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『超人機メタルダー』感想余談:二つのエンド、と作品総括

メタルダー』は典型的な、アイデアは面白いけど構成ガタガタなので妄想で色々と補完して完成度を上げたくなる作品、なわけですが、そんなわけで、あの展開ならこんな感じで見たかったエンディング妄想。
その1:メタルダー死亡の場合
八荒が超重力エネルギー装置を破壊した事で、回避される地球の壊滅。だがその代わりに、メタルダーは超人機としての力を失い、剣流星の姿になれなくなるとともに、人間らしい感情を失い、ただのロボットとなり果てた。
海岸にぼろぼろの姿で倒れるメタルダーに、涙で駆け寄る八荒と舞。二人はメタルダーが、記憶も感情も失っている事を知る。
メタルダー「君タチハ……イッタイ……?」
八荒「……それでもお前は、剣流星だ」
片言の流星を、舞と協力して担ぎ上げる八荒。家へと帰っていく3人、でエンド。
その2:メタルダー生存の場合
八荒が超重力エネルギー装置を破壊した事で、回避される地球の壊滅。超人機としての力を失い、剣流星の姿になれなくなったメタルダーは、ロボットとして、人類の為に戦い続ける事を決意する。
強大なネロス帝国の崩壊によって、闇の世界のバランスは崩れつつあった。これまでゴッドネロスに服従していた世界各地の犯罪結社が、再び闇の世界の覇権を目指しておのおの独自に動き出したのだ。これを放置しておけば、戦災と悲劇は世界中でとどまる事を知らないだろう。
戦争の落とし子を増やさない為に、メタルダーはスプリンガーとともに、世界中の悪と戦い続ける旅に出る……。
というエターナルなヒーローエンド。
Wikipediaを確認してみた所、構想としては、メタルダー、スプリンガー、トップガンダーがもろともにネロス帝国と相打つ壮絶なラストの予定だった模様。2話延長の都合で色々と変わったようですが、結果的に、延長戦でバルスキーvsメタルダーを拾えたのは非常に良かったと思います。あれは、藤井邦夫さんが、いい仕事でした。もしかしたらメタルダーの超重力エネルギーの暴走は、地球規模の破壊ではなく、命をかけてネロス帝国を崩壊させるのにラストで使う予定だったのを、最終回で規模を大きくして拾ったのかな……?
実際の本編では、終盤、各軍団がざっくり壊滅しすぎるので、帝国の膨大な戦力をメタルダーが自爆で一気に壊滅させる、という方が筋としては締まったかもしれません。ただメタルダーの出自を考えると、特攻自爆オチはそれはそれでどうかという気もしますが、もともとそういう作品であった事を考えると、むしろそれはそれでいいのか?(^^;
以下、見終わった勢い任せの作品総括。
色々面白い要素を盛り込んだ作品であった……という前置きの上で、作品としてまず大きな欠点を挙げるとすると、
物語の軸となるミステリー部分が弱すぎた事
になると思います。
今作ではこれを、“ゴッドネロスの正体、ひいてはゴッドネロスと古賀博士の関係”に置いているのですが、正直、どうでも良すぎました。
視聴者に対しては最初から提示される「ゴッドネロスの表の顔は桐原剛造」も、終盤に明かされる「ゴッドネロスの正体は村木國夫という旧日本陸軍の少佐で古賀博士の助手」という真相も、物語を引っ張るには弱すぎました。
特に良くないのは、それがメタルダーにとってさして大きな問題には見えない事。
例えばメタルダーが生みの親である古賀博士の仇としてゴッドネロスを追う為にその正体を探ろうとする、という動機付けが最初に提示されていたならばまた違ったのですが、メタルダーは当初、古賀博士が生みの親という点も今ひとつ認識していないしネロス帝国についても理解していない、おまけに最後の最後まで古賀博士の仇という意識は無い。4話〜6話を通して、自分の出自と古賀親子について知り、社会知識を得るとともにネロス帝国について認識するのですが、これは明らかに引っ張りすぎました。
