◆Stage.23「禁断の魔法〜ロージ・マネージ・マジ・ママルジ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:荒川稔久)
久々に、ちょっとホラー調の怪奇演出からスタート。
小津兄弟は、今日も魔法の授業中。変質者の指示で、魔法でピアノを弾く事に。なかなか上手く行かない中、1人華麗にピアノを奏でる翼。………………し、死亡フラグ?!
というぐらい、突然の翼持ち上げ。
やはりスタッフ的にも、「あれ? ヒカル先生の登場で、ただでさえ立ち位置の危うい翼の存在感が0に近くない?」という話になったのか。
技能レベルを上げる薬の力でピアノを弾きこなした翼の発想と応用力を誉めるヒカル先生。これまで悪い意味で何でもありだった魔法ですが、それぞれの個性を活かして応用を考えよう、とだいぶ方向性を修正してきました。
翼の器用さを見た猫は、それなら「リバースの魔法」も使いこなせるのでは、と口に出し、ヒカルに怒られる。リバースの魔法……それは伝説の天空聖者クロノジェルが編み出し、その強力さにともなう危険性ゆえに自ら呪いをかけて封印した、時間を操る禁呪であった。
禁呪、というのも、魔法物ファンタジーとして、ときめく響きです。
授業を終え、世話になっているボクシングジムのトレーナーの息子・幸太に誕生日プレゼントを渡しに行く翼だが、幸太の様子がおかしい。なんと幸太は、冥獣人インキュバスのベルビレジに、魂を抜かれてしまっていたのだ。
「俺は背徳のマエストロ。インキュバスのベルビレジ」
ヒカル先生と同じ系統の変質者の匂いがするベルビレジは、次々と人々の魂を抜き取っていた。インキュバス……というとどうしても金子一馬デザインが思い浮かばずに居られないのですが、一風変わったそれとなく観葉植物っぽいデザイン。声と顔は二枚目なのですが、下半身は案外とどっしり体型。ほとんど、緑川光の声の力だけで格好良く見えているという(笑)
その頃、インフェルシアではウルさんがふらっと帰ってきて、メーミィと初顔合わせ。ン・マ様の為に働くだけで主導権争いに興味はないと、メーミィにマジシャインの撃破を命じられ、地上へと出撃する。低音ボイスから放たれるおじ様フェロモン効果か、偉そうなオカマとそりの合わないナイとメアが妙に嬉しそうに懐いているのが面白い(笑)
地上では、ベルビレジによる被害が700人以上、確認されていた。だが、本来ならインキュバスに魂を吸い取る能力は無い。果たして切り離された魂はどこへ行ってしまったのか……魂を奪われた被害者達は数時間で肉体と魂の繋がりが完全に切れ、死んでしまう。幸太の為に焦る翼は、奪われた魂の在処を突き止める為にリバースの魔法を用いようと考えるがヒカルに制止される。冷静さを失うあまり、ヒカルは禁呪の使用を怖がっているだけだ、と怒りの矛先を向ける翼。
「その程度の勇気もねえくせにな、先生面してんじゃねえよ!」
「そんなの勇気じゃない!」
お、本当は1話で語られた筈なのに有耶無耶で台無しになっていた「本当の勇気とは何か?」というアプローチが、ここでヒカル先生から入りました。
しかしヒカルはウルザードからの呼び出しを受け、事件の秘密を知っているに違いないという勘違いから、禁呪の使用禁止を念押しした上で、戦いへと向かってしまうのだった。
翼はマジレンジャーとしての戦いの為にボクシングを一時断念していた事が明らかになり、ジムの可愛い弟分である幸太の言葉を思い返す。
「俺、翼さんの流星パンチに憧れてたんだぜ」
りゅ、流星パンチ……?!
