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『仮面ライダービルド』感想・第18話

◆第18話「黄金のソルジャー」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武藤将吾


〜あらすじ劇場〜

「……そんな中、北都との戦争が始まり、戦兎は東都を守る為に、戦う決心をする」
「そうか、決心してくれたか」
「うわー、幻徳」
「氷室首相と呼べ」
……え、もう、首相気取りなの、この人。
「いよいよ我々東都の逆襲が始まる。北都などひねり潰してくれる」
「そういう事言われると……んー、考えなおしちゃうよなぁ」
「じゃあ言わない」
「素直かよ。さあ、どうなる第18話!」

ヒゲ所長改め首相代行改め首相代行失脚寸前改め司令長官があらすじ漫才を侵食したばかりか、龍我の出番、無し(笑)
映像編集もノリノリで、いけいけぼくらの仮面ライダービルド! 悪の北都をぶっ倒せ! 使えフルボトル、唸れドライバー、光れ正義のホワイトボード! 東都の平和を守るためにスクランブルだ!! いざとなればこの氷室幻徳がナイトローグとなって市民の安全を守ってみせる!! 蒸血!!!

〜あらすじ劇場・また来週〜

というわけで、東都に迫る脅威、北都から来た男と対面する戦兎と龍我。
「かしら〜。何やってたんすか、遅いっすよ」
「方向音痴の俺を一人にしたおまえらが悪いんだろーが」
前回は初登場回にしてはインパクトがもう一つに感じていた猿渡ですが、身勝手さの中にうまく愛嬌が入って、個人的にはこの台詞で一気に面白くなりました。
ドライバーを装着した猿渡はロボットジェリーをスクラッシュして、変身。……森永製菓さんは、この時間に、ウイダーinゼリーのCMを打つお考えはおありでしょうか。
相変わらず若本ベルトは何を言っているのかわかりませんが……えーと待ってこれ、考えてみるとこの音声データ、葛城巧がスタークの音声変換機能で若本ボイスを真似して自分で吹き込み、興奮のあまり「ぶぅらぁぁぁっ!」とか入れてしまったのでは。
……役者としてはそれはそれでアリなのかもしれませんが、近年(と言ってもだいぶ長い気がしますが)の、若本規夫若本規夫を演じている、みたいな事になって以降の若本さんはあまり好きではないのですが、人格の無いベルト音声だけにまさに「若本規夫」こそ求められてはいたのだろうとしても、キャスティングする方も少々悪ノリしすぎではなかろうか、とは思うところ。
10秒チャージした猿渡は、金色のボディに茶色の胸部−肩部装甲とヘルメットを被った、やはりどうにもデモニカ似(目からクラッシャーへ向けてのラインがガスマスクっぽく見えて拍車を掛ける)の仮面ライダーへと変身。
仮面ライダーグリス、見参」
いきなり名乗ってくれました。いい人だ!!
(名乗ってくれなかったらしばらく、「仮面ライダーデモニカ」扱いする予定だったらしい。……まあそういう点では実はまだ、「猿渡」という名前は一度も出てきていないのですが)
……ところで、なんか聞き覚えがあるのに違和感のあるBGMだと思ったら、『キュウレンジャー』……?
という不思議なBGMの使い方から、2話ぶりの通常OPの映像はいつも通り。新展開という事でそろそろ大幅変更があるかと期待していたのですが、スプラッシュやグリスのマイナーチェンジも無いので、次回辺りでしょうか……いやそろそろ、一緒になって跳ねているマスターが外道過ぎるので、OP変えてほしいです(笑)
「心の火……心火だ。心火を燃やして、ぶっ潰す」
「ほぅ……上等だ! おら!」
ロボット座の救世主に早速殴りかかるクローズだったが、防戦一方に見えたグリスは不意に反撃に転じると、クローズと同じ武装を召喚。いやらしい振り方でボトルを追加すると右腕にプロペラが生え、まるっきりフォーゼですが、グリスはメカ×アタッチメント、という路線になるのでしょうか。
空中から雨あられと弾丸を浴びせたグリスは、弱ったクローズに接近戦でも猛攻から、肩のブースターを起動しての低空ライダーキック(意外と新しい?)を直撃させるが、倒れたクローズに駆け寄る美空の姿を見て動きを止めると、戦闘を中止。
「途中参戦で倒した相手から戦利品を貰うってのは性に合わねぇ」
「そのドライバー、どこで手に入れた?」
「ああ……これか。陽気なおっさんから貰ったんだよ」
最低だ!
猿渡から戦兎達に情報が伝わるのを期待して、わざと素顔で渡しているのが最低だ!
