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『仮面ライダーブレイド』感想12

先週分。
(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第21話「初恋はアンデッドのかおり」◆ (監督:長石多可男 脚本:今井詔二
なまじ17〜19話の桐生編で盛り上げてしまった為、反動も手伝って面白くなさが臨界点突破。しかも台詞が頭悪いとか、構成が酷いとかいう話を超えて、ただただ純粋につまらなくて、見ていて心が折れそうになった。
ろくな個性も面白みもない山羊男、なんの魅力も無い悪女キャラ、ここに来てえらく綺麗事のヒーロー願望を語り出す睦月、おざなりな虎太郎引っかけ展開、全く琴線に触れない剣崎と虎太郎の友情……全要素が100%面白くなくて、どうにもならない。
見え見えの展開でも面白ければいいわけですが、見え見えの上に全く面白くないので、ホントきつい。
山羊男が重要と見せかけて実は女の方でしたー、というのも全く効果的になっていないし、そもそも山羊男が冒頭から小物丸出しな上にキャラクターとして面白くなさすぎるし。その展開なら重要である筈の虎太郎が女に引っかかる過程が飛び飛びすぎるので、虎太郎がちょろすぎる、以外の感想がなく、なんの盛り上がりもないし。こんな大雑把な人質展開と剣崎と虎太郎の友情とか、21話まで来てやるようなネタでもないし。虎太郎引っかけ展開自体が見え見えなのだから、せめて引っかけた後になにか一ひねりするとか頭使って欲しいものですが、何にも頭使わないし。複数の上級アンデッドが動きだす新展開に際し、上級アンデッドが人間の姿になれるから出来るエピソード、の最初がこれとか、壊滅的。
以前から何度か指摘している、劇的な盛り上がりの頂点に「変身」を重ねる構成、にはようやくなっているのですが、なった結果、そこまでの話の質と盛り上げ方が下手すぎてどうしようもないという見えてはいけない真実が見えてしまいました。
これが偶数話(次回が次週待ち)だったら、ここまで来て遂にリタイアしていたかもしれない、脳にダメージが来るレベルの面白くなさ。
というわけで今回は、起こった出来事をざっくり気味に。
先日の借りを返そうとギャレンに殴りかかるカリス。その戦いを見て高揚したレンゲルは半ば自動的に変身するが、またも腹痛で早退。……なんか段々、某伝説の鎧みたいになってきた。(※『爆竜戦隊アバレンジャー』)
橘さんがレンゲル/睦月の事情を説明すると「真の力を手に入れたらぶちのめしてやる」と話聞いてない感じであおって、始さん帰宅。
「その辺のアンデッドとはひと味違う」発言の直後に、タマネギにぶった切られて逃げ出す山羊男。
「でも良かった……君がアンデッドじゃなくて」と女に対し、疑っていた事を直球で口にする剣崎。不器用というか……馬鹿。
遅い春に盛り上がる虎太郎を「初恋?」と茶化しながらニヤニヤする剣崎と広瀬……という相変わらずの中学生ワールド。20代の男女がやると、単に気持ち悪いだけです。
「ベルトを奪う事が出来ないなら、睦月が強くなってエースアンデッドの邪悪な力を押さえ込むしかない」と、睦月を弟子に取る橘、コインロッカーの記憶に関する事情を聞き出す。
「動体視力……ギャレンになる時の基礎訓練の一つだ」と、バッティングセンターで、まさかの特訓展開(笑) というかそれ、根性でなんとかなるのか。
「すぐ諦めてしまう。その弱い精神力が、カテゴリエースに取り憑かれるんだ」
自分よりへたれを発見して、凄く楽しそうな橘さん。
乗り越えた男が反省を踏まえて言っているというより、自分の事は棚に上げて忘れているっぽく聞こえて困る。
コインロッカーの記憶と繋がる闇、そこから解放された時に感じた光と祝福、その光を守りたい……とか、いきなり、綺麗事のヒーロー願望を語り出す睦月。別にそれ自体は構わないのですが、何話も引っ張るネタではなく、散々うだうだ引っ張った末にそんなオチなら1話か2話でまとめてほしい、という毎度の展開。
ブレイド』って書いている人は群像劇のつもりなのでしょうが、集中すれば1話か2話でまとまる話を、単に薄めて分散して引き延ばしているだけで、群像劇の捉え方そのものが間違っているのだと思う。
広瀬、PC修復。結局、女が何かしたのかは言及なし……というか蓋開いていたけど、システム的にではなく、物理的に修理したのか、広瀬さん。
山羊男を追った剣崎、虎太郎がデート中の植物園に誘い込まれる。虎太郎を人質に取り、お花アンデッドの正体を現す女。ベルトを置いた生身の剣崎に襲いかかる山羊男……て単に戦闘力奪いたかっただけなのか!
