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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第10話

◆#10「まだ終わってない」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
某代ルパンがナンパに使ったのでは疑惑のある新たなVSビークルを手に入れ、意気揚々とビストロに帰還した魁利を待っていたのは、熱血赤いお巡りによってコレクションがギャングラーごと轢き潰されたという残酷な現実であった。
「何やってんだよ…………。何やってんだよって聞いてんだよ?! 任せろって言ったろ。コレクション全部集めなきゃ、兄貴たち取り戻せないんだぞ!」
ここで魁利が失意に沈む“仲間達”に対して一番最初に見せる感情が、気遣いでも空元気でもなく「怒り」というのが、快盗達の置かれた常に瀬戸際の立場と、望みを絶たれた絶望の大きさを改めて強く示して、まず秀逸。ここで手ぬるい描写をしない事で、快盗達の危うく張り詰めた関係と状況がしっかりと伝わってきます。
「…………終わったな」
無言で脱力する透真、謝り続ける初美花を置き捨て、怒りと失望のままに店を出て行く魁利。
だが……
「……やだ。…………まだ終わりたくないよ」
絶対に取り戻したい者の為、足掻く事を願う初美花が呟き、サブタイトルの仕掛けが見えた瞬間は、ぞくっとしました。
怒りと落胆、絶望と悲しみ、感情を処理しきれない魁利が力なく歩道橋にもたれかかっていると、そこを通りすがったのはよりにもよって朝加圭一郎。
「どうした? こんな時間にこんな所で」
「話しかけるな。今あんたの顔は見たくない」
圭一郎にとっては守るべき市民にして顔なじみのレストラン店員(しかも、割と苦労して頑張っている青年)だが、魁利にとっては全ての希望を絶った元凶ともいえ出来る事ならぶち殺してやりたい相手であり、互いの持っている情報の差を活かしつつ、ここでも魁利が取り繕いきれない怒りを身に纏っている、というのが感情表現として自然に納得がいきます。
「荒れているようだな。何かあったのか」
だが職業柄、圭一郎はむしろそんな青少年の態度には慣れきっていた。
「関係ないだろ」
「そうはいかん。市民の安全を守るのが俺の仕事だからな。そんな目でうろついてたら絡まれるぞ」
背を向けて歩み去ろうとする魁利を圭一郎が追いかける姿が、明らかに第2話における魁利と魁利兄の構図に重ねられており、魁利がそれを思い出すのかと思ったら、今回時点では特に言及なし。
「春になると、妙な奴が増えるんだ。……そういや、一昨日も見かけたなぁ。変な服を着て、歩きながら氷を食っていた」
その場はスルーした割にはしっかりザミーゴの事を覚えていた圭一郎ですが…………さては圭一郎、最近、変な奴(ギャングラーとか快盗とか)と接触しすぎて、変な奴センサーの感度が落ちている(ハードルが上がりすぎている)な?!
「どこで見た?」
「え?」
「そいつだよ、その氷野郎!」
それこそ兄らを氷浸けにして消し去った張本人に違いない、と思い至った魁利は圭一郎に食いつき、予告からはもっと、圭一郎の言葉が魁利の心理に変化をもたらすような流れを期待していたのですが、あくまで「情報」の提供に留まり、この邂逅は予想よりもあっさりめ。ここはまだ第10話だから……という事なようですが、魁利兄弟との映像的な重ね合わせというプラスアルファはしっかり仕掛けてきたので、この先どこかで跳ねてくれる事を、改めて期待です。
翌日、コレクションの欠片を拾い集めてくっつけたら元に戻るかも、と無茶だとわかっていながらも諦める事の出来ない初美花はトナカイギャング抹殺現場で地面を必死に探り、やさぐれながらも保護者モードでそれを見つめる透真。
「……初美花、馬鹿な事はやめておけ」
「だって、いつもギャングラー倒しても、ゴーシュが元に戻してでっかくしちゃうじゃん! ……コレクションだって、なんとかなるかもしんないよ」
「……そういえば。……なんであいつ来なかったんだだろ。……おい初美花! まだ、終わってないかもしれない」
そして魁利は、独り氷野郎を探して街を走り回っていた。
まだ終わってない。あいつを倒せたら……コレクションが集まんなくても、兄貴は……俺たちの願いは……)
――終わりたくない。
――終わってないかもしれない。
――終わってない。
従来作の文法でいえば、“諦めずに立ち上がり続けるヒーロー達”を描いているように見えるのですが、個人の目的の為に違法な手段も辞さないルパンレンジャーという戦隊を通す事で、かなり意図的に“希望の味を覚えてしまったが為に過去に囚われ続ける人間達”の姿が織り込まれており、それを肯定的に描くのか否定的に描くのかはまだわかりませんが、本当に残酷な存在はやはりコグレなのでは、という気がします。
