、更に「検討の結果、むしろ3月末では遅い」という極悪非道の理屈により、TV版感動のフィナーレ、根こそぎ消滅!(笑)
 ある意味、続きを作るとはこういう事だ、という悪意さえ感じなくもありませんが、凄まじい開き直りっぷりです。
 抵抗すれば学園艦の一般関係者の再就職を斡旋しないと暗に脅迫し、廃校を寸前で伝えて強制立ち退きさせる文科省が悪の組織すぎるのですが、そこまでして解体したい大洗学園艦は、エンジン部分にオリハルコンでも使われているのでしょうか……。
 これまでの戦いの意味、それぞれの夢、居場所、アイデンティティを一瞬で奪われ、混乱するメンバーを副会長が落ち着かせ、退艦の為の準備を始める面々……。
 「毎朝毎朝、学校の為に遅刻を取り締まってきたのに……」
 「私たち、これから何を生き甲斐にすればいいの?」
 風紀委員が、特に、アブない(笑)
 あと、実家に廃校の連絡をする五十鈴さん、
 「わたくしだけ戻るわけにはいきません。それに、どこでも花は咲けるわ。心がしおれない限り」
 なんかいい事風に言いながら、ヒマワリの種を食べているように見えるのは気のせいですか。
 悲しみを抱えながら、自然と戦車の元に集まる戦車道メンバー。文科省預かりとなってお別れになるかと思った戦車達だが……その時、高らかなマーチと共に学園に降り立ったのは、サンダース大附属擁するC5Mスーパーギャラクシー。
 「サンダースで、うちの戦車を預かってくれるそうだ」
 紛失したという名目にして、サンダースの輸送機に戦車を運び込み、一時預かってくれる事になったサンダースが実に太っ腹で財力と懐の広さを見せつけ、らしい見せ場。
 考えてみるとサンダースは、
 「我ラガ戦車道コソ、ジャスティス! ソレ以外ノ全テハ異端デアリ、コノ地上カラ殲滅後ニ教化スベシ!」
 みたいになる可能性もあったので、大らかな校風で良かった。
 退艦した大洗女子学園の生徒達は、バスに乗って三々五々、転校先が決まるまで臨時宿舎に振り分けられる事になり、木造校舎での半ば合宿生活がスタート。転校先も用意されていないとか文科省マジ悪の組織すぎて引くのですが、宿舎があるだけマシという事なのでしょうか。サンダースは約束通りに戦車を返しに現れ、公道にまとめてパラシュートで降下させるのが豪快です。
 「この借りは高くつくわよ」
 「え?」
 「この借りを返すために戦車道を続けなさい。今度はあたし達がこてんぱんにするんだから」
 「はい!」
 と、TV版では憎まれ役(通り越して愛嬌が出ましたが)だったアリサさんもきっりちフォロー。
 学園を離れた生活で、アインディティが崩壊しやさぐれていく風紀委員……は別にして、筋トレを始める猫耳チーム、サバイバル技術を高める一年生チームなど、ちょっとしたレベルアップ期間に。
 そんなある日、コンビニへ戦車で買い出しに向かったあんこうチームの5人がそれぞれ帰省の予定を教え合っていると、みほが道路脇に、ボコミュージアムのサビだらけの看板を発見。
 「知らなかったー! こんなとこがあるなんて!」
 「今までで一番テンション上がってるよ」
 戦車長の命令一下、テーマ曲をバックに5人が向かったボコミュージアムは、他に客の姿は見当たらず廃墟寸前も中のアトラクションはまだ機能しており、5人は機械仕掛けのボコに出迎えられる。
 「おう! よく来やがったなお前達! おいらが相手してやろう! ぼっこぼこにしてやるぜ!」
 「生ボコだー!! かわいい!」
 「お、何をする? やめろぉ……」
 「何もしてないわよ」
 「やられたぁ……覚えてろよー!」
 「だから何もしてないって」
 「粋がる割に弱い」
 「それがボコだから!」
 まさか、ここが初の掘り下げだったとは。
 劇場版→TV版と見て一番驚いたのはこの、劇場版では割と重要な役割を果たすボコが、TV版ではみほの部屋にたくさん置いてあるぬいぐるみ、以上ものでは全くなかったという事です(笑)
