今年も主に、■〔東映特撮YouTubeOfficial〕に踊らされた日々でありました。
年末恒例、今年も各部門に分けてランキング形式で振り返ってみたいと思います。対象エピソードは、昨日の更新分まで。対象作品は、“それなりの話数を見た上で、今年、最終回を見た作品&劇場版&現在見ている作品”という事で、以下の通り。
〔『動物戦隊ジュウオウジャー』『激走戦隊カーレンジャー』『仮面ライダーファイズ』『超人バロム・1』『コンドールマン』『ビーファイターカブト』『ウルトラマンオーブ』『ウルトラマンジード』『行って帰ってきた烈車戦隊トッキュウジャー』『仮面ライダービルド』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』〕
性質上、上記作品のラストにまで触れている場合がありますので、ご了承下さい。
昨年のランキングはこちら→■〔2016年を振り返る:特撮編〕
さて今年はまず、2014年以来となる復活を遂げたこの部門から。
☆最低な大人部門☆
1位 コプー (『超人バロム・1』)
2位 花形 (『仮面ライダーファイズ』)
3位 小山内博士 (『ビーファイターカブト』)
次点 石動惣一/ブラッドスターク(『仮面ライダービルド』)
第1位は、自ら宇宙の正義を名乗り、小学生を宇宙的悪の化身と戦う正義のエージェントに強制指名・呪いをかける・詳細を語らぬまま第1話にして爆死・友情をドライに数値化・しれっと生き返る・しれっととんでもないことをする、とパーフェクトすぎるコンボを決めてくれた、東映暗黒メンター成分の塊、コプー。1972年にして、何もかもハイレベルでした。
「おまえ達は、正義の為に戦うのだ。私の命も尽きた。だが二人とも、お前達が、バロム・1である事を、誰にも喋るな。喋れば、 ただちに、災いが……」
第2位には、適当にマジックアイテムを送りつけてくる・思わせぶりな事ばかり言ってまともな会話が成立しない・言行はともなわないが一方的に愛情をアピール・自己本位な視点が激しく節穴・勝手に満足して退場、とクズ父道の王道を突き進んだスマートブレインの花形社長。若干、最終盤に作品の負債を全て押しつけられた感はありますが、中康次という絶妙に胡散臭すぎるキャスティングも効いて、もはや芸術品の風格。
「戦え。――戦え。そして勝ち続ければ、きっとその答がわかる」
第3位には、《メタルヒーロー》シリーズでいうと『機動刑事ジバン』の柳田ばりに素で引くレベルの人間味の薄さに加え、実働部隊の上官としては驚くべき無能さを誇る小山内博士。生死を賭けた戦いに巻き込んだ高校生戦士の私生活には他人事を決め込み、一応博士ポジションであるにも関わらず劇中通して強化展開には一切関わらず、戦闘面で基地から多少のサポートを見せるも焼け石に水、とにかく前半に次回予告を任せたのと、ナレーションをさせてしまったのが、大失敗であったと思います。ネタ的な要素を抜きにしても、年間通してあまりにもキャラ造形が酷すぎました(^^;
「若者よ、泣くがいい。だが、希望を捨てるな。希望がある限り……」
次点として、従来作なら終盤に行われそうな悪辣な種明かしの数々を物語の三分の一時点で自ら次々と撒き散らし、翻弄される周囲を嘲笑うトリックスター、ブラッドスタークこと石動惣一。基本的に悪役のポジションなので、無自覚な外道さの方が評価されるこの部門では次点に留まりましたが、口を開く度に「さいてーーー」と思わせる言動の数々は極めてレベルが高く、来年もその活躍に期待したいです。
「全部が全部嘘ってわけじゃない。たまに感動してうるっとしたし? 騙して悪いなーとも思ったよ」
この他、番外としては映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のエゴがクズ父道の王道を大作映画の豪華な予算を使ってふんだんに見せつけてくれて素晴らしく(なお吹き替えを務めたのは、ブラッドスターク役の金尾哲夫さん)、今年は、暗黒メンター・クズ父・無能博士、と各カテゴリから満遍なくレベル高く出そろった当たり年でした。
