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『ガールズ&パンツァー』ブートキャンプ2

◆第5話「強豪・シャーマン軍団です!」
 「この音を聞くと、もはやちょっと快感な自分が怖い」
 戦車道は、人の心の中の変なスイッチを入れるなぁ。
 世界観の補強として面白い設定の戦車喫茶でお茶しながら、砲撃の音に酔い痴れていたみほ達は、大会9連覇の経歴を持つ黒森峰女学院を率いるみほの姉まほ、その厭味な副官エリカと接近遭遇。
 「副隊長? ……ああ、元、でしたね」
 戦車道エリート校の高圧的な物言いに沙織達は反発、同時にみほへさりげなく気を遣う姿が繰り返し細かく描かれ、ボスキャラとの因縁を友人ズに拡大する形で構築。
 にしても、みほとの対比も意識したのでしょうが、お姉さん、声も喋りも、女子高生とは思えない渋さ。
 とにもかくにもまずは一回戦……戦車の保有台数全国一のリッチ高校サンダースに勝つ為の作戦を思案するみほの為に、優花里はサンダースへの潜入捜査を敢行する。そんな事は知らないみほ達は、学校を休んだ優花里を心配して秋山家を訪れ、前回の五十鈴家の事情に続いて秋山家の両親が登場。
 こちらは偏った戦車趣味の娘に初めて出来た、家まで遊びに来てくれる友達に感涙、という形で、様々な家族の形、様々な戦車(道)への捉え方を描いて、着実に外周の石垣を積み上げていきます。
 優花里(一年時にはきっと「忍道」を履修)のサンダース潜入作戦の顛末、大洗女子の練習風景を挟み、いよいよ一回戦開始。
 スパイ行為を気にも留めず、大らかでフレンドリーなサンダース隊長のケイだが、一方でちょっぴり神経質そうなサンダース副官アリサは、ルールの隙間を突いて独断で通信傍受装置を使用。先手先手を打たれて苦境に追い込まれる大洗女子だが、敵のあまりの読みの鋭さに通信傍受に気付いたみほが一計を案じ、無線をブラフに用いる事で逆にサンダースを罠にはめる事に成功する……で、つづく。

◆第6話「一回戦、白熱してます!」
 大洗女子は無線による指示をサンダースへの意図的な誘導に用い、みほの本当の作戦指令を沙織が携帯電話で手早く各車に連絡……第3話の、「メール打つの早いし」がまさかの伏線だったとは。
 敵の主力を引きはがした上でフラッグ車を捜索する大洗女子は、偵察に出ていたバレー部がばったり遭遇。敵フラッグ車の攻撃を受けて逃走しながら、背後に向けて発煙筒をスパイク、はそれでいいのか感が面白かったです。
 バレー部←敵シャーマン、の追いかけっこに大洗主力が加わって、後方から追い詰められる事になったフラッグ車は主力に助けを求め、アリサの通信傍受を知ったサンダースキャプテンは、敢えて大洗と同じ台数に戦車を絞り、フラッグ車の救援へと向かう。
 「このタフなシャーマンが、やられるわけないわ! なにせ、5万両も作られた、大ベストセラーよ! 丈夫で壊れにくいし、おまけに居住性も高い! 馬鹿でも乗れるぐらい操縦が簡単で、馬鹿でも扱えるマニュアル付きよ!!」
 「お言葉ですが自慢になってませーん!」
 「うるさいわよ!!」
 前回、ちょっと嫌な感じのキャラとして描かれたアリサが後編できっちり崩され、追い詰められた焦燥の中でわめき散らすの図は大変面白かったです。
 「なんであんなしょぼくれた戦車に追い回されるわけ?!」
 「なによその戦車、小さすぎてマトにもならないじゃない! 当たればいちころなのに!」
 「どうせすぐ廃校になるくせに! さっさと潰れちゃえばいいのよ!」
 どさくさ紛れに重要な情報を口に出しつつ、遂には戦車のハッチから身を乗り出すアリサ。
 「何か、わめきながら逃げてます……」
 戦車道は、人の心の中の変なスイッチを入れるなぁ。
 「なんでタカシはあの子が好きなの……?! どうして私の気持ちに、気付かないのよぉーー!」
 平野綾というと、アイドル的にバリバリやっていた頃しか知らなかったのですが、こんな引き出しがあったとは。
 いよいよアリサの眼前を現実逃避の走馬灯が駆け巡り始めたその時、ファイアフライ(なんか凄い戦車らしい)を含むサンダース本体が大洗女子の後方に出現。
 「来たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 追いかけっこは、アリサ←大洗女子←サンダース主力、というサンドイッチの構図になり、サンダース凄腕の砲手により、バレー部と1年生チームがリタイア。
