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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第42話

◆忍びの42「オトモ忍ウォーズ!ネコマタの逆襲」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
……いやぁ、ホント酷いなぁ……正直、ここまで全身粉砕骨折みたいな事になるとは、さすがに思いませんでした。
ほぼ唯一の見所は、クライマックス戦でのアカニンジャーのワイヤージャンプ。あれは、格好良かった。
前回、歴史に残る盛り上がらなさで巨大ロボが完全敗北を喫し、外に飛び出すニンニンジャーシュリケンジンで街を破壊して暴れ回る萬月から逃げた6人は、旋風と合流する。何とかシュリケンジンを取り戻すにはコックピットを奪い返すしかない……だが、萬月はニンジャの気配を察知する力を持っている。
「俺が行く」
ここで、鼻が利く萬月を出し抜くために、既に忍タリティを失っているお父さんが、コックピットへの潜入を買って出るというのは良かった。良かった、のですが……
「いいに決まってんじゃん。それが親父のやりたい事なら、やるべきだろ」
と何の根拠もなく笑顔で送り出す天晴は、それでいいのか。
良く受け取れば父親への信頼の表現なのですが、旋風がリアルバトルで役に立たないのは明確ですし、その「やりたい事をやればいい」というのは、天晴のどこから湧いて出たのか。
最近、海賊戦隊のDVDでも見たのか。
八雲の閃きで魔法により妖怪ネコマタの姿となった旋風は、メガネコマタを自称すると「伊賀崎家を見つけた」と偽って萬月とシュリケンジンを荒野におびき出す事に成功。首尾良く萬月はニンニンジャーを倒す為にコックピットを降りていくが、シュテンドウジと足軽はその場に残ってしまい、右往左往する事に。
ここでお父さんが機転を利かせてコックピットを奪還する活躍を見せるのかと思ったら、全くそんな事は無く話が進み、ニンニンジャーが萬月相手に結界を発動した事でシュテンドウジが「結界か。俺も行く」と唐突に外に出て行くという、意味不明な展開。
……それで出て行くなら、旋風が何か頭を使った方がよほど面白かったと思うのですが、息子達の為に勇気を奮った旋風がいい所を見せるのかと思ったらギャグの種にされるだけなので、どういう形で物語を積み上げたいのかよくわかりません。結局この後、獅子王に助けられるだけで物凄く台無し。
その獅子王は、何故か屋敷で好天に絡んでいた。意地でも孫達を助けに行かないのかと獅子王にどやされ、天晴の言葉を思い出した好天は、「厠に行く」と言って姿を消す――。
ニンニンジャーの方は、6対1で手も足も出なかった萬月を足止めする切り札として結界に閉じ込めるのはいいとして、内部で一騎打ちを挑むアカが何故か1対1でいい勝負をしており、短い間に余りにちぐはぐ。一応ニンジャ結界なので、手裏剣空間の中では伊賀崎流ニンジャの戦闘能力は通常空間の3倍になるのかもしれませんが、特にアカが強化されている描写が無いので、ひたすら意味不明の展開が続きます。ここでその辺りの強弱を丁寧に描写しないと、萬月の脅威度が伝わらないわけで。
後、毎度ぞんざいにレンタルされる元妖刀は、もはやスターに与えた事が失敗レベルな気が。
シュテンドウジの乱入で結界が破壊され、萬月の必殺剣でまとめて吹き飛ばれるニンニンジャー。だがその時、爺ちゃんの手裏剣――終わりの手裏剣<仮>――が天晴の手にする元妖刀にはまり、その力を借りた天晴は超絶ニンジャ斬りで萬月に反撃。……結局、逆転の鍵は爺ちゃんの助力、という身も蓋もなくて何も締まらない展開。
いやここで、ニンニンジャー6人の姿なり想いなりが何か重い理由を抱えている爺ちゃんを動かす、というならわかるのですが、爺ちゃんを動かしたのは獅子王という、もう、本当に何をしたいのかわかりません。
一応、天晴が前回口にした「爺ちゃんのやりたい事をやればいい」という台詞も思い出しているのですが、えー……今作ここに来て、
「親もやりたい事をやればいい」が、伝えたいメッセージなのでしょうか???
