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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第44話&第45話

◆忍びの44「最終決戦!ラストニンジャの試練」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:下山健人)
今回最高に面白かった台詞:
「結局儂の教えが間違っていたのじゃな……」
素で吹き出したよ爺ちゃん!
油断していたら約一ヶ月ぶりになってしまいましたが、改めて、身内が泣いたら復活してしまうラスボス一応その復活を止める為に戦っていた気がするのに揃ってリアクションが薄いニンニンジャーの面々と、酷いなぁ……(^^;
そして、超ぞんざいに甦る蛾眉さん。
明かされる、九右衛門の正体は444年前に生まれ、幻月の死の間際に妖力で未来の時空へ送られた実の子だったという事実!
と、悪い意味で衝撃の展開が続きます。
これまで謎だった牙鬼軍団のアジトが、地下にあった牙鬼さん家のお城で、地上に旋回上昇してくる、というのは面白かったですが。
そして幻月の宣戦布告からどうなるのかと思いきや、幻月から指揮を任された十六夜九衛門改め牙鬼久右衛門新月は、「まずは晦、君が行け」と御家老を単品で送り込み、好天は好天で一人ずつラストニンジャの試験を始めるという、ゆるい展開。
天晴が試験を受けている間、手分けして敵の動きを探る5人だが、街では何故か人々が晦正影に狂信的な忠誠を誓い、霞・凪・キンジも、その術にはまってしまう。
「ライオンハオーを仲間にしたのも、カラクリ九尾に勝ったのも、全て晦様が居たからだよ」
「いや、なに言ってるの? それ全部、お兄ちゃんが頑張ったからじゃん」
スタッフはこの台詞に疑問を感じなかったのでしょうか。
いや、内容自体は正しいのですが、この内容が正しい事、それを劇中人物が平気で口にしてしまう事に、思う所は無かったのか。正直、今作の内容としてそれが如何に正鵠を射ているとしても、言わせてはいけない台詞だったと思います。
結局、1年やってきてそこなんだ、というのは面白いとか面白くないとか通り越して、もはや悲しい。
その後、晦の妖術が、記憶の中でその人の精神的支えになっている人物を上書きして成り代わるものだとわかり、風花と八雲が天晴の間抜けなシーンを思い出す事で晦に自ら術を解かせる、というのはそれなりに面白かったのですが、あっさり術にかかった3人の立場ゼロ。
「試験よりもあいつらが心配か?」
「心配なんかしてないよ。俺が居なくても、もう八雲も風花もみんなも負けない。だからあいつらも、俺を爺ちゃんの試験に送り出してくれた筈だ」
展開としてはどうも、天晴さんの超上から目線のコメント含め、天晴不在でも5人で幹部の一人ぐらい倒せるよ! という5人の成長(なのでしょうかこれは)を描く意図だったようですが、晦の正体(実は手の平サイズで晦ロボを操っていた)を見破るのがいつにも増していい加減かつ唐突な魔法だったり、巨大戦もメカごり押しで圧殺するだけなので、“なぜ勝てたのか”は一切描かれず(敢えて言えば、LVを上げて物理で殴ったから)、ここまで中身が無いといっそ感心する中身の無さ。
現象としての“勝った/負けた”に“どうしてその結果に至ったのか”を肉付けしていくのが物語なのだと思うわけなのですが。
晦さんも一応半年以上出ていた筈なのに、使い切ったポケットティッシュみたいなポイ捨てぶりでビックリ。
最後に、実は爺ちゃんは自らの父である先代ラストニンジャを殺してその忍タリティを奪う事でラストニンジャを受け継いでいた(現時点では爺ちゃん回想のみなので真偽不明)、というシリアスな設定が出てきた所で、次回へ続く。


◆忍びの45「親子三世代!ニンジャ全員集合」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:下山健人)
唐突に復活したと思ったら別に力を見せるわけでなく巨大妖怪に乗り込んで粋がる蛾眉さんに5人が追い詰められた所で天晴がやってくるや否や激熱フィーバーで妖怪瞬殺して蛾眉さん逃亡、と開始5分で前回のエピソードがどうでも良かった事になって頭痛い通り越して心が痛みを感じなくなってくる展開。
ラストニンジャが一子相伝暗殺拳みたいな存在であった事がわかり衝撃を受けた6人は、好天を殺せるわけがない、と意気消沈するがそこに久右衛門が姿を見せる。
もともと九衛門、<終わりの手裏剣>は欲しがっていたけど、ラストニンジャになりたいなど一言も口にしていなかったと思うのですが、(恐らく設定が変更された影響で)いつの間にやら九衛門の中で「ラストニンジャになる」と「終わりの手裏剣を手に入れる」が一緒になっており、おまえ達は覚悟が足りないから好天を殺してラストニンジャになれないけど、僕は好天を殺す為に妖怪の力を手に入れて人間捨てるぐらいの覚悟があるから偉い! とニンニンジャー』得意の論点ずらしからの異次元着地を披露。