 戦車長の指示により、一行はほぼ無人のアトラクションを次々と体験し、3匹組の着ぐるみに因縁を付けるも逆に袋だたきにされる、というボコショーも見学。
 「みんな! おいらに力をくれー!」
 「ボコ……頑張れ」
 「もっと力をぉ……」
 「頑張れ!」
 「もっとだ!」
 生来の引っ込み思案が顔を出し、声を張り上げきれないみほだが、その時――
 「頑張れボコー! 頑張れボコー!」
 みほ達以外にも居た唯一の客、小学生ぐらいの少女が熱心に声援を送り、つられる形で声を大きくするみほ、仕方がないので合わせてやる気のない応援をする残り4人(笑)
 「キタキタキター! みんなの応援が、おいらのパワーになったぜ! ありがとよ。おまえらまとめてやってやらぁ!」
 立ち上がるボコだが、あっさりと反撃を外し、無情にも再び袋だたきに。
 「……ナニコレ」
 「結局はボコボコにされるんですか……」
 「それがボコだから」
 その姿を見ながら拳を握って瞳を輝かせている西住隊長、叩かれても叩かれてもくじけないその姿に共感している……のかどうか、色々と不安になる所です。
 「また負けた……次は頑張るぞ!」
 ショーの後、お土産コーナーで残り一つのレアぬいぐるみに同時に手を伸ばした先ほどの少女にそれを譲ったみほは、転校手続きの書類の為に実家へ戻り、母と顔は合わせないまでも、姉に迎え入れられる。帰りは駅まで自家用戦車で送ってもらいながら、幼年期の姉妹の思い出シーンが挟まれ、お姉ちゃん、色々とフォロー。
 その頃、生徒会長は文科省役員へ直談判を試みていたが撥ね付けられ、搦め手から攻めようと日本戦車道連盟を訪れていた。
 「私たちは優勝すれば、廃校が撤回されると信じて戦ったんです。信じた道が実は最初から無かったと言われ、引き下がるわけにはいきません」
 板挟みで苦しい立場の連盟会長から、文科省が2年後の世界大会の誘致を目指す為に、プロリーグの発足にかかりきりという情報を得た会長は、蝶野の協力を得て、西住流家元――みほの母を動かす事に成功。プロリーグの発足委員会に名を連ねる家元の援護射撃により、大学強化選手に勝てば、廃校撤回、という条件を遂に取り付ける。
 その大学強化チームを率いるのは、島田流家元の後継者・島田愛里寿。飛び級して大学に通う天才少女はなんと、みほがボコミュージアムで出会った少女であった。
 「私が勝ったら、ボコミュージアムのスポンサーになってほしいんだけど。このままでは多分廃館になっちゃうの」
 「……しょうがないわね」
 「お母様、ありがとう。――大丈夫、私が助けてあげるからね」
 愛里寿はボコのぬいぐるみに微笑みかけ、TV版で積み重ねてきた要素がふんだんに盛り込まれる中で、劇場版の敵との因縁の構築が、TV版の背景ネタの掘り下げからという、物凄い飛び道具。
 そして本来、大学側にとってこの試合は、勝って当然負ければ恥、という事でなんの益もないものなのですが、そこに試合へのモチベーションを与えるとともに、キャラクターのかわいらしさの表現に繋げているのが巧妙。
 会長不在の臨時宿舎では、揺れる感情を抑えて広報が皆をとりまとめ、先に自ら前に出て場を落ち着かせた副会長と合わせて、3年生組も変化を少し。そしてある日の夕刻、リヤカーで大量のパイプ椅子と何やら詰まった段ボール箱を運んでいた広報、つまづいてパイプ椅子の下敷きに(今回の死ぬ寸前案件その3……正直一番危なかった)。
 そこへ会長が帰還し、広報の人は同い年の筈なのに会長への洗脳され具合が物凄いのですが、過去にいったい何があったのか不安になります。
 ……あらゆる手段で人格を破壊し尽くされた後に救済を与えられた感じというか(おぃ)
