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『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第1話

◆第1話「どきどき動物ランド」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
「地球には、およそ800万種の生物が存在すると考えられている。しかし、現在発見されているのは、およそ170万種。この星はまだ、我々の知らない生き物で溢れている――」
地球規模の視点の提示に始まり、自然と動物に深い興味を持ち、子供に慕われ、運動能力に優れ、奇矯な親戚が居るというレッド・風切大和の基本情報から異世界ご案内まで、冒頭1分に巧く詰め込みました。
そして大事なお守りを巨大な立方体にはめ込んでしまったばかりに、大和は巨大キューブに飲み込まれ、そこで獣面人身の奇妙な生き物たちと出会う。
「喋ってる……? サメが、ライオンが、ゾウが、トラが、立って、服着て、喋ってる?!」
大和(というかこの世界の人間)には、ジューマン達は着ぐるみではなく、リアルな獣の顔に見えていますよ、という重要な台詞。


地球はまだ、我々の知らない生き物で溢れている――

大和は広大な世界を目にし、ここでクレジット〜OP入るタイミングはベストといってよく、まず小気味のいい導入。
その頃、地球の軌道上に巨大な弓矢に似た変な宇宙船が近づき、中では侵略者軍団がガチャガチャとしていた。かなり意図的に作った絵だと思うのですが、侵略者の皆さんが整然としておらず、なんか得体の知れない悪い連中がやってきた、という騒がしい雰囲気なのは、個人的には非常に好み。
「ジャグド。つまらぬ星なら、さっさと破壊しておいで。なにせ、次の遊び場が、記念すべき100個目の星になるのだから」
そしてCV:井上和彦の、迫力と貫禄を押し出すのではなく、どこか貴族的退廃を漂わせる気怠げなボスキャラ演技が、予想以上に良かったです。下半身が閉じたデザインもなかなか面白い。
デザインといえば、乗り物といい、ボスといい、緑の人といい、侵略者軍団はどうもザンギャック(『海賊戦隊ゴーカイジャー』)を思い起こさせるのですが、どこまで意図したものなのか。もしかして4クールかけて、直近の『ニンニン』を除く過去4作品(『ゴーカイ』→『ゴーバス』→『キョウリュウ』→『トッキュウ』)をモチーフにした悪の組織を出すもくろみがあるのだろうか、と邪推してみたくなります。青い人がCV:中田譲治というのも、ちょっと怪しい(笑)
宇宙からの侵略者→異次元からの侵略者→太古からの侵略者→闇そのもの、という流れならスケール感もダウンしませんし、『ゴセイジャー』の雪辱も兼ね、2010年代戦隊の中間まとめを意識しているのではないか……とか適当にもっともらしく言ってみる。
人知れず地球に危機が迫っている頃、大和はジューマンの世界、ジューランドを案内されていた。
「凄い! 地球にこんな生き物が居たなんて! いったいどんな進化したんだろ〜」
「じろじろ見てんじゃねえよ」
「しょうがないよねぇ。お互い珍しいもん。ニンゲンの世界とは、リンクキューブでしか、繋がってないから」
ジューランドを地球に入れていいのか、という部分は保留したい所ですが、ここで「進化」という単語が出てくるのが、キャラクターの個性が見えて良かったです。
ニンゲン世界とジューランドは冒頭で大和を飲み込んだリンクキューブで繋がっている事、リンクキューブを使うには<王者の四角>と呼ばれるジューマンを加護する6つのキューブが必要な事、それが盗まれた為にしばらくリンクキューブが使用不能になっていた事、と二つの世界にまつわる基本設定が確認され、大和は幼い日に謎の男からお守り――キューブ――を渡された嵐の夜の事を思い出す。
「もう大丈夫だ。きっとこいつが、お前を守ってくれる」
大和が持っていたお守りは、ジューランドから盗まれた<王者の四角>なのか……? 盗人として吊し上げられそうになる大和だがその時、地球に侵略者軍団の黒いのが侵攻してきた影響でキューブに異変が起こり、慌てて元の世界へ帰ろうと大和がキューブをはめ込んだ勢いで、ジューマン4人とニンゲン世界へと転移してしまう。
転移先の平和だった山林は黒い奴の攻撃により山火事になっており、大和がガイドしていた人々が逃げ惑う中に、逃げる鹿の映像など交えているのは、細かく秀逸。そしてジューマンの尻尾はまがまがしい気配に反応。
「俺たちはデスガリアン。この星は今日から、俺たちの遊び場だ」
「これが遊び?!」
「そうだ。ブラッド・ゲームだ」
黒い奴の攻撃でリンクキューブが破壊されてしまい、4ジューマンは砕け散った破片の中から4つの<王者の四角>を拾うと、立ち上がる。
「このまんまじゃ済まさねえ! ジューマンのプライドに賭けてな!」
その叫びに反応するかのように光り輝き、姿を変える<王者の四角>。
「不思議、力が伝わってくる!」
「これが<王者の四角>に秘められた力?」
「ジューマンを守る力だ!」
ここまで非常にテンポ良く来ていたのですが、このくだりが妙に駆け足かつ急に物凄く説明的な台詞になってしまったのは、許容範囲ではありますが、勿体なかった所。これでも、4人はリンクキューブの守り人なのでそれなりの理解度がある、という辺りは圧縮しているのですが、圧縮して芯だけ取り出したら、かえって<王者の四角>を拾う際の驚きなどが薄くなって淡泊になってしまったというか(^^;
「「「「本能覚醒!」」」」
持ち運びには不便そうな携帯電話に姿を変えたキューブの力で、4人は変身。変身アイテムが携帯電話(広義)というのも、『ゴーカイジャー』ぶりでしょうか……?