そもそも、孫である天晴達と、幻月の息子であった久右衛門とでは、「好天を殺す事」に対するスタンスが違って当たり前なのですが、誰もそこに触れずに久右衛門の覚悟に感心しており、登場人物全員の頭と心が弱すぎます。
RPG回を受ける形でか、この最終局面で突然連発される「覚悟」ですが、漠然と「ラストニンジャになりたければ人を殺せ」と言われたら(今作の倫理観においては)殺さないのが当たり前であって、そこで殺せるのはただの悪意と狂気でしかなく、根本的に「覚悟」の使い方がオカシイ。
これが、「ある理由でどうしてもラストニンジャにならなければならない」しかし「その為には好天を殺さなくてはならない」なら、そこに選択と葛藤と覚悟が生じますが、今作、ラストニンジャになってどうするのか、という要素が一切描かれた事が無いので、そこに選択と覚悟の生じようがありません。
せめてキンジの初期設定が生きていれば「父兄を生き返らせる」為に「師匠を殺せる」のか? という問いが生まれ得ますが、そのキンジにしても元来は<終わりの手裏剣>を欲しがっていただけですし、ここでも設定の変更による混濁が生じてしまっています。
今作基本的に、ラストニンジャになる、と、牙鬼軍団を倒す、というのが別個の目的なのですが、こんな事なら早めに、「ラストニンジャにならないと牙鬼幻月を倒せない」とでもしておいた方が良かったような。
幻月は幻月で、世界に対する脅威度がさっぱりわからないわけですが(^^;
久右衛門に手裏剣忍法を封じられ、超必殺技を発動された6人は、悠長に状況を解説しながら一時撤退。久右衛門への対策を練って翌日の決戦に臨むが(前回ラストから今回冒頭の連続バトルで一応クライマックス感を盛り上げたのに、ニンニンジャー側にとって都合の良すぎる一泊インターバルで、何もかも台無し)、一足早く、好天は幻月に戦いに挑んでいた。
「家族を巻き添えにはせん! 貴様との因縁は、儂の代で終いにする。それが儂の使命じゃ」
え?
まあもう、爺ちゃんの言動についてはきっぱり脇に置いておくとして、ただでさえ存在感不足の幻月(デザインは格好いい)が身軽に一騎打ちに応じてしまい、ますます大ボスとしての貫禄がなくなっていきます。
CG大放出しての戦闘は迫力ありましたが、爺ちゃんがど派手な範囲攻撃をすればするほど、守破離って何だっけ?と思わさる高度な仕様。
「心に闇がある者は、目的の為、安易に力を求めやすい。それがおめえさんの、弱さでございやす!」
一方、立ちはだかる久右衛門と激突するニンニンジャーは、スターが自ら手裏剣になって元妖刀にくっつき、天晴がそれを発動。スターニンジャーが自ら武器になるから、もはや手裏剣忍法ではないのだの術により、久右衛門の手裏剣忍法封じを打ち破る。
守破離回(天晴のおっさん大量召喚剣はオリジナルなので好天の教えを離れた説)の時もですが、下山さんが書いているのは理屈ではなくて屁理屈なのだよなぁ……その屁理屈で突破できるように世界観の下地を作っていれば面白いかもですが、そういうわけでもないのが困った所。
あと、前夜にキンジの提言で、久右衛門はキンジにヘッドハントかけるぐらい心が弱いから付け入る隙がある筈、と対策を練っていたのに、心の弱さ、全く関係ないんですが……。
「あっしらはあっしらで、新たな道を選びやしょう!」
「そっか。私たちはお爺ちゃんの力を奪わなくても、私たちのやり方で、ラストニンジャになればいいんだよ!」
「夢なんて、最初から真っ暗で見えないんだ!」
「ああ。だから自分で切り開くだけだ!」
「今、僕たちは覚悟を決めたんだ!」
「あっしらは、ラストニンジャの掟すらも超えやす!」
「それで爺ちゃんの先を、いや、違う道を行く!」
第29話の旋風の台詞を引きつつ、何となく綺麗にまとめて久右衛門に言葉の機関銃を浴びせたニンニンジャー(これが心の弱さを突く攻撃か)は、ニンジャ合体ビームを発射。直撃を受けて膝を突いた久右衛門の体からは赤い輝きが漏れるが、それこそはかつて旋風が奪われた忍タリティであった!
「俺は……俺は……! ……ニンジャだぁぁぁ!!」
狸の置物の中に何かを見つけて駆けつけた旋風は、奪われた忍タリティを取り戻し、久右衛門は蛾眉に連れられて撤退する……。
えー……今回一番の失敗にして、既にバラバラ死体と化している作品全体に追い打ちでナイトダイナミックを浴びせる勢いの大惨事がこの、“旋風が久右衛門に奪われた忍タリティを取り戻す”というのを、比喩(心理)的な表現ではなく映像で具体的に明示してしまった事。
そして実際に旋風が、力を取り戻してアカニンジャーに変身してしまった事。
これにより今作は完全に、そもそものタレント(才能)の有無が何より重要な世界になってしまいました。
忍タリティは手裏剣忍法の前提条件となる素養であり、それは一種の特殊能力であるというのはこれまでの描写からも明白ではありましたが、それを心の在り方とかそういったものではなく、明確に具現化したもやもやと描いてしまうと、また意味が変わります。
つまり、忍タリティは忍タリティでしかなく、持つ者と持たざる者が存在しているのです。
ならば、今作における、忍タリティを高める(鍛える)、とは何だったのか。
それが最初から選ばれた者達だけが所持する才能ならば、今作はそれを通して何を伝えたかったのか?
