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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第14話

◆忍びの14「助けてサギにご用心!」◆ (監督:金田治 脚本:下山健人)
スターがお命頂戴と道場に現れて天晴と丁々発止と切り結び、慌てる旋風、我関せずと読書を続ける八雲、嵐が去るのをやり過ごそうと寝転がる凪、平然と勉強をする霞、後片付けを考えてキレる風花。
騒動に対するリアクションでそれぞれの色づけをするのは良かったのですが、油断していると被る要素のある八雲と霞が、平然と読書(勉強)という似たようなものになってしまい、ここはもう少し、意識して見た目の違いを付けて欲しかった所です。
まあ多分、八雲はポーズで、霞は本気なんですが!
(タカにぃとスターが周囲で戦っていても平然と読書をたしなむ俺、EASYだな!)
合わせて、連日スターと戦っている事で、順調に経験値を獲得して天晴がレベルアップしている、と補強。これも良かったのですが、スターが明らかに天晴しか狙っていないのが物語都合にしかなっておらず、これはキンジに、とりあえず天晴を優先目標とするような宣言を前回か前々回ぐらいにさせておいて欲しかった所。
怒りの風花によって天晴とキンジは説教を受けてお命頂戴禁止令が発布されるが、妖怪の反応をガマガマ銃がキャッチ。現場へ向かうニンニンジャー妖怪ハンターだが、足軽兵ばかりで妖怪の姿が見えず、手分けして探す事になる。だがそれは、正影が公衆電話から生み出した妖怪ヤマビコによる作戦であった。
ヤマビコの作戦……それは、風花と好天の声真似を用いた、「兄さん助けてよ詐欺」。ころりと騙された天晴は、言われるがままに仲間達の変化手裏剣を集めて、怪しい“代理の男”に渡してしまう(笑)
一方、当の風花は、後を追いかけてきたキンジに道場での騒ぎについて改めて謝罪されていた。
「風花お嬢ちゃん、どうも申し訳ございやせん!」
真っ正面から真摯に謝るキンジ、基本、いい人です。
いい人だけど、サイコです。
麗しい家族幻想を抱くキンジは、道場をちらかした事よりもむしろ風花と天晴の兄妹仲を気にするが、あんな残念はどうでもいい、と冷たい風花の態度に、「兄妹ってのはもっとこう、仲が良いものかと」と戸惑い、父と兄を既に亡くしている、と今回も重い設定を明かして年下組に気まずい空気を投げつける。
全ては亡き父兄を超える妖怪ハンターになりたいが為――
「必死になりすぎて、迷惑をかけていた事に、気付かないでおりやした。面目ない」
これまでのキンジの行動の数々は、全て目的に集中して周囲が見えていなかった為と、ここで理由付け。確かに、妖怪が出現した途端にそれまでのいざこざを綺麗に忘れる性格ではあるので、視野が直線しかない、というのは頷ける所。
そんな風花とキンジの元に、まんまと4つの変化手裏剣を入手したヤマビコから、天晴の声真似で電話がかかってくる。
「はぁ?! どういう事それ!」
「だから妖怪と間違って、人に忍術かけて怪我させちゃったんだって」
あ・り・そー
だが残念な兄と違ってしっかりしていた風花をヤマビコは巧く騙す事が出来ず、生身の4人が足軽兵と戦っている所にやってくる風花とキンジ。
お互いが偽電話の内容で口論する兄妹の姿に、凪が「この兄してこの妹ありとは、まさにこういうのだね!」と言うのですが、この台詞は、流れとしては、ちょっと変。いや、状況だけを見た凪の台詞としてはおかしくないのですが、物語としては、“ころりと騙された天晴”と“しっかり者の風花”が対比されているので、ここは素直に風花の活躍に繋げるべき所で、凪のこの台詞自体が不要だった気がします。
風花とキンジは変身し、ヤマビコは階段落ちを披露し、白は土遁の術で4人の手裏剣を取り返す事に成功。揃って反撃するニンニンジャーだが、ヤマビコの、声真似で助けを求め隙を突いて音波攻撃、のコンボに次々とやられてしまう。が、白だけは兄が助けを求める筈が無いとヤマビコにカウンターパンチを炸裂させ、戦況逆転。
「名前で呼び合うから、騙されちゃうんだよね」
「では、コードネームぽく行きましょう」
と、アオとかアカとか呼び合う事にするニンニンジャー。この手のセルフパロディは、嫌いではありません。
6人は突発的な連係攻撃を炸裂させ、勢い兄妹紅白アタックでヤマビコを撃破。巨大化したヤマビコは高周波でオトモ忍の動きを止めるが、犬が吠えてそれを無効化し、初の活躍。最後は手裏剣とバイソンのダブル必殺技でワッショイし、白は助けてくれたお礼に、スターに朝8:00〜夜6:00まで、お命頂戴の許可を出すのであった。
……て、許可出すのか。
……そして、喜んで受けるのか。
謝罪と反省→別のアプローチを模索する、という流れになるのかと思いきや、キンジの中で「伊賀崎家に迷惑をかけるのは悪いと思う」と「孫の皆さんのお命頂戴」は普通に共存可能なようで、やはり、真性のサイコキラーです。
