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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第11話

◆#11「撮影は続くよどこまでも」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:金子香緒里)
「国際特別警察機構には、異世界犯罪者集団・ギャングラーに対抗できる、戦力部隊がある。それが彼ら……警察戦隊パトレンジャーである」
ヒルトップ管理官の命令により、快盗一味に負けじとパトレンジャーの知名度とイメージアップを兼ねたPR映画に出演する事になる、圭一郎・咲也・つかさの3名。
圭一郎とつかさが出演を渋る一方、やたら前のめりな咲也は
「……やってくれるか?」
「ハイ!」
管理官とがっちり握手をかわし、これ自体が、困難な任務を告げるボスとそれに応えるヒーローのパロディになっている、というのが掴みで面白かったです。
「まあ任務だと思うしかないか……」
「そうですよ。頑張りましょう!」
「なーんでそんなに張り切ってるんだ」
「だって戦力部隊の格好良さをアピールできるチャンスですよ? 人気者になったら、モテますよ!」
「おまえはモテる為に戦力部隊に入ったのか」
つかささんは、お金の為に戦力部隊に入りました。
恐らく、高給の半分をぬいぐるみにつぎ込み、将来の夢はぬいぐるみハウスです。
警察戦隊の棒読み演技による撮影が続く中、咲也の熱演に不満を見せる監督。
「駄目駄目! なんだろう……君、なんか足りないんだよなぁ。こう…………色気っていうか!」
その瞬間、不思議な緑色の光に包まれた咲也の体に、思わぬ変化が。
「「咲也……?」」
「女の子になっちゃたーーーーーー!!」
というわけで、戦隊名物・女装回、を通り越して、THE・女体化。……個人的な記憶の限りでは過去の類例に覚えが無いのですが、史上初だったりするのでしょーか。あと、女性メンバーの男装(厳密には男体化)というのも割と珍しい気がします(ビジュアル的に特に面白くならないからでしょうが)。
「咲也が女になるなんてわけがわからん……」
ギャングラーが絡んでいるに違いない、と撮影を中止して捜査を始めようとする先輩コンビだが、監督はこの状況を面白がって撮影続行を主張、更にメイクの力で完全に出来上がってしまった咲也も、むしろやる気を漲らせていた。
そんなお間抜けな事態が好敵手を襲っているとは知らず、東快映画撮影所にギャングラーの気配あり、という情報に従った快盗達はジャージーなBGMにFPSっぽい画面(試しにやってみたけど視聴者が酔いそうという判断だったのか、3秒程度で終了)で颯爽と乗り込み、女咲也に壁ドンから顎クイのコンボを決められた圭一郎最大のピンチを目撃。
思わず大声を立てて笑ってしまった快盗達の姿がスポットライトに照らし出される、というのは撮影所という舞台設定を活かしつつ怪盗物のエッセンスを取り入れて、お見事な演出。
「「「……あ」」」
撮影所内でも躊躇無く引き金を引く警察戦隊は、マスカレードした3人を追いかけて外へと出るが、そこにギャングラー、ピッチ・コックが登場し、その剣から放たれたくちゃりんぱ光線を受ける、1号と3号。
「……え? ん?! …………ある!」
「は?! ……ない」
「……ない!」
「……ある」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
実際に「ある・なし」を確認する、というのを、咲也→圭一郎→つかさ、と繰り返していくギャグのストレートさは、第8話の事も考えると、脚本家のセンスでしょうか。意外と戦隊、こういうのやらない傾向があるので、一抹の懐かしさと共に大胆な新風を吹かせます(笑)
ルパンコレクションの能力が、“強制的に周囲の人間をズッコケさせる”というのも、子供向けというか30年ぐらい前のギャグマンガの世界というか、意図的に繋げている感じ。
映画ギャングはズッコケタイヤの力を発動すると、かき回すだけかき回して一時撤退。圭一郎とつかさの性別逆転まで面白がる監督はあくまで撮影を続行しようとし、それに賛成する咲也はさすがに先輩コンビにたしなめられる。
「何故そこまでこの映画にこだわる?」
「……先輩達の格好良さを、世間に広めたくて」
訓練生時代、圭一郎とつかさに憧れて戦力部隊を目指すも成績は下位に沈み、夢を諦めようとしていた過去を語る咲也。
「もう、僕には無理だ……」
そこへ通りがかって声をかけたのが、既に戦力部隊の制服に身を包んだ圭一郎とつかさであった。
「本当にそう思っているのか? ……その涙は、まだ諦めていない証拠だろ」
「私たちの使命は、悔し涙を流したその先にあるんだ」
「…………はい!」
励まされた咲也は涙を拭って立ち上がり、憧れに向けて再び走り出す。
「先輩達の言葉を胸に、苦しい訓練も耐えられました。先輩達に憧れる気持ちがあったからこそ、僕は戦力部隊に入れたんですよ」
「…………そうだったのか」
先輩先輩、と懐いている咲也に一定の説得力を与えつつ、しかし個人的には、真っ直ぐさをアピールすればするほど咲也は怪しい(笑)
圭一郎とつかさの某不滅の○を降霊したような激励も微妙に不自然ですし、これは本当に、実際にあった事なのか。
と途中から疑いの眼差しで見ていたのですが……
「…………俺そんな事言ったっかな……?」
という圭一郎の呟きが、本当に言ったけど忘れている(先日も忘れていた)・それっぽい事は言ったが咲也の思い出補正により3割増しで美化されている・なにもかも咲也の捏造、のどれでも成立して、見事な台詞。
わざわざ呟かせたのがギャグなのか伏線なのか、覚えておきたい一言です。
「モテる為に戦力部隊に入ったわけじゃ、なかったんだな」
「いえ、それもあります」
「……あるのか」
きっぱり言い切った咲也、つかさ先輩に羽虫を見るような目で見られる(今回3回目ぐらい)。
「ここで正直に言わなくても」
呆れる圭一郎だが、そこにすっかり熱暴走を続ける監督がやってきて、性別変更により大幅に書き直された台本の元、映画は最初から撮り直される事に。
「国際特別警察機構には、異世界犯罪者集団・ギャングラーに対抗できる、戦力部隊がある。それが彼ら……警察戦隊パトレンジャー、である……?」