とにかく、何もかも積み重ねが無いので何もかも繋がりません。
そもそも今作、物語の中で「親」という存在をどう置きたいのかすらさっぱりわからないわけですが。
コックピットに突入してきた獅子王足軽兵を吹き飛ばした事で旋風はシュリケンジンの奪取に成功し、意気上がるニンニンジャーは反撃スタート。怒濤の連続攻撃で萬月を圧倒する……のですが……先ほどは手も足も出なかった萬月を今度は一方的に砂にするのが不自然すぎて、非常に困惑。
いや、「ノリがいい方が勝つ」というのはヒーロー物として一つの真理で、それ自体は全く構わないのですが、そうであるからこそ、そのノリに至る段取りを如何に積み上げるかが肝心なのに、それが全く出来ていない為に、単に話の都合で萬月の戦闘力がアップダウンしているだけになっています。
敢えて言うならこの逆転の理由は、凄い手裏剣を借りたからにしか見えないわけですが、持ち出すテーマの説得力云々以前に、物語が逆転に至る流れが全く組み上げられておらず、あまりに拙すぎます。
「確かに、私達は一人前じゃありません」
「だから、家族一つになって戦うんだ!」
そして、戦闘のインターバルに改めて理由を持ち出すのですが、とりあえずこれは反撃スタートの時に置いておいた方が良かったかと。
その上で、いや今作に、そんなテーマ無かったですよね……。
上述した、“物語の中で「親」という存在をどう置きたいのかすらさっぱりわからない”という点とも繋がりますが、例えばキンジは、親兄弟の因縁が戦いに身を投じるきっかけになっていたわけなのですが、夏休み最後にリセットされて以降、全く触れられない(勿論今回も触れられない)。百地家の親も、松尾家の親も一言も触れた事がない。不在の伊賀崎母について1ミリも匂わす描写をした事がない(もしかしたら旋風がお約束の「風花も母さんに似てきたなぁ」とかどこかにあったかもしれませんが)……と、むしろ、「家族」や「親」というテーマについて広げられるとっかかりは幾らでもあったのに、ほぼ一切広げてこなかったわけです。
また、過去に3例あるから、というのはあったのでしょうが、今作において兄妹戦隊ではなく従兄妹戦隊という形式を取った事に関しては、兄妹とは違う距離感を描ければ面白いと思っていたのですが、特にそういう面白みは無し。別に互いの距離が縮まるエピソードがあるわけでもなく、常に冷厳なヒエラルキーが存在しているだけだったのに、ここに来て、力不足を補い合う「家族一つ」なんていう着地をするのだったら、シンプルに兄妹戦隊の方がスッキリして良かったのではないかと。
もう、(品が無いので削除)レベルの罵詈雑言がさすがに喉まで出かかりました。
ここでシロに「キンさんも家族」と言われてスターが喜ぶのですが、それ本来なら、キンジにとって物凄く重要な言葉になる筈なのですが、設定が実質リセットされている為に、凄く無駄遣い(スターが感極まる、というようなリアクションをしていたのは、多分、役者さんはその設定を覚えていてくれたのだと思う)。
で、こんな回で一番活躍しているのは、家族でもなければ人間でもない獅子王で、いや、そんな獅子王にも「おまえも勿論、家族だ」とか言うならまだ良いのですが、獅子王には誰も何も言わないという。
好天・旋風・獅子王が乗り込んだシュリケンジンのコックピットとか、おいしい台詞を軒並み持っていく獅子王とかは確かに面白いのですが、最終決戦前のターニングポイントになる重要回のポイントが「獅子王がネタとして面白かった」というのは、どうなのか。
ここまで、掘り下げられる所を掘り下げず、繋げられる所を繋げずに、ほとんどの要素を表層だけなぞって進めてきたツケがまとめて回ってきて、あらゆる関節が曲がってはいけない方向に曲がっている墜落死体、みたいな作品に。
全ロボットが揃い踏み、シュテンドウジはもののついでにフィーバーされて爆死。萬月を守ろうと有明の方がガシャドクロで割って入るも、ビームの盾にされて空の彼方へ。
「母親を盾にするなんて……何考えてんだ!」
……いやその人、自分から盾になりにきたような。
「親だろうがなんだろうが、俺様は使える物は何でも使う主義なんだよ!」
「親の事を物とか言うな!」
そう繋げたかったのか、というのはわかるのですが、それは「立っているものは親でも使え」というレトリックだと思うんですが。あと根本的な所で、仮に萬月が有明の方をかばったら、「なんて立派な親子の愛情なんだ!」と、ニンニンジャーは両者を許すのか。次に有明の方に出会ったらごく普通に斬りかかりそうなのに中途半端に「母親」への同情とか描かない方が良かったと思うのですが……いやこの要素、年明けに引いてきたら感心しますけど、多分何事も無かったかのように処理されるだろうしなぁ……。
最後は一斉攻撃で萬月を撃破するのですが、もはや存在が踏み台すぎて、盛り上がりようがありません。短期でリタイアするからこそ、こういう敵をどこまで憎らしく強大そうに描けるかというのも腕の見せ所だと思うのですけど。萬月は爆発直前に「オヤジ殿……」と呟くのですが、だからそういう要素は、生きている内に物語に組み込みましょうね!
「いや、今日は儂がやりたいようにやった。弟子である前に、お前達は、儂の孫。ただそれだけの事じゃ」
戦い終わりクリスマスパーティのさなか、家族の愛情を優先した事を口にする好天だが、その体には謎の異変が起きつつあった……。
前回に続き、爺ちゃんの肉体の一部が金色の粒子になって消えかける、という表現。好天、そもそも死んだ事になっていた事や、これまでの行動から、<終わりの手裏剣>絡みで世界の因果にあまり干渉してはいけない存在と化しているのではというのは、概ね想定の範囲内。ラストニンジャ自体が、世界への人柱ぐらいの事は考えていたのですが、近年の戦隊の傾向と都合からすると、そこまでは重くならないのかなぁ……。
そして――瀕死の萬月の前に姿を見せた九衛門は、自ら真実を告げる。
「僕は牙鬼幻月の息子。君の、兄だ」」
御家老が突然言い出した幻月の予言した「息子」とは、九衛門の事だった! と最終盤へ向けてのカードがめくられた所で、萬月、爆死。
うん、まあ、ここまで来たので最後まで付き合います。