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『ガールズ&パンツァー』ブートキャンプ3

◆第8話「プラウダ戦です!」
 「準決勝は、残念でしたね」
 「去年カチューシャ達が勝った所に負けるなんて」
 冒頭、氷の海を行く学園艦で紅茶をご馳走になっているダージリン、台詞で既に敗北しており……て、えええっ?!
 〔大洗女子の決勝進出決定 → 「決勝戦で会いましょう」と言い残して去る → 準決勝当日、みほ達が聖グロから贈られた紅茶の瓶が真っ二つに割れる → 十字砲火を浴びる聖グロ戦車 → (……みほさん、どうか気をつけて……今の黒森峰は、あなたが居た頃の黒森峰とは、全く違う…………ぐふっ) → どかーん!!
までやってくれると信じていたのに!(おぃ)
 ソ連もといプラウダ高校の、身長も態度も子供っぽい隊長・地吹雪のカチューシャと、容姿も言動も大人っぽい副隊長・ブリザードのノンナがダージリンと絡んで紹介され、大洗女子があんこうチーム5人を中心にしつつも総勢20名あまりで描かれていく事でどうしても少なくなっていく、コンビ的なテンポのいいやり取りをライバル校サイドで補充。
 小気味いい掛け合いの巧さは通して今作の魅力の一つで、キャラデザとキャスティングのやりくり含め1クールでどう表現するか、というのはあったのでしょうが、敵サイドを2−3人を中心に描写するという手法は上手くはまりましたし、またそれを武器にしたのはお見事。
 大洗では麻子と因縁のあるおかっぱ風紀委員チームが誕生し、練習後、大事な話があると言われて残業したら上司の鍋パーティーでグダグダと昔の話を聞かされたみほは、
 「いや、思い出話はいいですから」
 と割と率直にツッコむ成長ぶりを見せ、大洗女子の戦力も順調に増強中です!
 ……まあ結局は流されてしまい、一人とぼとぼ帰路に着くその背中には、中間管理職のわびしさも漂います。
 「言えなかったじゃないですか」
 「これでいいんだよ。転校してきたばかりで、重荷背負わせるのもなんだし」
 「ですが……」
 「西住ちゃんには事実を知って萎縮するより、伸び伸び試合してほしいからさ」
 強引にみほを勧誘した会長、事あるごとに「負けたら終わり」と切羽詰まった余裕の無さを見せる広報、という生徒会のメンバーの思惑に再び焦点が当たる一方、西住家ではみほが大洗女子で戦車道を続けている事を知った家元が、まほの前でお怒り。
 「撃てば必中、守りは堅く、進む姿は乱れ無し。鉄の掟、鋼の心、それが西住流」
 背後の額に「猪突猛進」と飾ってあって、西住流に対して若干の不安が首をもたげます。
 「私は、お母様と一緒で、西住流そのものです。でも、みほは……」
 「もういいわ。準決勝は私も見に行く。あの子に勘当を言い渡す為にね」
 そして始まる準決勝……
 「いい! あいつらにやられた車輌は、全員シベリア送り25ルーブルよ!」
 「日の当たらない教室で、25日間の補習って事ですね」
 「行くわよ! 敢えてフラッグ車だけ残して、後はみんな殲滅してやる。力の違いを見せつけてやるんだから!」
 「「「ウラーーー!」」」」
 から、ロシア民謡を口ずさみながらの戦車部隊大行進が描かれ、ロシア、怖い。
 対する大洗女子では、事前に慎重な戦術を準備していたみほだが、連勝に勢いづくチームメイトは勝ち気に逸り、前掛かり。その勢いに流される形で積極的な攻勢策を採るも、まんまとプラウダの包囲を受け、古い教会堂の中に追い詰められてしまう。
 追い詰められた大洗にはプラウダ側から降伏勧告と3時間の猶予が与えられ、怪我人が出る事を恐れるみほは降伏を呑む事もやむなしと傾くが……
 「駄目だ! 絶対に負けるわけにはいかん。徹底抗戦だ!」
 悲痛に叫ぶ生徒会広報。
 「戦車道は戦争じゃありません。勝ち負けより大事なものがある筈です」
 「勝つ以外の何が大事なんだ!」
