はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

はじめての『プリキュア』感想30

◆『GO!プリンセスプリキュア』#38◆
「初めてだ。私の夢、からかわなかった男の子……カナタ以外だと、初めてかも」
初対面の同級生・クロスに、プリンセスになるという夢を応援されて喜ぶはるか。クロス少年は度々はるか達の前に現れては、夢を応援するぜ、とみなみやゆいにもエールを送るが、それは全て、はるかを孤立させる為の罠であった。休日、パフとアロマを連れて買い物に出たはるかが一人になった所で、クロス=クローズが、その正体を現す!
久々に感想再開していきなりですが、引っかかる所が3点。
まずここまで、毎回ゼツボーグは倒されても絶望の種は育っており、ディスダーク側の作戦は順調に進行中……という描写が続いていたので、ここでクローズが自ら中学生になりきって、潜入工作と個別撃破を行おうとする理由付けが弱い。
先にディスピア様から「絶望の森の浸食を早めるように」などのオーダーがあって、クローズがその為にフローラに目をつける……といったような流れがあれば良かったのですが、そういった前振りが足りません。
現状もはや格下認定のシャット(今回アバンタイトルで前座担当)ならまだ納得いきますが、一応格上の存在として復活したクローズRの作戦としては、せこすぎますし、プライドを切り売りしすぎです。
「夢はおまえ達をバラバラにする……夢はおまえを追い詰める!」
合わせて、夢を追いかけたからこそ取り残されて孤立する羽目になった、と暗示をかけて追い込むのですが、戦闘能力に関しては元からクローズRの方が強い筈なので、クローズがここでフローラに精神的揺さぶりをかける理由がしっくり繋がらないまま話が進行する事に。
「確かに私、寂しいと思った……だけど!」
暗示を振り払い、反撃に転じるフローラ。
「だけど! 一緒にいなくても、私は、みんなに支えてもらってる! みんな自分の夢に向かって頑張ってる! そう思うと、自分も頑張ろうって、思えるから! 離れていても、私の夢を支えてくれる人がいる。それだけで、心強いから! だから! 寂しくたって私は、夢を諦めずにいられる!」
ここが引っかかり2点目。
今回のクライマックスの構造は大まかにわけると
A:クローズがフローラに戦闘と暗示を仕掛ける〔暗示〕
B:フローラが暗示を打ち破って反撃に転じる〔抵抗〕
C:カナタがフローラ(はるか)の心の支えを砕いてしまう〔追撃と敗北〕
という流れなのですが、ここで、AとBは繋がっており、AとCも繋がっているのですが、BとCが綺麗に繋がっていません。
Aに対してBするが結局Cしてしまう、という形でCが強調されているといえばいえるのですが、着地点がCである事を考えると、AとCを直接繋げてしまう方が遙かにスムーズであり、Bがノイズになってしまっています。
また、今作における香村脚本はクライマックスの台詞に集約する構造にこだわっており、はまる時は非常にはまる一方で、その台詞で話をまとめすぎる、という悪い面を持っているのですが、Bにおいて完全に逆転する台詞を言わせてしまったにも関わらず、“暗示と関係なく元々の実力差で”クローズRが勝ってしまう為、そもそもAが必要だったのかという話になってしまい、Aが無意味ならCにも繋がらない(そしてC単体で効果を発揮するならやはりAがいらない)、と構造がちぐはぐ。
この辺り、プリキュアの敗北を描くに際しての内部事情など絡んでいるのかもしれませんが、Bがある事で前後がすっきり繋がらなくなってしまっています。
で、この違和感に対して一つ思ったのは、Bで描かれているテーマは、今作の行き着く先としての“夢の為の別離”であり、この戦闘そのものが、最終決戦の1年後ぐらいに絶望をかき集めたクローズが甦って復讐戦を挑んでくる最終回、みたいな構図だなぁと。
どだい、暗示の為にこじつけているクローズはともかく、フローラの反論がちょっと用事でお出かけという状況に対して大げさにすぎるのですが、これ、あれから1年……みなみは卒業し、トワはホープキングダムへ戻り、きららはモデルの仕事でヨーロッパ、ゆいは絵の勉強で留学中、といったような状況設定だとピタリだな、と。
