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『マイティ・ソー バトルロイヤル』感想(ネタバレあり)

 最強の姉、襲来。
 オーディンの死により、追放されていた死の女神ヘラが復活。立ち向かったソーは大事なハンマーを握り潰され、アイデンティティ崩壊の危機に陥ってしまう。アベンジャーズ一の萌え、じゃなかった兄キャラから、弟キャラとなってしまったソーは、果たしてアスガルドを守る事が出来るのか?!
 家庭内ヒエラルキーの急降下によりかつてない危機を迎える『マイティ・ソー』単体映画第3弾……ですが、位置づけとしては《アベンジャーズ》と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を繋ぎ、『エイジ・オブ・ウルトロン』から『インフィニティ・ウォー』への橋渡しをする、というクロスオーバーの宇宙的接点となる物語で、MCU諸作品との関係性が強めで、特にハルクをかなり補完。
 一方で、『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』のラインが、国際情勢やアメリカの世相を反映し、現代とのシンクロを重視しているのに対して、アベンジャーズ規格外組のハイパワーな神様と無敵の超人が、こちらはこちらでエキゾチックな異世界で大暴れするぞ、という大活劇の面が押し出されて差別化が図られているのが特徴。
 一つの映画としての物語を進めつつ、あちこちに散らばった要素を拾い集めて本筋に合流させていく、という点では凝った事をしているのですが、その為に一本の映画としては完成度とカタルシスを削いでしまった感は若干あり。ゲスト出演のドクター・ストレンジが単独映画よりも遙かに感じ悪くて、ああ成る程こういう位置づけなのか、というのがわかったのは良かったですが(笑)
 序盤から、てんこ盛りのアクションの中に隙あらば脱力系ギャグを挟み込んでくる作風で、ギャグの方向性が合う合わないでかなり好みの分かれそうかなとは思います。個人的には、三分の一は面白くて、二分の一は許容範囲で、六分の一は白けた、というところ。
 ただ終盤、ブルース・バナーが自らの意志で「ヒーローになる」所をギャグにしてしまったのは明確にいただけず、そこは率直に残念。
 にしても、熱烈なキスの直後に「それはそれとして、戦力が必要だわ」と大穴に蹴落とされたトラウマで、2年間ハルクだったブルースは可哀想すぎる……。
 冒頭に登場するスルトがデザイン的にもCG表現的にも格好良くてお気に入りで、導入からそれを惜しげもなく見せてくる豪華さは実にマーベル映画。
 一方で、映像は凄いけど中盤のエキゾチック異世界宇宙にもう一つ盛り上がれなかったのを含めて、面白くないわけではないけれど個人的なツボには惜しい所で刺さってこない映画でしたが、覚醒ソーは格好良かったですし、ロキ面白映画としては満点の出来(笑)
 ハンマーにぺしゃんこにされそうになるロキ、ミッドガルド仕様の黒スーツが滅茶苦茶格好いいロキ、彼女にフられた兄上を慰めるロキ、地球観光していたら兄上にマジギレされるロキ、ヘラから全力で逃げようとするロキ、しれっとグランドマスターに取り入っているロキ、ハルク登場に(聞いてないよ……)となるロキ、「さぷらーいず」なロキ、兄上と宇宙マシンガンでヒャッハーするロキ、兄上に存在を認めてほしいロキ、「たすけてー」なロキ、プルプルするロキ、ちゃっかり救世主なロキ、結局兄上とハグしたのかロキ、とひたすらおいしい。
 それから、なんだかんだ尊敬している父上の為に大冒険の末に頑張って帰ってきたら、お城の天井にお父さんが昔ハッスルしていた頃の記念写真が隠されていました、というのは、再び家出しても許されたと思います兄上!
 そこ含めて、王の帰還と誕生、試練による父との合一と新たな世界への旅立ち、という神話構造は綺麗に収まりました。
 勿体なかったのは、原題の『ラグナロク』から邦題への変更で、これにより物語としての感動のポイントが全然ズレてしまったというか、このタイトルによって生じる筈だった構造の妙がどこかへ飛んでいってしまった気が。
 次は『ジャスティス・リーグ』を見るか、『ブラックパンサー』を待つか……。