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『仮面ライダービルド』感想・第16話

◆第16話「兵器のヒーロー」◆ (監督:山口恭平 脚本:武藤将吾
それどころではなくなったクリスマスはあらすじコーナーに詰め込まれて処理され、OPも省略(個人的には、OP省略は最終回の切り札っぽいのが好きなのですが、2回目)。お父さんに悪事の現場を目撃されて失脚したヒゲはその腹いせに、葛城巧殺害事件の真相を洗いざらいぶちまける――。
「夜は焼き肉っしょー! ひははは!」
現状あまりの浮きっぷりに、かえって熱い存在感を放つ佐藤太郎(笑)
役者さんもなかなか、振り切れた芝居が良い感じです。
そんな佐藤太郎が呼び出された葛城巧の部屋では、「俺はファウストをやめる」と手切れを宣言した葛城をスタークが気絶させていた。そしてスタークは交渉が決裂した際の“準備通り”、何も知らずにやってきた佐藤太郎を殺害し、スタークの姿を見て「ママー! ママーーー!」と床を這いずって逃げる佐藤を、後ろからナイフで刺し殺すというのが、かなり凶悪。
顔変え能力は火星で身につけたとまた適当な自己申告があり、スタークは佐藤の顔を葛城に、葛城の顔を佐藤に変え(髪型がつんつんしているので、ある種のコピー能力の模様ですが、目鼻口の付け替えのみならず頭部まるごと交換しているという事になって、また出鱈目な……)、葛城巧の死を偽装。なお、偽装工作の一貫として当然、二人の服を交換しており、悪人は悪人で色々と大変なのです。
「隣人がナイフで刺されました。万丈龍我という男の犯行です。急いで来て下さい」
マスターは警察に通報して万丈に葛城巧殺害の罪を着せ、その後平然と万丈とやいのやいのしていたのかと思うと、さいてー、マスター、ホントさいてー。
更にマスターは葛城巧の記憶を消した上で都合良く細工した記憶の断片を与え、“記憶喪失の男”と運命の出会いを演出すると。「桐生戦兎」を作りだしたのであった……。
一応ここまでの布石から筋は通っているものの、全て信用できない語り手がその玩具であるヒゲに吹き込んだ情報なので、相当マスターにとって都合のいい話になっている可能性があり、かえって、桐生戦兎=葛城巧説が怪しくなるレベル(笑)
とりあえず現時点で明確に引っかかるのは、葛城巧は本当にファウストを退職するつもりだったのか? そうであればその理由は何か? 退職後どうするつもりだったのか? という所でしょうか。実際“アレ”のデータは隠されていたわけですが、葛城が急に良心に目覚めたというのも変な話ですし……。
顔変換に輪を掛けて出鱈目な記憶操作能力に関しては、鍋島が記憶を失ったのはネビュラガスの二重投与の為ではなく、マスターの能力の為だった、と実は伏線でした扱いにしているのですが、とすると、戦兎の記憶がさっぱり戻らないのに都合良く鍋島の記憶が戻ったのはマスターの差し金である可能性が高いという事になり、マスター絡みの情報が一切合切信用できない、というのは、やや行きすぎも感じるところ。
現状、記憶のあれこれに関する都合の良さと信用できなさよりも、さいてー、マスターさいてーの方が上回っているので面白くなっていますが、疑心暗鬼の仕掛けすぎから一気に白ける可能性もあるのは今後の不安点(^^;
「これでわかったろ? おまえは正義を嘲笑い、自分の欲望のためなら命を奪う事もいとわない、科学に取り憑かれた悪魔、葛城巧なんだよぉっ!!」
ヒゲ首相代行剥奪寸前はホント、葛城巧の事が大好きだな……。
「俺はこれで終わらない。必ず戻ってくる。その時はまた、俺の片腕として働いてもらうぞ」
大好きすぎて、マスターの与えた都合のいい情報にほいほい飛びついているようにしか見えないな……!
かくして新たな波乱の種を撒き散らしつつ、パンドラボックス争奪戦はひとまず落ち着いたかに見えたが、病身を押して定例会議に出席しようとしていた東都首相が、スタークの毒針を受けて物凄い効果音で倒れてしまう。
「ふぅ……約束通りフォローしてやったぞ。げ・ん・と・く」
遅いよ!
そして最低だよ!!
そんな事は露知らず、黙々と新たなベルト?を作る戦兎に万丈は怒りを向け、二人は河川敷で殴り合う事に。
「これで解決するなんて思ってねぇ。けど……おまえを殴らきゃ俺の気がすまねぇ!!」
ライダーで?!
思い詰めた表情の戦兎もベルトを巻いてフルボトルを装填し……
『カイゾク』 『ガトリング』
撃つの?!
