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『仮面ライダーゴースト』感想・第5話&第6話

◆第5話「衝撃!謎の仮面ライダー!」◆ (監督:諸田敏 脚本:福田卓郎
パイロット版を担当した諸田監督が、2話空けてすぐ登板という、70年代みたいなローテ(スポーツ中継の都合で1週空いたといえば空きましたが)。
力の入ったバイクチェイスと(スペクターのバイクは、サイクロンオマージュか)、信長フォームの「俺の生き様・オケハザマ!」は面白かったです。
というわけで、前回ちらっと顔出しだった仮面ライダースペクターが本格登場…………なのですが、ベースデザインがゴーストと丸被り、フォームチェンジしても基本パーカーなので大きな変化が無し、とそもそも本当に、このデザインで良かったのか。
そしてモチーフが鬼のようなのですが、鬼面をシンプルに線で表現した結果、どうしても既存の同モチーフを彷彿とさせる顔になってしまいました。そもそも鬼モチーフの仮面ライダーが居るのがおかしくないのか、という説もありますが、平成ライダーには響鬼さんとモモタロス(厳密にはライダーではないけど)が居るので、回避した先で正面衝突したような感じに。
中身の人は顔は嫌いでは無い範囲ですが、ぴしっとした上下に幾何学的なラインが入っているという衣装がどうもどこかの制服っぽく見えるのと、大人しめの髪型、堅い表情など諸々から、どうしても、怪獣から地球を守っていそうに見えます。
何か、別のものに変身しそう。
体型も衣装も、シュッとした細身のシルエットを強調しているというのは、平成ライダーでも割と珍しいか?
新市役所建設反対運動を襲う、見えない銃撃。少年の依頼を受けたタケル達はそこでマシンガン眼魔を発見するが、マシンガンを追跡していたゴーストは、割って入ったスペクターにそれを妨害されてしまう。
一応、会話の成立する相手(しかも同じベルトを身につけている事から人間の可能性が高い)に、いきなりグレートソード振りかぶる主人公は、思い切り撃たれても仕方ない気はしないでもありません。
スペクターはゴーストとの違いとして、英雄の「力を借りる」のではなく「支配する」とアピールしてくるのですが、戦闘を見た限りでは全く違いがわからないというのは、かなり致命的な問題点。諸田監督も、監督デビュー20年目ぐらいだというのに、今作では首をひねる演出が続きます(^^; 脚本がどうなっていたのかはわかりかねますが、ここはアクション監督と相談して確実に差異を見せなくてはいけないところ。
更に、「おまえは甘い」と言いながらゴーストを一方的に叩きのめすのですが、そもそもタケルの主義主張がピュア理想論なのに加えて、出てきたばかりのスペクターの考え方のどこが「厳しい」のかは特に表現されない為、上手く対比構造が作れず。敢えて「厳しい」所を探すと、人が集めたアイコンを横からかっさらっていくという、“目的の為には手段を選ばない”所なのでしょうが、結果としてスペクターは、自己正当化の激しいゴロツキみたいに。
なおタケルへの駄目出しの数々を見る限り、この一ヶ月ほどストーキングしていたと推測されます。
新市役所の建設は雑魚ガンマにとりつかれた職員の行動であり、ゴーストは雑魚ガンマを撃破。しかしマシンガン眼魔に御成とアカリを人質に取られて大ピンチに。そこへやってきたスペクターがゴーストの落としたアイコンを拾って帰ろうとした所、背中からマシンガンに打たれて大激怒し、マシンガンをツタンカーメンフォームでざっくり成敗するのであった……て、ますます、ゴロツキ。
ここまでのパターン通り、新市役所建設反対運動の人たちが「税金の無駄遣い」を主張しているけど、正当性が有るのか無いのかさっぱりわからない為、見ていて肩を入れる場所が見つからず、今回に関してはタケルも成り行きでガンマ退治しているだけで背後の問題とかどうでもいいので、全てゴーストとスペクターを出会わせる為の踏み台に過ぎない、という雑な内容。
新ライダー登場編を1話でまとめようと思うとこうなってしまうのかもしれませんが、とにかくここまで5話、タケルの共感の内容が描かれない為、タケルに感情移入する事が出来ない状況が続いているので、そのタケルが「甘い」と言われて殴り飛ばされても、対立軸への感情も特に湧かない、という困った状態。
あらゆる物語が共感型である必要はありませんが、見る限り物語の軸を「共感」に置いた話造りをしている以上は、そういった部分をしっかり踏み固めて欲しい所です。
今回、これまでよくわからなかった眼魔の行動に、雑魚眼魔を派遣する謎の青年の大きな目的があると示唆されましたが、序盤ハッタリで見せた大仕掛けに、何か意味があった事にしよう、それはこれから考える、みたいな予感。


