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『仮面ライダーW』感想22

◆第28話「Dが見ていた/決死のツインマキシマム」◆ (監督:坂本浩一 脚本:三条陸
禁断のツインマキシマムを発動したダブルは灼熱化し、ヒートトリガーのツインマキシマムドライブ・“余のメラだ”を放つが、ウェザーは照井への攻撃こそ中断するものの、片膝を付いただけで立ち上がる。
ツインマキシマムの反動で変身が解け、倒れる翔太郎。
「凄いわ先生……あの仮面ライダーを、まるで寄せ付けない」
絶体絶命のその時、だがそこに恐怖の帝王が現れる。
「見てわからんかね。お茶の誘いだよ井坂くん」
「ふ、それは光栄です。お伴しましょう」
テラーはウェザーを伴って姿を消し、取り残される3人。
「後は頼んだぜ……! 照井……。リリィの事、助けてやんなきゃな。俺たちは…………この街の……仮面ライダーなんだからさ」
大ダメージを負った翔太郎は、帽子をかぶってから、気絶(笑)
普段から熱心に行っている、ハードボイルドな死に方、のイメトレの成果が出ました!
ドーパント女の心配まで……馬鹿が!」
「なんだって? 照井竜ぅ!」
翔太郎が倒れた事でかつてなく感情を剥き出しにするフィリップ、怒る。
フィリップの検索によると、リリィを救う方法は一つだけであり、それが出来るのはアクセルのみ。だが、照井はそれを拒否する。
「そんな事より……井坂の居場所を検索しろ」
「誰のせいで翔太郎が倒れたと思っている?! この街に居る仮面ライダーは、今君1人なんだぞ!」
「俺の復讐が先だ」
照井竜のモチーフの一旦となっているであろう『快傑ズバット』のみならず、復讐とヒーロー性が一体となっている作品世界というのも色々ありますが、今作においては、“ヒーローであろうとする事”と“私的な制裁”というのは一貫して対立項であり、ここでハッキリと、人を救う事と復讐の相克が打ち出されます。
そしてヒーローのシンボルとして「仮面ライダー」という定義が持ち出される。
「なあ、君にとって仮面ライダーとは何なんだ?」
「俺に――質問をするな」
ヒーローを名乗る事の責務を問うフィリップを殴り、立ち去る照井。
その頃、井坂先生は本当にお茶していた。ついでに、食事もご馳走になっていた。1人で平然と何十皿も平らげる異常な食事量で、井坂の異様さを更に補強。
「冴子と何を企んでいるのかね、井坂くん? 若菜も困惑していていね。我が家族を乱す者はこの地上には存在を許さない」
琉兵衛に威圧された井坂は…………脱いだ!
自慢の婿の誕生です……じゃなかった、井坂が見せつけたのは、胸に刻まれた幾つもの生体コネクタ。ちょっと『北斗の拳』入っているのは、わざとな気がします(笑)
自分はミュージアムの支持者であり、ガイアメモリの真実を解き明かす為には何でもやるから好きに使ってくれて構わない、と言ってのける井坂を面白く感じた琉兵衛は、井坂に屋敷の部屋を貸し与え、病院を失った井坂先生は立派な居候に。
意外に早く素性が割れたのでどうなる事かと思いましたが、思わぬ形で獅子身中の同居状態。
これはフィリップも、若菜姫にアプローチする時は、お義父さんの前でどうやって脱ぐか、今から検索しておかないとなぁ……。
「お義父さん、見て下さい、これが僕の、ヘブンズトルネード脱衣!」
リリィを救う為、亜樹子は照井を捜して超常課に乗り込み、井坂へ繋がる線として白銀家を張っていた照井と共に、フランク白銀に家の中に招かれる。フランクは、リリィが何やらおかしな方法で大脱出魔術をしている事に薄々気付いては居るものの、手品師であろうとするリリィの姿を喜び、しかし孫娘としては心配、と複雑な心境を吐露。
そこへリリィが帰宅し、照井と追いかけっこで、華麗なバック転を披露。透明化したリリィをアクセルスチームで炙り出した照井は、メモリによる生命の危機を忠告してリリィを止めようとする。
それにしても照井は、割とどうでもいい時でも、「変…身!」って、臍の下に力込めて言わないと変身出来ないのか(笑) 難儀な体質。
「お爺ちゃんの晴れ舞台なの。だから私は、消える大魔術をやってみせて、安心して、引退させてあげなきゃいけないの」
「諦めろ。死にたいのか」
「それが何よ! 私はどうだっていいの。死んだって構わない!」
「そう思っているのはおまえだけだ! 少しは周りを見ろ。心配している家族が居るだろ!」
おい、照井、おい(笑)
(――!)
