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『仮面ライダービルド』感想・第17話

◆第17話「ライダーウォーズ開戦」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武藤将吾
あらすじ・OP無しで、パンドラボックスを狙って侵攻してきた北都軍と東都軍の戦いが描かれ、エージェントSは普通に喫茶店に居ましたが、まだまだ信用なりません。東都政府は「仮面ライダーを軍事兵器として起用する」と声明を発表し、戦兎と龍我を司令部へと強制ご招待。
ヒゲ首相代行は二人に、パンドラボックスは外側に6枚のパネルを持ち、パネル1枚ごとに10本のボトルが対応、そして3国に20本ずつが存在する全てのボトルを揃えた時、ボックスが開く事を明かす。
「3国が手を取り合わないと、パンドラボックスが開けられないようにしてたのか」
「だが北都は、奪い合う道を選んだ」
3国がなぜ緊張状態の割に定例会議の場を設けていたかというと、互いに箱の鍵を握り合っている状態だからであり、同時にそれは、常に戦争の火種を抱え合っているという事だった、という背景が明かされ、フルボトルの数が一気に3倍に。
ヒゲ首相代行の握っている情報によると北と西のボトルは何故か浄化済みだそうですが、腕輪の持ち主が他にも登場するのか、うまく転がってほしいところです。
「他国の攻撃から、このパンドラボックスを守ってもらいたい」
「…………俺たちは、戦争の道具になるつもりはない」
「元はといえばおまえが引き起こした戦争だ」
自分がガソリン振りまいて火をつけた事はおくびにも出さず、華麗な責任転嫁から超法規的措置を餌に取引を持ちかける流れは、伊達に首相補佐官ではなかったヒゲの政治家としての一面を見せてくれて小物街道を突き進むヒゲに奥が生まれて良かったのですが、総合的に考えると、大好きな葛城巧と心を一つに合わせて戦う為に戦争を引き起こしたように見え、とんだサイコラブハンターです。
さあ、これで俺とお前は24時間いつも一緒、なんなら毎晩俺の自作ソングを聴かせてやるぜ心の友よ……と戦兎と龍我にGPS内臓通信ブレスレットを強制的に装着させるヒゲだったが、外へ出た戦兎は、一方的なラブホットラインをさっくりと取り外してしまう。事の重大さを理解していない龍我は、ブレスを外す前に戦兎の戦争への考え方を問うが、そこに現れる北都3馬鹿トリオ。
3馬鹿はスマッシュの進化形・ハードスマッシュへと変身し、これまでただ闇雲に暴れ回るだけだったスマッシュが、意志を持った怪人へとパワーアップ。城・クワガタ・フクロウは、それぞれビルドとクローズを上回る強さを見せ、変身解除に追い込まれる戦兎と龍我だったが、目の前で手柄争いを始めた3馬鹿が揉めている間に逃走する。
緊迫した戦争描写の間で3馬鹿がやたらコミカルに描かれるのは、あまりシリアスに描くとヒーローvs怪人が兵士vs兵士になってしまう事を危惧してのクッションかと思われますが、“国家間戦争に投入されたヒーローと怪人は「兵士」という同じ存在になってしまう”というのは、大胆な切り口。
ではそこで、「ヒーロー」と「怪人」を分けるものはなんなのか、を早めに提示してくれないと、重苦しさとややこしさが面白さを上回ってしまいそうなのが大きな不安点になってきましたが、従来作において人間と人間の戦いを描く手法として機能していた、個人vs個人としての「ライダーバトル」ではなく、これは個人vs個人に収まらない「ライダーウォーズ」なのだという宣言が、上手い方向に転がる事を期待したいです。……個人的には見たいものから逸れていく可能性も、増えてきたような気はしますが、この後の展開を見るに、流れの鍵を握るのは北都の新ライダーになりそうか。
戦兎と龍我はなんとか研究所に戻り、龍我は戦兎が開発していた新たなベルト――スクラッシュドライバーを引っ張り出す。それはボトルの中身をゼリー状に変える事でその成分を最大限に発揮する機能を持っているが、使用可能な反応を示したのはドラゴンボトルだけ。そして戦兎は、その使用に否定的な態度を見せる。
「スクラッシュドライバーは、間違いなく戦争の兵器になる。葛城は…………記憶をなくす前の俺は、それがわかってたから敢えて完成させなかったんだ」
あれだけノリノリだったのに? というのが非常に疑わしいのですが、相変わらず戦兎は葛城巧には擁護的。
だが龍我は、冤罪を晴らす事を香澄に誓ったのだと、仮面ライダーとして北都との戦いを決意し……んーんーんー、まあ、殺人犯で脱獄犯という前歴が消えないと社会復帰できないので香澄に合わせる顔がない、という理屈はわからないでもないですが、龍我の中でここまで存在を大きくするなら、どうして序盤しばらく、一言も香澄に触れなかったのかが重ねて疑問。