 「私……この学校へ来て、みんなと出会って、初めて戦車道の楽しさを知りました。この学校も、戦車道も大好きになりました。だからその気持ちを大事にしたまま、この大会を終わりたいんです」
 「なにを言っている……負けたら我が校はなくなるんだぞ!」
 「え……学校が、なくなる……?」
 「河嶋の言う通りだ。この全国大会で優勝しなければ、我が校は廃校になる」
 絶体絶命の窮地に、生徒会の抱えていた秘密が明かされて、つづく。

◆第9話「絶体絶命です!」
 文部科学省で進められる、学園艦の全体数を見直し統廃合を進める計画……大洗女子学園はその対象となっており、会長が廃校を回避する為に一か八かとして持ち出したのが、戦車道復活による全国大会制覇であった。
 「無謀だったかもしれないけどさ……あと1年泣いて学校生活を送るより、希望を持ちたかったんだよ」
 思惑ありげな策士ポジションだった会長の真意が明かされ、なにかと感情的になる広報を含めて、生徒会チームをフォロー。その言葉を聞いたみほは、会長が危惧していたプレッシャーに押し潰される事なく、指揮官として最後まで戦い抜く事を宣言。
 「まだ試合は終わってません。まだ負けたわけじゃありませんから」
 「西住ちゃん?」
 「頑張るしかないです。だって、来年もこの学校で戦車道をやりたいから。みんなと」
 第7話において、“道のりの意味”を知った事で新たに構築されたアイデンティティ喪失の危機に直面したみほが、逃げるのではなく前進する事を選ぶと同時に、戦う意味を“勝つ為”から“守る為”にスライド。廃部の危機、という部活ものの一つの定番に、バトルものの文法を取り込んでひとまずの方針を定めるのですが、“勝利か、楽しさか?”という部活(スポーツ)ものにおける普遍的命題については、この後クライマックスバトルの第11話で、もう一段階、掘り下げる事になります。
 「どうしてプラウダは攻撃しないんでしょう?」
 「プラウダの隊長は楽しんでいるの、この状況を。彼女は搾取するのが大好きなの。プライドをね」
 そのカチューシャは、お腹いっぱいになって眠くなっていた。
 「降伏の時間に猶予を与えたのは、お腹がすいて眠かったからですね」
 「違うわ! カチューシャの心が広いからよ! シベリア平原のようにね」
 「広くても寒そうです」
 母娘漫才からノンナが子守歌まで歌い出す中、大洗は戦車の修理と並行して、偵察部隊を派遣。既に実績のある優花里とコンビを組む歴女の人は、戦術理解度が高い上に偵察までこなせて、スペック高い。麻子と風紀委員も視力2.0を活かしてコンビを組み、思えば第3話でひらりと戦車に飛び乗っていましたが、麻子も忍道履修していたのか(全て忍道と仙道で解決していくメソッド)。
 偵察に成功して敵の包囲陣形は把握するも、圧倒的優位な状況に浮かれ騒ぐプラウダに対し、ろくな食料も持たず暖も取れない大洗女子は、先ほどの決意も鈍り戦意が低下。なんとか皆を元気づけようとしたみほは、悩んだ末にフルスロットルかつやたら力の入った作画であんこう踊りを開始。
 戦車道は、人の心の中の変なスイッチを入れるなぁ。
 降伏時間まであと約1時間、の頃に寒さから士気の低下が深刻になってみほが踊り始め、タイムリミットを告げに来たプラウダ側の伝令が全員で踊り狂う大洗女子に姿におののいている事から、少なく見積もって30分以上は踊り続けていたものと思われ、総員ランナーズハイ状態の大洗女子は、降伏を拒否すると敵包囲網を正面突破。
 「私らをここまで連れてきてくれて、ありがとね」
 今まで干し芋を食べているだけだった会長が砲手を担当し、副会長の操縦技術と広報の弾丸装填が絶妙なトライアングルを形成し、先頭に立って獅子奮迅の活躍を見せた生徒会チームは、プラウダの包囲網を食い破ると3両を撃破してリタイア。
 戦車道とは…………犠牲の心ではないッ!
 戦車道とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!