……あ、気付いた(笑)
(俺が左と同じ言葉を言うとは……)
自分の中のハーフボイルドを認めた照井はリリィに猶予を与え、フランク最後のステージの後に、メモリを取り出す処置をする事を約束。
照井は全く意識していない、という事ではあったのでしょうが、物語の重ねとして、翔太郎と全く同じ言い回しにしてしまった為、一瞬、どこかで聞いたいい台詞の受け売りみたいになってしまいました(笑)
3−4話で描かれたように、悪の園咲家に対し、翔太郎−フィリップ−亜樹子は鳴海探偵事務所という疑似家族、という構図なのですが、話数的にも全体のターニングポイントであろう今回、改めてここで「家族」がキーワードに用いられています(園咲の方も琉兵衛がアピール)。
そして園咲の家には異物が入り込み、“家族を失った者”である照井が、鳴海探偵事務所との距離を詰める、というのも示唆的。
リリィを救う為、照井に呼び出しを受けたフィリップは、とりあえず照井に全力パンチ。
「これは翔太郎から教わった。殴られた後の、仲直りの儀式さ」
「左も粋な事を知っているな」
……翔太郎からポーズ取ったら、燃え滓しか残らないから。
フランク白銀最後のステージを見つめる3人だが(撮影の都合という要素が大きそうですが、これが大きくもなければ客の入りも少ない野外ステージというのが、孫娘の愛を強く引き立たせるところ)、そこへ透明メモリを回収する為に井坂が現れる。
井坂は前回は顎の下、今回は首の後ろにメモリを突き刺して変身しており、これは毎回変えるのか。
ついでに消してやる、と照井を挑発するウェザー、だが
「おまえなどの相手をしている暇はない。俺はリリィを救いに行く」
復讐よりも人の命を救う事を優先し、ここで照井竜が口だけではなく「仮面ライダー」になる。
主人公達の定義付けばかりでなく、追加ライダーがヒーローになる姿をしっかり描いてくれた、というのはかなり良かった。
「あの女は間もなく死にますよ。無駄な事をなぜ」
「彼女もマジシャンの端くれ。そして俺も、仮面ライダーの端くれだからな!」
「はははははっ、これだから青臭いドライバー使いは!」
前回のラストといい、井坂はやたらに、綺麗なメモリやドライバーに対して敵意を向けるのですが、これは単なる趣味の問題なのか。今後に向けて、ちょっと気になる所。
照井はアクセルマシンを呼び出してウェザーの相手をさせ、見事に大脱出マジックを成功させたリリィの元へと向かう(まあ、透明になっているだけなので、お爺ちゃんはまったく安心して引退できないのですが、祖父が気付いている事にリリィが気付いていないのは意図的な擦れ違いでしょうし)。
ステージ裏でガイアメモリに生命力を奪われ、メモリの暴走で姿の消えていくリリィ。
「君は俺が守る――変…身!」
心の棚に決め台詞を沢山用意している翔太郎はともかく、この言い回しがどうも素で出てくる辺り、照井は翔太郎より重症なのかもしれない。
デンデンセンサーでリリィの姿を確認したアクセルは、エレクトリック剣でリリィを成敗。アクセルマシンを蹴散らしてやってきたウェザーが目にしたのは、排出された透明メモリと、息を吹き返したリリィの姿だった。
「逆転の発想さ。殺さずにメモリを抜く方法が無いなら、死ぬのを前提に考えればいい」
フィリップが辿り着いたリリィを救う方法――それはリリィを仮死状態に置いて「リリィが死んだ」と認識したメモリが排出された後に、リリィを電気ショックで蘇生させる事。これらを成し遂げるには、アクセル/照井竜の、能力と度胸と戦闘技術が必要だったのだ。
最近ちょっと真っ当になっていたフィリップですが、「死ぬのを前提に考えればいい」の時の言い方が軽くて素敵(笑)
透明メモリを砕かれ、怒りのウェザーはアクセルに猛攻。
「もはや凍らせて砕くなど生ぬるい。塵になれっ!」
ここで取り出すウェザー電撃鞭が格好いい。
追い詰められたアクセルを救ったのは、ファングメモリ。そして流れ出す主題歌。

「行くよ――相棒」
「ああ、フィリップ」

フィリップは、意識を取り戻した翔太郎とファングジョーカーへと変身し、構成上の都合で《平成ライダー》では珍しい、主題歌でのバトル。ここは非常に格好良くはまりました。挿入歌の方が主題歌より格好いい場合もありますが(『キバ』の「SuperNova」とか)、いい所での主題歌はやはり燃えるので、個人的にはもう少し素直にやってくれてもいいのに、とはしばしば思うところ。
そして翔太郎はめでたく、死の淵から甦る事でヒーローとしての階段を一歩登りました。
ファングの高速攻撃、アクセルの大回転蹴りがウェザーを捉え、ステージ上から蹴り飛ばされたウェザーは、大技をチャージ。
「アクセル、マキシマムで行こう。行けるよね」
(いいか、タイミング合わせて、「ライダーツインマキシマム」だ!)