カリスが飛んできて虎太郎を助け、相変わらずよくわからない心境の変化で「おまえを助けたわけじゃない! 何度も言わせるな!」とテンプレのあれな感じの台詞を口にしてしまうも、お花は花びら隠れで退却し、無駄働き。あと、サーチャーの反応を見て走ってくる途中の橘さんも、無駄働き。
虎太郎からベルトを受け取った剣崎は、ブレイドに変身して山羊を滅多切り、マッハタックルからスーパー稲妻キックのコンボで山羊を瞬殺封印し、いじける虎太郎を慰める。
ブレイドにカリス、楽しみが増えたわね。もっと愉しませてもらうわ」
そして逃げ去った女は、バッティングセンターで動体視力の特訓に励む睦月を見つめるのであった……。


◆第22話「君を呼ぶ光」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇
変わった。
冒頭から急に作品のテンポが変わったなぁ……と思ったら、會川昇が参戦。脚本ベースだけでなく、作品全体の間合いが急にがらりと変わったのですが、穏便な軌道修正を諦めて、大幅な変更に踏み切った?
演出に関して言えば、もうこれまでの事は忘れましょうレベルでテンポ変えているのですが、ここまで変えてきたという事は全体方針かと思われますが、さて。
女性アンデッドに転がされていたショックを引きずる虎太郎は、取り柄だった料理の味付けが傷心の異次元空間へ突入するが、それを平然とたいらげる橘さん(いつの間にかたかり)。睦月を鍛えてみようと思う……と報告に来た橘さんがやたらに明るいのですが、橘さんはもしかして、身近に自分より立場の低い人間が居ると輝くタイプなのであろうか。
弱者にはひたすら上から目線で、竹藪で睦月に格闘訓練を付ける駄目人間。最初は手も足も出なかった睦月だが、動体視力の訓練を思い出して橘の攻撃を見切るなど、その資質を見せる。というかなんだろう、この、特訓展開をはしょった感じ。
地下鉄の駅やライブハウスなどで続発する謎の失踪事件の背後に、地下で蠢くアンデッドの存在を感じた橘と睦月は、地下の発電施設で人を襲うモグライマジンと戦闘。先日修行を始めたばかりなのに、ギャレンと一緒に変身してしまうレンゲル。案の定、頭が光って不調に陥り、変身が解けた所を地下へと引きずり込まれてしまう。
明らかに免許皆伝があまりに早すぎる橘さんのミスですが、所詮、駄目人間には人を導けないという事なのか……。
地下空間に引きずり込まれた睦月は、行方不明になった人々の死体を発見し、闇の底で目を覚ます恐怖の記憶……ギャレンが突入してきて事なきを得るが、半ば錯乱状態で光を求めて地上へ逃げ出した事を橘に責められる。
「橘さんはいいですよね。死んだ彼女を守れなかった、て理由がある。俺にはない。戦う理由なんてないんです」
突然、仮面ライダーの志望動機を投げ捨てる睦月(^^;
……あれ、前回言っていた「光を守りたい」というのは、“戦う理由”ではないのか。結局それは、覚悟も自覚もないまま口にしていた綺麗事という扱いなのか。
思うようにならない自分自身をいじけた流れとはいえ、他人の傷を抉るような事を平気で口にしたり、正直、睦月のキャラクターがかなりブレているのですが、どうもこう、ブレを承知で、強引に修正してきている感じ。
いじけモードの睦月はバイクで走り去り、それを見つめる駄目師匠……。
一方、始は奥さんから仕事を紹介されていた。
今、無職から大脱出の時!