 後に続いた本隊は、あんこうチームと歴女チームが敵フラッグ車狙いによる一発逆転に全てを賭け、残り車輌が必死の逃走。ノンナの砲撃がフラッグ車を守る戦車を次々と沈めていく中、ひたすら逃げるバレー部に迫り来る長距離砲、そして敵フラッグ車には歴女チームの一撃が炸裂する! でつづく。

◆第10話「クラスメイトです!」
 両軍のフラッグ車に砲弾が突き刺さった末に勝利の女神紙一重で大洗女子に微笑み、ラストの「どっちが早いか?」というシチュエーションは第6話とほぼ同じになってしまいましたが、第6話があんこうチームそれぞれの活躍を描いたのに対し、今回は大洗女子チームそれぞれの奮闘を描くという形になっており……意図的な重ね、と見た上でもまあ、もう少し捻りの欲しかった部分。
 試合後にはカチューシャとも握手をかわし、いよいよ辿り着いた決勝戦へ向け、準備を進める大洗女子。以前に見つけた戦車がレストア完了、更に粗大ゴミとして駐車場に放置されていた戦車1両、それに乗り込む自動車部と猫耳チームが誕生し、戦力も駆け込みで増強。
 麻子祖母は無事に退院し、華は新境地を開いた展示品で母親から“五十鈴華の生け花”を認められ、みほのテーマを補強する為に張り巡らせた家族の物語をそれぞれ回収すると、決勝前夜は各チームごとに描かれ、場所が別々でも思いは一つを皆揃ってカツ祭で示したのはいい味。
 そして決勝の舞台は……色々な聖地、富士山麓
 激闘を繰り広げてきたライバル校のキャプテン達が激励に訪れ、ダージリンはライバル代表みたいな態度で台詞も多いのですが、結局、聖グロとは実質Aパートしか戦っていません!
 インターネットの印象では人気キャラだと受け止めていたので、てっきり決勝戦前に練習試合の相手として再び対決! みたいなイベントがあるのかと思っていたのですが、全くそんな事はありませんでした。
 そしてここでスキップされたアンツィオ高校がしれっと出てきたらそれはそれで凄いと思ったのですが、キャスティングの都合もあってか出てこず(笑)
 きっと朝一番に、ガレージに、大量の茹でたてパスタが届きました!
 試合前の顔合わせにおいて、かつて仙道パワーで救い出した元チームメイトにお礼を言われ、みほが抱えていた自身の選択への苦いわだかまりも解きほぐされたところで、決勝戦がスタート。
 「グデーリアンは言った。熱い皮膚より早い足と」
 ドイツが出てきていないけど黒森峰がドイツという事で良いのかしらと思っていたら、引用されたグデーリアンドイツ第三帝国の軍人(電撃作戦の生みの親)なので、ドイツという事で良い模様。あと、校章がドイツ国防軍モチーフの模様。
 長期戦に持ち込もうとするみほだが、予想を上回る黒森峰の速攻により戦端が開き、実際の戦車の操縦に苦しむ猫耳チームが、フラッグ車へのラッキーガードを発動するもあっさりリタイアしたところで、つづく。
 OPには最初から描かれているのに決勝戦直前での参戦となった猫耳チームは特に何もしないままリタイアとなりましたが、あまり活躍させるとこれまでの戦いを積み重ねてきた他のチームとのバランスが悪いですし、黒森峰の脅威を描く踏み台になりつつラッキー発動、というのは丁度良いバランスではありましょうか。

◆第11話「激戦です!」」
 カチューシャは 観戦の時も 肩車
 ノンナはきっとロシア仙道を修得しているので、試合中ずっと直立で肩車でも大丈夫です。カチューシャもカチューシャでロシア仙道により、体重を羽毛より軽くしているのかもしれません。
 開幕の一撃で猫耳チームを失うも即座に転進した大洗女子は、みほの号令一下、煙幕を発動。
 「煙? 忍者じゃあるまいし、こざかしい真似を」
 即座にこの反応で「忍者」という単語が出てくるエリカはきっと、忍道を履修済み。
 大洗女子の攪乱作戦を警戒したまほは砲撃を中止させ、「弾には限りがある」と弾薬数へ言及。弾薬云々はサンダース戦の作戦会議で触れられて以来ですが、こういった要素はもっと活用してくれても良かったかなとは思う部分。まあ架空スポーツでその方向へ進むと、物語的に後付けルールの裏かき合戦に陥ってしまう危険はあるので、戦車のディテールを細かく描きつつ、作戦面ではあまり突き詰めすぎない、という描き方にしたのかもですが。