も、もしかして、翼のクールキャラという位置づけそのものを改変するという決断がなされたのでしょうか(笑)
幸太を救う手段は他にない、と禁呪に手を染めた翼は、リバースの魔法で巻き戻った時間の中で、ベルビレジが抜き取った魂を冥獣スパイダーに渡している映像を確認する。現場に残った冥獣の匂いを鋭敏感覚の魔法で追った翼は、集めた魂の運搬・保管役である、スパイダーの巣へと、兄姉達と共に突入。
鋭敏感覚の魔法に続き、赤の錬成魔法でスパイダーの集めた魂を球体に変えて奪い合うなど、冒頭で示した通りに「魔法の応用」を見せ、ヒカル先生の登場に合わせ、だいぶ、前半の問題点に修正を入れてきました。……いやもしかしたら、大雑把だった魔法がヒカル先生の指導により面白い使われ方をするようになる、という展開まで全て計算尽くだったのかもしれませんが、だとしたら雑な前半戦があまりに面白くなかったので、計算としては明らかに失敗しています(笑)
この辺り、初期メンバーがあまりにはまりすぎていると追加戦士でバランス崩れる事があり、かといって、追加戦士でバランス取る構造だと前半がもたつきがちになるし、と難しい所。
そういう点では、サブキャラが次々と出てくるという作風の故もありましたが、10話にして追加戦士を出し、“むしろ6人がベース”として展開した『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013)は、発想としては面白かった。
ビルの谷間を糸で飛び回るスパイダー(『スパイダーマン』オマージュ?)に翻弄されるマジレンジャーだったが、兄姉弟を囮に相手の動きを読んだ黄色が、満を持して装着したマジパンチでマジカル流星パンチを炸裂させ、撃破。魂の回収に成功するが、その翼の体を、異変と苦痛が襲う。
「翼!」
ウルザードとの決闘のさなか翼の変事に気付くシャインだが、その隙にウルザードの一太刀を浴びて大きなダメージを受けてしまう。
「心ここにあらずか! 俺はそんな奴とは戦わない主義だ! いずれまた決着をつけてやる」
自分からケンカふっかけてきたウルザード、自分から早退。
今回、色々と改善の方向性が目立つ(全体の話し合いとしての流れだと思われる)エピソードでしたが、帰ってきても、ウルさんは、どこまでもウルさんでした。
この人が最低なのは、「よーし、いっちょシャインとかいうピカピカした奴、殺ってくるわ」と素直に命令を聞いて出撃したのに、自分勝手な理由で中断した挙げ句、悪いとも何とも思っていない事。もうそれなら、最初から、命令聞かない方がいい(^^;
見せ場を確保しつつ、しかし決着を付けきれない物語上の都合というのは勿論あるわけですが、物語としては、それを“格好いい”に転化しないといけません。それが全く転化できていない為に、ただひたすらダメで残念で困った人にしかなっていない。過去に色々とダメなサンプルがあるわけですし、もっと工夫が欲しい。
むしろ30年分の戦隊ダメ幹部のエッセンスを凝縮して、三日三晩徹夜で煮詰めて鋳型に入れて残念パウダーを満遍なく振りかけた感じ。
ウルザードは声とデザインと思わせぶりな言動で強行突破を図ろうとしていますが、その実態は、芳香を上回る真性のダメ人間。
本当にどうして、ここまでダメとわかりきっているダメな要素だけを凝縮したのでしょう…………頭痛い。
マジレンジャーの方では、巨大化したスパイダーをマジキングで倒しかけるが、必殺技の寸前、黄色が激しく苦しみだして合体と変身が解除。せっかく手にした魂はベルビレジに回収され、スパイダーともども逃げられてしまう。駆けつけたヒカル先生が翼のシャツをまくりあげると、何と、その腹部には漆黒の風穴が……!
「禁呪」をキーに、兄妹と教師の関係、翼の熱い側面を描いたエピソード。なのですが……前回の芳香の場合、一見ちゃらんぽらん、実際ちゃらんぽらん、けれど実は我が儘に見えて他人思い、は成立するのですが、翼の、一見クールな知性派、けれど実は熱いハートの持ち主、は、クール……? 知性派……? 色々作っているけど、本当は泥臭くて暑苦しいんですよね、ハイハイとなってしまうのが困りもの。
うーん……どのエピソードが、失敗だったのか。
まあもはや、クールとか知性派とかの夢は捨てて、星の巡りが悪くてちょっとひねくれちゃった苦労性の熱血漢、でもいいと思いますが(笑) 兄者は単細胞だけど責任感の強い熱血漢で、弟は無鉄砲で脳の動いていない熱血漢、という色分けでも良いのでは無いでしょうか(おぃ)
次回、……あ、あれ、黄色回だった筈なのに、ヒカル先生が全部持っていきそうな。