ニンジャの世界に、情け容赦の4文字は無いのだッ!
で、これは今作のトータルな問題点に繋がるのですが、キンジのみならず風花もちょっとおかしいかもしれない、というこの手の倫理観のぐらつきは、メインキャラだけでやっていてもローカルルールにしかならず、次々と頭のおかしいゲストキャラを出してこそワールドルールとなって世界観の面白さに繋がるわけで(例:浦沢時空、『世界忍者戦ジライヤ』、など)、その点で今作には、狂ったゲストキャラが圧倒的に足りていません。
また逆に、狂ったニンジャと対比される真っ当な一般人もほぼ出てこない為、キンジだけが狂っているのか(個人)、好天の関係者が狂っているのか(一部)、世界そのものが狂っているのか(世界観)、というのがハッキリせず、狂気のスケール感が曖昧なまま進行していっています。
その上でこの13−14話を見る限り、物語の流れが「ニンニンジャーとの交流を通してキンジが真人間(?)になっていく」という構造になっている為、構造的にキンジの狂気だけが強調され、結果としてむしろ、どんどんキンジが人外の思考回路の持ち主に見えていく、という事態に。
例えば前回の運動会で、他流派のニンジャがレース中に、当たったら死ぬよ?! レベルの妨害をナチュラルに仕掛けてくる、など描写があれば世界に狂気が拡散できて、キンジの「お命頂戴」も、今回の風花の大岡裁きも、そういう世界の中に収めていけたと思うのですが、現状の積み重ねではニンニンジャー側とキンジに「お命頂戴」に対する認識の差があるようにしか見えず、そのギャップがただちぐはぐなだけで、今ひとつ笑いに繋がっていません。というかキンジに関してはむしろ、段々笑えなくなっているレベル。
意図はともかく現状キンジは、“「家族」についてよくわからず、「人間」として精神的欠落を抱えているから、平然とお命頂戴をできる男”という描写になってしまっており、いやそれは、笑えないよね、と思うわけであります。
そこを視聴者の笑い所にする為には、もう少し世界のデザインをかちっとしなければいけないと思うのですが、どうも今作、そこで腰が据わっていません。
今作の世界観の緩さというのは柔軟性を重視した意図的なものなのでしょうが、同時に、宇宙人にしろ魔法使いにしろ、どこか曖昧に置いてあるだけになってしまっており、様々な要素が安全係数を取り過ぎて余りにふわふわとしてしまっています。
そしてこの、いっけん派手で弾けているが、その実態はかなり安全運転、という基本構造が、濃い要素を詰め込んだキンジの造形と非常に相性が悪く、キンジがどんどん得体の知れない生き物になってしまっています。キンジと5人の関係が一連の流れの中でどう着地するかにもよりますが、そろそろ、世界観に対する覚悟を固めてほしい所。
ところで前回、キンジの正体は妖怪なのではと書きましたが、今回見ていたらロボットという可能性もありそうな気がしてきました。
強力な妖怪の攻撃を受けて、傷を負うキンジ。なんと、破れた服の下に見える傷口から覗くのは、煙をあげる歯車とケーブル!
「……あ、あっしはロボットだったんでがんすかー?!」(更に混線している)
いっそこのぐらい、弾けてくれてもいい(笑)
その夜、真剣な顔で夜間の自主練に励んでいた天晴は、風花の気配に気付く。
「珍しいな。お前が自主練なんて」
「お兄ちゃんはまだ私が面倒見なきゃ駄目だって、わかったからね。……だから、お兄ちゃんより強くならないと」
「……そうか。頑張ろうぜ」
ここで妹が出てきた後も、天晴が真剣な表情を崩さなかったのは、非常に良かったです。星とバトルしているからだけではなく、遅まきながら天晴は天晴できちんと修練を積んでいる、というシーンが入ったのも良かった(恐らく今までも修練はしていたのでしょうが、映像として見せていなかったので……まあ天晴の場合、自主練で攻撃力しか上げていないという問題の根幹は解決していないのですが)。また、天晴は真面目な顔しているとちゃんと格好いい、という点でも貴重なシーン(笑)
キンジの造形ひいては世界観の積み上げとの噛み合ってなさには不満を書きましたが、前回今回と、新展開入ってからの流れそのものは割と良かったです。

  • 存在感が忍びっぱなしの凪と風花のキャラエピソード。
  • 前回の「他人と歩調が合わせられない」、今回の「騙された事も理解できないレベルで、脳細胞がサイドブレーキだぜ!」と、天晴の短所をちゃんと弱点として描く。
  • 天晴の真剣な自主練シーン。


と、1クール目に必要だった要素が穴埋めされてきて、どこまで計算通りでどこから軌道修正かわかりませんが、少しずつバランスが取れてきました。12話の事があるので全く油断はなりませんが、この方向性で進んでくれるといいなぁ。
――次回、予告から既に漂う、邪悪な気配。
待てキンジ、そのハンコは、その女の罠だ!