本当はそういった最終回を構想していたのが難しいという事になって、最後に持ってこれなくなった“夢の為の別離”というテーマを前倒ししてここにねじ込んだのではないか、とそんな邪推をしてしまいます(^^;
猛然とラッシュを仕掛けるもクローズにはじき返されてしまうフローラだが、そこへパフとアロマをペットショップから救出したカナタが駆けつける。
「どうして、こんなに傷ついてまで、君は……」
「カナタが、支えてくれたから。プリンセスになる。強く、優しく、美しい……みんなの夢を守る、プリンセスに。それが、私の夢でしょう」
だが、
「はるか、もういい……もう、頑張らなくていい。これ以上、君が傷つく必要はない」
はるかが自分のせいで夢に縛られ、それに傷ついているのではないかと考えるカナタ。
「夢なんて、そんなもの、もういらない……」
「やめて!」
「はるか、君は……プリンセスになんてなるな! ……なるんじゃない」
自分の夢を応援してくれた男の子、夢の大切さを教えてくれた人、そのカナタからの夢を否定する言葉に、はるかの心は暗く凍り付く――。
3つ目の引っかかりがここで、カナタ様がはるかを止めてしまうのは記憶が無いカナタに「夢がない」からその大切さがわからない故に、という流れなのですが、カナタの「夢がない」がほぼ今回初めて出てきた要素なので、はるかの3クール分を砕く打撃としては、もう数話、蓄積が必要だったように思います。
前回なども、もう一つ、はるかのこだわる部分を理解できていない、という様子は描かれたのですが、その辺りのカナタ様のズレ、というのは、はるか以外のキャラクターとも絡めてもう少しハッキリ描いていた方が良かったかな、と。
その積み重ねが足りないので、カナタ様のロジックがやや唐突になった印象。そして上述したように、暗示を一度打ち破ったパートが入ってしまった事で、暗示→追撃、という構造がうまく繋がらず、総合的な打撃の説得力が薄れてしまいました。
というわけで、大きな山場としてはかなり不満を覚える形で続いてしまったのですが、この後編が、凄かったです。次回、プリンセスプリキュアと人間界に迫る最大の危機。果たしてはるかは、夢を取り戻す事が出来るのか?!


◆『GO!プリンセスプリキュア』#39◆
「やっぱり僕にはわからないよ。夢は、ああまでして、守らなきゃならないものなのか」
「カナタ……私、プリンセスになっちゃ、いけないの……?」
はるかの絶望を養分にし、爆発的に成長した絶望の種子から伸びた茨が、夢ヶ浜を絶望の森へと変えていく! 人々は次々と絶望の檻に囚われ、大量の量産型ゼツボーグが出現する……と、《平成ライダー》の劇場版みたいな展開(笑)
劇中で明確に言及されませんが、恐らく、ホープキングダムはこれと同様の形でディスダークに制圧されたという感じでしょうか。
前回が言葉足らずと思ったのか、この状況に対してディスピア様から一言あり。はるかの件を除くとサプライズ展開というわけではないので、やはりこの作戦計画そのものは前回の頭に持ってきた方が良かったような。
死んだ魚のような目になってしまったはるかを残し、ゼツボーグの群れと戦うマーメイド達は、「夢が無い」故に絶望の茨に囚われなかったカナタと遭遇。
ここで、前回、記憶にない自分の発言に責任を感じてとはいえ、はるかには傷つかなくていいと告げたカナタ様が、マーメイド達の戦いに言及しないのは少し苦しい所。まあ、現状カナタ様は戦闘力が無いですし、世界を諦めろと言うわけにもいかないのですが、前回「夢の為に傷つく」のと「プリキュアの戦いで傷つく」のを掛けてしまった(はるかだけはそこが掛かっているとはいえ)のは今作の約束事に対して失敗だったかな、とは思う点。カナタ様の王子力の高さを考えると不満の出る描写です。
姿を現したクローズRの言葉ではるかの状態を知ったカナタは、はるかの元へと走り、一方、遅れて異変に気付いたはるかも市街地へやってきていたが、パヒュームが反応せず変身できないでいた。
「プリンセスになっちゃいけないから? 私、もう、プリンセスになれないの……?」
茨につまづいた拍子に転がる、髪飾り。
(……あれ? 私、なんで……プリンセスに、なりたいんだっけ……)
絶望の中、はるかの意識は過去を彷徨い、幼い頃を思い出す……。
「私、プリンセスになりたい……」
「プリンセス?」
「うん、花の、プリンセスに……」
「へえ、どうして?」
「キラキラ、可愛いから」
(……それだけ?)