「パトレン一号・朝加圭一郎、いや、圭子!」
「パトレン2号・陽川咲也、いや、咲美!」
「パトレン3号・明神つかさ。……これはそのままか」

ナレーションまで巻き込み混沌としていく時空だが、そこに本物のギャングラー構成員が! 更に監督とカメラマンを除くスタッフまで構成員の正体を現し、囲まれた3人は警察チェンジ。構成員を蹴散らすと、ギャグ時空には近づきたくないと様子見していた怪盗と共に、明らかに非常識な監督に銃を向けて取り囲むが、本物のピッチ・コックはカメラマン。
ここで咲也だけがピッチ・コックの正体を言い当てるのですが、その理由が「女の勘です」で済まされてしまったのは残念。思わぬ要素が伏線だった、と繋がるともう一つ跳ねたのですが。
ここまでズッコケギャグ回だった分か、ここから先のアクションは非常に凝っており、三つ巴のスピーディな立ち回り、そして怪盗達がワイヤーで宙を舞う事でズッコケを無効化して3方から囲んでお宝回収、というのは非常に格好良かったです。追い詰められたピッチ・コックのくじゃりんぱ光線で無事に元に戻ったパトレンジャー3人は、ハイテンションなラッシュ攻撃から一斉射撃で実力行使。
「ゴーシュ、映画の完成にもう一度チャンスを」
「え?」
「わかりました」
「は?!」
親分が、ピッチ・コックの作ろうとしていたギャングラーのプロパガンダ映画を楽しみにしていた事実に動揺するデストラさん、ホント苦労人(笑) 如何にも物理で殴るマッチョ幹部な見た目とは裏腹に、段々とギャングラーにおける大和くんポジションになってきていて、思わぬ形で愛嬌がついてきました。
一方、割とストレートに褒められるのが好きらしい親分は、とりあえず「いいじゃないか」路線で進むようですが、ここはサブライターは手を出しにくい部分だったでしょうし、例年の追加戦士の頃合いに、掘り下げがある事に期待したいです。
巨大化したピッチ・コックはルパンカイザーナイトのソード攻撃にくじゃりんぱ光線を浴びせるが、性転換したソードがハンマーへと姿を変え、殴り殺されて死亡。限定玩具の宣伝要素をトンデモない形で入れてきましたが、2年前はクマが気合いでパンダになっていたような覚えがあるので、劇中で理屈をつけただけマシ……?(笑) そして物凄く潔い一発ネタですが、作る側としても、正直本編に取り込むのは厳しい……という苦しさが見て取れます(^^;
初参戦の第8話は、本筋絡みの繋ぎ回という事で個性を出せる部分がかなり少なかった印象の金子香緒里さん、自由度の高い単発エピソードでどういった技を見せてくるか注目でしたが、コスプレギャグ回をやるならいっそこのぐらい、という突き抜け方で、なかなか面白かったです。
例年ギャグ回は、どこまで崩して良いのか探り探りしながら、という作りになりがちですが、怪盗戦隊を脇にやり、警察戦隊を集中的に崩す事で作品全体の雰囲気を守り、W戦隊という構造を上手く活用。また番組開始時点で危惧されたのは、こういった形で警察戦隊が、踏み台×コメディリリーフ×お邪魔虫、としてだけ消費されてしまう構図だったのですが、ここまで警察戦隊の格好良さも十分に積み重ねてきた事により、思い切りギャグに振っても警察サイドが貶められている印象がない、と全体のパスワークも見事に繋がりました。
パトレンジャー側のキャラクター強度が光るとともに、肝心の部分は茶化してしまわないという、演出含めたバランス感覚も良かったです。