とどめに、ようやく主人公の行動目的が確立した次の回にした事が、サッカーのコーチ。
続く8話では古賀博士の元助手に会いに行くのですが、せめてどうしてこのエピソードを逆にできなかったのか(^^; しかも結局、劇中でこの元助手から情報を得たシーンが無かった為、全く何の意味もなかった、という事になってしまいました。
メタルダーが必死にゴッドネロスの正体を追うもなかなか掴めない、ならまだしも、そういった展開・描写がほぼ皆無であった為に、物語の軸と主人公の目的が非常に宙ぶらりんになってしまいました。
結果的に初期、ふらふらしているメタルダーに、意味もなくネロス帝国がけしかけては自滅していく、という構図が続いてしまう事に。
またこれには、そもそも「ゴッドネロスの正体を探る」というシチュエーションが、物語上で展開しようとするには地味かつバリエーションを作りにくく、あまり真面目に調べると案外あっさり正体に近づかざるを得ない、という事情も影響したと思いますが、そういう点でも、物語の軸にするには弱すぎました。
そしてこれを軸にしてしまった為に、古賀博士とゴッドネロスの関係について一切不明のまま序盤の物語を進行させざるを得ず、ゴッドネロスが何をそんなにメタルダーにこだわっているのかがあまりにも意味不明となり、非常に物語の掴みがわかりにくくなってしまいました。これがまた、主人公への感情移入を阻害する原因ともなり、連鎖的に悪影響を及ぼしたと思います。
主人公が社会常識を得るとともに行動目的が定まり、トップガンダーの登場を経てネロス帝国サイドの個性化が進んだ6話以降は落ち着いてくるのですが、この凝りすぎたとっかかりが正直失敗だったと思います。
最終的に打ち切りの影響か、古賀博士と村木の関係も「一緒に超人機を開発していた」程度で流されるのですが、本来なら村木の博士への嫉妬とか、超人機開発に関するあれやこれとか、もう少し踏み込んだ展開もあったのかもしれません。村木が古賀博士の技術の一部を引き継いでいるとすると、メタルダーと戦闘ロボット軍団の関係も、また違った描き方が出来るわけですし。
続けて、テーマ的に最大の迷走となったのが、自省回路によるメタルダーの博愛主義(ずっと「自制回路」と書いていましたが、Wikipediaによると、どうやら「自省回路」らしい)。
これはもう、中盤以降、やってしまったとしか言いようが無いのですが……(^^;
路線変更の産物かと思われますが、結局、メタルダーの気まぐれレベルの存在になってしまいました。
それでも、前半に生き延びさせたキャラクターを、路線変更後も物語に絡めて一定の始末をつけた点に関しては、評価したいですが。
後半ざっくり殺られた連中は、可哀想すぎる(^^;
これに合わせて、剣流星の人間的成長を描く部分がすっ飛ばされ気味だったのも、残念な所。
流星の変化そのものは描かれていて、初期に比べて中盤以降はぐっと人間らしくなった流星が、八荒を振り切ってトップガンダーを助けに行く所で一つのクライマックスを迎えるのですが(当初この回でトップガンダーが死ぬ予定だったらしいのもむべなるかな)、途中のエピソードで波がありすぎて、段階を踏んでいる感じがなかったのが残念。物語の重要な要素でありますし、各脚本家がきちっと連携を取って描いていってほしかった所です。まあ正直、80年代の東映TVシリーズでそれを求めるのは難しかっただろうなぁ、とは思いますが。
路線変更によって無効化されたものといえば、流星×舞の恋愛要素。どこまでやるつもりだったかはわかりませんが、OP、ED、前半の物語を見るに、主要な要素として物語に絡める予定だったとは思うのですが……途中からは全く気配が無くなった上に、最終回で「友情」にされてしまいました。
あんなにバカップルだったのになぁ。
その上で八荒がコメディ要素込みで舞に粉かけまくるので、バランス悪いのですが。
恐らく八荒の初期の動機付けがそれしか無かったのと、脚本家がユーモア要素を入れる際に書きやすかったのかと思われます。
