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はじめての『プリキュア』感想22

◆『GO!プリンセスプリキュア』#29◆
前回ロックにキーを奪われてしまい、プリキュアに変身が出来なくなるという致命的な危機に沈み込むはるか達。固有、というわけではありませんが、はるかが落ち込む姿も随分と久しぶりな気がします。
「もし今、ディスダークが襲ってきたら……」
大丈夫ですみなみ様! そんな時の為に、先日入手した、必殺・妖精爆弾で……!
というかパフは寮に飼われている設定だけど、アロマは一緒にテントの中に居ていいのか。寮におけるアロマの待遇など、100%どんな扱いだったか覚えていませんが。
そんな中、不思議な夢を見たパフがキーの魔力と似た匂いを嗅ぎつけて皆でその後を追うが、はるか・みなみ・きららの3人だけが森の中ではぐれてしまい、どこか非現実的な空間で、ガーデンパーティを開く3人の少女と出会う。
一方、一挙に9個のドレスアップキーを手に入れたロックは、それに鍵をかける事で夢の力を封じて莫大な絶望を吸い出し、一気に絶望ゲージが溜まってしまう、という予想外の展開。なお、3色ロックを見たシャットの反応は、ごく単純な驚愕で、それほど面白くはありませんでした。
不思議なガーデンパーティに招かれたはるか達は、そこでそれぞれの夢を語るが、その時、突然の暗雲と共に巨大なゼツボーグとディスピアが現れ、6人に襲いかかる。プリキュアに変身する事が出来ず、お茶会娘達の手を取って逃げる事しか出来ないはるか達は、徐々に追い詰められていく。
「なんとかしなきゃ……」
「どうやって?」
「どうやっても。変身できなくても、逃げられなくても、何とかしないと。でないと、全部終わっちゃう。私達の夢も、この人達の夢も。そんなの駄目! 絶対みんなで、助かるの」
今回、さすがに眉を寄せて落ち込んだ表情の多かったはるかですが、土壇場で《鋼の魂》が発動して絶望からV字回復。お茶会娘達を逃がしたはるか達の体に闇の触手が絡みつくが、3人は決して絶望に屈しない。
は「まだだよ!」
み「私達は、諦めない!」
き「夢をかなえるまで、終わらない!」
は「そうだよ、私達には――」
み「守りたい夢が」
き「叶えたい夢がある」
は「絶望なんかに負けない夢、それが……」
「「「私達の力!!!」」」
3人の体が光り輝き、触手が消滅。何故かお茶会娘達からドレスアップキーを渡されたはるか達はゼツボーグを撃破すると、ディスピアの影も消滅する。実はお茶会娘達は先代のプリンセスプリキュアであり、はるか達が迷い込んだのは、その記憶の世界。巨大ゼツボーグとディスピアの影は、キーを奪われたはるか達と、大いなる闇の復活を懸念する先代の不安が重なって生まれた絶望の幻影だったのだ。
「この戦いに一番大切な事。もう、わかっていますね」
「――絶望しない事。自分や、みんなの夢を守りたいって気持ちが、私達の戦う力!」
うーん……。
内側から溢れる光が絶望を振り払う――本当に強い力は誰しも心の中に持っている、という暗示は悪くないのですが、根本的な所で、展開に無理があった気がします。
変身アイテム(だったり巨大ロボットだったり)を失ったヒーローの危機、というのはしばしば見られる筋立てですが、特殊な訓練を受けていたり、変身前もある程度の戦闘力を持っているならともかく、はるか達の場合、あまりにただの中学生女子すぎるので、その筋立てと相性が悪い。
戦闘力皆無の女の子3人がノーガードで仁王立ちして「私達には夢があるから大丈夫!」で解決したらプリキュア要らなくなってしまうので、極端に言えばこれやっていいのは最終回だけだよなーと。
せめてトラップを仕掛けるとか、正面から戦えないなりの方策――いわゆる「知恵と勇気」――を見せてくれれば、「単純な力は失っても、諦めなければ、色々な方法がある」とまだしも巨大な敵に立ち向かう説得力が生じたのですが、知恵を見せずに勇気だけを振りかざしてしまい、その上で思惑はともかく、やっている事は“無謀な自己犠牲”でしかないので、勇気とは違う何とやら、になってしまいました。
あまり踏み込むとデリケートな問題なのでさらりと書くに留めますが、大雑把に、“普通は出来ない事をやる、現実に抗う力”と“それを支える心”というのは、ヒーロー性を成立させる両輪であります(※勿論、必ずしも全てのヒーローに適用されるとは限りませんが、今作はこのタイプの範疇と見て良いでしょう)。
で、“力を支える志”のほうは重要視されるのに対して、“志を実現する力”は付随物のように置かれがちなのですが、実の所、力に担保されない志は、それが実現されないという点において空論にしかなりません。