その残酷さがどういう形で突きつけられるのか(突きつけられないのか)、そしてその時、「ヒーロー」と「人間」はどこで交差してルパンレンジャーはどう「変わる」のか。
その辺りのテーゼは宇都宮プロデューサーのこだわる部分だと思うので香村さんと綿密に話し合って物語を設計していっていると思いますが、この丁寧な土台作りの上に、どんな物語が立ち上がっていくのか、今回は通してかなり大きな布石の回だと思うので(『動物戦隊ジュウオウジャー』も前半最初の山だった第11話が後々まで物語全体を貫くキーエピソードでしたし)、この後の展開が更にまた楽しみです。
ギャングラーへの違和感を覚えた透真の差し金で、覚え立てのスキル《ハニートラップ》を用いた初美花は咲也に接触、トナカイギャングが巨大化していない事を改めて確認。
「んん、昨日のは…………あれ?」
ここで《ハニートラップ》LV1にあっさり引っかかる咲也をただの道化にせず、初美花の質問から咲也にも気付かせて、つかさの「実は私も、少し気になってはいたんだ」に繋げ、警察も「まだ(事件が)終わってない」事に思い至る、というのは流れがスムーズでしたし、今回は完全に脇に回った警察戦隊のバランスの取り方としても良かったです。
「面白いじゃないか。波風が立つのは」
そして久々登場の親分は、今日も余裕でワイングラスを揺らしていた。
デストラとゴーシュがだいぶ肉付けされてきたのと比べると、飲んだくれて空騒ぎを愉しんでいる以外の面がまだ出てこない親分ですが、果たしてその器の中身は空っぽなのか、それともどす黒い何かが詰まっているのか、どちらに転ぶにせよそろそろ片鱗ぐらいは覗かせてほしい所です。
その頃、遂に発見した氷野郎のアジトに潜入した魁利は、リクライニングチェアに転がって氷をかじる因縁の仇敵とご対面。
「――見つけた。やっと会えたな、氷野郎」
「おやおや、いけないなぁ。人間がこんなとこに来ちゃぁ」
「おまえ、一年前なにしたか覚えてるよな?」
「……んー…………呼吸? なーんて。ははははははははは!」
怒りの魁利は銃を抜くが、それを上回る早撃ちにより砕け散る快盗シルクハット。
……まったく気付いていませんでしたが、今作は銃撃戦主体なので、ザミーゴの衣装はガンマンスタイルという事だったのか。
振り向き立ち上がったザミーゴは、凍結銃はコレクションではなく自らの能力であり、「人を消すなんて簡単なもんさ」とうそぶくと、自ら化けの皮を剥がしてクラゲ怪人の正体を披露。
格好いいか格好悪いかでいうとあまり格好良くはない見た目ですが(特に首回りの黄色い触手)、今後どうやって見せていくかに期待。ギャングラー怪人は、金庫縛りとスーツの動きやすさのバランスを取るのが少々厄介そうに見えますが、ザミーゴは両膝に金庫がついており、抜き打ちの要領でそこから次々とコールドガンを取り出す、というのが特徴的。次から次へと景気良く銃を放り捨てるのがアクションのアクセントとして面白いですが、銃そのものが固有スキルだとすると(ただし自己申告)、それをコレクションの力で無限増殖している……?
魁利とザミーゴの激突寸前、ザミーゴから“化けの皮”を買おうとアジトを訪れたトナカイギャングが入り口で警察戦隊に囲まれて内部へ雪崩れ込み、それを追ってきた快盗青黄も現れて一気に混戦に。
ギャングラー怪人はコレクション以外にも固有スキル持ち・ギャングラー怪人は“化けの皮”を被って人間になりすましており取り替えも可能・ザミーゴは“化けの皮”を取り扱っている・国際警察は街中の監視カメラへのアクセス権限を持ち容疑者の追跡が可能、とこれまで示してきた要素を踏まえる事で違和感なく集結に持ち込んでいるのが、地味に上手い。
「おまえ、一人であいつを追っていたのか?!」
「俺しか居ないと思ったんだ。俺があいつを倒せば、全部取り返せるかもしんないって」


「私たちの願いは一つ」
「たとえ誰かが倒れても、最後にかなえばそれでいい」
「ルパンコレクションを集めて、大事な人を取り戻す。――約束だ」
ここで魁利(レッド/主人公格)が、最後まで諦めない姿でメンバーを引っ張って立ち上がらせるのでもなければ、仲間を信じ抜く事で取り戻された絆でチームが再起するのでもなく、願いをかなえる為には快盗達は各々で立ち上がるしかないし、魁利は思わぬ糸口を見つけた自分しか立ち上がれないと思っていた、というのは戦隊としてはかなり変則かつ野心的な作劇で、意表を突かれました。
