◆Stage.10「花が咲いたら〜ジルマ・マジカ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)
朝からハッスルして、弟2人を巻き込んで、乾布摩擦にはげむ兄者。
農家よりもサッカー部よりも、いっけんインドア派っぽい黄色が引き締まった体しているのですが、貧弱で笑われるのが嫌で、部屋でこっそりブル○ーカーとかしているのか。
「ところでみんな……姉さん、欲しくないか?」
「姉ちゃんなら2人も居るじゃん」
「そうか! 欲しいかぁ!」
兄者は、野菜の卸先である喫茶店の店主?・池田江里子に片思い中。
……て、アニキ農場、有機無農薬野菜を売りに高値で卸してお金稼いでいるのかと思ったら、虫食いだらけの野菜をきっぱり拒絶されていた。
「なんか、すっげーやな感じなんだけど」
「とんでもねえ女だな」
と、窓の外から覗く妹弟の感想ですが、これむしろ、相手のニーズに合わない野菜を兄者が押し売りしているのでは(笑)
そして、アニキ農場の有機無農薬野菜は表の看板で、裏ルートで魔法の茸(違法ではありません)や魔法の香草(違法ではありません)を捌いているのでは疑惑がますます募ります。
冷たい江里子の反応に構わず、暑苦しく突き進む兄者。
「げ、口説いてるし」
「しかも、バレてるし」
「誤魔化してるし」
内と外のやり取りは、テンポ良く展開。兄者と江里子のやり取りに外野の妹弟が反応を挟む形にする事で、それぞれの個性を巧く出せました。
男が自分に言い寄るのは当たり前、という態度の江里子は「このサボテンに花を咲かせたら、付き合ってあげる」とサボテンの鉢を蒔人に渡し、喜んでそれを受け取る兄者。
「あれ絶対やべえって」
4人の江里子への印象は最悪ですが……うん兄者ちょっと、Mなんじゃないかな。或いは、SとかMとかを越えた、鈍感。
変なツボを手にしたインフェルシアが出現し、ハイテンションの緑の魔法使いは、サボテンを手にしたまま雑魚を蹴散らす、サボテン格闘術を披露。兄者は、普段地味だけど、テンション上がると無自覚に超人になるタイプか。
マジレンジャーはファイブファンタスティックキックで雑魚指揮官を撃破するが、その間にツボの中に潜んでいたスペクターがサボテンに憑依。しかしそれに気付かず家に持ち帰った蒔人は、意気揚々とサボテンをマンドラ坊やの鉢に植え替え、哀れマンドラ坊やはバケツの中に放り込まれるのであった。
その夜、スペクターの憑依したサボテンはパックンフラワーのような見た目となり、部屋の魔道書や燭台を食べて巨大化。翌朝、5人にご注進するマンドラ坊やであったが、四六時中ラリっている小津兄妹は、この証言をきっぱりと無視(笑) そして5人の気付かない背景で朝食を平らげていたサボテンは更に巨大化し、遂に花を咲かせる。
喜び勇んでサボテンを喫茶店に持ち込む兄者だったが、あまりに大きくなりすぎて、同じサボテンだと認めて貰えない。更に、渡したサボテンは「花が咲かないサボテン」であったと江里子が口を滑らせ、ようやく、最初から相手にされていなかった事に気付いてしまう。
赤「離せよ! 一言いってくる!」
青「生ぬるい。――一発殴ってくる」
当初から色々と疑わしかった青、暗黒面発動。
しかしこれ、江里子は酷い女として書かれているし実際に酷い女ではあるのですが、兄者も大概迷惑というか、鈍感すぎて自覚のないストーカー気質というか。
完膚なきまでにフられた兄者はサボテンの鉢植えを抱えて川辺で黄昏れ、それを慰める末弟(フられ仲間)。次兄が、「どうして花が咲いたんだ?」とツッコんだのはポイント高い。そのサボテンは鉢植えから抜け出すと、呆然と見つめる兄妹の前で兄者の自転車を丸呑みにし、とうとう人間大の怪物へと変貌する。ここの、ギャグ演出の間合いも面白かったところ。