☆助演部門☆
1位 シャドー星人ゼナ (『ウルトラマンジード』)
2位 影山冴子 (『仮面ライダーファイズ』)
3位 渋川一徹 (『ウルトラマンオーブ』)
次点 琢磨逸郎(『仮面ライダーファイズ』)
第1位は、宇宙Gメンの鉄仮面先輩こと、シャドー星人ゼナ。とにかく、人間の偽装をしているだけなので顔の表情筋が動かないがやたら格好いい声で喋り、スーツアクターさん顔出しにより随所で切れ味のいいアクションを見せる、というキャラ造形がお見事。初期は劇中でのポジションがふわふわしていましたが、協力者ポジションが確立してからは素直に活躍を楽しむ事ができ、特に第14話の格闘戦を始める前にネクタイをゆるめる姿は最高でした。年長者キャラとしても、かつて少年兵育成キャンプの教官であった過去を引きずりながらも、新たな生き方を模索して後輩を導いていく、という立ち位置が良く、今年トップクラスに思い入れの強いキャラクターです。
「詰めが甘いな。最後まで油断するなと教えた筈だぞ」
第2位は、ラッキークローバーの紅一点、魔性のバーテンダー・影山冴子。冴子さんはもう、打たれても打たれても決して折れない主人公的オリハルコンメンタルに尽きます(笑) 当初は悪のセクシー系女幹部ポジションとしては微妙な印象だったのですが、その一点突破で激しく面白いキャラに成長してしまったのは、お見事。なんとなく生き残っていたキャラが、よくわからない化け方をして面白くなってしまう、というのは実に井上脚本です。悪役部門でもエントリしていたのですが今回は上位の壁が厚すぎて選外になった事もあり、こちらで。
「馬鹿ね。女は打たれて強くなるものなのよ」
今年は、大和父、マリオおじさん、VRVマスター、シグナルマン、など父親(役)ポジションで良いキャラが(同じぐらい悪いキャラが)多かったのですが、その激戦をくぐりぬけて3位に入ったのは、特A級エイリアンハンター・渋川一徹。リアルタイム放映は去年の作品ですが、私が『オーブ』後半戦を見たのが今年に入ってからであり、第18話「ハードボイルド・リバー」が『オーブ』の中でもトップクラスに好きなエピソードというのを加味して、今年の良い意味で印象の強かったオヤジキャラ代表という事で。姪っ子の働く民間組織では抜けた所のある困ったおじさん扱いされながら、その実、端々に権限の高さを窺わせ、敵性宇宙人を見抜く確かな眼力を持ち、仕事には極めて熱心、という造形が、ラストで過たずまとめられ、その生き様、実にハードボイルド。
「あばよ」
次点として、ラッキークローバーの濡れ落ち葉、琢磨逸郎。初期は恐るべき強敵にしてキザなインテリ風に登場しながら、キャスティングの時点で狙い澄ましたかのように鮮やかな転落を見せてコメディリリーフに落ち着きましたが、物語の都合丸出しの展開で北崎デルタの邪魔をしながらも、琢磨逸郎でしかありえない、という圧倒的キャラクター強度のを見せつけて展開に説得力を持たせてくれたのはお見事。その特殊スキル《戦闘をスキップする事によって生き残る》により、一寸先は闇すぎる『ファイズ』ワールドで最後まで生き残ってみせたのもポイント高く、全盛期の井上節が冴え渡るサブキャラクターでした。
「ざまぁみなさい。……ふっ、ふふふふ、ははははは」
☆メカ部門☆
1位 オートバジン (『仮面ライダーファイズ』)
2位 ダイボウケン (『轟轟戦隊ボウケンジャー』)
3位 ボップ (『超人バロム・1』)
次点 カイザギア(『仮面ライダーファイズ』)
今年はかなり激戦区だったこの部門ですが、1位に輝いたのは、やたら強い、やたら機敏、そして最終回のあの名シーン、とことごとく私のツボを突いたオートバジン! 正直、劇中での使い方は出る出ないが話の都合による事が多すぎて誉められたものではないのですが、その短所を補って余りある強さそして格好良さでした! 最後の最後でオートバジンが、花形父さんに欠落していた父性を見せつける、という仕掛けには脱帽。散りざまも含めて素晴らしいロボキャラでした(私脳内の話でしかないのですが、実はゼナ先輩と票を食い合いそうだったので、助演部門からこちらにエントリ移動しました)。