「勝利の法則は――(どうせあのバカは真っ直ぐ突っ込んでくるだけだろうから、クローズの射程外の距離を常に保って撃ち続け、装甲を62%削った所でわざと段幕を薄くして隙が出来たと見せかけて飛び込んできた所にカウンターの急行列車でおしまいだな(0.01秒))――決まった!」で一方的虐殺になる事が危惧されましたがビルドは殴り合いに応じ、ライダー同士の壮絶な戦闘中、これまでの様々な出来事を思い返して自らが葛城巧であると認めていく戦兎に、ドラゴン左ストレートが炸裂。
「本気出せよ!」
自分の過去と真実、そして周囲の人々にどう向き合えばいいのか……答を出せぬままビルドはしゅわっと爽快すると、後ろ回し蹴りの一撃でクローズを粉砕。
「……お前の言うとおりだ。俺が、おまえの彼女を殺した。…………俺が、大勢の人間を傷つけた!」
戦兎は逃げるように立ち去り、倒れた万丈はままならない激情を地面にぶつけ、二人の激突を見つめていた美空は、戦兎の後を追う。
「ずっと記憶が無い事に怯えて……ずっと記憶を取り戻したいと思ってた。けど、こんな過去……背負ってく自信ねぇよ」
「…………昔がどうであれあたしが見てきた桐生戦兎は、ナルシストで自意識過剰な――正義のヒーローだよ」
「……全然誉めてねぇし」
一方、どうやら首相が正式な処分を後回しにしていたらしく、失脚寸前から起死回生の返り咲きを果たしたヒゲ再び首相代行は、紆余曲折の末戻ってきたパンドラボックスを手に3者会談に出席。
「もう、狐と狸の化かし合いはやめにしませんか」
戦闘ではビルドに完敗し、政治的にも一度崖っぷちを除いた事でちまちました工作と腹芸が面倒くさくなったのか、直接喧嘩をふっかけるヒゲ首相代行。
「ここに居る全員が、この箱のエネルギーを手にして、世界を掌握したいと考えている筈だ」
改めてここで、三国間の火種としてのパンドラボックスの存在を強調。
「この国が3つに分かれたのはスカイウォールが出来たせいじゃない。我々の、醜い欲望がそうさせたんだ。……だったら、誰がこの国のリーダーにふさわしいか、決めようじゃないか」
国家間の問題に「デュエルしようぜ!」とホビーアニメノリを持ち込み、引き続き政治家としては大変困ったヒゲですが、失脚そしてしばらくフェードアウトかと思いきやまさかのV字回復であっという間に復権したので、この後、国際政治の最前線で荒波に揉まれたヒゲが、国家存亡の危機、タフな交渉相手、信用できる腹心、などとの出会いや別れを乗り越えて、優れたリーダーへと成長していくサクセスストーリーになったらどうしよう(笑)
その頃、悩める戦兎はマスターとの出会いの場所で、あの雨の日を回想していた。
「傘買ってこないとなぁ」
他人の回想でも最低だな!(笑)
「あの日から騙されてたってわけか……」
――「おまえは正義のヒーローを演じていたに過ぎない」
――「仮面ライダーごっこをしていただけなんだよ」
ビルド地下基地では龍我が一心不乱に筋トレ中。
「ねぇ……万丈は何に怒ってるの? 戦兎が、香澄さんを死なせた人体実験を考えた科学者だから? それとも悪の組織を作ったから?」
「……そんなんじゃねえよ。うまく言えねぇけど、あいつを許せない自分が許せねぇっていうか。確かにあいつは人体実験を考えた張本人だ! けど…………その記憶がねぇのに責めてもしょうがねぇだろ。それがわかってんのに、感情が抑えられねぇ!」
「万丈って……ほんとバカだよね」
処理できない感情を腕立て伏せで燃焼させる万丈が、少しずつ他人の立場に立って物を考えられるようになっていく姿が丹念に描かれているのは、今作の良いところ。
にしても、戦兎にしろ龍我にしろ、あまりにも面の皮が厚い&最低すぎて、もはや事の元凶としてすら認識しにくいのか、怒りの矛先がなかなかマスターに向かないのが面白い所です(笑) 龍我など完全に、冤罪を着せた張本人はマスターと判明したのにまずは戦兎を殴りに行っていますが、人間、あまりにも自分の理解を超えた存在とは、まともに向き合いにくいのか。
見ていてもマスター、最低すぎるド畜生というより、最低すぎて爽やか、の領域ですし。
そんなマスターとの運命の場所からの帰路、スマッシュとガーディアンに襲われる人々を目撃した戦兎は、ビルドに変身(ここで悩まないのが戦兎のいいところ)。子供達を助けたビルドだが、人助けは反射的にしてもスマッシュと戦う事への迷いが晴れず、一方的に攻撃を受けて変身解除に追い込まれ、駆けつけた龍我がクローズへと変身。
「なんで攻撃しねぇんだよ!」
