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『仮面ライダーブレイド』感想30

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第47話「運命」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇
前回ラストで出来るクワガタにはたかれた睦月は剣崎が病院に連れて行き、天王路ルームを漁る橘さん。始はそこで封印の石を目にするが、橘さんが触れた途端、光って消えてしまう。
しまった! 裏目エネルギーがまた何かを起こした!
統制者の意志を伝えるモノリスは姿を消したが、それは必ず、また現れる筈であった。
「近い将来……最後の一体となった、アンデッドの前に」
「そのアンデッドが望むものを、与える為に」
睦月は軽傷ですぐに退院し、付き添った剣崎は睦月の平和共存の希望に対し、いいと思うけど「難しいよな、それ」と、ドライな反応(笑) 剣崎はこう、“全ての人間を守る事”という自分の努力目標以外には、割とシビアです。
そして何故か、睦月の同じ問いかけに対し始が「甘い」と言った事を聞き、妙に嬉しそう(笑) 今日も始さんのヒロイン力が、唸りを上げて上昇していきます。
「剣崎さんは……どうしてジョーカー、相川さんをそんな信じる事が出来るんですか?」
「そうだな……なんでだろう」
ここで足を止める剣崎は良かった。
一方、橘はあの殺風景な部屋で回収してきた資料を調査しながら、バトルファイトを収める手段を模索していた。
「ジョーカーが……キングを封印すれば……全てが滅びる……のか……」
睦月は迎えにきた望美ちゃんと川原でデート、始さんは天音ちゃんを写真撮影、と、一時の穏やかな時間。
(いつまで……このままでいられる……)
だが、店に戻ったらカウンターに、クワガタ王子が座っていたーーーーー。
今の時間を守ろうと、出来るクワガタに和平交渉を試みる始さんだったが、言うまでもなく始さんは、交渉関係のスキルなど一つも持ってはいなかった。そして出来るクワガタの手には、アンデッドの封印を可能とするケルベロスのカードが握られている。切り札を手にしたのは、出来るクワガタの方だったのだ。
「ほぅ……これはあの雪山の時の……」
栗原家の家族写真から、そもそもあの雪山でカリスと戦っていたのは出来るクワガタだったと判明。そして戦闘中に吹っ飛んだクワガタの剣が突き刺さったのが、栗原父の死因であった。
「おまえがここに住み着いた理由がわかった。父親を殺したのは自分だと、教えてやらないのか」
「貴様……」
栗原父が巻き込まれて死んだ、と言及されていたカリスの雪山の戦闘相手は特に誰でも良かったのでしょうが、因縁付けを強くする為か、出来るクワガタさんが割り当てられました。本編で描写されていない部分で、割と長い間ちまちまアンデッド同士の戦いがあった、という事の補強にもなったと思います。
「おまえは俺を封印する事はできない。俺を封印した時、おまえの勝利が確定する。ジョーカーの勝利――それはバトルファイトのリセット。全ての生命の消滅を意味する。あの親子も消滅する。おまえのせいで。ジョーカー、それがおまえの宿命」
森の中で対峙する、カリスと出来るクワガタ。クワガタ王子がカリスの動揺を誘って滅多切り。
「人間になど愛情を持ったのが間違いだ」
そこに天音から連絡を受け、サーチャーの反応で剣崎と虎太郎が駆けつける。
「始を封印などさせない!」
「ふっ、ふはは、ここにも居たなぁ。ジョーカーをかばい、世界を滅ぼしてしまおうとする馬鹿者が!」
変身したブレイドだったが、投げつけられたケルベロスカードからカリスをかばい、カードに何か(カブトムシカード?)吸われて、変身解除。滅多打ちにされたカリスも変身が解け、かつてなくボコボコにされる始さん。今度こそ封印の危機に陥るジョーカーだったが、剣崎と虎太郎が出来るクワガタに組み付いて、それを阻止。叔父さん、姪っ子のために根性を見せました。
「ジョーカー……」
2人をもぎ離した出来るクワガタは、逃げて行った始を追う……愛され守られ追われ、この最終盤に来て始さんのヒロイン力が留まる所を知りません。これがジョーカーの、本当の力だ!
