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WBC出場問題について

まあそもそも、NPBにも選手会にも、交渉能力とか折衝能力の期待はしていませんが、
「条件改善してくれないと出ないよ」→「じゃあいいよ」→「え?」→「9/30までにはっきりしてね」→「ごめん、ちょっと期限延ばして」
という展開があまりにも悪手すぎて、お話にならなかったわけですが、仮に当初のもくろみが
「条件改善してくれないと出ないよ」→「え?」→「何月何日までにはっきりしてね」→「ちょっと考える」
だったとしても、それが
「条件改善してくれないと出ないよ」→「じゃあいいよ」
となった時点で、「わかった、出ない」と言えないと、勝負にならない。
真の交渉はそこから始まるものであるし、仮にそれで終わったとしても、主張自体は通るわけですし、それは“その次”の布石になる。一方で、相手から期限切られた途端に逃げ腰になって引き延ばす、というのは悪手中の悪手。
敢えて言えば、引き延ばしている内に内応工作でもしているなら話は別ですが。
そう、そもそも、最低でも韓国と台湾ぐらいは味方にしてから交渉するべきであるし、そういった話が出てこないのも、どうしようもない。
いちいち、やる事が稚拙にすぎる。
とか書いていたら、こちらの記事では、韓国の選手会からも同様の意見がある、との事。
〔日本はなぜ「現在のWBC」に出場できないのか!? (1/2)選手会顧問弁護士が語るWBCの実態/スポーツナビ〕
それならそれで、きちっと抱き込んでやればいいのに、とは思いますが。
上記記事における、プロ野球選手会の顧問弁護士を務める石渡進介氏の弁。


でも日本代表の価値って、MLBが作ったんですか? そんなわけがなく、少年野球、高校野球から始まって、アマチュアとプロの集大成として価値を作っているんです。
で、問題は、それが、ほぼ“日本でしか通じない価値”という事なのですけど、結局まわりまわって、WBCの最初から存在していた、市場を世界に見ているか、島国で完結しているのか、という日米の野球観の根元的な所へ戻ってきてしまった感じ。そしてこれの良し悪しに関していえば、どちらとも言えないと思うので、参加しないならしないで、それはそれでいいとは思います。
要するに「WBCに参加する」というのは、一面において「アメリカ野球観を認める」という事であろうし、それを拒絶する権利は有している。それを「日本野球の価値」と胸を張って言うのなら、それはそれで、皮肉でもなんでもなく、良いと思う。
ただそれをやったら、五輪の正式種目に、と音頭取るのは片腹痛い、という事にはなるだろうし、その辺りのメリット・デメリットの総合的な判断はするべきでしょうが。
一方こちら、大リーグ機構の国際部門トップ、ポール・アーチー副会長のインタビュー記事。
〔WBC大会統括MLBトップ NPB主張に反論「すでにとても遅れている」/スポニチアネックス〕
あくまでMLB側の主張なので多少は割り引いて読んだ方がいいかとは思いますが、

出場チームが決まらないと、開催地決定や、放映権、スポンサーなど、ビジネスの交渉が全く進められない。遅れれば遅れるほど不利な状態になっていく。

保険、飛行機代、宿泊費、練習施設、用具など、巨額のコストがかかる。そこでWBCから招待する形にした。第1回大会は大リーグ30球団が経費4300万ドル(当時約50億7400万円)を捻出した。

日本のように経済的に豊かな国なら、自分たちでスポンサーを募り、費用を工面して出場できる。だが多くの国は難しい。日本の提案する形なら、WBCに出場できるチームは4カ国くらいになってしまうだろう。
と、さすがに非常に合理的な話。
特に三つ目は非常に重要な所をついていて、はからずも上述したように、日米の野球に対する視点の、埋めがたいギャップ、世界をマーケットに見ている国と、そうでない国の違いがはっきりしてしまいました(どちらが良い悪いではなく)。
この話を出された時点で、ほぼチェックメイト
選手会の建前が、「(日本)プロ野球界のため」なのに対し、MLBの建前が「この球技のため」という状況にあって、これをひっくり返せる理屈を打てるか、或いは、スムーズに諸外国が参加できるシステムを考案・提案する事が出来るか。
※参考:〔WBC不参加も辞さず!選手会 条件改善求める/スポニチアネックス〕(7/23付))
もちろん現状の構造として、
「メジャーリーガーの保険を日本が集めた金でかけている」
という部分は回り回って存在して、それに引っかかりを感じるというのは理屈ではあり今後の改善余地でもありましょうが、
「いや、メジャーリーガーが居ないと、小国が出られないし、出ても仕方がなくなる。結果、大会が成立しない。様々な国が参加できるように協力してほしい」
というのも相応の理屈であり、この“大会を成立させる為の応分の負担”という考えにおけるギャップを、互いに埋める努力をしてこなかった、というのは今回の件における一つの不幸ではありましょう。この部分、アメリカはアメリカで、日本プロ野球という村社会を見誤っていた所はあるかと思います。
結局、役割分担における認識なのですけど。
一つ落としどころがあるとすれば、MLBはMLBで日本の集金能力というものを計算に入れていた部分は当然ある筈で、収支バランスにおけるリミット、をどこに設定しているか。というか、交渉始める前にそういうデッドラインの目測つけておくものですが、日本サイドはそういう事を考えているかも怪しいからなぁ。その点に関しては、MLBもかえって困っている面はあるかもしれない。
ところで一つ面白いと思ったのは、MLBは日本に対して「野球の貴族になれ」と言っている、というかむしろ「野球の貴族だよな?」と考えているとおぼしい所。

野球の露出を世界レベルで増やし、草の根でこの球技を広めていく。09年大会の収益から、欧州やオーストラリアなど世界の野球に1500万ドル(約11億5500万円)を還元できた。いい方向に進んでいると思う。
日本人に気持ちよくお金を出させる方法、としてはこれもちょっと間違っているのですが。
一番簡単な攻略法は、「金出した分、運営にかませる」かなぁ……今の「俺は運営する、君は資金集めの看板になってくれ」というのは日本人の心はくすぐらないので、いっそ「日米共催って事で」みたいな搦め手を打ったら、ころっと転がりそうな気はしないでもない。
ところで上記の弁護士氏の弁に少々何だかなぁと思って、もう少しえげつない話をしてしまうと、結局のところ「日本代表の価値」とやらは、「WBCを先導する」どころか「WBCIに対抗する組織を作る事もできない」程度の価値という事で、そこで既に詰んでいるわけで、だからあんまり、“価値”という言葉を引っ張り出さない方が良いかとは思う。
あと仮定として、「仮に日本がWBC的なものを主催したとしたら、例えば欧州諸国を参加させる事が出来ただろうか」というのは、パズルとしては考えてみると面白いかもしれない。