 その点で今回は、黒森峰の正攻法に対して、矢継ぎ早に奇策を繰り出し翻弄するみほ(とそれを実行してみせる大洗女子)という激突が徹底して描かれ、これまでの10話を準備運動にして、戦車戦において少々物足りなかった部分を出し惜しみなく大放出、といった展開。
 煙幕が晴れると、足の遅い戦車にロープをかけて複数台の戦車で引っ張り上げる事で予想外の速度で登坂していた、というのは、意表をついた作戦+チーム一丸の姿勢+後半への布石、の3つが合わさっていて秀逸。
 高所に陣地を構築した大洗女子は、別行動を取って隠れていた生徒会チームが黒森峰2両を足止め。あくまで押し潰しにかかる黒森峰が重戦車を前に押し立ててきたのに対しては、後方から敵陣に切り込んだ生徒会チームが引っかき回し、浮き足だったところを側面砲撃、と重と軽、強者と弱者の対比を折り込みながらスピーディに進行。
 敵陣に混乱が見えたところで一気に下山した大洗女子は、黒森峰の重戦車を引きはがす事に成功して市街地を目指すが、渡河中に1年生チームの戦車にトラブルが発生してしまう。川の中程でエンストにより立ち往生してしまい、横転の危機もある戦車を残して先行するか、時間をロスしても助けるか……。
 「行ってあげなよ。こっちは私たちが見るから」
 かつての出来事が脳裏に甦るみほの背中を沙織が押し、自身にロープをくくりつけたみほは、横に並んだ戦車の上を華麗に八艘飛び。勇壮な音楽とともに、みほの脱皮と飛翔が現実のジャンプに重ねて描かれたのは美しいシーンでした。
 「前進するより、仲間を助ける事を選ぶとはな」
 「みほさんはやっぱり、みほさんね」
 「だからみんな、西住殿について行けるんです。そして私たちは、ここまで来れたんです!」
 「そうだね」
 「……わたくし、この試合、絶対に勝ちたいです」
 「え?」
 「みほさんの戦車道が、間違っていない事を証明する為にも、絶対に勝ちたいです!」
 「無論、負けるつもりはない」
 第7話において“結果だけが全てなのではなく、そこに至る道のりにも意味がある”事を示した上で、その気付きによって再構築されたみほの新たなアイデンティティに基づき第9話で“守る為の戦い”にスライドした今作ですが、この最終局面で、“優しさの為に負けてもいい”のではなく、“優しさの意味を証明する為にこそ勝たねばならんのだ”という、今作における“勝つ為の理由”に辿り着くという展開は非常に好みで良かったです。
 個人的に、「勝ち負け」か「楽しさ」かという命題において、“勝つ(何かを達成する)為に一生懸命やるからこそ生まれる楽しさもある”という角度の存在を全否定してほしくないというのがあるのですが(一生懸命やらない事で生じる楽しさ、というのもまた否定しない上で)、
 “勝利より価値あるものの為に負けてもいい”のではなく“勝利より価値あるものの為に勝ちたい”という一つの解答は、素晴らしかったです。
 (この解答は矛盾をはらんでいるようですが、実はそもそも、「勝ち負け」か「楽しさ」かという命題自体が上述した矛盾をはらんでいるので、その矛盾を包括しているといえます)
 1年生チームを助ける事で逃げずに自分の道を貫き、一つの壁を完全に乗り越えるみほ。ここで、勝利をこそ目指す西住流を悪として否定するのではなく、みほが手に入れたのは自ら気付きとしての自分の選んだ道から逃げない事の大切さ――それこそが戦車道が教えてくれる事である――としているのが行き届いた気配り。
 「相変わらず甘いわね。その甘さが命取りなのよ」
 皆で引っ張った1年生チームが無事に隊列に復帰し、黒森峰の追撃をなんとか振り切った大洗女子は、自動車部が故意に石橋を崩落させて更なる時間稼ぎに成功。ガソリンや弾薬を消耗させた相手を市街戦に誘い込もうとする大洗女子だったが、そこに(足が遅いから?)市街地に配置されていた黒森峰の切り札、連邦の白い奴もとい超重戦車マウスが登場。
  ガンダリウム合金厚さ200mmの前面装甲板に大洗戦車の ザクマシンガン 豆鉄砲は全く通用せず、 戦艦の主砲並みのビームライフル 55口径 12.8cm KwK44戦車砲の前に、あっという間に風紀委員と歴女チームがリタイアしてしまう……!