よろよろと逃げていた始は気絶。連絡を受けて現場へ移動中だった睦月に拾われ、睦月は駄目師匠へ連絡。一旦、海辺の廃坑?のような所へ運び込まれ、戸板に乗せられる(笑)
微妙に見覚えのある場所ですが、『未来戦隊タイムレンジャー』2話で使った所かな……?
もはや標的でも何でもない為、出来るクワガタに捨て置かれた剣崎にも連絡を取り、始の無事を託される橘と睦月。
だが――
「睦月、リモートのカードを渡せ」
考えに考え抜いた末の橘の結論。それは、ジョーカーの中に封印されたヒューマンアンデッドをレンゲルのリモートにより解放した上で、ジョーカーと出来るクワガタを封印。ヒューマンアンデッドを最後の勝者とする事で、人類と世界を守るというものだった。
ここで、睦月にも「選択」を突き付けてきました。
ただまあこの理屈だと、それこそ嶋さんと女王様辺りを解放して金居だけ封印すれば平和共存可能なのでは? という話になってしまうので、橘さんが考えているほどリモートの能力が都合良くないか、嶋さんと女王様を解放してしまうと、レンゲルがまたエースに乗っ取られてしまうという面倒くさい仕様か、と考えておくべきか。
「剣崎さんは、承知しているんですか?」
「……」
「……嫌です」
「わかっているだろ?! あいつはジョーカーだ」
「だけど! 相川始はどうなるんですか。剣崎さんは、信じています。ジョーカーは世界を滅ぼしたりしないって」
駄目師匠、駄目弟子に剣崎を優先される(笑)
折角ここで持ち上がった「選択」なのですが、睦月の始に対する意志というより、橘<剣崎、という話になってしまったのは勿体ない。まあ睦月、殴り合うか鼻で笑われるか以外で、ほとんど始さんと絡んでなかったしな……。
「俺も、信じたい。誰でも、運命と戦う事は出来る筈です。違いますか」
と、思ったら、睦月のテーマと繋げつつ、睦月の意志も出してきました。
前半、睦月と彼女の会話で「運命」云々の話をさせているのですが、これは前半戦の内から會川昇が作品に仕込んできていたキーワードであり、こういった要素の統合作業は、実に巧い。光とか闇とか過去話まで拾えるのかはわかりませんが、扱いの悪かった睦月も何とかこの最終盤、滑り込みで物語の中に組み込んできました。
あくまでジョーカーを封印しようとする橘朔也――運命と戦う道を信じようとする上城睦月――向かい合った2人はその思いと意地から、ベルトを構えて対峙する。
この人達はどうしてすぐに、殴り合いの準備を始めるのか(笑)
橘さんは、身内に銃を向けるの何度目だ。
シーンとしては、向き合ってベルト構えて変身する2人は凄く格好いいのですけど。
後、普段からそういう描写だったか覚えていませんが、ベルト装着後、宙に浮かぶ変身マークが、マークの方から向かってくる睦月と、マークの方へ歩いて行く橘、というのは鮮やかな対比になりつつアクションに繋げました。
振り下ろされるマジカルステッキに対し、横転撃ちで師匠、レンゲルを瞬殺。
「やっぱり……強いですね、橘さんは」
あーそこ、無理に持ち上げなくていいから。
「ばかやろう」
ギャレンは変身の解けた睦月を地面に横たえ、意識を取り戻した始はそれを目にする。
この、変身から一瞬で決着が付くというのは、『椿三十郎』(でしたか? クライマックスに有名な決闘シーンがあるのは。全然、間違えているかもしれないけど)とかのイメージか。
抵抗する力の無い始に、銃口を向けるギャレン。だがその時、始の携帯に天音ちゃんから電話がかかってくる。
…………使用が初だったかどうか覚えていないのですが、携帯持っているのか、始さん。いや、ティターンに罠を仕掛ける時に剣崎に携帯を借りていたので、持っていたか持っていなかったちょっと考えたのですが、要するに、始さんは携帯を持っているし使えるけど橘とか睦月とかのメールアドレスなんて登録している筈がなかったという事か。
目前で交わされるあまりに“人間らしい”会話に、揺らぐギャレン銃口。そして――
「ジョーカーは、相川始は、渡さない!」
ジョーカーを探し求める金居の前に単身立ちはだかったのは、橘朔也。