迷いを得たり壁にぶつかったりしたキャラクターがシンプルな原点に戻って立ち直る、というのは古今枚挙にいとまが無い手法でありますが、今作においてこれは、もう少し大きな意味を持ちます。
それは、はるかの夢である「プリンセス」の定義が、長らく非常に曖昧模糊で不明瞭であった事。
第18話において、夢の原点である『花のプリンセス』を取り上げ、トワイライトとの戦いを通して、


「それは、わたしの理想! 魔女を恐れぬ、強さ! 相手を思いやる、優しさ! そして、世界に花咲かせる心の美しさ! 小さい頃からずっと憧れてきた、花のプリンセス。それが私の目指す、プリンセス!」
と言わせる事で一応の定義づけを見せたのですが、その一方で、『花のプリンセス』をグランプリンセスのキーワードに合わせてはるかが解釈してしまったのではないか、という疑念の湧く展開となってしまいました。

(そうか……強く、優しく、美しく……。同じなんだ。花のプリンセスも、グランプリンセスも。私の夢が、グランプリンセスに繋がるんだ)
その後、この「プリンセス」の定義づけについては深く踏み込まずにきたのですが、今回、過去のはるかの言葉に当のはるか自身が驚く事で、はるかの「夢のプリンセス」が、理想を厚塗りしすぎてキメラ化し、はるかがグランプリンセスという目標に都合良く絵本を解釈してしまっていた、という事を物語が認める形に。
ここで原点回帰を通り越して、主人公の夢を再定義付けする、というちゃぶ台返し寸前の大技で、先日のみなみ様と同様、修正作業なのだと思われますが、所々ふわふわしたままの設定などはあるものの、みなみ様に続いてここを手直ししてきた、というのは、今作のスタッフを信用できると思ったところ。
前回、カナタに止められる直前のはるかに「カナタが、支えてくれたから。プリンセスになる。強く、優しく、美しい……みんなの夢を守る、プリンセスに。それが、私の夢でしょう」という台詞があったり、第18話の戦闘の舞台となった夢ケ浜えほん美術館が再登場しているのは、第18話を解体した上で再構築するという意識の現れだと見るのは、うがち過ぎでもないとは思います。
そして、はるかは過去を思い出す。花の髪飾りを作ってもらった事、ノーブル学園の受験を応援してもらった事、入学してからの様々な出来事……自分が夢を目指して、積み重ねてきたもの。
(そうか……私の、夢は……)
「思い出した?」
(そう、ずっと……ずーっと…………いつだって……!)
