はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『炎神戦隊ゴーオンジャー』感想13

◆GP−23「暴走ヒラメキ」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:古怒田健志
協力して戦う事になったからには……と大翔を理解しようと行く先々に付きまといはじめる走輔(笑)
この辺り、さっぱりして引きずらないのは、走輔らしい所。
一方、決死の策略を仕掛けるもゴーオンジャーに敗れたヒラメキメデスは、何とか7人を破るべく宮殿にも戻らずに思考を重ねた末、新必殺技「三平方の定理」を編み出すが、ヒラメキメデスの動きを読み切ったゴーオンゴールドにあっさりかわされ、撤退。
相変わらず飲んだくれているケガレシアとキタネイダスはそれをあざ笑うが、ヨゴシュタインは一人
「あいつはやればできる子なり!」
とその帰参を待つ。
ヨゴシュタイン様はホント、ヒラメキメデスが好きすぎます。まあ元々、親分気質なのかもしれませんが、三大臣、割と蛮鬼獣に優しいし、意外と福利厚生がしっかりしているのかもしれないガイアーク。
またもゴーオンジャーに敗れたヒラメキメデスは、逃げ込んだ深い山奥で、ガイアークによるマシンワールド侵略の決行前夜を思い返していた。もともと発明家であり、バンドーマを研究開発するもその功績を相応に評価されたと思えずにいたヒラメキメデスは、いっそ自ら害地大臣になろうかと謀反を思案していた所をヨゴシュタインによって副大臣に取り立てられ、一転、その恩義に報いるべく深い忠誠を誓ったのであった。
回想シーンで過去に裏切りを考えていたという話が入ったのは、もしかしたら初期設定の名残か。前回唐突に出てきた「発明家」という設定自体が、微妙に後付けっぽい感じもありますし(^^;
ヨゴシュタインの期待に応えるべく、何としてもゴーオンジャーを倒さなくてはならない……これまでの戦いを思い返し、ヒラメキメデスは打倒ゴーオンジャーの思索を深く巡らせる……
「いったい、わたくしの計算の、どこが間違っていたのか………………どこだ…………何が正解なんだ…………」
ぽくぽくぴーん!
エウレカ!! 我、答を見つけたり!」
何かを閃いたヒラメキメデスは宮殿へ帰還すると、蛮鬼獣製造・強化装置への中へと入り、自らの体に蛮鬼獣100体分のエネルギーを注ぎ込む!
「計算がなんだ! 力尽くで叩きつぶす! それがわたくしが見つけた答なのです」
そう、全てを吹き飛ばす、パワー!
だがビックリウムエナジーは劇薬、過剰に摂取すれば、それはヒラメキメデスの命を削る事になる。
「このヒラメキメデス、命にかえても、ヨゴシュタイン様と、害地目の名誉を守って見せます!」
裏のありそうな策士→面白メガネ→信義の忠臣、となったヒラメキメデス、その姿が、注ぎ込まれたエネルギーによって変貌する――。
その頃、ピカピカ兄妹の家にまであがりこんだ走輔は、兄の真似してサンドバッグを叩くもプールに吹き飛ばされ、「相手の先を読むんだ」とアドバイスを受けていた。
エスプレッソおごったり、なんだかんだで面倒見いい兄ですが、トリプターによると「兄貴が人にアドバイスなんて、珍しいな」という事なので、段々、愛玩動物を見る目線になっている気もする。
そこへ極めて強力なガイアーク反応が出現し、集まったメンバーが目にしたのは、異形の姿へと変貌し、「だいさんぎょーうかくめーい!」で巨大化したヒラメキメデスであった。
「蛮鬼獣100体分のビックリウムを吸収し、でたとこ勝負のデタラメデスとなったのだ、げひゃはーーひはぁ!」
知性をかなぐり捨てて狂気の怪物と化したヒラメキ改めデタラメデスに対し青空王で挑むウイングスだったが、高速で空さえ飛ぶデタラメデスのその名の通りの出鱈目すぎる動きを読めずに敗北。次いで立ち向かった炎神王G6も、滅多切りにされてしまう。
「4+5は、19! 6−3は、25!」
など、デタラメデスの出鱈目ぶりを、見た目やただのマッド台詞だけではなく、口にしている計算がひたすらおかしいという、キャラクターらしい狂気で現したのは、前回良かった古怒田脚本の、センスのいい所かと思われます。また、機械的なエフェクトを使っているのかどうかはわかりませんが、一つ一つの単語のイントネーションや音の高低に極端な変化をつける事で、狂気を演出。エフェクト無しだとしたら、中井和哉、凄い。
デタラメデスの圧倒的なパワーに対抗するべく7人と9体は炎神王G9へと合体するが、
「ひっさつ! ルート3ひくていへんわるちょっけいたす、95まーん!」
意味不明な必殺攻撃でやられる。
「俺様のパワーは、10+10で百万倍だぜ。あははははは」
That's ゆで理論(違う)