第2位は、天下無敵の土木ロボ、ダイボウケン。単純にロボットしてのフォルムの格好良さ、一度見たら忘れられないキチガイじみた武装(スコップとツルハシ)、そして追加武装のまとまりの良さにメカ感の押し出し、といずれも好み。特に合体後も元のビークルとしての特性がきっちり押し出されて収まりの良い轟轟武装は、メカ系戦隊ロボとして、素晴らしい完成度。スーパー、アルティメット、と強化合体も合わせて、久々に満足度の高い戦隊ロボとなりました。
第3位には、車の召喚装置に始まり、ドルゲ反応サーチャー・友情メーター・飛び道具・打撃武器・短距離ワープ装置・実質的な変身アイテム、と次々と機能を追加された末、まさかの最終兵器となった、カテゴリ:呪いのベルトのボップ。もはやドルゲ最大の障害は正義のエージェントよりもボップなのではという事にまでなり、印象深い装備となりました(笑)
次点として、そんなカテゴリ:呪いのベルトの一つの極み、使うと死ぬカイザギア。カイザ本格登場の第12話において、新ライダーが出てきた=新キャラクター登場ではなく、中心はベルトであった、というのは強烈な展開でした。Xをモチーフにしたトンファーという必殺武器も独特かつ格好良かったですし、それをベルトからぶら下げられるというデザイン的にも秀逸。ファイズギア、デルタギアもそれぞれ格好いいのですが、3つのベルトを代表して。
続いて、年末も近づいてから大波乱のあったこの部門。
☆残念部門☆
1位 朝倉リク/ウルトラマンジード (『ウルトラマンジード』)
2位 クレナイ・ガイ/ウルトラマンオーブ (『ウルトラマンオーブ』)
3位 橘健吾/ビーファイタークワガー (『ビーファイターカブト』)
次点 乾巧(『仮面ライダーファイズ』)
直前まで燃える夕陽の風来坊の二連覇は堅いと思われていたこの部門ですが、超新星は、今年もあっち方面からやってきた! 昨年優勝の先輩はコンスタントにヒットを打ち続ける残念界の安打製造機でしたが、今年は超弩級の一撃で第1位をかっさらいました。おめでとう、朝倉リク! 秘密基地のマザーコンピューターに、自分のバイブル的作品に登場するヒロインの名前をつける男! 名付け親の錘お父さんはきっと泣いています。
「ヒロインのレム」
そして第2位は、後輩まさかの大外一気に惜しくも2連覇を逃すも、昨年残念業界を騒然とさせた、2016年に甦ってしまった、憎みきれないあんちくしょう、クレナイ・ガイ。
ヒロイン(一応)の母親から「こーんな大事な時に頼りにならない男なんて絶対駄目!」と言われる・ろくでなしの駄目男が女の子に言われたい台詞ベスト1「戻ってきて、私の元へ。私は、ありのままのあなたを受け入れる」を妄想に言わせる・自分で自分の過去について「数奇な運命」とか言ってしまう・若い女の子にとくとくと俺の理想のヒーロー論を語る・優しさと残酷さを最後まで勘違いしたまま旅立つ……と後半戦でも全く衰えなかった圧倒的残念さ。後輩衝撃のドリーム彼女宣言の前に2連覇はなりませんでしたが、「SupercoolにPerfect」という伝説を残した戸増宝児さんに続いて、永世残念位の称号を謹んで贈りたいと思います。
「見えない所で輝いてる光もある。ヒーローなんてのはそんなもんなんだよ」
第3位は、参謀ポジション・空手の達人・爽やかで知的なお兄さん・無自覚年下モテスキル、と完璧超人系な高いスペックを誇り、しかしあまりにスペックが高すぎたのか気がつくと個性を失って目立たなくなり、最終的には20話ほど完全に見失っていた自分を女子高生の言葉によって取り戻すに至った、なんというか本当に残念な事になってしまた橘健吾。本編感想の時は触れるのを避けていましたが、改めて、苗字、苗字が悪かったのか?!