正攻法の公権力ヒーローをパトレンジャーで描く一方で、変化球ピカレスクヒーローとしてルパンレンジャーが従来の戦隊作劇の枠を超えてくる、という構成が、コンセプトを活かしてお見事です。
「氷野郎はこのまま俺に任せろ」
「なんでだ?! 俺だって!」
「いいよ。……魁利もあたし達も、諦めずに希望を繋いだんだよ。…………だから――」
「……わかった」
それぞれの願いの為、それぞれの形で立ち上がった快盗達は、それぞれの戦いを全うすべく、VSチェンジャーを手に再び円陣を組む。
「私たちの願いは一つ」
不敵な笑みを浮かべ合った快盗達は、円陣を組んだまま横に銃を向けて変身する変則快盗チェンジし、ここの斜め俯瞰での変身から、テーマBGMと共にアクションシーンへ繋がる流れが非常に格好いい。
「ルパンレッド」
赤は立ち去ろうとするザミーゴに背後から銃弾を浴びせ、青と黄は警察とトナカイ怪人の戦いに乱入。
「ルパンブルー」
「ルパンイエロー!」
「快盗戦隊!」
「「「ルパンレンジャー!!!」」」
「予告する」
「あんたのお宝いただいて」
「この手で、おまえをぶっ倒す!」
戦隊としてはかなり野心的な作劇、と上述しましたが、一方でそれが戦隊としての面白さを削いでいるかというと、クライマックスではしっかりと戦隊らしい格好良さのあるシンクロを見せ、ところが同時に、快盗達の戦いは完全な一致を見ない、という微妙な不均衡によりルパンレンジャーを完成させてしまわない、という構造が非常に慎重に組み上げられています。
トナカイギャングはタイヤ轢殺を間一髪で防いだ固有スキル《脱皮》を発動し、脱皮前に塵も残さず抹殺してやるとメガジャスティックを構える警察戦隊。咄嗟に青がワイヤーでトナカイをグルグル巻きにして脱皮を封じ、メガジャスティックトライアングル一閃の寸前、黄は何とかコレクションを回収。
一方の赤はザミーゴの二丁コールドガンに追い詰められていたが、一か八かステルスジェットで快盗ブーストすると、シールドと巨大ブーメランが具現化。これまでの身軽な路線から打って変わった大型武器ですが、肩にブーメランを構えたポーズがなかなか決まっており、ブーメランの攻撃でザミーゴにダメージを与える事に成功する。
「……ふふふふふふふ、はははははははは! 気に入ったぜ、おまえ。俺の名前は、ザミーゴ・デルマ。また会う日まで、覚えときなー」
首回りの触手を切断されるもすぐに再生したザミーゴは自ら名乗って退場し、新装備と新幹部のアピール合戦としては引き分けという結果に。その方が都合が良いから、と言ってしまえばそれまでですが、ギャングラー幹部クラスが丁寧に名乗ってくれるのは、裏社会のビジネスでは銃弾が名刺代わり、みたいなギャングの流儀なのか。……とりあえず、デストラさんがいきなり踏み台にされなくてホッとしました(笑)
激闘の疲労から赤が膝を付いた所に、お宝を手に駆けつける青と黄。
「……悪い。氷野郎を、逃がした」
「……おまえ、任せろって言ったよな」
「…………言った」
これがいわゆるブーメラン……と気付いて言いよどむ赤に迫る青は、胸ぐら掴む事はなく、腕を取って立たせる大人の対応で、軽く茶化してニヤリ。
「何やってんだ」
今回、快盗3人が各々で立ち上がる姿を描きつつもポジション的に透真はやや割を食っていたのですが、「約束」の音頭を取る初美花に続き、透真がここでアバンタイトルの衝突を水に流す姿を描く事で、快盗3人は誰かに率いられたチームではなく、あくまでも「約束」で繋がった同格の3人として保たれ、この目配りが非常に良かったです。
ルパンカイザーは多重脱皮により100体に分身したトナカイ怪人を、ステルスジェットの快盗武装により剣と盾を装備したルパンカイザーナイト(もう何がなんだか)でぶったぎり、永遠にアデュー。魁利達はコレクションを回収するコグレに敢えてザミーゴの事は話さず、自分達の手札とするのであった……。
そして、妙にぎこちない態度で店を訪れる圭一郎。
「まさか、俺の様子見にきたんスか?」
「ん、いや、そういうわけでは」
「いいっすよ、圭ちゃん」
圭一郎ににこやかに接する魁利は、厨房に向かいながら小さな声で呟く。
「……今回は、プラマイゼロで」
その明るい様子に安心する圭一郎だが、「圭ちゃん」扱いには激しく抗議して、オチ。
コレクション破壊?! の絶望から立ち上がる快盗という後編でしたが、早めの大胆な一手から一つハッキリしたのは、“今後もルパンコレクションは必ずなんらかの形で回収しなくてはいけない事”。そういう点では、驚きのある勝負手をかなり早い段階で消費してしまった事になりますが、これがジャブでしかない展開が待ち受けているのか、この先コンセプトから揺らぐような仕掛けが顔を出すのか、引き続き楽しみです。
次回――国際警察に咲く大輪の華。