 これは今作を揶揄する意図ではなく、先に見た劇場版において、『ガンダム』だと思うと戦闘シーンがわかりやすいな……と感じたのですが、(富野監督や高橋監督らによる)ミリタリー要素のロボットアニメへの取り込みがあって、そこで積み重ね洗練されていった文法の延長線上に、ミリタリーへ先祖返りしたともいえる今作があるというのが面白いな、と思った点。
 前方にはマウス、後方には迫り来る黒森峰主力部隊、果たして大洗女子学園は生き残る事ができるか? でつづく。

◆第12話「あとには退けない戦いです!」
 「さすがマウス。大洗女子は正念場ですね」
 「正念場を乗りきるのは、勇猛さじゃないわ。冷静な計算の上に立った、捨て身の精神よ」
 ダージリンが今回もそれっぽい事を言う中、猛威を振るうマウスから逃げ回る大洗女子。
 「いくらなんでも大きすぎ……こんなんじゃ戦車が乗っかりそうな戦車だよ!」
 お手製の戦車ノートを見ながらの沙織の発言にみほはマウス撃破の奇策を閃き、突撃した生徒会チームがマウスの下に滑り込んで車体を持ち上げると、横から挑発して砲塔が回転して生まれたスペースに、バレー部の戦車がまさかの乗り上げ。
 サンダース戦のアリサの台詞が示唆したように、“蟻が巨象を倒す”というのが大洗女子の基本的なコンセプトなのでしょうが、前話に引き続いて重戦車と軽戦車の対比が盛り込まれます。
 「おい軽戦車! そこをどけ!」
 「やです。それに八九式は軽戦車じゃないし」
 「中戦車だし」
 ……だそうです。
 車体の下に潜り込んで足を止め、更には砲撃の自由を奪ったマウスに対し、横に回り込んだあんこうチームが斜面からの角度をつけた砲撃を後部スリットに直撃させる事で、この強敵を撃破。
 昔の偉い人は言いました。
 「覚えておきたまえ。戦車を相手にする時は、縦だ」
 しかしこの消耗により、生徒会チームがリタイア。マウスの重みに耐えかね、特殊カーボンの防護もマウスは想定外?! と危機が煽られるのですが、改めて色々と、不安になります戦車道(^^; みほの性質を強調する為に、今回は特に、戦車がリタイアする度に怪我の有無を確認してほっと一息、というシーンが繰り返されるのですが、以前はリタイアした車内で火災が発生している描写もありましたし、この競技を熱狂的に見ている観客の倫理観とは……。
 そもそも学園艦って、もしかして流刑(それ以上、いけない)。
 今作、基本的に“こういう世界観だから!”という作品なので戦車道の闇はあまり気にしない事にして、いよいよ到着した黒森峰の主力と衝突する事になる大洗女子。
 「こちらは4両です。相手はまだ14両。ですが、フラッグ車はどちらも1両です」
 みほは相手戦力を分断した上で敵フラッグ車と一対一の戦いに持ち込む事を狙う。
 「それではこれより最後の作戦、ふらふら作戦を開始します!」
 各員それぞれ奮闘し、1年生チームは重戦車を相手に金星2つ。バレー部が基本逃走しているのはプラウダ戦も踏まえているのでしょうが、乗っている戦車の機動性が高いとかもあるのでしょうか(ミリタリー知識は皆無なので、この感想でもそれらしい事が書いてある場合は基本Wikipediaより、です)。
 自動車部の戦車は巨体を活かして廃校舎の入り口を塞ぐ事で、フラッグ車同士の一対一の状況を作り上げると同時に、他の戦車を足止め。自動車部は猫耳チームと比べると凄い活躍ですが、名前だけは序盤から出ていたゆえか。
 「西住流に逃げるという道はない。こうなったらここで決着を付けるしかないな」
 「……受けて立ちます」
 姉と妹、大洗女子と黒森峰のフラッグ車は睨み合い、最終決戦の場が廃校舎というのは暗示的。……ところで市街戦の舞台がやたらめったら荒廃しているのですが、戦車道大会決勝戦の為に建設されたジオラマ的な試合会場、という事で良いのでしょうか。凄く、ポストアポカリプスでドキドキします。
 両フラッグ車同士の高速タンクバトルの間に、生き残っていたバレー部と自動車部が次々とリタイアし、名実ともに最後の決戦――
 「この一撃は、みんなの想いを込めた一撃――」
 「前進!!」
 初撃を囮にしたあんこうチームは全速で距離を詰めながら敵戦車の右側へと回り込む。
 「グロリアーナの時は失敗したけど、今度は必ず……!」
 練習試合で紙一重の差でダージリンに読まれた戦法が最後の大技になる、というのも部活スポーツもののエッセンスを使い切り、ついでにダージリンさんの株価をこっそり底上げ。そしてみほの戦術のみならず、磨き抜いた優花里の装填速度、麻子の運転技術、華の砲撃、とそれぞれの成長が描いた戦法を具現化するという形でチーム物としても美しいクライマックス(沙織は、マウス攻略のヒントをもたらしたので……)。
 強引な軌道で履帯を切りながらも相手の側面に回り込んだあんこうチームは、文字通りの最後の一撃を零距離で放ち、黒森峰のフラッグ車を撃破……ここに、大洗女子学園は戦車道全国大会優勝を果たすのであった!