そしてある程度、作品の中で香澄の存在に決着を付けた後の方が、どういうわけか繰り返し香澄の名前が出てくるのですが、龍我の動機付けをなんでもかんでも香澄に繋げてしまうので、物語にとって“都合のいい女”度合いがますます加速。
キードラゴン誕生の第10話感想でも書きましたが、小倉香澄は今作においてとことんまで、“キャラクター”ではなく“ギミック”扱いで、香澄の事を思う龍我のキャラクターが掘り下げられるのではなく、亡き香澄が龍我を動かすスイッチでしかない、というのが本当に残念。
たとえば、カップラーメンすすっている時に香澄が作ってくれた手料理を思い出すとか、ふとした折に香澄が好きだった小物を思い出すとか、日常シーンの端々で龍我と香澄の関係が描かれていれば、話の動くタイミングで香澄の名前が出てきても納得度が上がるのですが、普段全く名前の出てこない香澄が、龍我の動機付けの時だけ出てくるので都合の良い印象が増してしまい、『ビルド』全体の中で、突然の死亡から現状に至るまで、香澄周辺の扱いが極端に稚拙なのですが、どうしてこうなった(本当は細々したシーンがあったけど尺の都合でカットされた可能性もありますが、仮にそうだとしてもむしろカットしてはいけないと思うわけで)。
或いは、香澄の願い(捏造疑惑手紙)とは裏腹に、龍我が“死者に取り憑かれた状態”を繰り返し描く事で、後でひっくり返して龍我の脱皮を描く意図があるのかもしれませんが、どちらにせよ、香澄の使い方はどうにもいただけません。
外へ出た美空が帰ってこないとエージェントに伝えられ、探しに向かった龍我は、避難所で茶色いジャンパーの妙な男と遭遇。
「納得いかねぇな……こんなの俺が求める祭じゃねぇ」
避難所を見て呟く謎の男は、そこに現れたスマッシュを目にすると、ベルトを構えた龍我よりも早く、スマッシュへと向かっていく。
「心の火……心火(しんか)だ。心火を燃やしてぶっつぶす!」
何を言っているかわからなくて字幕を出してみたのですが、字幕でもわかりませんでした!
キャラを特徴づける口癖にするつもりなのかもしれませんが、音が特徴的ではないので初登場シーンとしてはあまり効果的にはならず、どちらかというと「進化」と掛けるのを優先したのか? という感じ。
謎の男は生身のままスマッシュをパンチ一撃で打ち倒すと歩み去ってしまい、呆然と見送った龍我には、なにやら司令長官気取りのヒゲ首相代行から連絡が入る。
「北都のハードスマッシュに勝つには、新型のドライバーしかない。おまえなら使える筈だ」
かつてスタークの口にした「桐生戦兎ならそれができる。万丈龍我ならそれが使える」を思い出したヒゲ長官は龍我を焚き付け、ヒゲとスタークは喧嘩別れしたようでいて、葛城のアレを実戦投入するという目論見では完全にシンクロしているのですが、スタークがヒゲの性格を読んで利用しているのか、実は深い所で通じ合っているのやら。
次回あたり、北都にもスクラッシュドライバーが存在している事を知ったときの顔が見物です(笑)
龍我が謎の男ルートに入っていた頃、主人公力を発揮した戦兎は落ち込む美空を発見し、腕輪を地面に叩きつけて自傷的な行為に走る美空を止め、抱きしめる。
「頼む……やめてくれ。おまえは悪くない。悪いのは俺だ」
情感溢れるシーンなのですが……なんだろう……互いの罪の意識を噛みしめながら抱きしめ合う2人の背後に、してやったりとニヤニヤ笑うスタークの幻が見えるのは私だけでしょうか(笑)
龍我の行動理由がなんでもかんでも香澄に繋げられるとしたら、今回通して戦兎の行動理由は「自分は葛城巧だ」に繋げられており、それこそがスタークの狙い(だからヒゲに情報を流した)かもと思うと、桐生戦兎=葛城巧、というのがだいぶ怪しげになってきた感じ。
……まあ桐生戦兎が天っ才物理学者である、という点に関してはそれが一番筋は通るのですが、もう一仕掛けありそうな気がしてきました。
そこに乾いた拍手の音が響き、本当にお父さんだったらどうしようかと思ったのですが、立っていたのは信号トリオ。
「ボトルを全部よこせ。命だけは助けてやる」
「……最悪だ。俺はこの惨状から目を背けてた。戦争は俺のせいじゃない。俺には関係ないって。けど……おまえが気付かせてくれた。……もう綺麗事じゃすまされない。……俺は戦う。おまえを……この街を守る為に。この不毛な争いを終わらせる為に。ライダーシステムは兵器なんかじゃない。正義の為にある事を、俺が証明してみせる」