「河童は光線なんか吐かない!」
次点として、どこに出しても恥ずかしくないタイプの二枚目ながら、端々で残念なたっくんこと乾巧。井上ワールドは基本的に残念粒子が蔓延しているので逆に際立たなくなってしまう、というのがあるのですが、女の子の看病をしながらおかゆをふーふーする駄目さ加減は、ポイント高かったです。
「おまえ……猫舌だよな?」
来年は、ボウケンメンバーの更なる躍進と、端々に素養は窺わせる桐生戦兎のジャンプアップに期待。
☆悪の組織部門☆
1位 ボーゾック (『激走戦隊カーレンジャー』)
2位 モンスター一族 (『コンドールマン』)
3位 ドルゲ魔人軍団 (『超人バロム・1』)
次点 デスガリアン(『動物戦隊ジュウオウジャー』)
今年は粒ぞろいの中、頭ひとつ抜け出して第1位に輝いたのは、全宇宙の道路交通法の敵、宇宙暴走族ボーゾック。
第6話における、「は〜ぁ、QQキュータンの死は一体なんだったんだい」「グラッチ、そんな事俺たちが考えてもしょうがねぇだろ」「そうだな、ゼルモダ! 俺たちも飲もうや」というやり取りは、ギャグの為に失われる命の軽さは全て意図通りである、という今作の凶悪な本質が浮き彫りになると共に、想像力の欠如(ないし放棄)したボーゾックの、“お笑い集団でバカだからこその恐ろしさ”が明確になるシーンだったのですが、ヒーローを太らせて破裂死させようとしたり、地球人の子供をスイカにして頭割ろうとしたり、ギャグ怪人ゆえの恐怖、が全編に散りばめられていたのは秀逸。
一方で愛嬌が出過ぎた為、エグゾス登場後は、全責任をボーゾックを利用していたエグゾスに押しつける構成になってしまった事で、ボーゾックの“悪”と向き合う事なく決着してしまったのは残念でしたが、その終盤は終盤で、スタンダードに近い悪の組織としてもしっかり仕事をこなし、総合的に、“悪としての脅威”を保ち続けたのは、良い組織でした。
「地獄で眠るリッチリッチハイカー教授、本当のボーゾックの総長は、RVロボをこう使うんだ」
第2位は、クリフハンガー形式の連続もの、という作風もあり、徹底的に日本国民を追い詰めていく姿がインパクト絶大だったモンスター一族。作品の背骨が極めて強い思想性に貫かれている為、欲望や汚染を具現化した怪人達の存在もそれぞれ強烈で、コンドールマンの対比として、実に濃厚な悪のシンボルでした。その上で、孤軍奮闘から正義の輪を広げていくコンドールマンに対して、資本主義経済の闇の象徴として組織が整備されており、世界各地における征服計画の進捗についての会議で、皆で成果に拍手を送り合う素晴らしい社風などもポイント高し(笑) 作品後半の失速が、惜しまれます。
「諸君頼むぞ。我らモンスター一族の名誉に賭けて、世界制覇の為に頑張るのだ」
「「「「「「ハールマゲドン」」」」」」
第3位は、首領自ら電話帳をめくって悪のエージェントを選抜する事で名高い、ドルゲ魔人軍団。……そういえば特に組織としての名称があった記憶が無いのですが、とにかく宇宙的悪の組織です。組織としてはあまりにもバロム・1にこだわりすぎた事で自らの首を絞めてしまった面が強いのですが、噂に名高い人体魔人シリーズのデザインは強烈でしたし、シルエットで見せるドルゲのデザインは好き。作品自体が微妙な路線修正を繰り返していた事もあって、物語を貫く悪としての姿勢を見せきれなかったのは残念でしたが、もろもろネタ的な印象度で加点。
「ドールゲーーー」
次点として、年間通して安定した組織運営を見せてくれたデスガリアン。それぞれ個性のくっきりした幹部陣、あくまでゲームなので常に余裕という設定、最初から穴をきっちり埋めてきている分、爆発力には少々欠けましたが、オーソドックスともいえる悪の組織像を丁寧にやり抜いたのは良かったです。前後の作品の事も考えると、これでいいのだ、というか、貴重な安定感を見せました。
「ブラッドゲームからは、絶対に逃れられません」
サージェス財団の評価に関しては、年明けの後半戦を見て(笑)
☆ヒロイン部門☆
1位 鳥羽ゆい (『ビーファイターカブト』)
2位 園田真理 (『仮面ライダーファイズ』)
3位 ゾンネット (『激走戦隊カーレンジャー』)
次点 レム(『ウルトラマンジード』)
第1位は、ビーファイターカブトの超有能サポーター・ゆいちゃん。頭の悪い賑やかしや都合の良い人質要員になる不安をはね除け、周囲に配慮の出来る聡い少女として好感の持てるキャラクターを積み上げていったのがとにかく非常に良かったです。特に今作の場合、長官ポジション(小山内博士)が下衆だった為、サポート役としてのゆいちゃんの存在は極めて大きなものになりました。デートイベントまであった健吾に対してまさかのクリスマス完全スルーされるも、エリート気質かつ天然のモテ男の心が弱った所で甘やかして肯定するという完璧な作戦で心の隙間に忍び込み、最後はガイストアックスを召喚してクワガーの見せ場を作り出したのは、素晴らしいヒロイン力でした。