 会長の過去によぎる不審感はさておき、戦車道メンバーには非常呼集がかけられ、麻子は完全に荒みきってキュウリを食べ続けるだけの生き物と化していた風紀委員チームを呼びに。
 「そど子が居ないと風紀が乱れるだろ! ……それにちょっと寂しい」
 辛い状況でも割と前向きに生活している面々の中で、規律に依存していた風紀委員会チームが真っ先に壊れてしまう、というのがスパイスになっているのですが、麻子との関係もうまく活用。
 「みんな、試合が決まった」
 そして会長は、廃校回避の為に取り付けた、大学強化チームとの試合を告げる。
 「無理な戦いという事はわかっている。だが、必ず勝って、みんなで大洗に、学園艦に、帰ろう!!」
 しかし大学強化チームは、社会人チームを撃破した超強豪。
 「普通は無理でも、戦車に通れない道はありません。戦車は火砕流の中だって進むんです。困難な道ですが、勝てる手を考えましょう」
 それでも会長の尽力を無駄にするわけにはいかないと前向きに勝機を探るみほであったが、文科省からはルールが殲滅戦と通告され、彼我の保有戦力は8vs30と、状況はますます厳しい事に。
 「退いたら、道はなくなります」
 「厳しい戦いになるな……」
 「私たちの戦いはいつもそうです。でも……みんなが居ますから」
 台詞の端々で「道」という言葉がキーワードとして重ねられ、逃げぬ事を掴み取って自らの道を歩き出したみほは戦う事を選び、迫る試合当日……大洗女子が各自余念なく準備を進める一方で、ライバル校の間を謎の打電が駆け巡っていた。
 「熱い紅茶ですね」
 「紅茶って飲んだ事ないんだよなぁ」
 「お茶会、楽しそうだよ?」
 「刹那主義には賛同できないね」
 そして迎えた試合当日、会長には前向きに答えたものの決定的な打開策を見いだせず、暗い表情を隠せないみほだったが、試合開始が告げられる直前、響き渡る声。
 「待ったーー!!」
 そこに現れたのは、黒森峰の戦車4両と、なぜか大洗女子学園の制服に身を包んだまほとエリカ。
 「大洗女子学園、西住まほ」
 「同じく、逸見エリカ」
 「以下18名、試合に参戦する。短期転校の手続きはすませてきた。戦車道連盟の許可も取り付けてある」
 「お姉ちゃん! ありがとう……!」
 とんでもない裏技により、大洗女子の戦力は、一挙1.5倍の戦車12両に。
 「戦車まで持ってくるのは反則だ!」
 「みな、私物なんじゃないですか? 私物は駄目ってルールありましたっけ?」
 「卑怯だぞ!」
 連盟会長は腹芸を見せて文科省役人に手痛い一撃をくらわせ……更にこれで話が終わるわけはなく、各校テーマ曲をメドレー風に繋げ(音楽的にも盛り上げて非常に格好いい)、続々と大洗女子学園の生徒として参戦する、サンダース、プラウダ、聖グロリアーナの戦車道メンバー、というド王道の世界大会編風展開。
 「やっぱり試合には、いつものタンクジャケットで挑みますか」
 「じゃあ、なんでわざわざ大洗の制服揃えたんですか?」
 「みんな着てみたかったんだって」
 というのは、戦車道な世界にノーマルな女子高生らしさが挟まれて、なんだか好きな会話。
 そして、暗号通信シーンに省かれていたあの学校も……
 「大洗諸君! ノリと勢いとパスタの国から、ドゥーチェ参戦だ! 恐れ入れぇ!」
 「今度は間に合って良かったスね〜」
 更に、刹那的な協調には疑義を呈していた継続高校も、参戦。
 「なんだかんだ言って、助けてあげるんだね」
 「違う。風と一緒に流れてきたのさ」
 知波単学園6両も加わり、総勢30両。大学チームはこれに異議を唱えず、ここに実質高校選抜vs大学強化チームの戦いが開幕するのであった!
 エキシビションに30分、再び大洗女子が苦境に陥るインターバルで30分、最大の敵を前にかつてのライバル達が結集するという待ってましたの展開がちょうど折り返しの1時間地点、という構成も綺麗で、以下、感想も後半に続きます。