「ボトルはその内取りに行く。複眼洗って待ってけよ」
これも面白く、猿渡の掴みとしては、上々の初バトル。
(あの女……どっかで)
猿渡は美空の事を気にしながら3バカと共に去って行き、基地へ戻ってスクラッシュのデータがコピーされている事を知った戦兎は、「俺のヒーロー感が薄れるだろう!」と無茶苦茶な事を言いながら龍我からスクラッシュドライバーを取り上げるが、そこに北の方から着信あり。
表示を見て下手な誤魔化しをしながら一階に移動するという事は、戦兎はマスターの番号を着信拒否にしていないし、マスターもしれっと以前の携帯からそのままかけている事が窺われます(笑)
マスターは盗んだデータを元にスクラッシュドライバーを難波重工で製造した事をさらりと明かし、以前に難波重工で待ち受けていた時に座っていたとおぼしき豪華な椅子が北都のアジトに持ち込まれているのですが、スタークとしてふんぞり返る用なのでしょーか。その為に国境を越えて持ち込んだのでしょーか。本当に楽しそうです。
「スクラッシュドライバーは、ボトルの成分をフルに使える代わりに、ネビュラガスの影響をもろに受ける。その副作用は、パンドラボックスの光を浴びた症状と同じ。変身する度に、好戦的な気質が剥き出しになって、どんどん戦いに取り憑かれるようになる」
「でも、スクラッシュドライバーが無いと、北都の連中には、勝てねぇぞ」
「だから俺が使う。あいつらを、何があっても俺が守る」
冷蔵庫の裏で聞き耳を立てていた龍我・美空・紗羽は戦兎の真意を知り、戦兎はマスターを追求。
「……あんたの目的はなんだ」
「何度も言わせるなよ〜。……お前達の成長だ。いいゲームを期待してるよ、チャオ」
1クール目から一部ネタばらしをして、自分の計画の為に他者を掌の上で踊らせているのを公表する、というマスターの路線は面白いのですが、その為に用いている特殊能力が出鱈目すぎる事もあり、どこかでこのパターンに変化は欲しい所。そのタイミングがいつになるかが、今作中盤のポイントになりそうかな、と。
マスターが北都に与している事をハッキリ知った戦兎は、美空への宣言通りに戦争と向き合う覚悟を決め、自らヒゲブレスを身につける。
「兵器としてじゃない。東都を守るためだ」
……待って戦兎、落ち着いて考え直して戦兎! ヒゲ絶対、夜中に用も無いのに通信してきて「……今、暇か?」とか言いながら好きな音楽の話とか好きな車の話とかどうでもいい雑談始めて仕方ないから毎晩付き合っている内に自動的に好感度が上がって幻徳ルートが解放されてしまうから待って!!
北都のスクラッシュドライバーについては、盗まれたデータと難波重工との関わりを説明し、意外と冷静に受け止めるヒゲ司令長官。……国家存亡の危機が男を急速にレベルアップさせているのか?! そう、私がやらねば誰がやる!!
東都の救世主達の心が一つになったその時、TV局をジャックした猿渡が東都全土へ向けてメッセージを放映。スカイウォールが存在する事で戦車や戦闘機を使えないこの国の戦争では、仮面ライダーこそ最強の兵器である、となにやら『機動戦士ガンダム』的な理由付け。
そしてパンドラボックスと東都のフルボトルを入手したら北都に戻る事と、民間人は原則として傷つけない事を宣言。
ヒゲ長官は急ぎガーディアン部隊をTV局へと向かわせ、
「お前達もだ。頼んだぞ」
何やら台詞まで長官ぽくなっているのですが、どこかスタークの悪影響も感じます(笑)
意を決して、ヒゲ長官の指示に従う一歩を踏み出す戦兎に、思い詰めた様子で問いかける龍我。
「スクラッシュドライバーで戦うつもりか」
「…………おまえに使えて、俺に使えないわけないからな」
……でも戦兎、ドラゴンボトルに嫌われてるよね……?