「……俺がこいつらを作ったんだ。……人の命を弄ぶように、ガスを注入して……こんな姿にさせて……俺が居なければ……誰も傷つかずに済んだ」
「おまえが作ったのは、スマッシュだけじゃねぇだろ!」
2対1でスマッシュと戦いながら、倒れたままの戦兎を一喝するクローズ。
「そのベルトを巻いて、大勢の明日を……未来を! 希望を! 作ってきたんじゃねえのかよ!」
たとえそれが、石動惣一の思惑通りだったとしても……
「誰かの力になりたくて、戦ってきたんだろ! 誰かを守るために、立ち上がってきたんだろ!」
たとえそれが、正義のヒーローを演じるごっこ遊びだったとしても……
「それが出来るのは、葛城巧でも、佐藤太郎でもねぇ。桐生戦兎だけだろうが!!」
この1年間、東都には確かに居た。
――「桐生戦兎」という名の、正義のヒーローが。
「…………最悪だ。おまえに諭されちまうとはな」
桐生戦兎は再び立ち上がる。
たとえそれさえも、石動惣一の掌の上かもしれなくても……
「思い出したよ。俺は、ナルシストで自意識過剰な――正義のヒーローだってな!」
虚構のヒーローを、現実にしてしまえ。
「さ、実験を始めようか。――――変身!」
劇中初の主題歌使用で回想シーンが入り、これまでの戦いを思い返した戦兎は不敵な笑みを浮かべて立ち上がると、「桐生戦兎」としてビルドへと変身。次々と姿を見せるガーディアンを、主題歌をバックに蹴散らし、このまま『明日に向かって撃て!』式エンドに突入しそうな勢い(笑)
過去の罪に押し潰されそうになった戦兎が、万丈龍我と石動美空、「桐生戦兎」と向き合ってくれる二人の支えで立ち上がる、というのは実に正道で、予想を超える衝撃というのはありませんでしたが、第1部の着地、という点では良いまとまりだったと思います。
ベタをベタとしてやってくれるのは好きですし、メタ視点で「ヒーローの描き方」としても好きなものの、今作のターボ作劇の関係で、これを全体の3分の1時点に持ってきた為に必然的に飛距離の不足は否めませんでしたが、どちらかというと、この先ここを足場にどんなジャンプを見せてくれるのか、に期待。
「いっとくけど……許したわけじゃねぇかんな」
「……わかってるよ」
炭酸を発動したビルドはクローズとの連携攻撃でスマッシュを撃破。その成分を回収すると、現れたのは赤い服に身を包んだ男達。
「こいつら……いったい誰にスマッシュにされたんだ?」
「――北都政府だ」
そこに現れたヒゲ首相代行は、高らかに吠える。
「今朝、北都政府が宣戦布告をしてきた。そう、戦争の始まりだ!」
段々、歩く炎上マーケティングみたいになってきました。
そしてこの戦いの映像は、ガーディアンのカメラを通して北都首相の執務室に送られており……
「これはほんの挨拶代わりよ。北都の力、思い知らせてあげる」
軍服に身を包んだ北都首相はノリノリで、演技の方向性はなんだか、綾小路麗子様(『特捜ロボジャンパーソン』)を思い出す所です(笑) そしてその執務室には当然のように、あのさいてー男の姿もあるのだった……。
また同じくその映像を見つめる、万丈よりも更に頭の悪そうな3人組。属性としては佐藤太郎に近そうな赤羽・青羽・黄羽、という名前が既に駄目そうな3人組だが、ビルを薙ぎ払うレベルの強烈なビームを放つスマッシュから任意で人間の姿に戻った赤いのは叫ぶ。
「かしらー! まだかよーーー!!」
そして、金色のボディーに、薄茶色の頭部をした新たなライダーが姿を見せた所で、つづく。
新ライダーの頭部デザインは、宇宙服+潜水服+(『仮面ライダー』の原点としての)スカル、といった具合ですが、結果的に、凄くデモニカ(笑) 『真・女神転生ストレンジジャーニー』というゲームで主人公達が装備しているスーツのヘルメットに見えて仕方がありません。
次回――仮面ライダーと怪人を国家間の戦争に突っ込む、という非常に大胆な展開で、架空の世界でかなり戯画化しているとはいえ、国家レベルの紛争の中でどこに立つかを迫られるヒーロー、というのはマーベル映画の諸作も意識していそうですが、どう舵取りをしていくのか見物です。
まあ、架空戦記の中に仮面ライダーをぶち込んだ、と考えればもう少し軽い感じで面白そうな設定でありますが、果たして「戦争」をどう描き、どう切り込むのか、場合によっては見たい物とピントがズレてくる可能性もありそうですが、期待と不安が半々。
ところで、かなり重要なエピソードだったにも関わらずエージェントSが出てこなくて相変わらず不審ですが、次回以降しれっと北都の軍部に登場したら、それはそれで面白いのでアリです(笑)