……まあそんなゆいちゃんのヒロイン力をもってしても、最終的にクワガーはロボットの中で斧を構えているだけになってしまうんですが……! 越えられない残念パワーの壁を見つつも、今年に限らず、《メタルヒーロー》シリーズの中でもハイレベルなヒロイン力を発揮した、良いキャラクターでした。
(ちょっぴり怖いけど、健吾さんと一緒なら平気。ゆい、嬉しくて胸きゅんです)
第2位は、恐らく《平成ライダー》史上最大のダメンズハーレムを築き上げた、流星塾のアイドル・園田真理。自分はぽやっとした駄目男にときめいてしまう所も、ある意味、見事(笑) 傍若無人の横暴系ヒロインとしての打撃力も高かったですが、なんだかんだ、巧、草加、澤田、それぞれ相手に真っ当にヒロインやっており、最後まで存在感が薄れなかったのも良かったです。
「なによみみっちいなぁもう。明日は湯豆腐にしてやるから。めっちゃ熱いやつ!」
第3位は、名家を飛び出して暴走族に転落し、他者を傷つける事に想像力が働かないボーゾック的な悪の象徴であり、チーキュを花火にしようと言い出した元凶ながら、淡い恋を経験していつの間にか正統派ヒロインの座についてしまったゾンネット(笑) 関わったあらゆる存在の知力を下げてしまう常時発動の凶悪なパッシブスキル《ゾンネット粒子》は、最終的にヒーローと悪の組織の仲立ちをしてしまうに至り、有為転変のとんでもないキャラでした。考えてみると、男の鼻面を掴んで振り回すファムファタール的なキャラ造形というのは、戦隊ではけっこう珍しかったでしょうか。
「涼しい目……ニヒルな顎……凜々しい眉……はぁ〜……レッドレーサー様」
次点は、最終的にやや投げっぱなしにされてしまったものの、中盤のデッドヒートは見応えがあった『ジード』ヒロインズから、「ヒロインのレム」。人間ボディを手に入れるという定番イベントが、実はこっそり自分で肉体を培養していました、というのがちょっとガックリで、そこが別のアプローチだったら更なる上位も窺えたのが惜しい(エピソードそのものは面白かったのですが)。モアと合わせて、ラスト2話で特にジャンプがなかったのは勿体なかったですが、抑えるべき所はそれなりに抑えてくれました。
「……ヒロイン。悪くないですね」
……今年は比較的、真っ当なヒロイン力の持ち主が多く、なんだか真っ当なランキングになりました。来年は、ボウケンヒロインズ(男子含む)の動向と、新たな作品に期待したいと思います。
今年はやや趣向を変えて、こちらを先に。
☆ヒーロー部門☆
1位 風切大和/ジュウオウイーグル (『動物戦隊ジュウオウジャー』)
2位 三矢一心/コンドールマン (『コンドールマン』)
3位 木戸猛&白鳥健太郎/バロム・1 (『超人バロム・1』)
4位 伊賀栗レイト/ウルトラマンゼロ(『ウルトラマンジード』)
5位 鳥羽甲平/ビーファイターカブト(『ビーファイターカブト』)
今年は私の偏愛的なツボを押してくれるキャラがやや不作だった事もあり、非常に真っ当に好感が持てるとともに、その抱えた問題点を物語がしっかり殴りに来た点を評価して、昨年の2位から順当に大和くんが逃げ切り勝ち。面倒見のいい天使ときどき鬼畜、というリーダー像、戦隊メンバーや周辺人物との関係性の描き方も良かったですし、アクション面では飛行能力を終盤まできちっと生かしてくれたのがポイント高く、作品同様、総合力の勝利。
「人間だって動物だ!!」
第2位は、今年最大のインパクト、正義のシンボル・コンドールマン。衝撃の誕生、人間体の二枚目ぶり、それでいながら素体の記憶を一切持たないという痛切な設定、ザゼーン、キレのいいアクション、気高い精神、、作品テーマとの密接な関係性、凄く爽やかに「さあ、みんなでコンドールマンの歌を唄って、美しい日本を守ろう!」、そして何より、立ち姿の美しさ。その精神性が見得を切るシーンに集約され、正義のシンボルになる、素晴らしいヒーローでした。終盤、作品の失速によりC一心問題が棚上げにされたまま放り出されてしまい、キャラクターとして完成をみなかった事が、本当に惜しい。
「正義のシンボル、コンドールマン、そのような悪は断じて許さん!」
第3位は、宇宙の正義のエージェント、二人で一人のバロム・1。水と油の二人が心を一つにした時に誕生する正義のヒーロー……というコンセプトは良かったのですが、話の都合で変身前の二人の個性が徐々に消滅、ほぼ一体化してしまったのは非常に残念。またそれにともない、変身後の人格も適当に統合されてしまい、結局作品として、変身前後の人格問題を解決できなかったも本当に残念。……と、問題点は多々あるものの、人質への扱いの軽さ、妥協を許さぬ悪への姿勢、そしてラスト、と諸々のインパクトは絶大。また、初期はもっさり見えたアクションも、どたどた走る→決めポーズで強制ブレーキ→キャンセルで必殺技に繋ぐ、などが段々面白くなってきて、割と楽しめました。バローム! クロス!
