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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第17話

◆忍びの17「グッバイ、スターニンジャー!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
見所は、天晴を生き餌にする邪悪策士。
仮に術に引っかかっても、天晴なら大した問題にはならないだろう(実際、ピーマン怖い、だった)、という辺りまで計算されている所が実に邪悪です。
ピーマンは駄目でもチンジャオロースなら行けるのでは、というのは子供向け番組として凄く正しい解決法、という事でいいのか(笑)
好天に指定された弟子入り試練の期日が明日に迫り、焦るスターニンジャー。それを知ってしまったニンニンジャー5人は、それぞれ果たし状を用意して、互いに悔いが無いように、とスターのお命頂戴を待ち受ける。
筆で殴り書き(そして漢字が間違っている)の天晴、ワープロっぽい凪、「親展」とついている霞、レターセットに書いた風花、何それ洒落てるつもりなの?的なフォントを用いる八雲、とそれぞれの果たし状で個性をつけたのは非常に良い小ネタでした。
だが肝心のスターは、妖怪のハントに向かっていた。正影が、ガマガマ銃に反応しないように結界の中で妖怪を生み出し、誘き出されたスターは妖怪ウミボウズの幻術にはまってしまう。
毎度、優先順位の上書きの激しいスターですが、ここで、ウミボウズの幻術によって入水しようとした人々を助けており、一応、妖怪ハントには人々を助けるという優先事項があった事がわかり、一安心。
本格登場回だった10話では、妖怪に襲われた工事現場の人にすがりつかれて冷たくあしらっていた覚えがありますが(その後、子供はかばったけど)……(^^;
恐らく、ここ数話を経てのキンジの人間的成長、を意図した表現だろうとは思うのですが、特にキンジが周辺の一般人に気を遣うような描写はなかったので、その辺りの積み重ねは不足。風花に「必死になりすぎて迷惑に気付いていなかった」と謝った辺りが一つの転機だったという事なのでしょうが、それならその後で、妖怪との戦闘に巻き込まれた一般人を助ける、というようなシーンを明確に造っておいて欲しかった所です。
今作、妙に活き活きと小ネタを入れてくる割に、肝心の所の仕込みが足りていないのは、いちいち勿体ない。
久々にお父さん謎のご近所情報網(「みんな! 妖怪が現れたと、情報が入った!」)が発動し、ウミボウズの元へ向かうニンニンジャーだが、そこではキンジが、幻術によって引き出された過去の恐怖に囚われてしまっていた。
ここで今回の大きな問題点なのですが、キンジの父と兄の仇と思われるオオカミ男?のシルエットが物凄いクオリティの低さ(^^;
時々そういう事はあるにしても、何かトラブルでもあったのですか、というような出来&見せ方の悪さで、キンジの過去のトラウマそのものが、映像的に非常に安っぽくなってしまいました。お父さんとお兄さんも棒立ちで喋っているだけですし、今回のエピソードの芯になる筈の部分だったのに、全面的にガタガタに。
その為、キンジが成り行きで過去を話す、ニンニンジャー励ます、皆でラストニンジャを目指して競い合おうぜ、幻術破る、の流れも非常に雑な感じに。そこから一致団結揃い踏みとなるのですが、6人揃い踏みはこれまで散々やっていますし、ここにポイントを合わせた盛り上げとしては、もっと落としてから上げて欲しかったところで、ジャンプの為のバネのタメが足りない。
赤と星が敵の生み出した互いの幻影を躊躇無く切り裂き、
「おまえらどんな関係だ? 仲間じゃないのか?!」
「刺客と――」
「その、標的だ!」
というのは単独のネタとしては面白かったのですが、ここまで馴れ合いすぎなので、どうも本来の攻撃力を発揮できず。
全体的に、80点の素材を、中途半端に調理して、60点で皿に並べてしまった、みたいな感じ。
天晴達のキンジを認める心意気が忍タリティを高めたとか何とかで新たなオトモ忍・サーファー丸が誕生し、波乗りサーファーアタックでウミボウズをワッショイ。改めて向かい合って刃を交える天晴とキンジだったが、そこに好天が乱入。なんとキンジは日付をアメリカ時間から直しておらず、弟子入り試練の期限は既に過ぎていたのであった。かくして試験落第となったキンジは、好天が餞別で用意したサーファー丸(潜水艦←→人型、に変形)に乗って、アメリカへ帰る事に……。
5人で別れの紙テープを引っ張る所と、ニンニンジャーが好天から九衛門との関係について説明を聞いている背景で、潜水艦が容赦なく出航してしていく、というシーンは面白かったです。映像としては、ようやくここだけ面白かったというか。
試験に落第するもアメリカへ帰る……旅費が……ない」と、キンジが居候&家事手伝いになる、という展開は可能性として一つ考えていたのですが、帰る手段を用意していた辺り、さすがラストニンジャ(笑)
というわけで、オチまで見ると今回はまだ途中経過で、極端に言えばギャグ回だった、と判明するわけですが、途中の盛り上げの雑さが、そういうオチだったから、という構造になっているのは残念な所。
どうも、盛り上げ自体がフェイクなので、最初からハードルを下げているように見えるのですが、少なくとも途中までは如何にも節目のエピソードという展開だったわけで、個人的な好みとしては、今回こんなに盛り上げたけどオチがこれで、本当に盛り上がる時はどこまでやるんだ?! と思わせてくれる作品を見たいなーと思うわけであります。
その辺り今作の、目先の計算に堅実、な点が悪い方に出てしまいました。
概ね計算していないよりは計算している方が良いのですが、少々守りに入りすぎというか、安全運転による爆発力不足、という今作の特徴が如実に
後、天晴がスターとの距離が縮まった表現として、「キンちゃん」とあだ名で呼び出すのですが、そもそも天晴が他人をあだ名で呼ぶキャラではないので、なんだか凄く、明後日。キンジだけ、舎弟ではなく友人扱いという事なのかもしれませんが、その辺りの関係性もこれといって巧く描けているわけではないので、どうしてそうなった。
さて次回、太平洋ひとりぼっちのキンジはハワイ駐留米国海軍の包囲を抜けて無事に帰国できるのか、秘密交渉が空振りした九衛門はタライで後を追いかけるのか、そしてスター単独を狙った晦正影の真の狙いとは。…………え? 八雲回??