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『星獣戦隊ギンガマン』感想・第24話

◆第二十四章「ブドーの執念」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
死闘の末、ギンガの光によって新たな力を手に入れたギンガマンはひとまずの休息を得、調子に乗るヒカルを一斉攻撃する年上トリオ、子守の思い出を語り始める。
「また始まった……」
大変、面倒くさいですね!
「もっともリョウマはすぐ逃げ出したけどな」
割と悪ガキだったリョウマ少年時代が回想され、付き合いの長さを勇太くんに説明。
「もう飽きてくるぐらいな」
「……飽きてるのか?」
本気で受け取ったゴウキが半べそをかいてリョウマが慌てて訂正し、ハヤテが吹き出す一幕の頃、バルバンでは腹心のサメ忍者・闇丸&鬼丸に救出されたブドーが、汚名返上の為に脱獄していた。樽爺の推挙もあってイリエスが新行動隊長に任命される一方、ギンガの光を取り戻す事で汚名をすすごうとするブドーは、ギンガマンを挑発する為に街で大虐殺を開始。
立ち向かうギンガマンはレッドが魔人忍法まどわしの術を受けてしまうが、優勢のブドーらは蛇女の追っ手に囲まれるとバルバンに刃を向けようとはせず、「濡れ衣を ギンガの光で 晴らすべし」と、久々の宇宙俳句を残して撤収。
そしてモークサロンで目を醒ましたリョウマは術の影響により周囲全てが敵だと認識して暴れ出し、裏拳の直撃で物凄く景気良く飛んでいくドングリ(笑)
かつて見たことのないレベルのマスコットの扱いです。
色々と盛り沢山なエピソードでしたが、何が印象に残ったかといえば、このシーンが一番印象に残りました(笑)
サロン内部で咆哮し、辺り構わず暴れ狂うリョウマは仲間達を振り払って街へ繰り出し、長石階段で辻斬り未遂を敢行。星獣剣を振り回して一般市民を追いかけ回すリョウマという、かなり危ない映像が続きます。
サヤとヒカルは迫るブドー軍団の囮を買って出て、ハヤテ&ゴウキは何とかリョウマを取り押さえようと、派手な生アクションの取っ組み合い。
「荒っぽいが、ギリギリのところまで追い込めば、あるいは……」
戦隊名物? 打撃による修理を推奨し、モークにも頭脳の限界があって少しホッとしました(笑)
「しかし、これ以上やれば、リョウマも俺たちも」
握りしめていた鉄パイプ(似合いすぎる)を投げ捨てたゴウキは、リョウマを傷つける事を拒否し、涙を浮かべて一歩一歩近付きながら語りかける渾身のヒロインムーヴを発動。
「リョウマ……! ……おまえにわからない筈ないだろう、俺たちが」
判定に失敗し、マッチョはお呼びでないキックを受けて倒れるゴウキだが、それでも説得を試み続け、すっかり泣き虫キャラを確立。詳しくないのでイメージだけですが、ゴウキはこの辺り、昭和のファミリードラマに居そうなキャラという位置づけも感じます。

「俺たち、飽きるほど一緒に居たんだからな。リョウマ……そうだろう!」
「そうだリョウマ、思い出せ。ヒカルとサヤが危ないんだよ! 俺たちが行かなきゃ。リョウマ、わかるか? ヒカルとサヤだ!」