そこへやってきたカナタが髪飾りを拾い、自分の言葉がはるかを傷つけてしまった事を謝罪。はるかはカナタに、自分の思いを告げる。
「カナタ、私ね、夢があったから、ここまで来られた。みんなとも出会えた。夢をなくすなんて、諦めるなんて出来ない。たとえ、カナタにやめろって言われても、私は、プリンセスを目指すよ」
「やっと……僕にもわかった。夢は、君の、全部なんだね」
カナタの言葉に、花咲くような笑顔を浮かべるはるか。
「それなら、君が笑顔でいられるように、僕は――」
そんないい所で、空から吹っ飛んでくるプリキュア3人(笑)
気を取り直して立ち上がったはるかは、前回購入した演劇のお礼のプレゼントをカナタに渡し、クローズを見上げる。
「何故ここに居る。おまえに今更なにが出来る」
「みんなの……そして私の、夢を守る!」
ほんの些細な憧れから始まった夢だけど、その夢を追いかけてきた事で、沢山の出会いがあり、色々なものが手に入った。夢は確かに大切だけど、夢だけが大切なのではない。夢の為に歩いてきた、道そのものが、大切だから――
閉じたまぶたの下に浮かぶ、幼い日の自分。
「ありがとう。あなたが夢見てくれたから……私今、こんなにも幸せだよ」
だから春野はるかは、夢見る事そのものを守る。
児童向け作品という事もあり、長らく今作、メインテーマとしている「夢」について前向きすぎるあまりに、夢を持っている事こそが人間の意味であり、そして「努力すれば夢は絶対かなう」というモットーから、夢はかなうもの、かなえる事に最上の価値があるという、ある種の結果主義になっていたのですが、ここで、夢そのものだけではなく、夢の為に歩んできた道のりの価値を肯定するという、大転換。
そして、夢そのものも大事だけど、その過程で手に入るものも幸いに繋がるとする事で、今作が恐らくタブーとして踏み込めないで来た夢のネガティブ面――ある者が夢をかなえる陰で夢破れる者が生まれる事もある――という部分に対し、仮に夢破れる事があっても、その道程で手に入ったものがあれば夢を追いかけてきた事は無意味では無い、と置きました。
しかしそれでも、夢破れ、その事で道に躓いて倒れた者は、どうすればいいのか。
既に今作は、その答を描いています。
「笑おう」
決して、無意味だった時間などないのだから――笑おう。
あなたが、幸いになりますように。
幼き日の面影は笑顔を残して消え、今、その夢にともなう責任と覚悟を認め、春野はるかは、その名を自らに刻み込む。

「……レッツゴー、プリンセス」

初見時ここで得体の知れない感動があって、何にそんなに心を動かされたのかわからないままクライマックスに引きずり込まれるという、個人的にはかなり珍しい体験をしたのですが、少し落ち着いて整理した上で、再見して何となく掴めた事は、たぶん私は、ヒーローが仮面をかぶった瞬間を目撃したのだな、と。
自ら仮面をかぶる事で、ヒーローが世界に対して「役割」を持って対峙した瞬間――ここまで38話、「プリンセス」という言葉に踊っていたはるかが、詰め込んだ理想でも、都合の良い解釈でもなく、夢見る事の何が大切なのかを見つけ、その幸いを守りたいと願う事で、遂に「私のプリンセス」に辿り着く。
だから、はるかは自らに告げる。
行こう、プリンセス。
とにかく今回、この一言が凄かったです。この感想は再見の上で分解して理屈をつけていますが、初見の際は本当に、これが出てきた瞬間に、力尽くで物語にねじ伏せられました。今回はそれが悔しかったので、懸命に分解しているともいう(笑)
で、分解してみたら、ヒーローの再定義付けと同時に、作品として手が届かなくても仕方なかった部分に手を伸ばした上でテーマの深化を行っているという強烈なウルトラCを決めていて、参りました。
瞳を閉じたままのはるかのアップで呟きの後、僅かに無音の間(ほんの2秒ぐらいなのですが、ここが前後を切り替える、素晴らしい間)があり、決然と瞳を開いた所で流れ出す、挿入歌!
イントロの中パヒュームを起動して光と花びらの中でドレスを身にまとい、一旦カメラ引いた所から、髪飾りを身につけながらの名乗り、そして金色の髪を翻し、今、春野はるかは、プリンセスプリキュアとなる!
