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『証言! 仮面ライダー<平成>』、読了

講談社ムック『仮面ライダー 平成』(『クウガ』〜『鎧武』)に掲載されたインタビューを一部、加筆・修正してまとめた一冊。
同コンセプトの『昭和』は、思い出補正がかかりすぎているのと当時の撮影環境などが相まって、面白いを通り越して今では笑えない武勇伝集のような赴きになっていましたが、それに比べると鮮度は高め。
回顧のたぐいは数年後のものでも話半分程度に聞いておいた方が良いところがありますが、現在進行形で作品と関わっているプロデューサーや監督、脚本家などの証言が多数収録されている為、企画コンセプトの立て方や、現場での手法、作品制作のシステム的な部分への言及も多く、思い出語りだけになっていないのは、良い内容でした。
一番ビックリしたのは、仮面ライダーキバ』麻生ゆり役の高橋ユウさんは、当時17歳。
なんて役をやらせていたんだ(笑)
……まあ、『仮面ライダーファイズ』園田真理の芳賀優里亜さんも、当時15歳でダメンズハーレムの女王として君臨する羽目になっていましたが!
本文記事から幾つか、まずは最近『ゲキレン』関係でよく話題にあがる塚田プロデューサーについて。


 彼は「ジャンル作品」が、好きなんですよ。だから、特定ジャンルの諸要素を活かしてリブートするっていう感じの作り方になるんです。で、もともと箱庭好きだし(笑)。
白倉伸一郎

 その塚田さんですが、白倉さんの奔放さとは対照的に、オーガナイザー(主催者、組織者)だといえます。作品が秩序だって、きちんと箱の中に収まっていることが好きなんですね。面白いもので、外から見ると箱なんですけど、箱の中に作品が収まれば収まるほど、その箱には無限の世界が詰まっているようになるんです。それが、塚田さんのヒーローものにおける作品作りのポリシーなんだと思います。
田崎竜太
白倉さんと田崎監督の塚田P評がかなり近いのですが、『マジ』『ゲキ』『W』『フォーゼ』と見て、色々と成る程。箱の中身を作り込む事で、そこから色々な話が生まれる広がりが出来る、という感覚はなんとなくわかります。そういう意味では、その箱作りが非常に上手く行ったのが『W』で、もう一つだったのが『フォーゼ』だったのかな、と。
感想本文で何度か触れましたが、個人的に『フォーゼ』はどうしても、箱の外から来た弦太朗が、箱の中に影響を与えてまた箱の外へ去って行く構造だったと思うので。
ちなみに塚田さん、『フォーゼ』について

 卒業式のプロムはぜひやりたいテーマだったんですが、中島さんも三条(陸)さんも長谷川(圭一)さんも書きたくなかったみたいです(笑)
それであの回は凄く微妙な出来だったんですね……。
シリーズ初期、あくまで「仮面ライダー」シリーズではなく、日曜朝8時枠という考え方で企画を進めていた頃、後に『龍騎』となる企画で亜空間バトル要素、チームではない集団ヒーローの構築を2大テーマにしていたという白倉さん……

 そう、『世界忍者戦ジライヤ』が試みたことに近いですよね。『ジライヤ』は世界忍者が並列しており、各々が個々の考えで動くというヒーローの集団が活躍していました。磁雷矢は、亜空間で戦うこともありましたしね。
白倉伸一郎
ジライヤが亜空間?で戦ったといえるの、せいぜい第6話の音忍・宇破戦ぐらいですし、世界忍者を並列したヒーロー集団と捉えるのはなかなか難しいところがあり、正直、メタルヒーローくくりでこじつけている感が(笑)
まあ『ジライヤ』、ある意味では「正義」不在の作品世界とはいえるので、『龍騎』と通じる精神性はあったのかもですが……そういえば『宇宙戦隊キュウレンジャーvsスペーススクワッド』のCMがやたらとジライヤ推しでしたが、東映の中では今『ジライヤ』が熱いのでしょうか?! 確かに今年で放映30周年ですけど?! という事は、2023年頃には『○○戦隊vs紫のアイツ』が見られるんですか?!
フォージャスティス!!
……すみません、例の発作です。

 「仮面ライダー」はそれ自身がジャンルになり得ていないんですが、「スーパー戦隊」はそのものがジャンルとして確立しています。ならば「仮面ライダー」はジャンルになれない反面、既存のジャンルをもってくることができるんです。それが、仮面ライダー枠なんでしょうね。いいも悪いもなく、いつの間にかそうなってしまった「仮面ライダー」の特性がそれなんです。
白倉伸一郎
白倉さんは<仮面ライダー>にはフォーマットがない、フォーマットを構築したかった、というこだわりを繰り返し述べているのですが、『W』以降のいわゆる2期作品を見ていく中で、もうそういうものなのかもしれない、というのが近年(2014年当時)の捉え方になっている模様。
個人的に毎年なんだかんだと<戦隊>の方が見やすいのはこの、フォーマットの有無に対する一種の安心感なのであろうというのはあって、「型」が有るようで「型」が無いところに、外から「型」を導入できるというのが今となっては強み、というのは頷ける<仮面ライダー>観です。
最後に二つ、特に印象に残った記事として、まずは小林靖子さんの長石監督との思い出。

 これまで東映でいろいろなお仕事をさせていただいて、一番印象的な監督は、亡くなった方ですが、やはり長石(多可男)さんですね。脚本が面白いか面白くないかをズバっとおっしゃる。「これ、面白い?」って。こちらも、監督がノッているかノッていないか、すぐにわかるんですね。なので監督の様子によっては、「なんとかしなくっちゃ」となるわけです。『ギンガマン』のころからずっとそうでした。長石さんはしっかりしたドラマを撮りたいという意識も、作品を面白くしたいという思いもとても強い方でしたので、1か所でも撮りどころのある脚本が上がったときは、ほんとうに嬉しそうに「ありがとう、死に物狂いで撮るよ」っておっしゃってくださるんです。それも主要エピソードではない、なんでもないエピソードでもなんです。ほんとうに、長石さんは素晴らしい監督でした。
小林靖子
それから、荒川さんの『クウガ』の先で(もう一度高寺さんと)やりたい事。

 伊東四朗さんがご自身のお芝居の目標として、「何もないけど面白かった」ということを挙げられているんですが、そういう感じ。たいしたテーマとか感動とかはなくても、観ている間はただただ楽しくて、終わったらちょっとだけ元気になれて、おかげで「明日またがんばってみるか」と思えるような。そんなヒーローを生み出せたらいいですね。東映でも角川でも、円谷プロでもいいので……。よろしくお願いいます(笑)。
荒川稔久
証言!仮面ライダー 平成 (キャラクター大全ノンフィクション)

証言!仮面ライダー 平成 (キャラクター大全ノンフィクション)