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『魔法戦隊マジレンジャー』感想16

◆Stage.24「先生として〜ゴル・ゴル・ゴジカ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:荒川稔久
禁呪の呪いで倒れた翼に、応急処置の魔法をかけるヒカル。
「すまない翼……! リバースの魔法の恐ろしさを、もっときちんと説明するべきだったのに。僕のせいだ」
この作品に、きちんと謝る人が出てくると、それだけでとてもいい人に見えます(笑)
小津母はクズ筆頭だし、敵方だけどウルさんは最低人間だし、ルナさんもけっこう前のめりだったし、年長者ポジションでまともな人格者が出るのが初めてか。……少しばかりセクハラ趣味がありますが、それが些細な事に見えるぐらいには、補ってあまりあります。
リバースの魔法にかけられた呪い……それは、使用した者の肉体に地上界の全ての時間が飲み込まれる事であらゆる秩序が乱れ、世界の終わりが来てしまうというものだった。
確かに時を操る魔法も強力かつ危険ですが、そのリスクとなる呪いに、世界の滅亡を設定するクロノジェル、危険人物すぎて、天空聖者の人格破綻ぶりがまた一つ窺えます。……まあこの人達、基本的に仙人のような存在で、一部を除いて人界及び人間に玩具以上の興味は無いのでは、という感じもありますが。
むしろそういう設定は納得できるし、そういう設定そのものは嫌いではない。
世界の滅亡を防ぐ為には、呪いを受けた者が死ぬか、クロノジェルの生み出したマルデヨーナ世界へ向かうしかない。4人は魂を取り戻す為にスパイダーを追い、翼を救う為にヒカルがマルデヨーナ世界へ向かう事に。ここで、4人があまりごねずに翼の事をヒカルに託したのは、多分に尺の都合な気がしますが、4人のヒカルへの信頼感を見せる形になったのは良かった所。
ヒカルは5人に指輪のお守りを渡し、フラグを立てる。
「僕が必ず君を助ける。先生として、絶対に責任を取るから。――僕は君たちの力を信じているよ。ずっとずっと、永遠にね」
街ではベルビレジの手により被害者が続出し、遂に1000人目の魂が奪われていた。
メーミィの企みは、悪夢の恐怖が凝縮した魂を1000人分集め、それを花火にする事で人間界の広範囲を恐怖の力で焼き払う事。仕事をサボってしれっと帰ってきたウルザードに「あんた、わざと見逃したでしょ」とメーミィはツッコミを入れるが、平然と「俺には俺の考えがある。全てはン・マ様の為だ」と返す駄目人間には、勿論、反省の色など無かった。
後から言い訳するなら、最初から断った方が格好いいのになー。それで見せ場は他で作るやり方も工夫次第だと思うわけですが。
恐怖の花火玉の打ち上げを阻止するべく、戦いを挑むマジレンジャー。そしてヒカルは、クロノジェルの作り出したマルデヨーナ世界へ辿り着いていた。その地で試練を越えて許しの杖を手に入れれば、杖を抜いた者の命と引き替えに翼の呪いを解く事ができる。ヒカルは試練の山を登り、姿を隠して後をついてきた翼は、ヒカルが自分を救う為に文字通りに命を懸けようとしている事を知ってしまう。
試練の山登りは特に凝った事はせず、斜面や崖を登って風が吹いたり雨が降ったり岩が落ちてきたりで大変だ、という程度ですが、翼を運ぶヒカルの絨毯がいい味を出しています。
ファイト一発で遂に杖の元に辿り着いたヒカルだが、何故かそこへ現れるウルザード。最初、試練の一角の幻影か何かかと思いましたが、後の展開を考えると正真正銘の本物のようで、何をしに来たのかさっぱりわかりません。構成としては誉められないのですが、このダメな意味不明さは、確かにウルザードなので、ギリギリ納得は出来てしまって、ダメズルい(笑)
激痛に耐えて赦しの杖を引き抜こうとするヒカルの前に、姿を見せる翼。自分の自業自得にヒカルが命を懸ける必要はない、と叫ぶ翼に、しかしヒカルは杖を抜こうとするのを止めない。
「これだけは覚えておいてくれ。魔法世界の禁を破るという事は、誘惑に負けて、魔導士への道を選ぶという事だ。君たちのお母さんを手に掛けた、こんな奴と同じになってはいけない!」
先生、厭らしい感じに背後で観戦モードに入っているダメ騎士を、挑発(笑)
「いいか翼! いつだって正々堂々と戦って勝てる男になれ。正義の為だけに、魔法を使える男にっ」
先生の最後の教えと同時に、今ひとつ、単語の力が弱い「魔導士」(闇に染まった魔法使い)を、「正義の魔法使い」と対比させる事で、改めて劇中での定義付けを強調。また、“易きに流れる弱さ”を悪/闇として、それと逆の所に置く事で「正義」の意味づけも重ねており、これは荒川さんのテクニカルな所。