「私は死なん! バローーーム!!」
第4位は、気弱なサラリーマンに宿るヤンキー系ヒーローにして、父親というヒーロー、をある程度きっちりやってくれた伊賀栗レイト/ウルトラマンゼロ。メガネの付け外しが切り替えスイッチだったり、とにかくオーソドックスの塊なのですが、劇中外で積み重ねられていたゼロのヒーロー強度が土台になっている事もあり、まとまりの良いキャラクターでした。ヒカリ宅急便という大惨事を引き起こしたゼロビヨンドは当初は微妙に感じたものの、最終的にウルトラ舎弟ブレイクが格好良かったのでまあ良し。今年は総合的には「父親」の年であったのかも、というのも含め、ベスト5入り。
「それでもやってみたいんです。みんなを守るって事を」
第5位は、作品の出来の悪さが残念だったものの、お調子者で単細胞の熱血漢というステレオタイプである以上に、とにかく“いいヤツ”という描写の一貫性が優れていた、鳥羽甲平。他人の痛みを感じる事ができ、他人の為に真剣に怒れる男……正面から描こうとすると青臭さが嘘っぽくなりすぎて案外難しいこの造形を、高校生戦士の真っ直ぐさと掛け合わせる事で成立させた、良いヒーローでした。
「人間は、自分勝手な酷い事もやってきた。だけど全部がそうじゃない! 一本の小さな草と、心を通い合わせる人間も居るんだ。 それを忘れるなよ! 忘れちゃ駄目だ!」
そして今年は、例年以上の超激戦となったこの部門を、例年のヒーロー部門の形式で第5位から発表したいと思います。
☆悪役部門
5位 伏井出ケイ (『ウルトラマンジード』)
ラスト2話にして鳥羽ライハに引きずり落とされて順位を下げてしまいましたが、今年後半を席巻した、ぼくのかんがえたさいきょうのSF作家。優美な物腰と荒々しい憎悪、主人公の鏡面的存在として作品を引き締め、作品における暗い情念の部分をほぼ一手に引き受ける大活躍。如何にも前作の二匹目のドジョウ狙いな造形から、見事に脱皮を果たしてくれたのも良かったです。……ラスト2話、ラスト2話が本当に勿体なかった…………。あと考えてみると、K先生も父親ポジション。
「これで、エンドマークだ」
4位 ライジャ (『ビーファイターカブト』)
夏の魔力に惑わされたり、三味線探して奔走したり、宿命のライバルの座を奪われそうになったり、と色々アップダウンもありましたが、立ち回りと台詞回し(声含む)の格好良さは素晴らしく、年間通してポイントを稼ぎ続けた兄者が第4位。メルザード自体は色々アレな事になってしまいましたが、正統派悪の幹部キャラとして、いい仕事でした。
「地上征服の為、人魚の不思議な力、是非手に入れねば」
3位 ジニス (『動物戦隊ジュウオウジャー』)
初期はもうひとつキャラが安定していない面があり先行きを危ぶんだ事もありましたが、クリスマス周辺のあれやこれやで一気に肉付けが進み、脅威の悪役として君臨。CV:井上和彦の好演も含めてロマンとデカダンのボスキャラとしてもいい味を貫き、ロマン系ボスキャラ好きの私としてはクリティカルヒット(笑) 几帳面に風呂敷を折り畳んだ作品の特性もあって、ネガジュウオウジャーとして絞れるだけ油を搾り取るかのように使い切られた面もポイント高く、満足度の高いボスキャラでした。……ここまで享楽的だとさすがにまずい気はしますが、今回惜しくも選外となったブラッドスタークには、是非ともジニス様越えを目指してほしいです(笑)
「ジュウオウジャー、この星を――舐めるなよ」
2位 暴走皇帝エグゾス (『激走戦隊カーレンジャー』)
僅差でジニス様を退けたのは、豊富な資金・事細かなマネジメント・動機はロマンと三拍子揃った悪の黒幕の鑑、暴走皇帝エグゾス。渋い声なのに絶妙にズレた言い回しに加え、全宇宙の悪に巨大な雑誌を配っているという初登場のインパクトも凄かったですが、ただ強力なマジックアイテムを贈与するだけでなく、通常の作戦にも資金を提供し、はては結婚式までプロデュースしてしまうという姿勢が大変素晴らしかったです(笑)