「は?! 俺もか?」
「君もだ」
フィリップ、重々しい。
「今こそ呪われた過去を――振り切るぜ!」
「「「ライダーツインマキシマム!!」」」
文句を言いつつ、しっかり自分の決め台詞をねじ込むアクセルとダブルが同時に放ったマキシマムキックが迫り来る竜巻を切り裂き跳ね返し、ウェザーは撤退。
禁断のツインマキシマムに始まりダブルライダーのツインマキシマムで締める、という鮮やかな流れにして、3人の心が一つになれば、どんな敵でも打ち破れると、強敵撃破かくあるべしという納得の展開。
お陰様で翔太郎の株価がまた下がりましたが、その事についてはそっとしておく方向で。
一応、裏技(ひとりツインマキシマム)の方も、ここで見せておく事で今後使う余地はありそうですし。
「強くなってきた。いいわ、竜。……来人」
フィリップと照井は改めて互いの能力を認め合うが、そんな2人を見つめて呟くシュラウドの影……。
「いいわ、竜」までは明らかに照井を利用している感じ全開の台詞回しなのですが、「……来人」の言い方には情がこもっており、今回のキーワードに「家族」があった事を考えると、シュラウドの正体に、フィリップの身内説が急浮上。照井と同じ悲しみ=家族を失った? とも推測でき、園咲家に欠けたピースと合わせるとかなり怪しいポイントも見えてきますが、さて、素直にそこにはまるのか。
園崎家には、大きなダメージを受けた居候が帰還。
「危なかったな。もう少しでメモリをブレイクされる所だった。彼等、仮面ライダーも、なかなか侮れないな」
「良かった、無事で。もう1人で無茶しないで……」
セクシー衣装で冴子さんが抱き付くが、
(それにしても……腹が減ったなぁ)
井坂先生は孤独だった。
井坂先生の前では乙女モード全開の冴子さんですが、肝心の井坂先生に全く伝わっていないのが非常に面白い。まあ、冴子さんが本音なのかどうかもわかりませんが(^^; 悪女キャラは物語の都合でどちらにも転がせてしまうのが、いい所でありズルい所でもあり。
(事件は終わり、リリィ白銀は救われた。まだあの危険な男は見つかっていないが、照井の中で何かが一歩進んだ気がする。……それが、俺たちの一番の収穫だ)
例によって例の如く翔太郎が浸っている所にリリィが訪れ、事務所に来ていた照井に抱き付くと、ほっぺにキス。
「軽い……やはり、軽すぎる……」
「興味深い。今のは、どういう行為なんだ?」
「俺に、俺に質問するなぁぁぁ!!」
照井も少し風都に染まって崩れ出すのであった……これは、進歩なのか?
これまでも捜査上の協力には躊躇の無かった照井ですが、心理的にも鳴海探偵事務所と距離を詰め、結果として精神的に少し汚染される事に。表情には出さないけどこんな事を考えているかもしれないと視聴者に思わせる演技、というのは難度高いので仕方ないのですが、照井は、不機嫌なのか狼狽しているのか照れているのか、表情と仕草だけでは区別が付かないのが、今後崩しを入れて笑いを作るにあたっては課題か。
満足の行く、課長格好いい祭でした。翔太郎も嫌いではないけど、照井は格好いい。人間の時の格好良さを変身後にもしっかり乗せているという点で、アクセルはシリーズのライダーの中でもかなり好きかも。
一気の退場も危ぶまれた井坂先生ですが、アピールタイムを活用して、屋根のある寝床を無事にゲット。極めつけの必殺攻撃を受けて撤退、しかしまだパワーアップの余地がある、と、敗北も下げすぎない扱いとなりました。暗躍キャラとしては色々使えるでしょうし、園咲家の人間関係を波立たせる存在としても、今後の使い方が楽しみです。
フィリップが翔太郎への友情をアピールする回だったのに、終わってみればフィリップと照井がコーヒー飲んで和んでいるというウルトラCの着地を受け、最後の主人公特権だと思われたモテスキルですら完全に敗北を喫した翔太郎ですが、えー……まあその、なんだ……「打倒・橘朔也!」を合い言葉に、ガンバレ。