遂に、ヒロイン争奪戦にノミネート(おぃ)
ジョーカーが勝ち残ればバトルファイトがリセットされ、この世界は消滅し人類は滅ぶぞ? という言葉に対して力強く、
「そうなるとは限らない」
フ ラ グ 立 て る な
「信じてるのか?」
「俺の友がな!」
もともと職場の先輩後輩という事もあり、これまで「仲間」という表現は用いていたのですが、ここで剣崎を「友」と呼ぶのは、凄く格好良く決まりました。お互いが無職になった事で、社会的関係が取り払われた、というニュアンスも含んでいるのかもしれません。にしても、橘さんが単体でこんな格好良く変身したの、いつ以来だ。
変身したギャレンは銃撃を叩き込むが、出来るクワガタの張るバリアに阻まれてしまう(カブトムシの力?)。ジャックフォームからの空中射撃も通用せず、翼を斬られて落下したギャレンは出来るクワガタに追い詰められ、ケルベロスカードを突き付けられるが、その力でアンデッドカードを奪われる寸前、腕を掴んで零距離射撃。
「この距離なら、バリアは張れないな!」
強引な連射にもがくギラファアンデッドは力任せに剣をギャレンに叩きつけ、砕け散るマスク。
ここでマスクの下の流血描写が入りますが、今作ではトライアルEによる剣崎への銃撃、前回の天王路の最期、そしてふと思って確認したら前年の『爆竜戦隊アバレンジャー』でも終盤の担当回でやっていたので、諸田監督のこだわりか。
「俺は全てを失った。信じるべき正義も、組織も、愛する者も、何もかも。だから最後に残ったものだけは、失いたくないっ。信じられる、仲間だけは!」
この局面でも、浸る。
先の台詞で剣崎を「友」と呼ぶ事で、ここの「仲間」には、剣崎以外の面々……恐らく始も含むのであろうな、と橘さんの瀬戸際の決断を含ませているのが、巧い。
反へたれ粒子MAXモードによる至近弾ラッシュは遂にギラファアンデッドを打ち崩し、開くバックル。だが、取り出した封印カードが最後の抵抗ではたかれ、海に落ちてしまう。
ここに来て、かつて無かった驚愕の展開(笑)
「ジョーカーが残り、世界は滅びる。……バカだな、お前は」
「うぁぁぁぁぁぁ!!」
咆吼したギャレンは、最後の力を振り絞り、弱ったギラファに体当たりして岸壁から海へ落下。緑色の光が海中で輝き、出来るクワガタと橘の反応は、もろともに消える――。
さすがに回想は出ませんでしたが、出来るクワガタの台詞で「バカ」という単語がチョイスされたのは、桐生さんの「もっとバカになれ。真面目すぎるんだよ、おまえは」という台詞を受けての事ではないかと思われます。
最後の最後に責任感よりも、1人の人間として自分自身の信じたものを選んだ橘……始から話を聞いて橘を探していた剣崎、睦月、虎太郎は、海岸に流れ着いた大量のアンデッドカードを目にする。剣崎はその中にダイヤのエースのカードを見つけ、愕然と握りしめる。果たして、橘朔也は本当に死んだのか……?
「橘が、死んだ――」
起き上がった始さん、疑問系というより断定に聞こえるのですが、剣崎から電話で連絡を受けたという感じでもないので、アンデッドレーダーによる直感か?
傷ついた体でよろめきながらも現場へ向かおうとする始だったが、その前に、封印の石が現れ、奇妙な光を放つ。
「やめろ…………。俺は何も望まない。やめろぉぉぉっ!!」
ジョーカーの姿へ変わってしまう始。石の中から現れるコオロギ?軍団。バトルファイトは終わり、ジョーカーが勝者となった世界は滅びてしまうのか。遂に、絶望に満ちた最後の戦いが始まる――。
世界を滅ぼすモンスター軍団が出現し、二転三転したラスボスはどうやら、神、というか「運命」というものになりそうです。作品の中に巧く、石ノ森イズムを取り込んだという流れでしょうか。
ジョーカーとして生まれた運命、仮面ライダーに選ばれた運命、滅びに向かう世界の運命――。
果たして人は、運命と戦い、打ち勝つ事が出来るのか。
「あのさぁ。もし運命なんてあるとして、でも、運命と、戦う事も出来るんじゃないかな?」 (剣崎一真/22話)
残す所、あと2話。