「咲き誇る、花のプリンセス――キュアフローラ
えー……いや、なんだろう、さすがに『プリキュア』でこういう感想を抱く事になるとは思っていなかったのですが、ヒーローの変身シーンとして完璧。
私がなんでもかんでもすぐにヒーロー物に変換してしまうにしても、このキュアフローラの変身は、意味づけ、ダイナミックな演出、悪を見据える姿、とヒーロー物の歴史的に完璧なものの一つだと思います。正直言うと、「……レッツゴー、プリンセス」〜ここだけで10回ぐらい見ました(笑)
ここから、プリンセス4人の歌う挿入歌「プリンセスの条件」をバックに、ゼツボーグ軍団とのクライマックスバトルスタート。
出だしの「絶望という……」の歌詞の所で、絶望的な顔しているクローズが最高です(笑)
フローラは迫り来る量産型ゼツボーグ軍団を範囲攻撃で吹き飛ばし、その姿にはるかとの出会いがフラッシュバックするカナタ様……て結局、戦闘に記憶を刺激された?!
敵の拘束攻撃を受けるフローラだが、そこへ飛び込んでくるトゥインクルとマーメイド。
「ごめん……」
「貴女を一人にしてまったばかりに、こんな……」
「でも、それってみなみさんも、きららちゃんも、私を信じてくれてたからですよね。私、ちゃんとわかってます」
満面の笑みを浮かべるフローラに、どうしてみなみ様は頬を染めますか(笑)
「ゆいちゃん! パフ! アロマ! 心配かけて、ごめんね!」
二回転プリキュア電光キックを炸裂させるフローラの姿にゆいちゃんも乙女ポーズで赤くなってうるうるしており、あまりにフローラのヒーロー度が高くて、周辺の好感度ゲージが青天井で次々と振り切れていきます!
そこ行くと、きららさんは男前属性なので親友ポジションなのだなぁとか改めて。
「私を、忘れるなぁっ!」
クローズが奇襲を仕掛けてくるも、それを食い止めるスカーレット。
「もう大丈夫ですわね」
「うん」
「まったくあなたは……! 落ち込んでたと思ったら、一人で立ち直るなんて!」
ここの涙声はさすがに沢城さん巧いなぁ、とか思っている内にスカーレットの攻撃で、シャット、吹っ飛ぶ。
「一人じゃないよ、トワちゃん。みんなが居てくれたから、立ち上がれる、私が居るの!」
「キュア・フローラぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何度叩き潰そうとしても這い上がってくるキュアフローラに、怒りのクローズ、凄い顔で跳び蹴り。
「夢を取り戻したってのか?! だが夢はまたおまえを追い詰めるぞ!!」
「それでもいい!!」
「?!」
格闘戦からプリキュア花隠れで隙を突いた所にプリキュア打ち上げキックが炸裂し、スカーレットダイナマイトからのプリキュアエアリアルコンボがクローズを捉えるが、ストップとフリーズが次元ビームでフィニッシュを妨害し、クローズはその間に拘束を脱出。反撃の拳をキックで防いだフローラは、マーメイドとトゥインクルから受け取ったステッキを構える。
「自分で決めた夢だもん! 痛いのも苦しいのも、全部受け止めて! 私はプリンセスになる!!」
二刀流によるプリキュアダブルフローラルタイフーンが直撃するも、それに耐えるクローズ。
「そんなもの……――なれやしねぇぇぇっっっ!!」
極太ビームが4人に迫ったその時、スーパーイケメンシールド、発動。
「――なれるさ。君なら、プリンセスに」
ここまでこれだけフローラ大活躍で盛り上げておいて、その盛り上がりを消さない形で復活のカナタ様まで滅茶苦茶格好いいのは、素晴らしい。この手の美男子ポジションがシリーズ的に例年どういう扱いが多いのかは知りませんが、今作、カナタ様をちゃんと愛しているのはとても良い所だと思います。
「はるか、君が笑顔でいられるように。僕は、君の夢を守りたい」
