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『特警ウィンスペクター』感想6

先週分。
◆第7話「幸せ祈る聖少女」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
殺し屋の影山が、護送中に部下に助けられて逃走。正木本部長は、影山が国外逃亡を図る前に、自分を警察に売った密告者・村田(ゲスト:中田譲治!)に復讐を行うに違いないと推測、竜馬と女刑事は村田の保護に動き出す。
村田は窃盗などで前科3犯の男だが、根っからの悪党ではなく……ただひたすらに、駄目人間
勤めていた会社が倒産→その後何をやっても上手くいかない→酒に溺れる→妻が病死→ますます自暴自棄になり軽犯罪で捕まる高校生の娘のバイト先で金をせびる昼間から酒
そんな父に、自分の巻いていたマフラーをそっとかける娘
おかしいな、今、日曜朝8時の筈なんだが……。
村田を捜す竜馬達が出会ったのは、花屋で働く村田の娘(たぶん高校生)だった。以前に、小山弟が不良に絡まれていた所をかばっていたのが縁で顔見知りだった少女に懇願され、「父親が殺人犯に狙われている」事を伝えた竜馬は、彼女の安全を久子に託し、捜査を続ける。
そして流れる謎の挿入歌。
ニュースで影山の逃亡を知り、脅えて隠れようとしていた筈なのに、おでん屋台で熱燗つけている村田
今回はこの、徹底的な駄目人間の描き方が凄いです。
どこまで許されるかやってみよう、みたいな。
こういう話を見ると、『ウィンスペクター』にはどこか、70年代の活力よ再び、みたいな作り手の思いがあるのだろうなぁ。
特警に保護された村田であったが、一方、娘が影山の手下によって拉致される。
明らかに、娘さんも保護していなかった特警の手落ち。
一応、警察が村田家周辺を警護しているような描写はあるのですが、手下が普通に部屋の中に入り込んでいるので、どこを見ていたのか、全く謎。一緒に居た隠密同心も後ろから殴られて気絶で、全く役に立たず。
影山一味は娘を人質に、翌朝6時に秘密のアジトへ来るようにと村田への置き手紙を残す。竜馬は村田にアジトへ案内させようとするが、村田は脅えるばかりで首を縦に振らない。
「貴方のたった一人の子供なんですよ」
「俺は、怖い……俺は、怖いんだよ……」
どこまでも激しく駄目父。
翌朝、約束の時間が迫り、竜馬は本部長に、あくまで村田を連れて行く事を直訴。仮に村田が殺されるような事があればウィンスペクターという部隊そのものが存亡の危機に陥る……それでも、父を信じる娘の想いに応え、村田を立ち直らせるためには村田を連れていくべきだと竜馬の決意は固い。
本部長「村田の歪んだ心を救い、元通りにするのもウィンスペクターの仕事ってわけだ」
娘が人質になった時点では目が醒めないで、翌朝、再説得を受けた上でようやく、という辺りの徹底ぶりが物凄く、それによって人間ドラマとしての奥行きが出ました、お見事。本部長の台詞も格好良い。
正木の許可を得た竜馬の説得を受けた村田は遂に父親としての心を取り戻し、影山のアジトへとウィンスペクターを案内する。
待ち受ける影山部下、どうしてバズーカ(笑)
娘ともども村田に影山の銃弾が迫るが、その銃弾を装甲で弾くファイヤー。待機していたバイクルとウォルターも駆けつけ一網打尽かと思われたが、逃亡用に用意されていたヘリコプター(Aパートに伏線あり)でやってきた部下が、いきなり地上へ爆弾を投げつけまくる。
……えー、影山は劇中では「殺人犯」という言われ方なのですが、どう見てもテロリストのリーダーです
更に謎の武器を使う部下(ウォルターによると、ロボット探知機付きピストル)に、今回も、バイクルとウォルターはやられっぱなし。
追い詰められた2体の結論は、
「答はひとつ、やられる前に倒す」
警察としてどうなのか
……以前にちょろっと書きましたが、やはり『ウィンスペクター』の世界は、人心がかなり荒廃しているのかもしれません(^^; 倫理観とか銃規制を、現代日本(1990年代)のつもりで見てはいけないのかもしれない(笑)
バイクルとウォルターの反撃が決まり、ファイヤーも影山の逮捕に成功、こうして村田親子は安息と絆を取り戻すのでありました。
最後、父は娘がバイトする花屋で働く事になり、大団円。
父、娘に貰った大事な弁当、縦にして振ってるよ!