 「優勝おめでとう。完敗だな」
 皆で勝利を喜ぶ中、去りゆく姉に声をかけたみほは、微笑を浮かべた姉と握手。
 「みほらしい戦いだったな。西住流とはまるで違うが」
 「そうかな……」
 「そうだよ」
 お姉ちゃんは、妹の事を憎んでいるわけでも嫌いなわけでもなく感情表現が不器用なタイプというのを示された上で、最終決戦ではいかにもなやられ役になってしまいましたが、その辺り、TV版で描ききれなかった諸々をサービス満点で詰め込んだのが、後の劇場版の位置づけの一つでもあるのでしょうか。
 「お姉ちゃん! やっと見つけたよ……私の戦車道!」
 「うん」
 西住流とは違っても、逃げずに自分の歩く道を見出した妹を祝福するまほ。
 「次は、負けないわよ」
 エリカさんもなんか綺麗になってしまい、戦車道は最後まで、人の心の中の変なスイッチを入れます。
 大会優勝旗が大洗女子学園に手渡され、そして西住母も会場を離れた位置からながら、新たな道を歩き出した娘に拍手を送るのであった……。
 そして面々は大洗に凱旋し、
 「隊長、なんか言え」
 「はえ? あの…………ええと……えぇ……んー……パンツァー・フォー!!」
 「「「「「おー!!」」」」」
 ちょっと抜けた感じに戻ったみほの号令一下、地元の拍手に包まれながら学園艦へ帰る戦車道一行でエンディング。
 観衆の中にあんこうチームメンバーの関係者がそれぞれ描かれるのですが、結局沙織の家族は出てこず(第3話で「お父さん」に言及はあり)、商店街のアイドル(笑) こういう場合、実は沙織が一番重い事情を抱えている、というのがお約束ですが、天涯孤独の身の上で“商店街のみんな”が「お父さん」とかだったらどうしよう……。
 最後にちょっぴり戦車道の闇が覗きつつ、感動の凱旋…………でこの後、気が変わったので夏休み終わったら廃校です! って、酷すぎるな文科省……!(笑)
 というわけで、劇場版(地上波放映)から遡っての、『ガールズ&パンツァー』TV版一気視聴でした。
 普段、なるべくまっさらな状態で作品に触れるのが好きなので、かなりの情報量を得た上での視聴そのものが珍しかったのですが、今作に関していえば、戦車も女の子だらけも興味ない身としては情報無しでは見なかったと断言できるので、その辺りも含めて面白い体験でした。
 基本、家に縛られ、足下だけを見て歩いてきたみほが、環境を変え友人を得る事で、自分がこれまで歩いてきた背後の道のりや今歩いている道の左右を見渡す事ができるようになり、それによって広がった世界で新たな道を見つけて前進していく、という物語構造なので、人と人の繋がりが気持ちのいい所で閉じてしまうのではなく、更に先へ広がり続けていく、という描き方が好みに合ったのは良かったです。
 あと、富野演出大好き人間としては、アニメを見ていて「この1.5倍のスピードと情報量を詰めてくれていい」という感想を抱きがちなのですが、今作のある種ダイジェスト的な造りは、穴もありつつ、テキパキ進んでくれて非常に見やすかったです(笑)
 部活スポーツ物の普遍的命題に対する今作なりの解答も見せてくれて、特に好きなのは、第7話と第11話。
 そう間を置かない内に、OVAと劇場版(ノーカットで)も見たい予定。