「ヒーローの座はそう簡単に譲らねぇよ」
スマッシュ人体実験、スクラッシュドライバーの副作用、データ流出……冗談めかしながら、戦争の責任を一身で取ろうとする戦兎の想いを感じる龍我は無言で後に続き、その頃、猿渡は北都首相から連絡を受けていた。
「随分大胆な事をしてくれたわねぇ」
「あれはあんたに対する警告でもある」
「どういう意味かしら」
「勝手に兵隊やらスマッシュやらを寄越してこっちのペースをかき乱すなって事だ」
「だったら、早く成果を出しなさい? あなたが守りたい人達の為にも」
そしてそんな猿渡に、心配そうな表情で声をかける赤羽。
「……後悔してませんか?」
「あん?」
「……俺たち、いや、俺たちの家族の為にこんな事を」
「何度も言った筈だ。幾らお前達が俺のこと慕ってくれようと、俺は記憶を消してる。お前達の事なんか知らねぇ。自分が楽しくやってるだけだ」
早くも何やら訳ありの様子が窺わされますが、基本的には引き続き、暴走族だと思っておけば良さそうです。気になるのは「記憶を消されてる」ではなく「記憶を消してる」という言い回しですが、わけあって自ら人体実験に志願した、とかそういう事なのか。
TV局を包囲するガーディアン部隊の前に姿を見せた猿渡は、グリスに変身して大暴れ。パイルバンカーでガーディアンを殴る度に、チェーンソーのような効果音が入るので、サイドに刃がついているのかと思ったのですが、玩具のCMで見る限りはそういった感じではなく……勢い?
「足りねぇなぁ……全然足りねぇなぁ! 誰が俺を満たしてくれるんだよぉ!!」
そこへ戦兎と龍我も到着し、前回も戦兎達の居場所をサーチしていた3バカ、黄色が匂いを嗅ぐ仕草でいちはやく二人に気付くのですが……スマッシュの匂いがわかる? と、北都関係者の謎は色々と小出しに。
グリスの前に進み出た戦兎はスクラッシュドライバーを身につけ変身…………ERROR。
相変わらずドラゴンボトルに嫌われています(笑)
なおこれがファイ○ギアだったらいい感じに後ろへ吹っ飛んでアスファルトの地面に叩きつけられる所だったので、劇中で始めて、葛城巧は悪い人間ではなく、科学を悪用する周囲の思惑が悪いのかもしれないと思いました!
落ちたドライバーに手を伸ばす龍我を止める戦兎だが、それを制する龍我。
「美空の為だ。こいつはヤバいベルトなんだって? お前になんかあったら、美空が悲しむ。あいつにはもうお前しかいねぇんだよ。俺ならたとえ死んでも誰も文句は言わねぇ。こういう役回りにはうってつけなんだよ。――悪いな。ヒーローは俺だ」
……香澄の為に冤罪を晴らすという動機と、たとえ死んでも構わないという姿勢に共通するのは、どちらも未来を見ずに過去を見ているという事で、まがりなりにも戦兎がアイデンティティ(仮)を得た一方で、龍我が現在への存在理由を失いつつある、というのは皮肉な状況。龍我の場合、スターク(マスター)への復讐に心が向かないのは疑問があるのですが、たとえ腐れ外道でも美空の父親には手を出せない、という事なのか。この辺りは、納得の行く形にしてほしいところです。
龍我はスクラッシュでクローズに変身し、金と銀は再び激突。3バカスマッシュに囲まれた戦兎は、北都のフルボトルを用いた新たなベストマッチ、フェニックスロボへとビルドアップし、とうとう左手がロボハンドに(笑) 劇場版公開中というタイミングもあって、オーズ×バースに見えるフェニックスロボは、火の鳥エンドでさっくりとオウルスマッシュを撃破。大盤振る舞いで続けてスマホウルフを発動し、アプリのバージョンアップが終わりませんフィニッシュでスタッグを撃破。
「なんでこんな技を……これがビルドか」
ベストマッチを発動して次々と繰り出されるビルドの攻撃に対して、転がった青の台詞は何やら思わせぶり。思えばマスターはビルドドライバーのデータは既に持っているわけで、その気になれば量産可能だと思うのですが、戦兎がスクラッシュを使えないように、ビルドドライバーもドライバーで、何やら他の使用条件があるのかないのか。
まあ後半、ぞろぞろとビルドが敵として出てくる(多数のフォームも無駄なく使える)というのは如何にも有りそうではありますが。
「これだ……俺が望んでたのはこういうバトルなんだよぉぉっ!!」
クローズと殴り合って大興奮のグリスは、プロペラビームでクローズを撃破。……同型対決とはいえ、前回の今回で新ライダーの踏み台にされてしまうクローズ、同じ喧嘩馬鹿カテゴリである中の人の能力差も感じられ、龍我のアイデンティティが本格的に危ない!