本編終盤は、エグゾスという黒幕を登場させる事により、愛嬌の出過ぎたボーゾックから責任の元凶を付け替えるという悪く言えば構成上の誤魔化しを行っているのですが、それを成立させうるレベルの納得できる悪の黒幕としての存在感を持ち、一面では作品そのものを救ったともいえる、非常に良く出来たラスボスでありました。ラストバトルでは自らファイトも見せ、最後まで悪の脅威を保って作品を引き締め続けた点も含め、大変好きなキャラクター。
「余がアイデアと資金と材料まで提供した作戦だ。きちんとやれば必ずカーレンジャーは倒せる」
1位 コインマー (『コンドールマン』)
今年は村上社長に冴子さん、ドルゲも選外に落ちるなど激戦区で、特にベスト3は大激戦だったのですが、ジニス様も暴走皇帝も退けて栄冠に輝いたのは、初の怪人枠からの第1位! ケニアの吐かせ屋コインマー!!(おーい)
大人の玩具で一昼夜に渡ってヒーローを拷問する変態、という今年最大の衝撃!! その拷問に耐え続けるヒーローの気高い姿が、ただただ巨大な鉄扉を抑えているだけにも関わらずカタルシスにまで到達してしまい、コンドールマンとは如何なるヒーローであるのか、が鮮やかに描き出される本編屈指の名シーンになる、という脱帽の展開を完成させた存在として。
「それにしても、コンドールマンって予想以上に逞しいのね。私、逞しいのだーいすき。ふふひひひひひ」
……さて、皆さんお気づきの事かと思いますが、あの男が名前が出ないまま、各部門表彰が終わってしまいました。時に命がけで怪物と戦うヒーローであり、時に子供じみた嘘で人間関係を引っかき回すケチな悪党であり、時に純粋時に卑劣時に綺麗好き、もうどこにカテゴリしていいかわからないあの男……“人間”草加雅人は、その強烈な存在感を評価して、2014年に大旋風を巻き起こした役立たず、じゃなかった、橘朔也永世へたれ名人以来となる、殿堂入り特別表彰としたいと思います。
誰もが心の片隅に抱える理想と、誰もが心の片隅に抱える悪意、その二つを混沌の内に象徴しながら、あなたの後ろにそっと立ち、振り返れば草加雅人が自分の心の中に居るのかもしれない……そんな事を考えさせる薄ら寒くも素晴らしいいキャラクターでした。
「君は邪魔なんだ。わかるか? 俺の事を好きにならない人間は邪魔なんだよ」
最後に、最優秀作品部門。
☆最優秀作品部門
1位 『動物戦隊ジュウオウジャー』
2位 『激走戦隊カーレンジャー』
3位 『仮面ライダーファイズ』
今年のベスト1は、サブライターとしては過去作でいい仕事を見せていたものの、果たしてメインライターとしてはどうなのか、という不安を吹き飛ばし、予想を遙かに超える切れ味を見せた香村純子を中心に、最後まで真摯かつ誠実に作品のテーマをまとめあげてみせた『動物戦隊ジュウオウジャー』。
多くの山場回を担当し、後半のメイン監督といえる加藤監督のいい仕事に、山場の風切大和に外れなし!をはじめ役者陣も好演。あまりに綺麗に畳みすぎた為に、展開上の取捨選択として取りこぼした部分を欲張りたくなる、という贅沢な問題点が生じましたが、年間通して、非常に完成度の高い逸品でした。今作を象徴するキャラクターとなったサワオばかりではなく、できのいい主人公であった大和くんもしっかり殴り、返す刀で大和父もきっちり殴り、コミュニケーションという全体のテーマに、ヒーロー物としての「変身」という要素を掛け合わせて練り上げたのは、お見事。名作。
「この星を、舐めるなよ!!」