本来は憑依した人間を化け物に変える冥獣スペクターにより、怪奇生物と化したサボテンは走って逃げ、それを追う5人の前にナイとメアが現れる。江里子の悲鳴を聞いた兄者はインフェルシアを無視して猛ダッシュし、道に落ちていた江里子の鞄を発見。
「森よ、教えてくれ、江里子さんは、どこだ!」
と、周囲の自然に語りかけるのは、ここまで明確になっていなかった緑の特殊魔法でしょうか? 森の木々に導かれた蒔人は、サボテン獣から逃げ惑う江里子の元に辿り着き間一髪で助けるが、マジトピア鉄の掟により一般人に正体を知られると多分ボウフラとかに変えられてしまう為、変身する事が出来ない。
蒔人は生身でサボテン獣に叩き伏せられながら、なんとか江里子を逃がそうと奮闘。
「俺はやられない。江里子さんが、好きだから!」
「何言ってるのよ、今関係ないでしょ」
「江里子さんが、好きだから!」
「そんなこと言ってる場合じゃなくて」
「好きだから!」
「あたし、あんたに酷い事したのよ」
「それでも、江里子さんが好きだから」
− − − 只今審議中 − − −
確定:兄者は、Mというよりストーカー気質。
虐げられて悦びを感じているのではなく、いつか自分の想いが相手に届くと信じ込んでしまっている人だ。
叩かれても叩かれても曲がらない愛のパワーに目の前の怪物への恐怖が吹き飛んだのか、ようやく足腰のしゃんとした江里子が逃げだし、兄者、満を持して変身。
「唸る大地のエレメント、緑の魔法使い、マジグリーン!」
良く言えば一途、率直に言えばサイコ気味のラブが垣間見えたりしましたが、真っ当な個人回という事で、久々の名乗りはかちっと格好良くなりました。
緑の魔法使いは森の力を集め、グリーングランドボンバーでサボテン獣を粉砕。さっそくウルさんが巨大化させるが、取り戻した魔法力により、マジキング復活。更に、愛を貫いた兄者の勇気に応えて新しい魔法がダウンロードされ、緑を中心にした陣形(マジキングのコックピットのアイデアは実に秀逸)により新魔法が発動、サボテンからスペクターを分離させる。
今回の兄者のは、勇気とは別の何かだった気がするのですが、愛と勇気と狂気は紙一重という深い哲学なのか。
キングカリバー魔法斬りが炸裂し、マジキングは冥獣を撃破。スペクターだけを斬った事で愛の証のサボテンも取り戻すのであった……という意図で分離させたのかと思うのですが、その辺りは特に会話が無かった為、新魔法は深い意味のない感じになってしまいました。まあ、わからなくても困らない部分なので、カットされたにせよ最初から無かったにせよ、省略箇所としては適切ですが。
後日、江里子はアニキ農場を訪れ、なんとなくいい雰囲気になる2人。
「どーしてこういう展開なんだ?」
可哀想な黄色い魔法使いは、絶賛、愛の手を募集中です!!
「男と女は、わかんないものなのねぇ」
そしてラブハンターの批評は、何の役にも立たなかった(笑)
ここ数話低調でしたが、キャラクターが活き活きと動いて、今回は秀作。なんだかんだで慕われている兄者を中心に、妹弟の反応を描き分ける事でそれぞれの性格を出せたのは良かった。特に、ひっじょーになんとなーくだったクールイエローがようやく、まあクールキャラと認めるのもやぶさかではない、程度に成立してくれました。また、基本的に便利な情報提供キャラであるマンドラ坊やが、粗雑な扱いを受けて感情的になる、というのもアクセントとして良かった所。
前川さんは、こういう軽いノリの単発エピソードの方が得意なのか。……思えば『アバレンジャー』の前川脚本で一番面白かったのは、『釣りバカ』コラボ回だったなぁ(笑)
作品としては、再登場があるかどうかはさておき(途中で急に兄者をフっても困らないキャラ付けではある)、前半にしてメンバーとゲストキャラのカップルが成立する、というのは相当珍しいでしょうか。末弟の青春いちご白書も盛り込まれていますが、父が居て母が居て5人が居る、という“家族の物語”として、恋愛要素はかなり意識していくのか。