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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第13−14話

◆修行その13「シンシン!精霊の舞い」◆ (監督:辻野正人 脚本:吉村元希)
前年、松竹の『魔弾戦記リュウケンドー』に参加していた辻野監督が、『デカレンジャー』以来となる戦隊参戦。割と好きな監督です。
「絶望だけでは臨獣拳の高み……おまえの欲する強さを得るには、まだまだ足りん」
「だからこそあなたの教えを乞いたい、マスター・カタ」
「これより先には、憎しみが必要だ」
タカは理央の、心の痛みを活性・増大させる気の流れを刺激する事を告げ、再び拳を向ける。
「己の弱さを知る事は、考えるほど簡単な事ではない。そしてそれは憎しみへと繋がる。覚悟せよ若獅子よ」
熱い視線で理央様と見つめ合っているタカが気に入らない、と邪魔に入るメレだが、そこへ飛び込んできた白と黒、2人の臨獣拳士の攻撃を受ける。それは空中戦を得意とする飛翔拳の使い手でありタカの親衛隊、ツルとカラス。対照的な純白と漆黒の配色ながら、それぞれ片翼で、並ぶと両の翼が広がるという2人1セット左右非対称のデザインがなかなかの格好良さ。
タカに礼をする両者の姿から銅鑼の音が響いてオープニングナレーションに入り、ホント今作、ここが決まるだけで2割増しぐらいの加点になります(笑)
一方、激獣拳メンバーはクラシックバレエを鑑賞しており、凄く普通に客席に居る猫。やはりこの世界では、獣人はたまに街で見かける程度の希少価値なのか。
「美しさは、僕の向上心を刺激する」
と真剣に見ているのはレツだけのトライアングルは、ゾワゾワを感知して出撃。そこではツルとカラスが街を無差別攻撃しており、立ち向かったトライアングルは毎度の事ながら手も足も出ずに完敗。更に巨大化したツルとカラスの空中攻撃に対してゲキ象トージャのハンマーも通用せず、W鳥類キックを受けた上で用無しの雑魚と捨て置かれるのであった……。
「ふふふふ、死闘の中に修行あり。若獅子よ、増幅した心の痛みは、おまえの心を、壊してしまうかもしれんぞ……?」
「強くなる為に、失わなければならないものがあったとしたならばそれは! 俺にとって必要のないものだという事でしょう」
野生児であったジャンが激獣拳やその他の人々と関わる事で何かを得て強くなっていくのに対して、孤独な屍者の玉座に坐し強くなる為に何かを切り捨てる事を選ぶ理央、という対比がなされるのですが、それならばこそ、前回の源さんのようなゲストキャラとの関係性は大事に描いてほしかったところ。
着ぐるみマスター達が続々セミレギュラー化、というのはそれを補う意図があるのでしょうが、それはそれで世界がビーストアーツの中で閉じてしまわないかは大変心配です(その点、関係者とはいえ獣拳の外側に居るなつめの再登場は明るい要素で、継続登場を期待したい)。
「憎め……己の弱さを。憎め……己の過去を!」
理央様がホーク拳を喰らい再びぶほぉっとしている頃、マスター猫の勧めで夜の湖を訪れたトライアングルは、湖畔で華麗に舞う仮面の人物を目撃。水の上をも舞台とし、重力さえ超える優美な舞いはジャンやランすら感嘆させ、レツに衝撃を与える。その舞い手こそ、第3の拳聖――バット・リー。
この舞踏のシーンにかなり尺を割くのは、今作全般の映画的作劇への意識が見えるところ。ロングの映像で雄大な風景の中に舞いをはめこむ辻野監督の演出も面白く、戦闘で悪を倒す、以外の“見せ場”を創造する事で戦隊作劇の幅を広げようという挑戦と意欲は感じるのですが、そうはいっても
今週のゲキレンジャーの活躍:手も足も出ず怪人に叩きのめされて相手にする価値もない連中だと見逃される(通算4回目)
は週1のTVシリーズとしては厳しい作りだな、と。
敗北→対策を練って再戦して勝利、というパターン自体はフォーマットの一つですし、有利な敵の撤収理由というのは様々な戦隊で苦労が見える所で、例えば2年後の『シンケンジャー』の乾燥肌も、基本設定と繋がってはいるものの使い方があまりよろしくなかったりしましたが、今作の場合、毎度「修行」に繋げる為に毎度「徹底的に敗北」が繰り返されすぎて、話作りにもう一工夫は必要な部分であったと思います。
そして、スクラッチでクレープを頬張りながら、あのコウモリ、頑固で偏屈ですよねと猫で語らう真咲さんが最近ちょっと他人事風味で気になるのですが、ゲストマスターを出す回は真咲にまで師匠的役割を割り振れない、というのも事情が若干難しくなっている感。
弟子入りを願い出るも拒まれたレツは自分の美しさを見せつけようと変身してリーと拳を交え、今回のクライマックスバトル代わりという事で、演武のような戦闘シーンは、リズミカルかつ切れが良くて面白かったです。
この組み手で何かを感じ取ったのかリーはレツの弟子入りを認めるが、ジャンがゾワゾワを感知。再びツルとカラスが街で暴れ始め、ジャンとランはレツを修行に残し、ツルとカラスを食い止める為に街へと向かう――。
ゾウの時も全く同じパターンだったので、ビーストアーツとはそういうものだと受け止めるしかないのかもしれませんが、激獣拳士達の、修行=30分ぐらいで終わるものという認識が怖い。
今作、なるべく視聴者に「悠長に修行している場合ではないのでは……」とか「何も成長していないのにどうするのか……」とか思わせないように話を転がさなくてはいけないと思うのですが、あらゆる地雷を的確に踏んでいくのも困ったところ(^^;
そして残ったレツは、バットから衝撃の言葉を告げられる。
「私の教えはただ一つだ。――技を捨てろ」


◆修行その14「ネツネツ!技を捨てろ」◆ (監督:辻野正人 脚本:吉村元希)
開幕、赤と黄が駆けつけた事でツルとカラスが広域落雷を先送りにした描写が入ったのは良かった……のですが、赤と黄がカラスによってゴミ捨て場に投棄された後、方針を元に戻して落雷の術のパワー充填を続行し、負傷した赤と黄はスクラッチに撤退して怪我の治療を始めてしまう為、結局間延び。
やりすぎると舞いの修行とのギャップが激しくなりすぎるという意識はあったのでしょうが、それにしても迫り来る危機、という緊迫感がまるでありません。
この「修行」の都合で物語に一定以上の「緊迫感」を与えられないというのも今作の大変困ったところ。
前々回の東京火山大作戦の時はセンザンコウ拳士の性格をギャグに寄せて誤魔化していましたが、怪人のキャラクター性で処理できているかというと、全般的にそこまで怪人の性格が面白いわけでもないですし……そう考えると、荒川脚本のサソリ×カエルカップルは、ある種の苦肉の策であったというようにも思えてきます。
(技を捨てる……技を捨てる……どういう事だ?)
