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『ジャッカー電撃隊』感想7

◆第10話「11コレクション!! 幸福への招待」◆ (監督:竹本弘一 脚本:曽田博久)
曽田さんが初参戦。なかなか面白かったです。
港に佇む白い服の女……定期パトロール中だった東は、不審な男から女を助け、夏のお洒落で巻いていたスカーフ(開襟シャツ+スカーフという服装の為、そこはかとなく全裸スカーフ的な怪しさ満載)が縁で、女・美紀と親しくなる。
続けて美紀が車に轢かれそうになった事から、東はカレンと2人で美紀の身辺を警護するが、次々と美紀の命を狙って暗殺者が姿を見せる。
写真を撮ろうとした男、乗用車、運送屋の男、客のふりをしていた女性2人組、と畳みかけるように殺し屋が現れ、更に失敗した殺し屋を丁寧に始末していくクライム、と暗殺を1回や2回で終わらせずに繰り返す展開に、派手な銃撃も挟む事でテンポが良くなり、雰囲気が面白くなりました。
美紀の部屋にあった浮世絵から、孤児院で育ったという美紀が、高名な美術商、ヘンリー・大田の娘であった事が判明。美紀の母が遺した「18歳の誕生日に赤いスカーフが幸せを運んでくる」というのは、ヘンリーが美紀を迎えにやってくるという意味だったのだ。だがヘンリーは一ヶ月前に急死しており、美紀は知らぬ間に、時価800億円の美術品の相続人となっていた。ヘンリーの遺産を入手した暁にはクライムから大量の武器を買う契約を取り付けているヨーロッパ独裁国の為に美紀の命を狙うクライム(国際的犯罪組織のしがらみも大変である)の浮世絵ボスは、ヘンリー・大田の顧問弁護士を殺害して成り変わると、幼い頃の美紀を知るその秘書を脅迫し、美紀の元へ近づく。
一方ジャッカーでは、美紀の命を守るべくカレンが美紀に変装して2人を迎え、虚々実々の駆け引きが行われる。父親の真実を知らされ(た美紀になりきって)、泣きじゃくるカレン美紀。
大地(うぇぇ……よくまあ、泣けるもんだね……)
桜井(女は先天的嘘つきなんだなぁ)
君たちどんな深い心の傷があるんだよ?!
替え玉の可能性を探るクライムは散歩中のカレン美紀に背後からナイフを投げつけ、咄嗟に連続回転でナイフを華麗に回避した事で疑われてしまう……のかと思ったら、そのままの勢いで木の上に飛び乗って、にっこり「平気よ」が平然と流されたのですが、亡きヘンリー・大田は、ニンジャの血筋か何かだったのか。
上手く行くかと思われた作戦だったが、着替え中に背中のほくろが無かった事から替え玉が見破られてしまい、クライムは本物の美紀を探す為に組織を動員。
クライムが人員を用いて情報収集をする、という普段と逆のパターンに加え、組織の指示に従って動くごく普通の身なりのクライム構成員達の姿が次々と描かれ、社会のどこにでも、クライムは潜んでいるという描写が秀逸。
またここがコミック的に描かれない事で、ごく普通の日常の風俗の中に、恐らく拳銃も握った事がないであろうクライムの末端構成員が紛れ込んで、組織の一声で一斉に動きだすのだ、という不気味さが上手く出ました。この辺り、世相を反映した部分もあるのかもしれません。
「よぅし、ジャッカーは、必ず娘と接触する筈だ」
「ジャッカー、クライムが動きだしたとの情報あり」
「尾行するんだ」「尾行に気を付けろ」
ジョーカーとアイアンクローを対比させ、組織戦の形で見せているのも、ここまで無かった形で面白い。今回のジョーカーはマイクの前に陣取って、事あるごとに力強く連絡を入れてくるのですが、それに対抗する形でアイアンクローの出番も増やし……という構造が、非常に効果的になりました。
遂にクライムに美紀が潜伏するホテルを掴まれてしまい、東が襲撃者を撃退するも、スナイパーに狙われた美紀は恐怖のあまり錯乱状態で部屋を飛び出してしまう。東はなんとか、初めて出会った港で美紀を発見するが、そこへ迫るクライム。その頃、本物の弁護士の死体が発見されたという情報が入り、スカイエースが駆けつけてジャッカー変身。
……ところで、当初脅されていた筈の弁護士秘書がすっかり悪役と化しているような気がするのですが、金に目がくらんでクライムに協力するシーンがカットされたりとかあったのか。
七五調が格好いいジャッカーの口上は今回も使用し、ようやく出番のあった怪人を交えて戦闘に。
J・Q  ボス・秘書     構成員
↓(ボス・秘書、ジャッカーの背後に回り込む)
ボス・秘書  J・Q     構成員
ボス「撃てーーー!」
↓(J・Q、ボスと秘書を飛び越えて背後に回る)
J・Q  ボス・秘書     構成員
ボス「撃つなーーー!」
というギャグアクションがひとしきり繰り返された後、結局構成員に撃たれて、ボスと秘書は無残に死亡。……秘書は、勢いで悪い人だったという扱いになりました(^^;
ごつい造形だった怪人(デビルナイト?)は、名乗る暇さえ与えられずにジャッカーコバックで大爆死。なお前回より、着地してから声を合わせてのエネルギー注入「「「「ジャッカー・コバック!」」」」が無くなり、怪人の爆発後に揃って「「「「ジャッカー!」」」」と叫ぶ形に変更。
受け継いだ遺産を全て寄付する事にした美紀は、その手続きの為にヨーロッパへと飛ぶ。
「赤いスカーフはもう終わりよ」
18歳の日に訪れる幸せを待っていた生活から、自立へ――ほのかに想いを抱いた男のスカーフを手に、少女は旅立っていくのだった……と渋いオチ。
色々と説明がかっ飛ばされるので疑問点は山ほどありますが、アクションとサスペンスのバランスも良く、テンポのいい秀逸回でした。また、ハードボイルドタッチの犯罪ドラマ+変身ヒーロー、というコンセプトを押さえつつ、ここまでの今作に無かった虚実の駆け引きや組織戦の要素を入れてきたのが良かったです。