炎神王G9すら圧倒する出鱈目パワー。追い詰められ蹂躙されるG9だが、いよいよトドメというその時、レッドが強引に気合いで立て直すと、デタラメに向かってまっしぐらに直進し、攻撃をものともせずにその体へと組み付く。
「みんな! G9グランプリだ!」
零距離からの必殺技を放てば、勿論、G9も只ではすまない。止めるゴールドだったが気合いに押される形で賛同し、一か八か、超至近距離からのG9グランプリを発動。デタラメデスに大ダメージを与えて巨大化を解除させるが、G9もバラバラに吹き飛び、ダメージで炎神もキャストの状態に戻ってしまう。
各々ダメージに倒れたゴーオンジャー達に迫るデタラメ、一人立ち上がり、立ち向かうゴールド。しかし相性の悪さもあってかデタラメの横紙破りの動きに翻弄され、大ダメージを負う、とゴールドが劇中初の大苦戦。遂に倒れたゴールドに迫る必殺の刃を横から受け止めるレッドだったが、ゴールドを見習ってデタラメの動きを読んで戦おうとするレッドもまた、
「出鱈目殺法・思考停止斬り」
などによって追い詰められていく。
レッドの奮戦を見ながら、先ほどのG9玉砕戦法を思い起こしたゴールドは、一つの事を悟る。相手の行動の先を読み、常に最善の一手を打とうとする自分達に対し、悪く言えば考え無し、良く言っても無鉄砲のゴーオンジャーはバカである。バカではあるがしかし、バカではなくては突破できない壁、辿り着けない強さがある。
「走輔、俺の真似をするな……。今必要なのは、おまえの戦い方だ」
どちらが上とか下ではなく――いや、人間としても戦士としても基本的に俺が上だが(兄談)――必要なのは、互いの長所を発揮する事。
と、前回のフォローというか、実質3部作だったというか、前回の着地点からもう少し動かして、多少マシな形で、ウイングスには真似の出来ないジャーの強さ、という事を描いてきました。
前回はゴーオンジャーの無思考を「愚かな善良さ」として描いてしまい、それがたまたま(たまたまである)「性格の悪い複雑さ」をひっくり返してしまう時がある、という展開だったのですが、今回はそれを「真っ直ぐな無鉄砲さ」として、良い面も悪い面も含めて、考えすぎる人間の枠を越える「窮状を突破する力」へと転がしたのは、走輔の性格やゴーオンジャーの性質とも巧く絡んで良かった所。
ゴーオンジャーのヒロイズムとはつまり、「ストレート」にある、という本質が見えた気がします。
デタラメデスが考える事を止めた結果ゴールドを上回る力を見せ、しかしそれは捨て身の危うさである、という被せも面白い。
「よーし! 俺の戦い方は、マッハで前に出るだけだぜ!」
ゴールドからダガーを受け取ったレッドは、サーベルの上に乗るとダガーのブースターで空中を加速、滑走する!
ここで兄が赤にダガーを托す、というのはゴールドがジャーを心底認めた表現であると同時に、戦闘力の増強にもなるし、アクションとしても盛り上がる、とがちっとはまりました。
「相手の出方とか! 予測とか! 関係ねぇ!!」
デタラメデスの出鱈目攻撃をゴーオンレッドの無理無茶無鉄砲が突き抜け、炸裂するエアリアルサーベルストレート。
「バカな、俺が負ける筈が無い、俺は勝ってヨゴシュタイン様のもとへ……ヨゴシュタイン様ぁぁ!!」
閃きさん、爆死。
「俺が……いや、俺たちが力を合わせれば、無敵なんだぜ! なあ大翔」
走輔が最後だけいい所を持って行った、と少々不満顔の美羽だったが、大翔はそんな妹の頭をポン。
「構わないさ……勝ったのは、俺たちだ」
ここで遂にお互いを認め合い、「俺たち」となる、ジャー&ウイングス。
「長くなるかもな、あいつらとの付き合いも」
前回からだいぶ改善しましたが、しかしこれなら、もっと露骨に引っ張って、今回で綺麗にまとめるという展開にできなかったものか。炎神王G9とか、大翔と走輔の関係とか、今回の前振りとして必要な要素はあったのでしょうが、ジャーとウイングスの関係性において言えば前回のまとめを改めてやり直したという構造であり、むしろ前回は着地したフリをしただけでまだ降りていなかった、というなにか奇妙な事になってしまいました(^^; そして前回がメインライターで今回がサブライターという不思議(笑)
着地点に修正が入った事自体は、非常に良かったですが。
早速たかり始めた走輔を大翔がいなし、去って行く7人のヒーロー達……。戦場に残されたのは、ヒラメキメデスの剣。かつてヒラメキメデスを副大臣に取り立てる際に、自ら仕立てたそれを渡したヨゴシュタインは、忠臣を失った慟哭と共に、その剣を手にする。かつてなくシリアスなヨゴシュタインはいかなる復讐戦を望むのか――敵方のシーンなのに最後に手前に花入ったりしつつ、物語は後半戦へと突入していく。
そろそろ仕事してくださいケガレシア様!