戦争と向き合う事を決意した戦兎が、「目標」(不毛な争いを終わらせる→パンドラボックス問題の解決?)、「動機」(正義の証明)を示し、混沌とした状況のなかでひとまず物語のゴールを設定してくれたのは良かったのですが、ここ数話、戦兎が自身の存在に悩む→吹っ切れる、の繰り返しかつ、テーゼも似たようなものが多かった為、劇的さは弱くなってしまいました。
炭酸変身したビルドは3馬鹿スマッシュと激突、トリニティアタックを受けてもなお立ち上がる。
「大事なもん守る為なら……何度だって立ち上がってやるよ! それが俺たちの作った、ビルドだ!」
ここで木の陰から様子を見守る美空の姿がアップになり、美空がボトルを浄化した事は決して罪悪ではない、という事を重ねて強調するのは、ビルドというヒーローらしくて良かったところ。
「言うじゃねぇか」
「ハハ、けど一人でなにができる」
「一人じゃねぇ!!」
「ん」
「二人だ」
そしてスクラッシュを手にした龍我も駆けつけて3人の関係を繋げ、龍我は戦兎の反対を押し切ってスクラッシュドライバーを持ち出したけれど、しかし決して戦兎と道を違えたわけではない、という見せ方も良かったです。
「――借りるぞ」
『すくらっしゅぅどらいばぁぁぁ』 (ベルト音声:若本規夫
なんてものを作っているんだ戦兎。
……葛城のデータの中に最初から音声ファイルが指定してあったのかもしれませんが、それはそれでやはり、弁護の余地が無いと思うぞ葛城巧(笑) いやまあ、三森すずこさんの声が収録済みで、その理由は「ヒロインのレム」だったらそれはそれで困りますが、そこはクリス・ペプラーを頼んでおくところだよ戦兎!
「こいつらを倒すには、これしかねぇんだよ!」
『ドラゴンジェリー』
「変身!」
スクラッシュドライバーを起動すると龍我は従来の鯛焼きプレスではなく培養槽なものに包まれ、巻き舌の音声が流れる中、これまでと全く違う銀色のクローズに変身。
変身シーンをじっくり見たところ、過去作でいうと『龍騎』のブランクフォームのようなシンプルな基本ボディに、ドラゴンゼリーが覆い被さって頭・胸・肩のパーツを追加、という形になっており、今後更なる別バージョンの可能性もありか。
「うぉぉぉ!! なんだよこの力! 負ける気がしねぇ!!」
てっきり今回は北都のライダーお披露目回だとばかり思っていたので、クローズのニューモードというのは驚きましたが、考えてみればクローズ、フォームチェンジも無いしアタッチメントは付けるけどベルトはビルドと共通だしで、販促としては妥当な展開とタイミングか。
……ベルトから違う事を考えると、ノーマルクローズは6話でお別れ、という事になってしまうのかもしれませんが(^^;
クローズ銀はツインブレイカー(パイルバンカー的な装備で、あからさまに殺意高めですが、だから色々と作る前に気付け戦兎)を召喚し、今回も主題歌をバックに、次々と必殺攻撃でハードスマッシュを蹴散らしていき、最後はダブルライダーキックで3馬鹿のスマッシュ化は解除。3人が落としたボトルをごそっと回収に成功するが、そこに龍我が避難所で見かけた謎の男――信号トリオに「かしら」と呼ばれる人物が姿を見せる。
「俺に内緒で何楽しんでんだよ。こら」
その手にはもう一つのスクラッシュドライバーが……でつづく。
というわけで北都の新ライダーの変身は次回に持ち越しとなりましたが、新クローズだけだと弱いので新ライダーとベルトが共通、というのは販促として凄く納得。この辺りは上手く玩具展開を取り込んだ感じですが、一方でビルドの新フォームを見せる都合で、早くもざっくりと北都のボトルを回収せざるをえない、というのはやや苦しくなった印象。
ビルドの新フォームも概ね1話に一つは見せないといけない縛りのようなので、いっそまとめて回収させた方がしばらく困らないという判断だったのでしょうが、近年のライダーの作劇的縛りの苦しさを感じてしまう所です。
ところで、信号トリオの頭という事で、北都の新ライダーは桃太郎なのかと思ったら「猿渡」で、兎・龍・猿、と並べると「龍」が一番、主人公ぽいわけですが、北都ライダーが茶色いのは、モンキーボトルなの?!
真面目な話としては、葛城巧(かつての自分?)がきっかけの一つを作った戦争の罪について懊悩していた戦兎ですが、「スクラッシュドライバーの完成と情報流出」は完全に葛城戦兎の罪で、それとどう向き合うのかは、注目です。……といってまた今回と同じパターンにされても困るのですが、ここ数話が、物語全体を次の段階に進められるかどうかの分水嶺になりそうな。予告を見る感じだと、猿渡は「ライダーウォーズ」ではなく「ライダーバトル」を求めているようですが、新展開の1話目としては、ワクワクするというよりは、あちらこちらで不安点が先に立つ内容で、新キャラがこの局面にどんな色をつけるのか、パンチ力に期待。