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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第40話

◆修行その40「頭、バカーン!衝撃の事実」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:横手美智子
「なんてこった……迷ったぜ……」
ジャンのキノコ狩りに付き合ったゴウが山で遭難しかけていた頃、風に乗って流れてきた不思議な音色に耳を止めたジャンは、草笛を吹くキメラ拳士の姿を目にする。
「なんでかな? 俺それ聞いてると、ワフワフな気持ちになる……」
何故かゾワゾワを感じないキメラ拳士に近づいたジャンは、その胸の白虎に気付く。
「おまえ……虎か?! 俺も虎だ! おまえ、ピカピカのトラピカだな?」
親しみを込めてキメラの肩に触れた瞬間、ジャンの全身を謎の熱が突き抜け、そこに現れて問答無用で先制攻撃を仕掛けたゴウは、キメラ拳士の取った構えに動揺している内に逃げられてしまう。それはなんと、ゴウ、美希、理央、3人にとって兄弟子に当たる拳士・ダンの構えであった……。
前回もちらりと登場した3人の兄弟子ダン役は、今作の3年後には『ゴーカイジャーVSギャバン』で、まさかの宇宙刑事復活を見せてくれる事になる、大葉健二過去ヒーローというだけではなく、JAC草創期のメンバーとして鍛え上げてきたアクションのキレとその貫禄が、激獣拳時代の理央を軽々と一蹴する白虎の男として、有無を言わさぬ説得力。
「拳の強さのみにこだわる内は、私を越えられんよ」
なお、獣拳名物のアレが無自覚に繰り出される、「おい理央、ポカリ買ってこいよポカリ」みたいなシーンはなくて、ホッとしました(笑)
「俺に越えられぬ強さが存在する事など、許されなかった……」
キメラ拳士の正体、それは、理央によって殺害されたダンの激気魂が幻獣拳の秘儀によって利用された存在。意志を持たず純粋な気の力の存在であるキメラ拳士は仕えるべき幻獣王を求めており、かつて越えられなかったダンを配下に従える事で、真理的に勝ち誇ればいいんですよ、幻獣コンサルタントのロンは理央をそそのかす。
「新しい高み……」
相変わらず、キャッチコピーに弱い理央様であった。
「過去を越える事。それが血盟の儀式なのです」
主を求めるキメラ拳士は持病の発作により巨大化して街で暴れ出し、それを止めに入るゲキファイヤーとゲキトージャウルフ。
「やめろ、やめてくれダンさん!」
過去に関わるキャラの登場で、ようやくゴウ兄さんのターンの気配……?
闇雲に破壊を撒き散らすキメラ拳士を止める為、クマ様以来となるサイダイゲキファイヤーが発動し……改めて、驚くべき格好悪さ(笑) 今作のインフレ作劇を考えると、使用2回目にしてサイダイ突撃が通用しなかったらどうしようと心配しましたが、さすがに突撃はダメージを与え、人間大に戻って廃墟の中心で膝をつくキメラ……を見下ろすのはなんと理央!
「……なあゲキレッド。これが、俺がその背中を追い続けた男の末路か」
「……何故じゃ? 理央、おまえは何故、自ら手を下してなお、ダンにこだわり続ける。ダンを手に掛けた日に、全ては終わったのではなかったのか」
「違う。終わってはいない。未だ、決着などついていないのだ!」
そして理央は、居並ぶゲキレンジャー&シャーフーに向けて、激獣拳を退職した日、理央アーマーを身につけてダンに戦いを挑んだ夜の出来事を語る……。
「臨獣拳に手を染めたという事は、幾つもの命を殺め、悲鳴と絶望をその身に浴びたか」
理央の放つ臨気に気付いたダンは振り向いて立ち上がり、今回大きなポイントの一つは、強さを求める理央が激獣拳を出奔して臨獣拳を学んだのではなく、ダンを倒す為に臨獣拳を身につけ、その過程において既に邪道に堕ちていたのが明確にされた事。
同時に、師弟関係を描く作品は、道を違えた弟子が悪いのか、弟子を導けなかった師匠が悪いのか、ちょっとしたさじ加減一つで印象が変わってしまうので、描写のバランスが難しい、としみじみ。
「白虎の男・ダン。貴様を越える為だ」
「私は今宵こそ、兄弟子として、おまえを止めねばなるまい」
――蒸着
じゃなかった、激獣ホワイトタイガー拳の構え(ただ、右手を高く天に向けて上げる部分は『宇宙刑事ギャバン』の「蒸着」オマージュか)を取るダン。