コウモリの「技を捨てろ」という言葉に迷いながらも、見よう見まねで舞い踊るレツ。
(そもそも技とは……技とは、なんなんだろう?)
ロングのカットで、画面を広く使いながらひたすら舞い続けるコウモリとレツの姿が描かれ、試みは面白いといえば面白いのですが、自分たちの世界で踊っている師弟・基地で歯がみしているとお使いを頼まれるジャンとラン・話の都合によりその間は全く存在を無視されるツルとカラス(人々の悲鳴で雷の術が充填されるという事は、街の被害は拡大している筈なのですが……)と、それぞれの状況の乖離具合が激しく、物語としては大変まとまりの悪い事に。
ここ数話、ソロヒーローの映画作品の要素をトライアングルに分散して展開している為、1人の修行中に残り2人が余る、という展開が続いているのですが、どうにかここを「戦隊」と組み合わせる為の工夫が、もう一つ二つ三つぐらい必要だった感じで、地味に空中分解してしまっています。
美希からお使いを頼まれたジャンとランの見る前で、舞い続ける事による披露と集中から無の境地に達したレツは、無意識の内に水面を舞う事に成功。
「忘我の中に修行あり。我を忘れて、夢中になる事だ」
レツは意識して技を使うのではなく、無意識の内に技と一体化する術を悟り、前後編でのゆったりとした作りに、哲学的な言い回しの修行内容そのものはここまでで一番面白かったのですが、この路線だと児童層にはわかりにくい、と判断されるのをやむを得ないように感じ、「修行」というテーマの扱いの難しさが重くのしかかります。
ツルとカラスの落雷の術発動寸前、ジャン達の届けたゲキファンを手にしたファンタスティック・テクニックが乱入。
「今日の大輪の華は、ひと味違うよ!」
挿入歌をバックに、ゲキファンを用いたアクションの立ち回りは格好いいのですが、背後でエールを送るだけの赤と黄の棒立ち具合が大惨事で、なんかもう、ソロヒーロー3人居た方がスッキリしたというか、理央も含めて本当はそういう事をやりたかったのだろうか、というレベル。
戦況不利となったツルとカラスが巨大化し、空を飛ぶ敵にゲキトージャでは打つ手無しかと思われたその時――
「忘我の境地で激気を打ち出してみろ!」
とコウモリがアドバイスを送ると、赤と黄も一緒に忘我の境地に入れてしまい、修行を立てればトライアングルが立たず、トライアングルを立てれば修行が立たないという地獄絵図。
ゲキトージャ状態なので3人の意識が一体化している……という事なのかもしれませんが、それならそれでもう少しそれらしい台詞で納得度を上げてくれればいいのに、ジャン語ノルマにより「ネツネツだ!」が合言葉になってしまう為、納得度は星の彼方。
どっちを向いても悩ましい……。
とにもかくにも召喚されたゲキバットが雷の術式を粉砕し、飛行モードの獣拳武装、ゲキバットージャ・バーニングアップ。……ところで象の時から気になっていたのですが、獣拳武装すると背中に生じる三角形の光、東映の三角ですよね?
ツルとカラスを追いかけての飛行戦はあまり面白くならず、ツルを体当たりで撃墜したバットージャは、超ナルシスト竜巻からの超ナルシストファンでカラスを倒すのであった。
「シャーフー、いまどき、技に美しさを籠める事の出来る青年に出会えるなんて、思ってませんでしたよ」
レツは拳聖公認ナルシストとしてビーストアーツにその名を刻み、一方、臨獣殿では黒い闘気を纏った理央が獣のごとく吠えていた。
「俺は憎む……俺が強くなるのを阻む全てを!」
己の中の憎しみを新たな臨気として手なずけ纏う理央だが、メレはそんな理央の姿に不安を覚えていた……と、臨獣殿における経営方針の対立は、引き続き面白い要素。
そして、さすがに死んでいなかったツルは、相棒のカラスを倒された憎しみを糧にゲキレンジャーに復讐の臨気を燃やしていた……で、つづく。
この数話、今作の設定・構造上の問題点が次々と明確になっているのですが、あらゆる地雷を踏みながら膿が噴出している、としか言いようがなく、ここで問題点が整理される事で早めに修正される事を祈りたいです。世の中、2クール目の締めに猛毒が全身に回るとか、不発弾扱いで放置したまま溜め込んでいた爆弾が4クール目に全て爆発、とかあるので、考え方によってはまだマシなのでは!
次回………………お、おかあさんといっしょ(笑)