と、ラスト1カットどうかと思ったものの、中田譲治さん演じる駄目父が激しく駄目父を貫き、折り目正しい娘との配役もピタリとはまり、突き抜けた所でまとまりました。もう今回は『特別刑事 熱血派』みたいな。たぶん、制作側も完全にその気でやっています。こういうのは中途半端にやってしまうのが一番つまらないので、やりきったのが正解でした。
子供番組としてはこのぐらいが限度……というよりやり過ぎかなとは思いますが、逆にそういう見る側/作る側が掛けがちなバイアス、感じる限界に対して、いやそんな事はないだろう、と挑んだ1本なのかもしれません。その辺りは、70年代のスピリッツを感じます。
うーんしかし、もしかしたら初めて藤井邦夫脚本回を面白いと思ったかも。
特撮に慣れつつ刑事ドラマなどの執筆経験もある脚本家を集めている今シリーズですが、脚本陣も、今まで出来なかった事をやってみよう、と全体的にノって書いているのが分かります。ドラマ部分に力が入っている分、戦闘の入り方などがおざりになっている事があるのは気になる時がありますが、徐々にバランスを取っていってほしい所。
どうしても今回みたいな、物語と連動したレスキューアクションでないバトル展開の時に、ドタバタ感が強くなってしまうのが、もう少し改善されてくるとより楽しいのですが。


◆第8話「脱線!親子救急隊」◆ (監督:東條昭平 脚本:扇澤延男)
一家(父・兄・妹)で探偵事務所を営む大曲家の娘は、ある日、話題のウィンスペクターに商売をあやかる事を思いつき、「探偵事務所」の看板を「救急捜査隊」に掛け替え、大々的にビラを配る。竜馬が街で貰った大曲救急捜査隊のビラに書かれた「ウィンスペクターよりも頼りになるぞ!」の売り文句に煽られたバイクルが街に飛び出していき、慌ててその後を追う羽目になる竜馬。
要するに“街の何でも屋”である大曲救急捜査隊が、屋根の上に乗ってしまった老人を助けている現場に行き会い、微笑ましく見守る竜馬は、怪しげな二人の男が彼等の様子を見ながら「瓜二つだ」と呟いているを聞きとがめるが、二人の男は姿を消す。
そして微笑ましく見ていたつもりが、「何を笑ってるのか」と娘に絡まれ、挙げ句暇人呼ばわり。
その頃、国立化学研究所から新型ジェット燃料を盗み出そうとしていたギャング・米倉は、ブツを手に入れた後に警察の追跡をかわす手段に頭をひねっていた。そこで目にしたのが、「大曲救急捜査隊」のビラ。そこに印刷されていた顔写真の男は、なんと自分に瓜二つ……部下にその容姿をはっきりと確認させた米倉は、そこで一計を案じる。
大曲家の父親と、ギャングの米倉は、二瓶正也さんの二役。
米倉と手下は架空の仕事を依頼する事で大曲家を囮に使い、まんまと警察の目を欺く事に成功。
まず悪役が目的遂行の為に頭をひねって、その過程が順を追って描かれるという、なかなか面白い展開。
警察に誤認逮捕されるも誤解がとけて解放された大曲家だが、悪党に利用されたと知った娘は収まりがつかない。父や兄が止めるのも聞かず、嘘の依頼に訪れた際に手下Aが手にしていたマッチの記憶を頼りに、彼等の足取りを追おうとする。
「無茶しないで自分たちに任せてくれ」と竜馬さんも説得するが、先日の事が尾を引き、「馬鹿にするな」とむしろ娘に対抗意識を燃やされてしまう。「馬鹿になんかしていない」ともちろん否定する竜馬であったが……まあ、若くして警視正ですし、階級的には超エリートなので、言動や表情の端々にナチュラルな上から慈しみ目線がこぼれていないか、と言われれば、正直、否定はしづらい