「ゴウも同じような事を言った。そして俺に――倒された!」
今回も戦いの詳細をカットされたウルフゴウですが、この時点で既に敗北していたというのなら、野生の本能で逃げ延びたのか、理央様は葬り去ったつもりだけどしぶとく生きていたのか、理央様がゴウにトドメを刺せなかったのか、というのは気になるところ。
……まあ、この後に出てくる話と、ゴウ登場当初のあれこれを思い返すと、“幻獣コンサルタントが干渉して手札としてキープしていた(だからあのタイミングで目覚めた)”という可能性が出てきて大変嫌な感じですが。
「俺の前に立ちはだかる者は、なんであろうと倒す!」
両雄の激突は拍子抜けするほどあっさり決着し、臨気を纏った理央の拳に腹部を貫かれ、倒れるダン。だが……
「……手段がどう、あれ、ただ、勝てばいい。それが臨獣拳か」
「……なに?」
「これが……おまえが目指すものか」
勝利の喜びも束の間、ダンが既に深傷を負っていた事を知る理央。
「夕べは、見事な闇討ちだった、理央。完璧に、食らったぞ」
理央にとっては思いもかけない真相が明かされ、どう考えても幻獣エコノミストの仕業なのですが、この時点から(或いはそれ以前から?)既にロンの奸計が始まっていたのだとすると、これはかなりエグい。
「何を言っている?!」
己の強さを高め、誇りを持って打ち破った筈の相手は、万全にはほど遠い状態であった、という受け入れがたい現実に悲鳴のような叫びをあげる理央の手を、もぎ離すゴウ。
「……私には、息子が居る」
「息子……」
「いつの日か……きっと、私の息子が、立派な激獣拳の、使い手となって、おまえの前に、現れる。私には見える。私の息子が……おまえを倒すところが……正しきは、必ず、勝つのだから……」
煌々と地上を照らす満月に手を伸ばしてダンは絶命し、迫力のある死亡シーンなのですが、冷静に考えると言い残した内容は、「絶対に息子がてめーに復讐するから、月の無い夜には気をつけろ!」なので、いくら無念といっても、ダンさんもダンさんで割と色々とアレ。
「なんだというんだ…………俺はこんな決着望んでいない! ダン! 目を開けろ! もう一回やり直しだ! ダン! ダン!」
後に取り残されたのは、強さに執着する余り道を見失い、空虚な勝利と引き替えに、求めた強さを越える機会を永遠に失い、学び、変わる場を捨ててしまった孤独な男が一人――。
最近どうも冴えない役回りが多かった理央様ですが、この回想シーンでの絶叫は、歪んでしまった妄執の説得力をともなって大変良かったです。
「俺と奴との戦いは、まだ終わってないんだ! 姿を変え、奴の息子が俺の前に立ちふさがるがゆえにな!」
「なんと?! ダンに息子が居たというのか」
そして猫がまた、渾身の問題発言をぶちかましてくるのですが、師匠に教えていない息子の存在って……当時の猫師匠が最低の人格だったのか、物凄くヤバい背景のある隠し子なのかダン本人も最近知った婚外子なのか……獣拳の闇がどどめ色。
「何を言うシャーフー」
理央様、かつての師匠に驚きを通り越していっそ呆れ気味。
「……まだ気付かぬとは」
仕方なく理央が指さした先に立っていたのは……ジャン。
「俺の血をただ一人かきたてる男、ゲキレッド! おまえこそが、白虎の血を引く者に違いない」
「俺……知らねぇ。父ちゃんなんか……知らねぇ!」
激しく困惑するジャンだが、その身にはダンの激気魂(キメラ拳士)と触れ合った事で生じた、血の証が刻まれていた……。
「トラピカが……俺の……父ちゃん……」
再起動したキメラが突如としてジャンに襲いかかり、それを食い止めようとしたゲキレンジャー一同ともども場所移動、そこに図ったようなタイミングで現れる臨獣殿アドバイザー・幻獣コンサルタントのロン。
「……ロン、血盟の儀式だ。俺は幻獣王となろう」
木偶人形と化したダンの激気魂――キメラ拳士の姿を見て決してかなわぬ死者への妄執を捨て去る事を決めた理央は、血盟の儀式によって過去を越え、新たな自分としてダンの息子を葬り去るべく、死者の国の王から、幻獣の王となる道を選ぶ。
一方、荒れ狂うキメラ拳士にゲキレンジャーが次々と弾き飛ばされる中、必死にその足に食らい付くジャン。
「親子って……家族って……ホワホワで、ヨカヨカで、ギュギュー、なんだよな」