終わってみれば戦隊史で見てもかなりの忠義者だったのではないかと思われるヒラメキメデス。戦力的には完全にウイングスの踏み台という無残な転落ぶりでしたが、固定化しつつあったガイアーク三大臣のトリオ漫才に変化を加えるなど、作品にいいアクセントを付けたキャラクターでした。どちらかといえば苦手な声優だったのですが、中井和哉も好演。
作品としては、通常なら、追い詰められた閃きさんが超パワーアップ→ロボット敗れる→G9で大逆転、という流れになる所を、G9登場→閃きさん超パワーアップ、と逆にしているのは、構成として面白いところ。お陰でG9は(相手が捨て身だったとはいえ)登場2回目にして追い詰められるどころか合体解除されてしまう新巨大ロボになりましたが(笑) まあG6も役に立ったのごく短期間でしたし、今作は割と、ロボットに厳しい。


◆GP−24「最初ノエガオ」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:古怒田健志
ヒラメキメデスの撃破により戦いが一段落し、森林浴としゃれこむゴーオンジャー。訪れたその森に、「なんだか、見覚えがあるの、この森」と記憶を刺激される早輝。
一方、ヘルガイユ宮殿ではヨゴシュタインがどん底まで落ち込んでいた。
「ヒラメキメデス……どうして死んでしまったナリ……」
「ヨゴシュタイン、元気を出すでおじゃるよ」
「奴の事は良き思い出にして、新しい一歩を踏み出すぞよ」
「ほっといてほしいナリぃ」
なんか、フられた男を慰めるみたいに……(笑)
ガイアーク三大臣は、仲良し・割と部下に甘い・飲んだくれ、というのが実に面白くはまってきました。当初はそれぞれの対抗意識めいたものがもう少し描かれていたので計算の結果ではないでしょうが、ギャグに踏み込みすぎない範囲でユーモアとシリアス分のバランスも良く、何とも味わいのある幹部連に。
そんな三人の前に、おどろおどろしい効果音と共に現れる人魂――なんと前回あれだけ派手に散った閃きさんが、まさかの幽霊として帰還する……。
その頃、街へ帰ろうとしたゴーオンジャーは、ぎんじろうが原因不明のエンストを起こして立ち往生。森の中に少年の姿を見つけた早輝は迷子かもしれないと追いかけて男達とはぐれてしまった所を、突然、青鬼っぽいデザインの謎の怪物に襲われる。変身して立ち向かうイエローであったが、蛮鬼獣ではない謎の怪物は満タンガンを弾き返し、イエローは逆に怪物の攻撃で吹き飛ばされてしまう。
Gフォンも通じず、戻ってこない早輝を心配して森に入った男達を次々と襲う、謎の怪異……と、ここから夏の怪談回に。その裏には、怨霊となって舞い戻ったヒラメキメデスの策動があった。
「うらめしや〜。ウラメシメデスとなった我が怨念、思い知るがいい」
閃きさんは、実に素晴らしい使われっきりぶり(笑)
森の中を逃げ惑う途中、胸騒ぎを感じてやってきた大翔と美羽に出会う4人だが、6人まとめて幽霊の群れに追われる事に。もはや、信じる/信じないの領域は飛び越えているとはいえ、大翔あたりはクールに幽霊をかわすものかと思われましたが、全員、オカルト駄目でした。
一方、青鬼に敗れた早輝は、洞窟の中で少年に介抱されて目を覚ましていた。早輝はその少年の姿に、子供の頃、親に連れられてハイキングにやってきたこの森で迷子になり、そっくりの少年に励まされた事を思い出す。
「怖い時やさみしい時は、笑うと勇気がわいてくるよ。だから、スマイルスマイル」
それが、早輝のスマイルの原点、最初ノエガオ。
「私はこの森であの子に助けてもらったから、今度は私があなたを助けてあげる」
「うん!」
少年と手を取り合って進む早輝だが、再び青鬼の襲撃を受け、逃げていた所で6人と合流。その前に姿を現す、ヒラメキメデス改めウラメシメデス。