第2位は、90年代戦隊の劇薬、『激走戦隊カーレンジャー』。ギャグとしか思えない悪の組織、随所に挟まれるパロディ、百鬼夜行の浦沢ワールド、と一見おちゃらけ要素が強いのですが、その実、ヒーローとは? 戦隊とは? という要素としっかり向き合い、最終的に、夢見る正義を――夢見る君がときめく君が明日のヒーローである事を――笑い飛ばさない、というのがとても素敵な作品でした。素顔は会社員であるカーレンジャーの持つ、“社会性を持った大人”の集団である、という要素が、繰り返しギャグとして用いられてきた「一般市民」という要素と結合して独自のヒーロー像を構築するに至るなど、端々の要素も挑戦的かつ綺麗。浦沢義雄×荒川稔久×曽田博久、というライター陣の配置と連携もうまくはまり、良い作品でした。
「「「「「戦う交通安全! 激走戦隊、心は、カーーーレンジャー!」」」」」
第3位は、スピーディーな展開の中に詰め込まれるキャラクター同士の煽り合い、濃密な情念、悪意、愛憎、目まぐるしい人間関係の交錯の中で“居場所”を探す者達の物語、『仮面ライダーファイズ』。全盛期の井上敏樹の切れ味が、後の作品で噴出してしまう破綻の予兆を感じさせながらも危うい所で踏みとどまっており、オリジンをしっかりと踏まえ、多数の本歌取りを散りばめながらも、これまでタブーとされてきた要素に切り込んだ、《平成ライダー》4年目にして、一つの極み。とにかく非常にカロリー高い作品なので、感想のHTML化作業をしながら、またじっくり読み解いていきたい作品です。
『Standing by... Complete』
衝撃度、という点では今年は『コンドールマン』、そして『超人バロム・1』の年だったのですが、前者は後半失速、後者は全体的にアベレージが低く、ベスト3は順当に。ギリギリまで『ウルトラマンジード』が2位争いに食い込む事は期待していたのですが、最終盤に急ブレーキで脱落してしまったのは、残念(^^;
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というわけで、毎年恒例の振り返りランキング企画でした。
各部門の中でも触れましたが、今年は振り返ってまとめてみると、「父親(役)」の年であったかな、と。勿論、「父と子」というのは、主要なテーゼの1つであるのですが、大和父、マリオおじさん、渋川一徹、K先生、ベリアル、朝倉錘、シグナルマン、VRVマスター、花形社長、石動惣一……と様々な父性の描かれ方が、印象深い年となりました。良い方でも悪い方でも濃いキャラが多かったですし(笑)
来年に向けてですが、『ファイズ』感想中に触れた通り、改めてしっかり『響鬼』を見たいというのはあったのですが、現行『ボウケンジャー』のカロリーが高すぎて断念(^^; 00年代戦隊もここまで来たら次の『ゲキレン』も抑えたいですし、その後は配信『ギンガマン』も控えているので。
その『ボウケンジャー』は部門ランキングではほぼ選外となりましたが、これは平均して各エピソードが濃密すぎて、後半戦で誰がどう転ぶか全く予断を許さない為、というのが大きな理由です(^^; 各キャラクター、完結してからの評価になるかな、と。
『ビルド』勢も話数もあってそういう面がありますが、危なっかしい要素は幾つか見え隠れしつつも、久々に好みの現行『仮面ライダー』で、来年も引き続き楽しみです。そして、色々妄想広がる『ルパンレンジャーvsパトレンジャー』は、超期待。
おまけに今年のあれやこれですが、『ボウケンジャー』25−26話は実は割と早めに見ていたのですが、第25話があまりに濃すぎた所に、年末企画など他に優先するものが出た諸事情により、感想更新は年明けになるかもしれません(^^; あと『ロボタック』扇澤回は見たのですが、さすがに今作のラインは私が見たいものから外れすぎているかも、という感想。あと『ビルド』第16話を見る時間が取れなくて、見ないままこれを書いてしまったので、実はスタークさんがリタイアしていないかちょっぴり心配です。
来年も良い作品に出会える事を願いつつ、今年の特撮カテゴリの締めは、この一言で。
「ダップ、正義が好きか?」
(VRVマスター/『激走戦隊カーレンジャー』)