勿論、そういった世界観で伝えられるテーマも幾らでもあり、今作がそうであるならば別に構わないのですが、ニンニンジャーがつい先ほど叫んでいたのは、
「新たな道を選ぶ」「私たちのやり方」「自分で切り開く」「掟すら超える」「違う道を行く」
です。
いっけん自主性と自立を高らかに謳っているように聞こえますが、しかしこの世界では才能が無ければ、自力で切り開く道など存在しないのです。
「夢は最初から真っ暗で見えない」ってつまり、才能の無い人間にとって世界は真っ暗という事だよな、と。
せめて旋風父さんが、ニンジャとしての夢も力も失ったけど今は他の道でバリバリ働いています、というならまだしも、ハッキリ言って父さんこれまで、夢も力も失ったニンジャの出がらしとして描かれていたわけです。それでもまだ、頼りないけど家族の為にやる時はやる(のかと思ったらほぼ役に立たない第42話とか本当に何をしたかったのか)父親像、を貫くならまだしも、ここでタレントを取り返した途端にテンション上がって本当の自分を取り戻した、みたいな描写をしてしまうわけで、始末に負えません。
第29話の締めに使われた「俺の夢は、かなわなかったけど……天晴や風花達に、それを継いでもらうのが、今の俺の夢だ。あの頃見えなかったものが、今は見える。…………父さんのお陰だ」って聞いた回では割と良い台詞だと思ったのですが、考えてみれば、よくある父娘すれ違いギャグとはいえ、風花を忍者博物館に連れて行けば喜ぶ筈だと思い込んでいたり、旋風も伊賀崎流の閉じた価値観の中で生き、それを子供に押しつけている人でしかないのだなぁと本質がさらけ出されてしまいました(八雲母は、使い方次第でこの伊賀崎家の価値観へのカウンターになり得る存在だったのですが、フェードアウト)。
要するに今作、主要登場人物に「ラストニンジャになれる/なれない」以外の価値観を与えていないので、世界を判断する基準がそこで閉じてしまっているのです。
例えば、戦隊史として見ると今作と同一のライン上といえ、個人的にはあまり評価していない『魔法戦隊マジレンジャー』(2005)でも、主人公達が魔法を使えるのは血統に依っていましたが、テーマ的にはぐちゃぐちゃだったとはいえ、そのエネルギーとなる「勇気」自体は、少なくとも誰もが自分の内側から生み出せるものでした。
今作には、それすらない。
徹頭徹尾、忍タリティは伊賀崎流の中で閉じてしまっており、挙げ句にその有無(強弱)が作品世界の判断基準と化してしまっています(今作における明確すぎるキャラクターヒエラルキーの正体が完全に腑に落ちました)。
だから、何も生まれない。
残り2話あるのでそこでいきなり外へ広げようとするかもしれませんが、もはや何をしても説得力はほぼ皆無でしょう。
シリーズには、その“閉じた価値観”を逆に活用した作品(『侍戦隊シンケンジャー』)もありましたが、それはテーマとして正面から向き合っていたから出来たわけで、今作は単に場当たり的に穴を掘っていたら崖から落ちただけです。
とにかく物語として、その時々の上っ面だけ拾って綺麗にまとめたつもりになっているから、数話どころか数分レベルですら前後のテーマ性が一貫しない。
3代アカニンジャー揃い踏みとか本当は盛り上がりたい所なのですが、力を取り戻すや否や輪の中心になり(普通、促されても遠慮すると思うのですが)、はしゃいでアカニンジャーに変身してしまう旋風の姿には、夢も力も失ったけどそれを持っている若者達を見守り導く良き大人像なんてこの作品には存在しなかったのだな、と空虚な気持ちだけが募ります。
次回、アカ旋風の描写次第では更なる大惨事の可能性も待ち受けておりますが、どこまで酷い事になるか、逆に興味が湧いてくるレベル。
そして今回、この揃い踏みで終了してしまい、幾ら何でも予告とサブタイトルで見せすぎというか、演出陣もどうしてしまったのでしょうか色々。
あー後、割とどうでもいい話ですが、久右衛門は何故か正体の秘密厳守にこだわっていたそうですが、それなら本名を「久太郎新月」とか「久兵衛新月」にして、実は御家老の嫌がらせがクリティカルヒットしてしまって慌てていた事があった、とかネタを繋げれば1ニヤリぐらい出来たのですが、そんな小技はあるわけがない安定の『ニンニン』クオリティ。