かつて栗原父の助手をしていた女流カメラマン・神丘(演じるは『アギト』の小沢さんこと藤田瞳子)の臨時アシスタントを務める事になり、始さんの周囲に出現した若い女の存在に、ふてくされる天音ちゃん。
同じく、ひとり無職から脱出しようとする始の動きに警戒を強めた剣崎は、その邪魔をしに仕事先へと向かう。仕事先……東武動物公園で撮影アシスタントを務めていた始は、昼間っから動物園を1人でうろついている100%怪しげなメガネの男に、アンデッド大戦を示唆すると思われる内容で、思わせぶりに話しかけられる。そして、機材と一緒に持ち歩いていた栗原家の写真――栗原父がお守り代わりに持ち歩き、かつてあの雪山で託されたそれ――を持っているのを神丘に見られてしまう、とトラブル続き。更に神丘に問い詰められた所にお花アンデッドが現れると、踏んだり蹴ったり。
やはり、働いたら負けなのか。
お花アンデッドに思いっきり吹っ飛ばされた神丘を助けつつ、さくっと近くの物置に閉じ込めた始はカリスに変身。しかし相性が悪いのか、またもお花ハリケーンに苦戦するが、突然、空飛ぶカラスアンデッドがお花アンデッドを強襲する、という思わぬ展開。
「ようやく会えた、カリス」
「おまえは」
「1万年前の約束、今こそ果たそう」
「……約束?」
カラスの攻撃を受けてお花は逃げ、仕事の邪魔をしにやってきた剣崎の姿を見て、カラスも飛び去る。
始いわく上級アンデッドだというカラスの正体は何者なのか、そしてカリスとの「約束」とは――と、どうせ上級アンデッドが複数出てくるなら、これぐらい興味を引く展開にしないと、といきなり見本みたいに入れてきました。
その頃、最近学校にも行かずに無職の駄目人間とつるんで生傷を作る生活をしていたらしい睦月は、「ここに居たら俺は、強くなんかなれない……」と心配する両親に黙って、農場へと家出。ぽんこつトリオに向けて、「誰かの為に戦う事ができないんです」と愚痴り出す。
剣崎の両親の死や橘にとっての小夜子の死を取り上げ、まるでそういったトラウマ案件が戦う原動力のように語る睦月に対し、
「それじゃまるで、不幸な方がいいみたいね!」
とぶったぎる広瀬さんが、22話にして初めて爽快。
「そんなにやなら、辞めちゃえば?」
虎太郎もだいぶ立ち直ってきた様子……というか冒頭のシーンは、作品の空気を変えるにあたって、一応前回までも踏まえています、というポーズを見せる意味合いが強かった気はします。
戦う理由はない、しかし仮面ライダーをやめられるわけはない……何故ならそれはエースに選ばれた自分の運命だから、と酔っ払いだす睦月はだいぶブレましたが、まあなんというか、これまでが面白かったわけでもなんでもないというか鬱陶しいだけだったので、もうこれで、いいと思います。
まだ油断なりませんが、今回どう見ても荒療治でこれまでのガンを切除しにきているようにしか見えない。
「運命ねぇ……そんな事、考えた事もないな」
「じゃあ、剣崎さんは?」
「これ、仕事だから」
「仕事……?」
「誰から押しつけられたわけでもない、俺が選んだ、命をかける価値のある仕事だ」
一応の今作のコンセプトを踏まえつつまとめた格好いい所ではあるのですが、だから、今現在も給料は出ているのか……という疑問がどうしても付きまとう所。
仮にボードの母体組織があるにしても、機材持ち逃げした上に勤務実態不明の2人に給料払う酔狂な会社があると思えませんし、接触方法不明で向こうからも接触はしてこず、ただライダー活動をこっそり査定して給料を払っている闇の組織とかあったら、凄い狂っているのですが。
いっそ、剣崎と広瀬を哀れんだ虎太郎が、こっそりボード名義でお金を入れているのではないか疑惑。
まあ勿論、給料出なくなって実質無職でも、剣崎は今更それを捨てられない、というキャラクターであり、例え会社が夜逃げしても、アンデッド退治という「仕事」を「自分が選んだ責務」として全うしよう、というのはそれはそれで格好いいと思うのですが、無理な設定を誤魔化しながら貫くよりも、そこもいっそ解体してしまっていいと思うのですが、そこはどうしても譲れないのか、なにか重大な伏線なのか。