更にハヤテも参戦し、ここでヒカルとサヤの存在も絡めてみせるのが、今回の白眉。
「ヒカル……サヤ……」
冒頭の日常でのやり取りを説得のキーにしていく中で、リョウマ−ハヤテ−ゴウキ、3人の友情ばかりでなくヒカルとサヤに対する責任感を追加し、それが幼友達の関係性と密接に繋がっている事で、5人1チームの意味づけが生まれる、というのが実に鮮やかです。
ハヤテとゴウキは最後の一押しとリョウマにアースをぶつけ、直撃させるハヤテと、目をつぶって明後日の方向に放った結果、二次被害が結局ダメージを与えるゴウキ、というコンボが似たような幼い日の出来事を思い出させ、リョウマは遂に正気を取り戻す。
「ヒカルと、サヤは?」
「おまえにもたっぷりお守りさせてやる」
「え?」
「行くぞリョウマ!」
伏線としては非常にストレートな(故に3人の関係でまとめるのかと思っていた)冒頭のやり取りを、年上トリオの友情だけではない5人の繋がり(そして社会の中での役割と関係性)に広げ、回復の説得力を二重三重に積み重ねた上で、ニヤリとさせる台詞でまとめ、巧い。
一方、ブドーの前には蛇女が現れ、握り潰した宇宙俳句を見せつけると、前回の暗躍を種明かし。
「あんたは見限られたのよ。バルバンにも、運にも」
ブドーを絶望させようと言葉を重ねて愚弄する蛇女だが、これがかえって、ブドーの理性の糸をぷつんと切ってしまう。
「……ふふふふふふ、ふはははははは! ふはははははははは!!」
「何がおかしいの?!」
「見苦しいか……確かにな」
声音の変わったブドーは、周囲を囲むヤートットを次々と切り伏せると蛇女も一刀両断し、あくまでバルバンの一員である、という自らの拠って立つ所も切断。
立ち回りが格好良く実力もあり、忠義に篤いサムライというブドー、ご多分に漏れず私もかなり気に入っていたのですが、そのブドーが樽爺とイリエスのケチな謀略に引っかかって失脚してそのまま脱落……ではあまりにもスッキリしないので一矢を報いさせつつ、それをただの視聴者サービスではなく、ブドーの変心に繋げるという話の転がし方が鮮やか。
また、先の市内での虐殺シーンにおいて一般市民を次々と斬殺するブドーを明確に描く事で、あくまでブドーは残酷非道に他者の命を踏みにじる悪である、という事を強調してキャラクターとしてのバランスを取っています。
「……ギンガの、光……」
追い詰められたブドーの心には、黒騎士と通じる巨大な力への渇望という闇が宿り、サメ忍者に追い詰められていた桃と黄の元には年上トリオが駆けつける。
「ギンガレッド、なぜ俺の術を?!」
「飽きるほど付き合ってる、仲間のお陰でな!」
5人揃ったギンガマンは、
「唸れ、ギンガの光!」
で獣装光。絶大すぎるギンガの光は5分割される事でギンガマンが使いこなせるようになっているが、その代わりに5人揃わないとスーパー化できない、と巨大な力を制御できる理由とその制約をきっち盛り込んでくる辺りは、高寺Pらしさでしょうか。
見方を変えると、超強化にまつわる設定の説明を、5人1チームの関係性を掘り下げるエピソードに仕立て上げている、というのが良く出来たところです。
そこへ現れたブドーは鞘を投げ捨て、勝って帰るつもりならなぜ鞘を捨てる! とさすがにギンガマンから言わないものの、わかる人にはわかるネタで、御大将の行動にぎょっとするW忍者。
「闇丸、鬼丸、もはや我らブドー軍団に戻る場所などありはしない。後はただ存分に戦うのみ」
投げ捨てた鞘が音を立てて地面に転がると、ギンガマンvsブドー軍団の最後の戦いが始まり、ぶつかり合う赤とブドー。吹き荒れる炎の中、激しい一騎打ちの末にブドーの必殺剣をクローで受け止めたレッドはその愛刀を叩き折り、剣×爪×炎のミックス攻撃、獣火一閃をブドーに直撃させる。
「まだ……戦い足りぬ……」
バルバンの行動隊長ではなく一匹の修羅と化したブドーは折れた刀を手にギンガレッドへと迫り、失脚した組織の幹部がその最後に個人として誇りと執念を懸けてギンガマンに挑む、という構図がサンバッシュと重なっているのは意図的と思われますが、軍団単位では高い統制を見せながら組織全体として見ると個人主義の寄せ集め、というバルバンらしさを象徴しているようにも思えます。
そしてこれは、バルバンとギンガマンの対比であると同時に、黒騎士とギンガマンの対比でもあるのだろうな、と。
つまるところブドーの最期は、このままでは黒騎士が辿るであろう末路の暗示であり、こういったキャラクターの使い切り方はさすがの冴え。
「散ればこそ……花美しく……名を残し……いまひとたびの……バルバンの夢」
辞世の句を詠みながら死力を振り絞り躍りかかってきたブドーの斬撃を防いだレッドは、返す刀でブドーを切り裂き、剣将ブドー、ここに大爆死。
ここまで監督3人ローテで回っている今作ですが、同じ長石監督の演出回という事もあり、ブドーの砕けた刀が虚しく転がるのは、サンバッシュのバイク爆散に通じるものを感じ、演出的にも意図的な重ねなのかな、と。
近年は劇場版などの関係で出入りが激しくなってなかなかそうも行かないのですが、田崎監督が新展開を立ち上げ、長石監督が節目を締め、その間に辻野監督が比較的フリーな演出でアクセントをつける、という今作前半の構成は、演出ローテと意識的に噛み合わせている節があり、綺麗にはまっています。
正直、前作『メガ』の長石監督はラスト2本を除くとあまりキレを感じなかったのですが、今作では後に見せる小林靖子脚本との相性の良さもあってか節目節目に冴えを見せ、満足度高し。辻野監督の面白さも十二分に発揮されていますし、パイロット版に抜擢した田崎監督を含めかなりバランスの良い演出陣を揃えたという印象ですが、監督の色を活かしたローテの構成という点では、後の『クウガ』〔石田秀範−渡辺勝也長石多可男〕で高寺P作品としては一つの完成を見る要素なのかもしれません。
ブドーの死を見届けた闇丸と鬼丸はダブル巨大化し、「せめて、最後のご奉公を」という台詞が状況にぴたっとはまり、ブドー軍団のラストを象徴する形で使い切られたのも秀逸。
ギンガマンが星獣を召喚してギンガイオーに合体するとギンガの光がそれに反応し、兜と胸部装甲と剣が強化された、超装光ギンガイオーが誕生。
襲い来る闇丸と鬼丸をギンガ大獣王斬りのカウンターで一撃秒殺し、テロップ出てから40秒で戦闘終了(笑)
……まあ、ブドーがリタイアした以上、W忍者は完全におまけなので、変に長引かせないのは全くもって納得なのですが、凄まじいデビュー戦となりました。
「あいっかわらずハヤテは容赦ないよな。それにゴウキも、あいっかわらず外すし。かえって危ないんだよ」
「人に当てるのが、嫌なだけだ」
まあそもそも、いざって時は人に当ててOKなのが衝撃的というか、幼少の頃から、“(心理的に)人に当てられるように”訓練していたという点と、下手に加減をすると間合いが狂ってかえって危険ノリで受け止める所に、ギンガの民の決戦民族ぶりを見て殺意の高さに胸が震えます。
かくしてギンガマンが死闘の連続をくぐり抜けて大きな壁を乗り越えた一方、バルバンへの復讐心に燃える黒騎士は、地球の夏に悩まされていた。
「ポ、ポカリ……」
じゃなかった、
「この体を、自由にできる、間に……」
と大変意味深な言葉を呟き、つづく。