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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第23話

◆#23「ステイタス・ゴールド」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
ある日のドグラニオ邸、親分達3人が揃って出勤してくると、大胆にもボスの定位置とその両サイドで飲み食いに興じているギャングが3名。それは黄金の金庫を胸に持つライオンと、部下のキーウィとウシという、ライオン軍団であった。
「よぉ、ドグラニオの爺さん。顔が見えなかったんで、勝手にやらせてもらってるぜ」
朝からストレスマッハでハンマーを振り上げたデストラさんを軽くいなして席を開けるライオンですが、芝居っけを出してギリギリでかわした結果、デストラさんのハンマーがボスの椅子を粉砕、という大惨事が巻き起こらなくて良かったです。
「「「……あ」」」
ボスはライオンの温もりがまだ残っていそうな椅子に平然と座る器の大きさを見せつけ、不敵に顔を寄せるライオン。
「俺様じゃ、不服か?」
「いいや。愉しみにしているぞ」
一方、ジュレでは一人訪れたノエルがランチを堪能中。
「今日のランチも最高だー」
「いちいち上辺で褒めなくていい。黙って食べてくれ」
「透真って、ノエルさんの言う事、ぜっんぜん信じないよねー」
透真が顔も上げずに冷たく突き放す一方、初美花の対応は少し柔らかいのですが、咲也と一緒に壺の中に飛び込んできた背中を見て何か思うところがあったのかもしれません。……一歩間違えると、「あの時の……お礼です!」と咲也の横に立つノエルに手作りクッキーとかプレゼントする流れですが、とりあえずそのルートではなくて良かったな咲也!
透真の料理に舌鼓を打ったノエルは、ギャングラーがらみと思われる料理学校講師の連続行方不明事件を解決する為、囮捜査に協力を要請。
「いいだろう。ただし、コレクションは俺がいただく。これが条件だ」
かくして始まった宵町透真先生のクッキング教室はノリノリで進み、受講生として紛れ込んでいた牛ギャングに見事にさらわれる事に成功。ライオン軍団の活動が忙しくなる前に、眼鏡にかなう人間の専属シェフを見つけようとしていた牛とアジトの船上で戦う青と銀だが、お宝によるマイクロウェーブ攻撃に苦戦している間に、ライオンとキーウィが合流。ステイタス・ゴールドの金庫は手持ちのビークルでは解錠出来ない上、ライオンの攻撃を受けて青ビークルが損傷した事から、一時退却を余儀なくされてしまう。
もはや装備品の一つとしてグッティを取り出したノエルは魁利と初美花に救援要請の伝令を頼み、あれだけ自由を愛し、ブラッと気ままにやってきたグッティがノエルの言うがままなのですが、これは友情なのか、それとも知らない間につけてて良かったでお馴染み忠誠回路を内臓されてしまったのか大変不安になります。
……まあ、グッティがノエルに友情を感じているのは事実のようですし、ただでさえノエルが両陣営を行き来するのに、グッティまで落ち着かないと面倒くさい、というのはあったのでしょうが、グッティの特性が急に消滅してしまったのはやや引っかかるところ。これもあって、ノエル登場前に内面の掘り下げをして魁利とも友好度を上げておいたのでしょうが(一方、圭一郎とは下がりっぱなしなのが後半へのボディブローになったりするのかどうか……)。
潜入作戦続行の為、透真が牛と料理勝負をしている間にVSビークル青の修理を申し出るノエルだが、透真はビークルを渡す事を拒否。
「……俺の願いがかかった大事なものを、他人に預けるわけにはいかない」
「他人、ね」
「そうだ」
「仕方ないね……でも、僕は君のこと、他人とは思えなかったけど」
不審げな透真に、料理教室での真摯な講師姿に、プロの誇りを見たとノエルは語る。
「あの時の君は本当に、真剣に料理と向き合っていた。向き合わずにはいられない。プロの料理人の顔だったよ。……僕も同じだ。今は、快盗だったり、警察だったりするけど、コレクションを扱うプロだ。壊れたコレクションを、そのままにしておくなんて出来ない。……この気持ちも、信じてもらえない?」
真摯に語るノエルの姿に、ビークルをじっと見つめた透真は、しばし目を閉じると、息をつく。
「……おまえと手を組むんじゃなかった」
ビークルをノエルに預けた透真は料理対決の場へと向かい、婚約者を取り戻す希望の命綱ともいえるビークルを手元から離す事への逡巡を通して、透真の想いの強さが強調されたのは良かったです。そしてその透真を丸めこ……もとい、かき口説いてみせたノエルですが、前回の咲也にしろ今回の透真にしろ、入念な事前調査を感じる心の隙間に付け込む手並みが鮮やかすぎて、どうも素直に信用できません(笑)
前回の初美花の件で怒りや責任を感じていたのは、誰も見ていないシーンなのでノエルの「真実」と見て間違いなさそうですが、では咲也や透真と面と向かった時に口にしている言葉が「真実」かといえばそうとも限らない、という作劇が大変いやらしいのですが、疑っても疑わなくても、どちらに踊っても見ている分には面白いというバランス感覚はお見事。
そんなわけでノエルに関しては、踊るだけ踊っていきたい所存。時に咲也も巻き込みたい方向で。
牛の豪快な調理と透真の繊細な調理が対比され、割と尺を採った料理対決に勝利する透真だったが、実はライオンの為に料理する事に無上の喜びを見出していた牛は連れてきたシェフを勝たせるつもりがなく、逆上して透真を襲撃。
「俺よりうまいもんつくれる奴は、いらねぇんだよぉぉぉぉぉ!!」
なぜ有名レストランのシェフなどではなく、料理学校の講師という微妙なポジションだったかという理由が屈折した愛と共に明かされるのですが、ギャグに片足突っ込みつつ今回も、「俺に勝てなきゃ、この場で始末するからな」と既に複数の被害者の存在が示唆されているのが、ハード路線。
嫉妬に燃える牛に絞め殺されそうになる透真だが、間一髪のところでノエルが駆けつけ、ひらりと大ジャンプ。
「遅いぞ。とっくに勝負も付いた後だ」
「結果は?」
「勝ったさ。――プロの料理人だからなぁ」
やけに溜めるところに透真のダメな部分が凝縮されていますが、薄々思っていた通り、透真はやはり、自尊心をくすぐられるとコロリと転がるタイプ(笑)
あちらこちらに彼女による調教の軌跡が透けて見える透真ですが、冒頭の「いちいち上辺で褒めなくていい。黙って食べてくれ」の際に顔も上げないのは心中、
(い、いくら俺の料理を褒めたって、毎日食べに来たって、俺は心を許さん! おまえには心を許さんからな高尾ノエルーーー! 何を出しても黙々と食べているか初美花しか見ていない警察戦隊どもと違って、的確に料理のポイントを見極めてくるその舌、それは認める……! だが俺は、おまえには、決して、ほだされはしない! だからもう、それ以上、俺の料理を褒めないでくれーーーーーー!!)