「うらめしましてございます」
前回、壮絶な爆死を遂げたヒラメキメデスはゴーオンジャーへの憎しみから怨霊となり、霊界で亡者達と意気投合。現世へ舞い戻ると、亡者達の協力で様々な怪現象を起こしていたのだった。
だが、霊体の身ではゴーオンジャーに物理的な被害を与える事ができない。そこで幾つもの異次元ワールドを渡り歩いたヒラメキメデスは、強さだけを求める 宇宙刑事 サムライワールドで、森を破壊する事を生きがいとする妖魔バッキをスカウトしてきたのであった。
EDの宣伝を見る限り恐らく劇場版との絡みだと思われますが、これで突然出てきた謎の怪物・バッキがやたらに強い理由には納得。
それにしてもサムライ、ヒューマンとかマシンとかと同じ扱いの、異種族なのか(笑)
早輝と少年を逃がしてバッキに挑むジャー4人+ウイングスであったが、種族特性:《炎神ソウル無効》を持つ妖魔バッキに蹴散らされてしまう。森の奥に逃げ込むも、自分の力では勝てない……と沈む早輝。そんな彼女に、少年は笑顔を見せる。
「怖い時やさみしい時は、笑うと勇気がわいてくるよ。だから、スマイルスマイル」
それは、10年前の少年の言葉。
「僕は……いつでもここにいるから」
そう、少年は、森の古木の化身であった。10年前と同じく、少年に勇気を貰い、スマイルを取り戻した早輝は、ひとりバッキへと立ち向かう。
「大丈夫、あなたとこの森は、私が守る! 言ったでしょ、こう見えて私、とっても強いんだよ!」
「うん!」
「チェンジソウル・セット! レッツ・ゴーオン! スマイル満開! ゴーオンイエロー!」
変身したイエローは、バッキに走輔ばりの突撃から、連続攻撃。
「私は負けない! あの子にもらった、勇気があるから!」
気合いの満タンガンでバッキをひるませると、少年が森のパワーを込め、二人で放つレーシングバレット夏の思い出スペシャルでバッキを撃破。しかし倒れたバッキにウラメシメデスが取り憑くと、邪悪パワーで融合・巨大化。時間の都合でいきなりG9で立ち向かうゴーオンセブンであったが、《炎神ソウル無効》のバッキをどうやって倒せばいいのか……その時、早輝が塩を使う事を思いつく。
怨霊に対抗するには、清めの塩。
ボンパーに転送してもらった塩をそれぞれのブラスターソウルにまぶし、悪霊退散ブラスターソウルを弾頭としたG9成仏グランプリが炸裂。
「わたくしの復讐もここまでなのか……さらばです、ゴーオンジャー!」
怨霊ヒラメキメデスは今度こそ完全に昇天し、ゴーオンセブンは見事にバッキを退治。
その光景に、最後の最後までよく戦い抜いた、とヒラメキメデスの形見となった剣に、手向けの酒をふりかけるヨゴシュタインであった……。
ラストは、少年の木にお礼を言う早輝。主題歌のスローアレンジの中、早輝の言葉に応えるかのように葉っぱが一枚落ちてくる、という演出も素敵なのに、遠巻きに見守る野郎4人の中、連が一人だけ、
「は? とうとう脳に虫が湧いた?」
みたいな実につまらなそーーーな顔しているのですが、どうしてそうなった(笑)
いや、今回通して、理論派の連が「俺はオカルトなんか信じないっス」というならそれはそれで有りなのですが、巨大猫とか幽霊とかに怯えまくっていたからなぁ……(^^; まあ、それはそれ、これはこれ、なのかもしれませんが、それにしても、どう善意に解釈しても「狂ったんじゃないか」という表情にしか見えず、色々台無しに(笑)
最近、都合により銀色に押されていた早輝の、正統派ヒロイン回。
夏の怪談回にヒロイン回を合わせて劇場版の要素も絡め、好敵手であったヒラメキメデスにもう一花与えるとともにヨゴシュタイン様に心の整理を付けさせる、と筋立てに特筆すべき所は無いものの、複数の要素を破綻なく組み合わせたテクニカルな好篇。
今のところ、古怒田脚本は安心して見られます。