八荒は後半の、流星との友情が篤くなってからは割と好きなので、もっと早々にその路線に持っていけば良かったと思いますが。
八荒といえば、Wikipediaを信じるならば、企画初期から登場予定のキャラクターだったとの事。もっとも立ち位置は違っており、路線変更の影響を受けた事は間違いないようですが。
変な話、明らかな路線変更や打ち切りがあった割には、ギリギリまとめた作品、という評価はできると思います。
同時期に配信されていた『大鉄人17』が顕著ですが、酷いものは、それまでの世界観が完全に破綻してしまうので。
メタルダーが敵をざっくり殺るようになってしまった事は大問題ですが、そこに眼を瞑れば面白い回もあり、見応えを維持したという点では、路線変更という大敵を前に健闘した作品、という言い方は出来るかな、と。
中盤以降はなんだかんだで、配信で一番楽しみにしていたのは実は『メタルダー』。
参加スタッフについては、高久脚本にしては破綻回が少なかったし、藤井邦夫を見直したシリーズ。
両者とも、戦隊ではほぼ鉄板でがっかり脚本ですが、今シリーズでは光るものを見せてくれました。特に藤井邦夫は38話で戦闘ロボットの哀しみを拾ってくれたのが良かったし、第28話「可愛い盗賊・きらめくダイヤに乙女の願いを!」は伊藤寿浩監督の凝った演出もあり、異色作にして楽しい驚きの1本となりました。
高久さんも、色々迷走したシリーズながら、メタルダーの戦う理由を22話で「僕も戦争が生んだ落とし子だからだ」と持ってきたのは、感心しました。これをラストに繋げられたなら、なお良かったのですが。
また、扇澤延男の脚本デビュー作品であるのも、忘れてはいけないところ。メタルダーが終始エネミー扱いの第11話「勇者の追撃!天空にそそりたつ巨人!!」は、後の片鱗を感じさせる凄まじいデビュー作。もう一本の方はどうという事はありませんでしたが。
好きなキャラは、クールギンとバルスキー、そして桐原会長(笑) 会長は格好良すぎましたが、出番が極端に制限されていたのは、予定通りだったのかスケジュール的な問題だったのか。会長の出番がもっとあれば、ゴッドネロスの正体絡みのミステリーも、もっと盛り上げる事が可能だったと思うのですが。割と東映絡みで無理に出て貰ったのだろうか、みたいな感じもあるしなぁ……。
流星さんは特に嫌いというわけではないのですが、序盤のぽんこつぶりがどうにもイメージとして尾を引きます……。
ああ後、ラプソディ、好き。ゲルドリングも、個性という点ではあり。クールギンなんかも話によって堂々としていたり策をこらしたり微妙にぶれるのですが、軍団長の個性分けも若干、中途半端になってしまった感はある中、ゲルドリングの存在感は光っていたと思います。
あと良かった探しとしては、特筆すべきはやはり、メタルダーのデザイン
キカイダーというモチーフはありますが、実に格好いい。
実はキカイダーにときめいた事は無いのですが、メタルダーは凄く好き。また、アクションシーンも格好いい。本文で一度触れましたが、肩アーマーが独立可動というのが、アクションシーンで割と効いています。後にがんがん再利用される事になるBGMも格好良く、戦闘シーンの魅力は、作品の大きな魅力でした。
主題歌はもう、言わずもがな。
特撮史上に残る名曲でありましょう。
総体の評価としてはなんか結局、感想本編で書いた、
構成ガタガタだけど随所に光るものがある奇作
という表現に落ち着くかなぁ(笑)
個人的なニュアンスの問題ですが、怪作というより、奇作。
そして、もう少し〜〜なら、もう少し〜〜なら、という事を色々と考えて、妄想の中で完成度を上げたくなる作品。実際には特撮TVシリーズで構成ががちっとはまるのは難しいのですが、背骨の通った構成が貫かれていたらなぁ、と夢想せずにはいられません。
そういう点では、良くも悪くも、はまってしまった、と言う他無いのでしょう。
メタルダーよ、永遠に!