 「ほーら見なさい! あんた達なんか蟻よ蟻! あっけなく象に踏み潰されるね!!」
 ほぼ、今回の主役。
 敵の作戦を逆手に取り、一度は優位に立つも逆に背後からの砲撃に士気が落ち込む大洗女子だったが、土壇場でみほが隊長として皆を激励し、戦意を取り戻す。
 「華! 撃って撃って撃ちまくって! 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって! 恋愛だって、そうだもん!」
 「いいえ、一発でいい筈です」
 五十鈴さんはどんな時でも、武部さんの恋愛ネタにクール。
 華の発案により、あんこうチームは死中に活を求める一撃必殺を狙い、丘の上へ。逃げるアリサ車を狙うあんこうチームを狙うファイアフライ、という構図になり、両者同時に放たれた一撃はともに命中。あんこうチーム行動不能も、敵フラッグ車の撃破により大洗女子公式戦初勝利! のクライマックスは、激しい追撃戦から息詰まる両砲手の腕比べへ、動から静への転換もうまくはまって、面白い着地でした。
 前回の優花里のサンダース潜入作戦に始まり、沙織のメール早打ち、みほの戦車道ガッツ、華の一撃必中、麻子は戦闘中は常に活躍、とあんこうチームそれぞれも、きっちりと見せ場。
 「That's 戦車道! これは戦争じゃない。道を外れたら、戦車が泣くでしょ?」
 追撃する戦車の数を合わせた理由として通信傍受を謝罪したケイは大洗女子の勝利を称え、ここで、部下の独断であったとは口にせず責任を自分で引き受けるのが格好いい所。どこまでも朗らかに大洗女子の勝利を祝う一方で、チームメイトの前では一瞬肩を落として息をつき、敗者の悔しさもしっかり描いているのが手堅い。
 色々物凄くざっくばらんすぎな感はありますが、姉御肌のいい女ポジションで、ケイさんは良いキャラでした。少々陰湿なアリサと互いに引き立て合うキャラクター性、という構図もこれまた手堅い。
 大洗へと帰還しようとするみほ達だったが、麻子の祖母が倒れたという連絡が入り、病院への移動手段に困っていたところ、それを耳にしたまほが、ヘリを貸してくれる事に。如何にもボスキャラのまほは無表情で無口だが人間的に悪人というわけではなく、どうも妹の事も内心気遣っているらしいと暗示され、みほに否定的かつ攻撃的なエリカもまほに言われてなんだかんだヘリを操縦してくれて、麻子と沙織がそれに乗り込んで飛び立っていく……でつづく。

◆第7話「次はアンツィオです!」
 五十鈴さん、凄い私服。
 そしてその凄い私服のまま、平然と麻子を背負って移動。
 なお翌日、同様に麻子を背負った武部さんはへろへろになっており、これが華道家元の底力なのか。
 台詞では度々触れられていた、麻子の泣き所である祖母が登場し、言葉はきついが孫の事を思いやっている祖母と、そんな祖母を大好きな麻子の姿が描かれるのですが、「卒業して、早く側にいてあげてみたい」という、その側に居られない原因が「学校が船の上だから」という事に色々と考えさせられます(笑)
 病院からの帰路、海を見つめるみほは実家の事を思い出し、西住流家元である母(CV:冬馬由美なので間違いなく強い)が回想で初登場。
 「貴女も、西住流の名を継ぐ者なのよ。西住流は何があっても前へ進む流派。強き事、勝つ事をたっとぶのが伝統」
 「で、でも、お母さん」
 「犠牲なくして、大きな勝利を得る事はできないのです」
 それぞれの家族の形、それぞれの戦車との関わり方……家を離れ、その世界を徐々に広げながらも、「西住みほ」としてどうあるべきなのかを思い悩むみほ。
 「2回戦、この戦車で勝てるのかな……」
 ある日の昼休み、誰が言い出したわけでもなく自然と戦車の元へ集ったあんこうチームは、5人でランチタイム。1回戦の勝利の話題で盛り上がる中、ぼそっと呟くみほ。
 「勝たないと意味がないんだよね」
 「……そうですか?」
 に対して、疑問を呈する優花里。
 「え?」
 「楽しかったじゃないですか」
 「……あ」
 「サンダース付属との試合も、聖グロリアーナとの試合も、それから練習も、戦車の整備も、練習帰りの寄り道もみーんな」
 勝利とか敗北とかとは関係なしに「試合が楽しかった」、というだけではなく、勝利や敗北どころか、試合以外の事さえも、戦車道に関わって得た体験全てが楽しかった、と置いてきたのが、とてもいい台詞。