「……給料、安いって言ってましたよね」
若者の容赦ないツッコミに、がくっと机に突っ伏す剣崎。
これまでなら、この一連を延々と恥ずかしい語りにしてしまう所を、短い台詞に意味を込め、ユーモアを交えてテンポ良く展開したのは、純粋に脚本の腕の差。
「あんたねぇ……剣崎くんがめっずらしくいい事言ってたのに」
「まあ……確かにここの大家には、世話になりっぱなしだけどさ」
「その割には扱いぞんざいだけどね」
この流れで、剣崎の虎太郎への適当な態度にまでフォローを挟むという、見事な仕事。
「でも、給料以上のものを貰ってるよ、この仕事で」
「わかりません……」
「あのさぁ。もし運命なんてあるとして、でも、運命と、戦う事も出来るんじゃないかな?」
思い悩む睦月に、笑顔を向ける皆。
本物の思春期真っ盛りの悩める少年を置いて人生の先輩達の軽妙な会話を展開する事で、ぽんこつ20代トリオに、中学生日記モードから脱却をはからせており、この先この路線に完全に切り替わるのかはわかりませんが、この一連の会話シーンはこれまでの今作の病巣を勢い良くぶった切っていくという、物凄いオペ。
そう簡単にはすっきりできない睦月だったが、そのタイミングで、アンデッドサーチャーが反応を捉える。橘が地下街でモグラ接触し、剣崎は出撃。戦う理由に惑う睦月は出て行こうとしないが、逃げ遅れた人々をかばった橘が危機に陥った事を知り、たまらず飛び出していく。
前半のギャレンレンゲルvsモグラのシーンもですが、人を守るシーンもかなり意図的に入れていると思われます。半壊した地下街に駆けつけるがモグラの穴掘り攻撃に苦戦するブレイド、と、戦闘のシチュエーション、怪人の攻撃方法にも変化を付けるなど、とにかくここまでの欠点を端から補強・改修。
遅れてやってきた睦月が目にしたのは、逃げ遅れた人々と、瓦礫の下敷きになって重傷を負った橘。「みんなを連れ出すんだ」という橘の言葉に、闇に怯えながらも睦月は勇気をふるい、人々を地上への出口――光――まで案内する。
人々を守り、お礼を言われる事で、闇の中に一つの救いを見つける睦月。
ついでに、「お名前は?」と聞かれて無言で立ち去る剣崎の真似。
そこは、影響受けなくていい。
「アンデッドは奥だ、行けぇ!」
「はい!」
橘の檄を受けた睦月は走り出し、地下空洞でのブレイドモグラとの戦いへ飛び込む。
「剣崎さん!」
「見つけたみたいだな! おまえの給料の代わり!」
「はい!」
光を守る――とは何か、口先だけではなく、心の底からその意味を手にした睦月は、変身の構えを取る。
(ありがとうございます。お名前は……)
「俺は……俺は……仮面ライダー仮面ライダーレンゲルだ!」
その頃、自宅に戻った神丘は、栗原父が遺した形見のフィルムに、不自然な影が写っていたのを思い出す。PCを使って拡大していくと、そこに写っていたのは、真冬の山中だというのにワイシャツ姿の――相川始! 果たして相川始は何者なのか、そしてなぜ、遺品の中に見つからなかったお守りの写真を手にしていたのか?
疑惑を抱く神丘、謎のカラスアンデッド、暗躍する上級アンデッド達、相川始とは、そしてそもそも、カリスとは何者なのか。今、物語が大きく動きだす――!
荒療治。
だと思われます。
まだ油断できませんが、これだけ全体のテンポを変え、ここまでの駄目な所をぶった切って改善してきたので、そういう事なのかな、と。
うだうだ引っ張ってきた睦月を、物凄い勢いで綺麗にまとめた力技でヒーローとして立ち上がらせ、まだ「面白くなった」わけではないですが、凄く、「すっきりしました」。さすがに睦月のキャラクターが多少ブレましたが、これはもう、代償として仕方がない。
このまま、まともになってくれる事に期待。