と必死に葛藤していたに違いありません。
透真とノエルは二人並んで快盗チェンジじ、そこに赤と黄も合流して、勢いで初の4人並んで揃い踏み。ルパンXの、圧倒的な面の皮の厚さが光ります。
赤と黄はライオンとキーウィに苦戦するもシールドで辛うじて難を逃れ、青と金は連係攻撃でエコ……じゃなかった、デンジレンジブレスを回収(今回はわかりやすい)。再び快盗チェンジした銀を混ぜ、分身赤×3&青黄銀、という今作最多の6人必殺で牛を撃破し、巨大戦では今回もX祭で派手に勝利を収めるのであった。
現場がかなり面白がっているのか、キャンペーン中としても通常・巨大戦ともにXチェンジが見せ場としてしっかり組み込まれていますが、ルパンカイザーと並んでのソード&丸鋸から、ガトリングカウンター、という流れは見栄えがして格好良かったです。
ノエルは事件の解決を、パトレンジャーに事後報告。
「なにか問題でも?」
相変わらず警察戦隊に対しては挑発的な言動に、アムールの絆で結ばれた咲也でさえ顔をしかめるが、何を思うか圭一郎は落ち着いてそれを受け入れる。
「……いや。それより、逃げた2体のギャングラーの情報を教えてくれ。我々の方でも警戒したい」
「ウィ、勿論」
一方、ビストロではゴールド金庫の情報が共有され、ノエルに対する透真の語り口に、変化を感じ取る初美花。
「透真、ノエルさんの事信じるようになったんだ」
「……あ、まあ……少しだけな」
目を泳がせながらもそれを認めた透真は、初美花と魁利に背を向けるとビークルを見つめながら微かな笑みを浮かべて、つづく。
……最後の最後にもう一度シーン変わって、邪悪に笑うノエルでオチたらどうしよう?! と思いましたが、とりあえず良い話風のまま終わりました(笑)
終わりましたが、修理にかこつけて、青いビークル自爆装置とか仕込まれていないか心配です。
X「違うね透真くん。そこが、ベストの位置なのさ。君には、コグレを消す為の最後の仕上げになってもらう。そう、スープに隠された、一つまみのタイムのようにね(ぽちっ)」
SE:どかーーーーーん!!
X「君のディナーに、アデューー」
前回今回と、“全方位に怪しく胡散臭いニューカマー高尾ノエルが、快盗・警察双方の信頼を少しずつ勝ち得ていく”という構造になっているのですが、あまりに構造がストレートすぎて、一ひねりありそうな気がしてなりません。つけ込みにくい相手と判断しているのか、どうも圭一郎を警戒しているフシがありますし……。
ただ、「今は、快盗だったり、警察だったりするけど、コレクションを扱うプロだ」の言い回しは良かったので、透真を翻心させたこの誠意を本物だと思いたい気持ちも多少はありますが、そもそもこの言葉自体が透真の共感を誘うポイントを的確にくすぐっているわけで……という、この辺りのさじ加減は実に巧妙。
出オチ感満載のライオン軍団は早くも3分の1がリタイアしましたが、金色の金庫が手持ちのビークルでは開けられない事により、この先で一つステップアップがあります、と先に見せてきたのは上手い期待感の繋ぎ方。ステイタス・ゴールドがどんな壁になってくれるのか、見せ方が楽しみです。
時期的にキャストのスケジュール調整が考えられたのか、警察戦隊は冒頭のコスプレとオチのみ、快盗も大半のシーンが透真とノエルだけ、というエピソードでしたが、両陣営を行き来できるノエルの存在により一方に偏った構成が展開しやすくなっているのも、ノエル効果といえましょうか。
次回、ここまであまり接点のなかった魁利×つかさ回という事で、これはかなり楽しみ。補導の危機?に直面した魁利が圭一郎以外とどのような距離感を構築する事になるのか、そして果たして、魁利に、おでこつん、は通用するのか?! 意外とクリティカルヒットしたらどうしよう!!