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『オシムジャパンよ!』(フィリップ・トルシエ)を読んだ

元日本代表監督フィリップ・トルシエによる、2007年アジアカップを控えた頃の日本サッカー界に関して、オシムジャパンの分析や提言など。
トルシエに薫陶を受けたトルシエファンの私にとっては、スムーズに腑に落ちる一冊でした。トルシエ嫌いの人が読んでどう思うかは知りませんが(笑)
アジアカップについて、「過渡期のチームとはいえ負けると外野がぎゃーぎゃーうるさいから、最低限のノルマはベスト4で、そこまで行っておけば 協会もスポンサーもファンもまあ我慢してくれるだろう」(大意)と喝破している辺りの慧眼はお見事。
色々と言葉は変えていますが、結局繰り返して語られていると思われるのは、重要なのはチームとしての組織力と、周辺の環境整備を含めたマネジメント能力である、という話。
あと、はっきりとは言っていませんが、
「黄金世代が脂ののりきった年齢の歴代最強クラスのチームで勿体ない事したよね」

「今は2010年にピークの来る年代の選手達にとにかく国際試合の経験を積ませなくてはならない時期だから、長い目で見なくてはいけない」
というのが主題ですかね。トルシエが、国際経験、というのを非常に重視しているのがわかる本でもあります。
3章構成なのですが、けっこう、違う言い方で同じテーマについて繰り返し語っている事が多いので、(本屋がそんな事言ってはいけませんが)借りて読むぐらいで丁度良い読み物かな、とは思います正直(^^; ただ、現行の日本代表について語りたいのであれば、読んでおいて損の無い一冊ではないかと。まあ、当たり前の事を当たり前に言っているだけ、という気が私なんかはするのですが、日本のサッカー評論関係者は、目の前の一勝が大好きだからなぁ。
ま、これはサッカーに限った事ではないかもしれず、どうも“日本人とスポーツ”という観点でくくってみた時に、
目の前の勝ち負けで感動したい
というのがとにかくあって、
目の前の勝ち負けは大局に関係ない
というのを飲み込むのがメンタリティとして苦手なのだろうか、とは思わないでもないですが。
囲碁やる民族なのにね(笑)
もっとも、“負けてもいい試合だから負けてもいい”わけではなくて*1、そういった試合でも選手が“勝ちたい・勝つぞ”と戦う事、応援する人達が“勝ってくれ”と思う事、というのはもちろん必要ではあるわけですが。ただそれが、「=“絶対に負けられない”」かというと、それとこれとは本来違う筈なのだけど、いつの間にか混同があるよなぁと。
トルシエはこの辺りも少し踏み込んでいて、選手のモチベーションというものを考えた時に、国内の選手だけでアジアカップに挑むという選択肢もある、とは書いてます。
今後の日本サッカー界を考えた時に、本当はこの、大局はどこにあって目標は奈辺にあるのか、という事をアピールしてスポンサーやサポーターの意識付けをしていくべきは協会の仕事ではないだろうか、と思うのですけどね。
まあ、最大公約数の人達が何を求めてどこに行きたいか、にもよるのですが。
いみじくも本文中でトルシエが言っていますが、

日本はブラジルにはなれない。イングランドにもなれない。その必要もない。
わけですから。
ああでもとりあえず、某キャプテンには読んでほしいなぁ、この本(笑)

*1:とはいえ、本当に「怪我しないようにすればいい試合」というのもあったりはするわけですが実際