父と子の物語へ至る布石だったこの3話を回想し、でもケンの話ないよね……と思ったらケンだけ登場当初のエピソードからで、戦隊のウェイトとしてはやはり、前回はケンの話にするべきだったのではという気がしてなりません。
「俺……森で育って、楽しかったよ。パンダとか、アリクイとか、虎とか、みんな俺に、優しかった。でも……ランとか、ゴウとか、レツとか、ケンとか。美希とかなつめとか見て、俺も…………俺だけのギュギューが欲しかったんだ! ……ホワホワとヨカヨカが欲しかったんだよ!」
野生児だった過去は過去で肯定しつつ、社会と接続してジャンが得たものは、仲間や道ばかりでなく、これまで自分が持っていなかったと気付いてしまったものへの渇望でもあった、というのは、ジャンの物語として上手く集約してきました。回想シーンの理央に負けじと役者さんも熱演。
「……でも……俺の父ちゃんは……ギュギューじゃないのかな? トラピカ…………父ちゃんなのか? 父ちゃんなのかよー?!」
だが心を持たないキメラは、すがりつくジャンを容赦なく踏みつけ、鉄拳を加え、手の届かないぬくもりに、打ちひしがれる虎の子。
そしてその間に遂に契約書にサイン、ロンと血盟の儀式を行った理央は正真正銘の王となり、ゲキレンジャーの前に姿を見せると、幻気外装。
「我が名は――幻獣王・理央。強き事、猛き事、世界において無双の者。これより、世界の一切を、幻獣王に帰するものとする」
しれっとロンも変身後の姿で登場し、主を認めたキメラ拳士はジャンへの攻撃を止めて理央の元へと舞い戻り、今、幻獣王と四幻将が揃い踏み!
物凄く金ピカ度の高い幻獣王と四天王ですが、もしかすると仏像のモチーフなどが入っていたりするのでしょうか……?
「ダンさんを苦しめジャンを苦しめ、なにが幻獣王だ! 理央ーーーー!!」
かつての同期として真っ先に理央を殴りに走る兄さんがいいとこ見せるかと思ったが、キメラ拳士によって敢えなく撃墜。続いて変身した仲間達も、次々と四天王に返り討ちにされてしまう。
「もはや激獣拳など、幻獣拳の前にはなんの意味もない。この手で息の根を止める事すら厭わしい。だが――」
立て続けに起こった衝撃的な事件の数々に、心の許容量を超えて頭バカーンになってしまったジャンに対し、理央は因縁に決着をつける事を要求。覚悟を決める時間をくれてやる、と猫師匠もガード不能な範囲攻撃を行うと、四天王を従えて悠然と去って行く。
「我が拳は王の拳。幻獣グリフォン拳だ。心して来い」
ドラゴンをロンに取られてしまっている為、どうなる事かと思った理央様の担当幻獣は、グリフォン。原典が獅子と鷲の合成生物なので、言うなれば、“黄金の翼を得た黒獅子”といったところでしょうか。
胸部の鷲パーツが拳魔一の策士なあの人を思い出しますが、振り返ってみればクラゲとクマはともかく、タカには正式に弟子入りしていたので、最終的に、理央様の心の師はカタだったのだなと思えなくもありません。
あと、獅子(「双頭の鷲」以前のハプスブルク家の紋章)→グリフォン(最後のハプスブルク帝国であるオーストリア=ハンガリー帝国における、オーストリアの象徴)、というのは繋がりが見えなくもないですが、狙っている可能性もなくはないかも。詳しくないのでこれ以上はなんともですが、理央の持つ「王」のイメージを考えると、獅子やグリフォンというのは紋章学からのイメージも仕込まれているのかもしれません。あと「七つの大罪」における「傲慢」の象徴とされる場合があるようで、これは狙っていそう。
心に宿る自然な正義に従って戦ってきたジャンが、恐怖も4人でのフォーメーションも越えるかつてない苦悩に直面した時、再び立ち上がる事が出来るのか!? と、ジャンが変身して立ち向かえないままという姿が印象的な幕切れとなり、ジャンと理央の熱演もあって盛り上げてきた終章突入から、ランのキャラソンと名場面集に突入して流れる、なんともいえない空気(笑)
歌は、ふつー。
次回――明かされた真相を冷静に考えると、顔も知らない父親に突っかかっていた執念深い40がらみの中年から一方的に「宿命」とか押しつけられても困るので、田舎に帰ります。
いよいよ最終クールに突入し、前半から伏せていた因縁のカードが開かれた所で、「宿命」を無条件に肯定せず、ジャンに再び壁と葛藤を与えてくれるようなのは期待したい要素。拳聖やスーパーゲキクローの問題で劇的な構成を失敗したスーパーゲキレンジャー編の頃よりは構造がだいぶスッキリしているので、あの惨事を払拭する飛翔を見せてほしいです。