「強敵(とも)よ、最後の時だ」
生身の龍我目がけて躊躇無く低空ライダーキックを放つグリスだが、ビルドがスマホシールドでそれをカバーリング。しかし液晶画面は砕け散り、ビルドも変身解除。
「なんで……?」
「死んでも誰も文句言わねぇだと? ……なら俺が言ってやるよ。「ふざけんな」。俺は誰も死なせない。敵も、味方も。それが……俺の戦い方だ!」
戦場において如何にして正義のヒーローを貫くのか、を宣言する戦兎だったが、グリスをその戦兎を蹴り、踏みつける。
「なに寝言云ってんだ。戦争の意味がわかってんのか? 俺たちはな、殺し合いをしてんだよぉ!!」
民間人を徒に戦火に巻き込むつもりはないが、手向かう戦闘員には容赦のないグリスは生身の戦兎を思いきり蹴り飛ばし(実質スマッシュだから丈夫です)……うーん……前回も思った事ですが、舞台を「戦場」とし、兵士と兵士の「殺し合い」を断言してしまう事で、ヒーローフィクションにおける「象徴」「隠喩」「寓意」「婉曲」「置換」などの機能を減じてしまうわけで、果たしてこの物語は、敢えて「人間同士の戦争」を持ち込む事で、従来以上の劇的な効果を発揮できるのか?というのが、現在の流れへの疑問にして大きな不安点。表向きハードな事をやったけど、間接的な表現で描いた方がよほど伝わるものがあったのでは、という事にならないか心配です。
そういう意味で今回、前回持ち込んだ「戦争」という要素を、ヒーローフィクションの文法に組み変えていく作業をしていた中盤までは面白かったのですが、この終盤でまた、その疑問が首をもたげる形になってしまいました。
「こいつらを片付けて一気に東都政府へ攻め込むぞ」
戦兎が落とした北都のフルボトルを回収したグリスだが、迫り来る車! 間一髪でかわした!
車で突っ込んできたのはエージェント、絶対エージェント紗羽。あと少しグリスの反応が遅かったら、見事に跳ね飛ばしてヒーローとしてのイニシエーションを達成し、ハザードレベルが3.0に達してしまうところでした。
「ふふはははははは! ハザードレベル3.0! 遂に覚醒したか、さわぁぁぁ!!」
助手席から身を乗り出した美空がフルボトルをパスし、戦兎は困った時の逃走用でお馴染みロケットパンダに変身すると龍我を回収して窮地を脱出。走り去る車に乗った美空の姿をまざまざと目にしたグリスは、キャッスルが放とうとしたレーザを止めると、変身を解除。
「あの女……」
取り出したスマホの画面を見つめる猿渡。
「やっぱりそうだ」
ここまでの流れを考えると、失った記憶に関係する人物とか……?
「あの子は…………」
シリアスな表情で車の行方を見つめる猿渡が思い浮かべるのは……
「はーーい! みんなのアイドル、みーたんだよ! ぷんぷん!」
「みーたんだーーーーー!!」
ネットアイドルのファンだった。
……なぜか猿渡と美空が一緒に写っている謎の写真、とかシリアス方面の伏線にするのかと思わせておいて、ネットアイドルの待受画面、というのは見事にやられました(笑) この後の演出ラインが若干不安になりますが、ネットアイドルを拾ってくれた事も含め、今回に関しては悔しいけど面白かったです。
ネットアイドル、情報収集能力も資金力もあるし、その内、カリスマ地下アイドルテログループとかになったらどうしよう……。
その頃、我らがヒゲ長官は難波重工に自ら乗り込んでいた!
スクラッシュドライバーについて会長に直談判しようとする勇気溢れる凜々しい長官だったが、会長室に現れたのは、ファウスト活動の罪を被せて闇に葬り去った筈のメガネ元秘書。
「内海……どうしておまえが」
「お久しぶりです……氷室さん」
デキる男にクラスチェンジ、と思わせて、結局今回もオチをつけたヒゲ長官に向けて、内海は余裕の微笑を浮かべるのであった……!
トカゲの尻尾切りの前に難波会長に直接呼び出されるなど、如何にも難波と直接繋がりがある感じだったメガネが復活。この辺り、引っ張りすぎないで次々とカードをめくってくるのは、今作の良い所です。……めくり方が思い切り良すぎて、時に鍋島みたいな事故も起こりますが、メガネカードは効果的になってほしい。
それにしても、
非道な強敵 → セクシー担当 → 溢れ出す小物臭 → スタークの玩具 → ビルドに完敗 → パパバレ → 失脚寸前 → V字回復 → 実質的に戦争をふっかける → 龍我の《説得》に成功 → ごく自然にあらすじ劇場に介入 → 戦兎との絆が発生 → 東都の平和を守るヒゲ司令長官爆誕 → まさかの内海生存でビックリ仰天
氷室幻徳、ここまで面白くなってしまうとは…………。マスターがある程度、予想できる中で最低ぶりが突き抜けて面白くなったのに対して、全く予想できない方向に転がっていて、新しいジェットコースター系悪役の形として、今後も七転八倒を期待したいです。
次回、長官、決死の蒸血――こいつは凄いぜ!