新しい夢を手に入れた事で、記憶と魂を取り戻すカナタ様が王子コスチュームに戻ると、それに応えるかのように、はるかが渡したプレゼントが新たなドレスアップキーに姿を変える……まあもう、ドレスアップキーについては深く考えない方向で(笑)
ここまでやってくれれば、ギミックの扱いが多少おざなりぐらい、流せる事象の範疇です。まあ、ディスピア様から出てきたスカーレットのキーぐらいは説明つけてほしくはありますが(^^;
王子キーの効果により、モードエレガントロイヤルが発動し、プリキュアコバックが、プリキュアボンバーにバージョンアップ。発動時にお城のハンドルを回すのは相変わらず凄く間抜けですが、天空からプリキュアフィーバーすると、城がどーーーんと立って、花畑がばーーーんと広がる所は、キチガイじみていて良かったと思います。
そして、ストップ・フリーズと一緒に無残に磔にされたクローズが凄く笑えますが、勢いで抹殺されずにギリギリ退却してくれて良かった(^^;
プリキュアボンバーの事象変換効果により、舞い散る花びらの中、元の姿を取り戻す街。そしてカナタの記憶が戻った事により、今度こそトワは兄との再会を果たす。
「お祝いも兼ねて、またプレゼント買い直さなきゃ」
「いや、いいんだ。はるか、君がやっと、笑ってくれたから」
カナタ様のイケメン王子力が高すぎて、もう、警察に通報したい(待て)
はるかは思春期ダウンロード中だしカナタ様は天然ぽいのですが、思いの外、二人の関係が接近。カナタ様が、ある意味ではるかを中心に世界を組み立て直した、というのが今後に影響してくるのかは、少し気になる所です。作風的に、ここから恋愛要素までは持ち込まなさそうですが。……後はるかは、この中から結婚するなら誰を選ぶか聞かれたら、みなみと即答しそう(おぃ)
前編で引っかかりが多くて最初はもやもやを引きずったまま見ていたのですが、重ねて「……レッツゴー、プリンセス」以降のクライマックスは怒濤の勢いに力尽くで引きずり込まれてしまい、圧倒されました。物語の中身もかなり濃い事をやっていて、メインライター脚本に、監督のコンテ、演出に鎌谷悠、という布陣で、お見事の一言。
クライマックス、挿入歌をバックに約3分間の戦闘は山場の回という事で作画も良いのですが、打撃と飛び道具、個人攻撃と範囲攻撃、引いたカメラと近いカメラ、など様々織り交ぜ、ローズによる防御からの投げ、ストップとフリーズの不意打ち、フローラのキックで攻撃を止めてからのダブルステッキビームなど、めまぐるしい展開の中に細かいアイデアも幾つも入れ、横に広げたり立体的に見せたりと空間の使い方も巧く、単体の戦闘としての出来もお見事。
忘れそうになっていたシャットもねじ込んでくるなと、キャラクターの使い切りもしっかりしています。
負けたとはいえ、このテンションの戦闘で追い詰められながらも反撃に転じ、カナタ様参戦からのプリキュアボンバー発動でも逃げ延びたクローズRが、戦闘面で負けて強しを見せたのも良かった所。
そのクローズですが、繰り返しフローラと対比され、憎悪の炎を燃やす姿を見ると、“立ち上がれなかった者”の象徴なのではないか、という気がしてきました。前回今回の構造の中で、クローズがフローラに夢を諦めさせようと躍起になる姿は、台詞にもどこかディスダークとしての目的意識を超えた怨念が織り込まれており、夢に追い詰められて傷つき挫折した者の絶望がそこにあったような気がします。
とすると、クローズを笑わせるのが今作の一つの着地点になるのかな、と思う所ですが、さて。……今回これだけやってくれたスタッフなので、前半あっさり始末したクローズを復活させてきた事の物語的意味をどこに持ってくるのか、期待したいです。
次回、話の都合で後回しになっている間にはるかに海に蹴り飛ばされそうになったトワの救済の話になりそうですが、いよいよ謎に包まれていた国王夫婦も登場しそうで、最終クールの出だしもどう進めていくのか楽しみです。