「なんでだよ?! なんでそこまで?!」
「当たり前だろ。僕は……君の、先生なんだから」
いよいよヒカルの命と引き替えに赦しの杖が引き抜かれようとしたその時、ウルさん、いきなり、山を攻撃。これにより試練を司っていたクロノジェルの想いが消え去り、ウルザードは封印の解けた杖をあっさりとその手にする。
「見たか。か弱き正義の魔法使いよ。闇の力ならばこれほど容易いのだ」
「クロノジェルの想いを宿せし山を! こんなのは反則だ!」
「魔道士はいかなる掟にも縛られない」
「返せ。それは僕が」
「欲しければ奪い取れ!」
ウルザードは土下座して帰ってきてもらった馬を召喚し、いつ見ても格好悪いウル皇帝に。
……ウルさんがこんなに上手く使われたのは、24話にして初めてのような。
一切魔法を使わず試練を乗り越えたヒカル先生の真面目さとウルザードの裏技を対比させつつ、これまでウルさんの自己申告だけで定義づけが曖昧だった「闇の力」の“卑怯な反則技”であるという面を見せ、ケンカ好きであるウルザードがシャインと殴り合う理由も処理。
これはお見事。
ここまでの負債が莫大すぎて焼け石に水ですが、やはりキャラクターは工夫次第である、とちょっぴり光明が見えました。
シャインはトラベリオンを召喚し、激突する馬皇帝と魔法鉄人。奮戦するシャインだが、これまでの試練で体力を消耗していた事もあり、ウル皇帝の暗黒ジャベリンにより追い詰められていく。
一方地上では、変質者の悪夢攻撃を受けたマジレンジャーが同士討ちの果てに変身が解除され、4人もまた大きな危機にあった。だが、ヒカルに託された指輪を見つめた4人は、翼やヒカルとの約束を思い出すと再び変身、ベルビレジへと立ち向かう。
「ふっ、儚い最期だな。今頃お前の教え子どもも、冥獣人達の作戦を阻止できず、くたばっている筈だ」
ウルザード! 貴様がなんと言おうとも、僕は教え子達の勇気を信じてる!」
信じる勇気と、応える勇気――互いを想う勇気が重なり合ったその時、新たな力がトラベリオンを奮い立たせる。
「馬鹿な」
トラベリオンは闇魔法の拘束を打ち破り、うろたえるウル皇帝……もうこの人、早く埋めてしまいたい。
そしてまさかのマジシャインに新魔法DLにより、放たれる「ディストラクションファイヤー逆噴射」。いっそ真っ当な胸から灼熱光線によりトラベリオンはウル皇帝を打ち破り、赦しの杖の回収に成功する。
「ふっ、なかなかやるな」
……もうホントこの人、早く埋めてしまいたい。
赦しの杖の力により翼の呪いは解け、地上界で黄色合流。マジレンジャーは花火の打ち上げを阻止すると、黄色はスパイダー撃破の見せ場を貰い、奪われた魂は元の体へと戻っていく。巨大化したベルビレジは劣勢と見るや逃げだそうとするが、マジキングの天空魔法斬りでチェックメイト
「今回は僕も教えられたよ。教える事の難しさをね。これからもお互い、学びながら成長していこう」
翼は約束通りに、回復した幸太とボクシングのトレーニングを行い、その光景を見つめながら兄妹とヒカル先生は、その絆を強くするのであった。
衝撃的な公開セクハラで登場した犯罪者予備軍ヒカル先生ですが、兄貴分ポジションよりはやや遠く、長官ポジションよりは近い、という立ち位置で、いいキャラになりました。この辺り、前年ちょっとやりすぎた犬の人の問題点を踏まえて活かした部分もあるでしょーか。恥ずかしがって逃げないで、ヒカル先生の良い所を真っ正面から描ききったのも良かった所。また、成り行きだけではなく、改めて、兄妹とヒカルが師弟として繋がるエピソードをしっかりと描いたのも良かった。
そしてヒカル先生の兄妹への態度は、かつて5人の父(ブレイジェル)の弟子であった、という事に裏打ちされており、そこから背景の広がりを感じさせるのも良い点で、ようやく物語が立体的になってきました。
そんなヒカル先生の持つ真っ直ぐさは教師としての憧れを追う青臭さであり未熟さでもある、とした事は今後の展開に幅を作れそうですし、今回だけ見ると物凄い人格者なのですけど実際はセクハラもあるよ、でバランスを取ったのも巧い(笑)
マジレンジャー側に関しては、新展開に紛れて色々な軌道修正を図った事も含め、様々な要素を繋げるキャラクターとしてヒカル先生が機能し、かなり改善されました。後は好感度を上げる要素がなかなか見つからない、末弟の人格改良か。
ヒカル先生をしっかりと描いた分、メーミィが割を食ってキャラクター薄いので、ヤカン大将の二の舞にならないよう、早い内に何とかしてほしい所。毎度丁寧にスモーキーやバンキュリアの出番を確保していますが、そこで無理しなくてもいいような気はしないでもない。