今回はるか達は、力を支える、心/志/理念については力強く語るのですが、それを実現する力を失った状態です。であれば、今回やらなくてはいけなかったのは、「諦めない心を言葉で語る」のではなく、「諦めずに絶望と戦う姿を直接打撃以外で描く」事、つまり、失った力の代わりにどんな方法で志を実現しようとするのかであるべきだったと思うのですが、特に工夫のないまま演説しただけではそこに説得力を持たせられたとは言い難く、人事を尽くさないまま天命を得てしまった(その先ではなく、スタート地点に戻って実行力を得てしまった)のは、大きな失敗だったと思います。
力を失っても心は失わない、というのは勿論大事なのですが、目前の物理的脅威に対して心だけで立ち向かってしまうのは、それはそれでバランスを欠いてしまいます。それが許される展開というのもありますが、それはそれで、その為の積み重ねが必要で、今回はそこまで足りていません。
26−27話が前半戦とトワのまとめだったことを考えると、意識的に第1話をやり直したのかもしれませんが、基礎の確認を繰り返しすぎて、却ってはるか達の成長が見えてこないエピソードになってしまいました。特に今作の場合、同様の説教フェイズが(印象的に)多いので、テーマの強調とは別に、はるか達の行動はもっと具体性を持った次のステップに移って良かったように思えます。
結局はイメージの世界だったので精神力の勝利が成立したわけですが、はるか達はそれを知らないわけですし。
今作、キーワード部分の積み重ねが丁寧な事で、精神的パワープレイの勝利をプリキュアの暴力によってバランスを取るという基本構造(一般的なパワープレイ戦隊の逆)を成立させているのですが、プリキュアの暴力という要素を一時的に失う事で、その抱えている悪い部分が前面に出てしまいました。
……というここまでの話は、全てヒーロー物のロジックで語っているので、女児向け作品としてはまた別のロジックがあるのかもしれませんが。
にしても、ゼツボーグ(幻影だとわかっている)が出てきた途端に急に無言になり、無力を装ってきゃーきゃー逃げ惑いながら後輩達が決死の覚悟を決めるのを観察している先代達が物凄くタチ悪いのですが、実はあれか、まんまとドレスアップキーを盗まれた後輩の小娘どもに、腸煮えくりかえっているのか。本当はもっとこれから、突然の底無し沼、突然の虫の大群、突然のメガシャーク、みたいな感じで盛り上がる予定だったのか。
単独のエピソード構造で言えば、変身不能展開+先輩/師匠的キャラによる精神的試練、をミックスしたと言えるのですが、その組み合わせが非常に悪くて、精神的試練だと知らないのに変身できないまま精神力で突破してしまう、という、どうも引っかかりを覚える内容になってしまいました。
単独の試練話だったら、もう少しまろやかに成立したとは思うのですけど。
通常空間に戻った3人は、「ホープキングダムが、永遠に希望溢れる世界でありますように――」という先代の想いのこもった、最後(?)のドレスアップキーを入手。その名を、桜・珊瑚・銀河。
銀河
トゥインクルは次は、ブラックホールでも投げつけるのか。
先代のドリーム体(お肌がぴちぴちだった頃の私達)が隠し持っていた事になった3つのキーは、恐らくそもそもは、パフのクラスチェンジ含め、資格を得た者に渡す的なニュアンスだったのかとは思われますが、上述したように、はるか達の「成長」を描いた感じではなかった為に、ただの嫌がらせのようになってしまいました。
以前に召喚されたホープキングダムのゆかりの地も寂れた感じでしたし、ちゃんと祀ってないので怨霊になりかけているのではないか先代。……これ、ディスピア様って、同様の経路を辿った先々代のプリンセスプリキュアだったりしないかもしかして。
はるか達が新たな力を得たその頃、ホープキングダムではロックが満タンになった絶望エネルギーを使い、モードエレガント。
「鈍く輝く鍵のプリンセス・キュアロック! 心に溢れる夢、閉じ込めさせていただくんだね。お覚悟は、宜しくだね?」
……ではなくて、そのエネルギーで何とホープキングダム城を丸ごとゼツボーグ化してしまう。浮上した城はそのまま次元の壁を破り、はるか達の世界へと侵入し、まさかの、天空要塞・大絶望城、襲来。
ここまで引っかかりの多いエピソードでしたが、ここで一気に面白くなりました。こういう展開は大好物です(笑)
「さて、楽しいゲームの始まりだね」
果たして大絶望城の力や如何に?! 3色ロックが愉悦の笑みを浮かべる中、その独断先行?を見つめる黒い鳥が姿を見せ、次回、風雲急を告げる夏休み大決戦!
3つのキーを手に入れた筈なのに予告では何故か生身で突撃していて「俺には……これがある、徒手空拳」状態になっているのが気になりますが、今回のエピソードに色々引っかかってしまったので、それを増幅する展開でないといいなぁ……。生身の意味を、巧く用いてくれる事に期待。
ところで:サンキーの出番が無かった。