◆第6話「運命!再起のメロディ!」◆ (監督:諸田敏 脚本:毛利亘宏)
スペクターに圧倒され、エジソンアイコンも奪われ、このままでは生き返る事が出来ないかもしれないと意気消沈したタケルは、特に消えようとしているわけではないのに、アカリや御成に見えなくなってしまう。
そこに居るのに、誰にも気付かれない……
「それじゃ死んでるのと、同じじゃないか」
ようやく、消える者の恐怖と哀しみ、残される者の困惑と悲嘆、という本来最も重要な筈の部分に触れてくれて、「死」というキーワードが物語の中で意味を持ってくれました。
死を実感して現状に落ち込むタケル、タケルを励まそうとしながらもどうすればいいのか悩めるアカリ、とアカリのヒロイン度も強化し、今まで必要なのに描けていなかった部分に手入れ。アカリは、スペクターに銃口を向けられながらもアイコンを離さない所と、幼なじみセンサーで床下に向かい、居るか居ないかわからないタケルに独り言を語る所も、両方とも良かったです。
……アカリの存在価値が高まった分、御成の存在意義がまた一つおぼろげになりましたが(^^;
心身気鋭の作曲家の周囲で起こる怪事件(音が消える) → それを心配する妹 → 怪事件は兄に歴史的な(と思い込んだ)一曲を作らせる為の眼魔の仕業 → 妹と御成達に厳しく当たる兄 → 作曲を完成した兄に最後の一押しで死をそそのかす眼魔
と不可思議事件の方も、眼魔の目的と行動・それによる人間の変貌・共感要素のフックとしての妹の描写に尺を割く、と必要な情報をしっかりと見せた上で、ゲスト妹の存在をスペクターの設定と繋げる、という所までやっており、ようやく真っ当な脚本。
勿論、これまで小出しにされてきた情報の蓄積、スペクター登場で情報過多が一段落した、という部分が多少あったとは思いますが、結局、経験値のある人が入ってきたら情報が整理されたエピソードになった、というのは何ともかんとも。
今回でさえ、新フォーム登場・スペクターの事情・謎の男達の暗躍・アカリとタケルの関係性の強化・前半後半2回のバトル、までは盛り込んでいるわけですし。
クライマックスにタケルが辿り着く「俺は俺を信じる」はいまいち繋がってはいないのですが、これは最初からキーワードで用意された上で、一度も繋がった事が無いので仕方ないというか、タケルがこれまでアピールしてきたものといえば“意識高いピュアハート”ぐらいのものですが、そんなピュアハートを何を根拠に信じるか? を描かなくてはいけないのに、タケルの言う「俺は俺を信じる」は、修行による成長でも周囲との絆でもなく、「ピュアハートな俺を俺のピュアハートで信じる」という所で自己完結しており、ぐるぐる回っているだけで一歩も前に進んでおりません。
次はどこかで、この無限ピュアハート理論から脱却しないといけないのですが、さて、抜け出せるかどうか。
そんなわけで、主人公の唐突な英雄語りも引き続き滑っているのですが――物語の軸になっているわけでもない英雄・偉人について主人公の知識(と願望)を喋っているだけなので、当然物語と連動せずに滑る――作り手に思う所あったのか、
見えない主人公が誰にも聞こえない語りをしている
という処理をされ、むしろ御成が正論、アカリの言葉の方が作曲家兄に影響を与えるという、作品コンセプトを殴りに行く展開(笑)
脚本ベースか演出ベースかわかりませんが、完成品がこうなっているという事は、今の作品構造に問題を感じているという事でしょうから、今後、良い方向に変化がある事を期待したい。
どうしても今後も主人公の英雄語りを入れたいなら、毎回のエピソードそのものを偉人の逸話と明確に重ねるか、或いは逆に全く関係ないのに主人公が「そんな君に教えたい、こんな英雄が居るんだよ!」と熱く語り出して超強引に説得してしまうバカ展開、ぐらいの事をしないと駄目だと思いますし。
毛利さんは出来不出来がけっこう激しいので、平均するとそれほど信用してはいないのですが、今回は『ゴースト』に致命的に欠落していた部分を、ある程度埋めてくれました。
次回以降もこの程度には要点押さえて、整理されたエピソードだと良いのですが。
その他、前半の音符眼魔の能力による、無音の変身から無音の戦闘というのは、話のギミックと特撮らしさを上手く合わせていて、良かったです。こういう、ワンアイデアバトルみたいなのは好き。
そして今ひとつパンチに欠け、やはりキャッチーな決め台詞の一つぐらいあった方が良いのではないかと思っていたスペクターですが、まさかの、脳内妹プレイ。
……濃くなった、濃くなったけど、これでいいのか。
次回、父さんはやっぱりクズなのか。7話にして突然、「10年前に何かあった」展開に不安を覚えつつ、期待して待て。