 結果だけが全てなのではなく、そこに至った過程にも意味があり、その「道のり」こそが大切なのだ、と示し、「戦車道」という言葉がその象徴として鮮やかに機能。
 「そういえば……私も楽しいって思った。前はずっと、勝たなきゃ……て思ってばっかりだったのに。……だから負けた時に戦車から逃げたくなって」
 結果が出なければその過程の意味は失われてしまう……そう思い込んでいたからこそ逃げ出したみほは、転校のきっかけとなった出来事を思い返す。
 戦車道大会の試合中、崖から転落して川へ滑り落ちた僚機の乗員を救う為、自分の戦車を放棄して川へ飛び込んだみほだが、その為に、みほが乗り込んでいたフラッグ車が撃破され、黒森峰は敗北。大会10連覇を逃す原因となった事、戦車道への息苦しさ、それらを抱え込んだみほは、戦車道の存在しない大洗女子学園を選んで転校してきたのだった……悪い先輩達に目を付けられるまで。
 「私は、西住殿の判断は間違ってなかったと思います」
 戦車マニアとしてこの試合を見ており、以前から事情を知っている風だった優花里は一貫してみほを擁護するのですが、戦車道大会のレギュレーションは不明なもののさすがに試合中に「溺死」はまずかろうという気がするにも関わらず、周辺関係者の反応がみほの行動に否定的な所を見るに、黒森峰では戦車兵の命は羽毛より軽いのか、或いは特殊カーボン的な何かだったり、仙道的な何かにより、乗組員の安全はある程度以上に確保されているという事なのでしょうか。
 まあ、西住さんは西住さんで、水圧をものともせずに沈みゆく戦車の外部ハッチを開いて乗組員を救出した模様なので、つまり、乙女のたしなみ、波紋エネルギーです!
 昔の偉い人は言いました。
 「波紋エネルギーこそ「仙道」パワー!!」
 すなわち、
 「ふるえるぞハート! もえつきるほどヒート!! くろがね色の波紋疾走!!」
 メメタア
 ……まさか、こんな長い仕込みの伏線だったとは、仙道…………。
 (※『ジョジョ』ネタになるとすぐに興奮する駄目な大人の典型例)
 砲弾が滅多に当たらないのも、紅茶が一滴もこぼれないのも、この後ロシアの極寒に耐えるのも、全て、波紋エネルギーです。
 「戦車道の道は、一つじゃないですよね」
 「そうそう、私たちが歩いた道が、戦車道になるんだよ!」
 広がった世界で得た友人達……みほはそのお陰で一つの殻を破り、勢いに乗ると怖いアンツィオ高校との対戦を次に控え、練習に励む大洗女子。
 練習後、みほが次々と質問攻めに遭う姿に優花里たちが助力を申し出、優花里が歴女、華が生徒会、麻子がバレー部、沙織が一年生とそれぞれ絡み、主要キャラ5人の関係で世界を閉じてしまうのではなく、そこから上下左右に人間関係が広がる姿が描かれるというのが、とても良かったです。
 古い書類の整理中、他にも戦車があった形跡が見つかり、再び始まる戦車捜索。これを各チーム+上で絡んだあんこうメンバー分割、で描き、戦車道を通して、みほだけではなく、他のメンバー(特に優花里はみほと近いタイプなので)の世界も広がっていく、という点に尺を割いてくれたのは、作品に対する好感度が非常にアップ。
 「思えば、なんで船なんでしょう?」
 「大きく世界に羽ばたく人材を育てる為と、生徒の自主独立心を養う為に、学園艦が造られた……らしいよ」
 「無策な教育政策の反動なんですかね?」
 世界設定の補強を交えつつ、部活棟で物干し竿になっていた砲塔と沼に沈んでいた戦車1両が見つかるが、沙織と1年生チームが船内下層で遭難してしまい、改めて捜索に向かったあんこうチームがこれを無事発見。
 「武部殿……モテモテです」
 「ホントね」
 「希望していたモテ方と違うようだが」
 戦車道をやると、ダイエットに効く! 血行促進にもなる! そしてモテる!! (※個人の感想です)
 遭難地点ではもう1両の戦車が発見され、即時の戦力増強はならずも、この先へ向けた希望の光を見出す大洗女子。一回戦突破の勢いも手伝ってそれぞれの戦意も向上し、一体感の増した大洗女子は二回戦突破へ向けて拳を振り上げる。
 「み、みなさん! 次も、頑張りましょう!!」
 「「「おー!!」」」
 そして、アンツィオ戦は5秒で終わるのであった。
 話数的には折り返し地点、物語の、と同時にキャラクターにとっての大きなターニングポイントが描かれ、良い回でした。ここまでで一番好きなエピソード。これを描く為なら、アンツィオは5秒で負けて仕方がない(笑)
 次回――赤い奴らがやってくる!!