その後、娘が遂にアジトを発見。突撃しようとしているのを父が押しとどめている間に兄が竜馬を見つけて声をかけるのですが、画面切り替わったら竜馬と女刑事が真っ正面からアジトに突入していたり、何故か大曲一家がギャングの確保に協力したり(妹だけ先に飛び込んでしまったとかならまだしも、父と兄まで参加している)、1シーンまるまるカットされたかのような急展開。
まあ、油断していると絵がすぐ地味になってしまうので、今回はガンアクションをやります、というテーマだったろうというのはわかるのですが、竜馬と女刑事もいきなり突撃して銃を撃ちまくったりするので、若干おかしな感じになってしまいました。背広に帽子のギャング米倉が片手腰溜めでマシンガン乱射したりとか、ギャング映画のパロディ的な要素があったので、全体的にそうだったのかもしれませんが。
乱戦の末、米倉は大曲娘をさらって車で逃走。手下二人を女刑事とバイクル・ウォルターに任せ、それを車で追う竜馬。カーチェイス用とおぼしき挿入歌をバックに立体駐車場に米倉を追い詰めるが、米倉は娘を人質に、1億円と警察が自分を追わない事を要求する。本部に相談する……とパトカーに戻ると見せかけ、すかさず米倉の銃を打ち落とす竜馬。だが自棄になった米倉は、人質にしていた娘を突き落とす。咄嗟に
パトカーに乗り込む竜馬
お約束だから仕方ないけど
どう考えても間に合わないと思うのですが。
――だが!
ファイヤーのスーツには、《高速移動》という特殊機能があった!
使うといきなり着用タイムリミットが20秒になるという強力だが素晴らしくリスキーな機能を使って、落下する娘を助ける事に成功するファイアー。
色々と使い勝手の良さそうな新機能が出てきましたが、使うと実質的にスーツ着用を終了しないといけないという事で、相変わらず厳しめの縛りでバランスとしては上々か。
米倉も逮捕し、事件は解決。大曲救急捜査隊の車で、家族と女刑事達も駆けつける。人質にされて散々怖い目にあった大曲娘は、深く反省。
「ファイヤー、もう救急捜査隊なんてやめるよ。身の程知らずだったんだよね」
そんな娘に、微笑む竜馬。

「救急活動だけはやめないでほしいな」
「え?」
「ウィンスペクターには出来ないような救急活動をやってもらいたいんだ。小さな、でも誰かがやらなきゃいけない、そんな救急活動をね」

車のドアにプリントされた大曲救急捜査隊、その「捜査」の部分を手で隠す竜馬。
「大曲救急隊さ」
…………竜馬さんが、超格好いい!!!!!
顔はパッとしないけど(失礼)、竜馬さんはホントに格好いいなぁ。
竜馬さんは、基本呼び捨てで書いていますが、たまにごく自然にさん付けになってしまいます(笑)
後半、ガンアクション入ってから雑なドタバタ展開でなんでしたが、素晴らしいオチで払拭。
演出と脚本がばっちりはまりました。
こういう事があるから、止められない。
そして珍しく、竜馬さんに主人公特性が発揮されて、ゲストキャラに軽くモテました。
祝・竜馬さん初モテ(周辺に女っ気は多いですが)。
次回、どうやら本部長と隠密同心の因縁編。
前回殴られて気絶しただけ、今回お休みのお姉さんは、見せ場を作れるか。
女刑事が思いのほか戦闘力が高かった為、お姉さんは最近すっかりピンチ要員と化していますが、その辺りは結局素人というパワーバランスなのかしら。誰を欺く隠密同心……死して屍、拾う者なし。