「荒海の王者――ジュウオウシャーク!」
「サバンナの王者――ジュウオウライオン!」
「森林の王者――ジュウオウエレファント!
「雪原の王者――ジュウオウタイガー!」
「「「「動物戦隊・ジュウオウジャー!」」」」

木の陰からこれを見つめる風切大和さん「え?!」
赤抜きで4人で名乗った!?
ジュウオウジャーは黒いのと雑魚軍団に立ち向かい、「野生解放」で部分パワーアップ。サメの人、背びれ……(笑)
「まるで、動物たちが……地球を守っているみたいだ……」
銃剣アイテムを見せた後に、戦場移動。大和は落ちていたキューブを拾い、一方で、謎の鳥男がもう一つのキューブを拾う。
ジュウオウジャーは雑魚兵の空戦部隊に空から攻撃を受けて苦戦し、黒い奴の砲撃を受けて倒れてしまうが、そこへ突っ込んでくるニンゲン。しかし奮闘むなしく、大和もあっさりと叩きのめされてしまう。
「戦いたいんだ俺も……守りたいんだこの森を……地球に生きる命を! 頼む、俺にも力を貸してくれ!!」
「無理だ。それは、ジューマンにしか使えない」
「何が違うんだ!」
振り返って叫ぶ大和に、無情な銃口が向けられる。
「ゲームオーバーだ」
だが――
「人間だって動物だ!!」
その時、大和の手にしていた<王者の四角>が光を放ち、大和の体を包み込む!

「……きっとこいつが、おまえを守ってくれる」

赤い輝きが大和を炎の弾丸から守り、そして舞う紅の翼――ワシの力が大和に宿り、大和もまた、ジュウオウジャーへと変身を果たす。
「大空の王者――ジュウオウイーグル!」
先の「まるで、動物たちが……地球を守っているみたいだ……」という台詞で、人間/動物という視聴者の常識的垣根を引っ張り出しておき、大和の台詞に若干の他人事感覚が漂ったかと思いきや、大和がその垣根をごく当たり前に乗り越えてくる事でヒーロー台詞を成立させるというのは香村さんらしい綺麗な線の繋ぎ方。「何が違うんだ!」は、とても良かったです。
惜しかったのは、直前まで膝をついて倒れていたのに、「人間だって動物だ!!」の台詞でいきなり正面向いて立ち上がってしまっていた所で、一応「ゲームオーバーだ」の所でカットを一度切り替えてはいるのですが、いい場面だっただけに、繋ぎの不自然さが目立つ形になってしまいました(^^;
ここからイーグル無双で、野生解放して翼を広げると空戦部隊を蹴散らし、個人武器で黒い奴も圧倒したまま撃破。これを見ていたジニス様は立ち上がるとナリアにコンティニューを命じ、ジニス様の細胞から抽出したエネルギーコインを投入された黒い奴は巨大化する。ジュウオウジャーが<王者の四角>の力でキューブアニマルを召喚するとデスガリアン母艦からは戦闘機部隊が出撃し、この突然の空戦には凄く80年代感が漂いますが、正直、好きです(笑)
この辺り、30代親世代のイメージする“戦隊っぽさ”をかなり意識して入れてきたのではないか、と思う所(緑のゾウ以外、割り切って過去戦隊と被せているのも、意識的ではあるのでしょうし)。
キューブアニマルは戦闘機軍団と黒い奴に立ち向かい(途中でゾウが消火活動しているのも秀逸)、まさかの、イーグル火の玉アタック!
説明しよう! 火の玉アタックとは、自らの姿を燃え盛る岩石に変え、標的の頭上から転がり落ちて体当たりを仕掛けるという、どう見ても年に1回ぐらい敵怪人が苦し紛れに放ちそうな、正義のヒーロー・天の超神ビビューンが繰り出す必殺技である!
そして、新たな<王者の四角>の力を解放する事で、火の輪くぐりにより、イーグル・シャーク・パンサーライオンが合体。どこからともなく飛んできた頭を芯に、動物合体ジュウオウキングが誕生する!
先着3匹ロボットは、赤・青・黄が縦積みになる、炎神王タイプ。当然、今後の拡張前提のデザインでしょうが、玩具が凄く動かなそうなのは気になります……(^^; 5体合体というより、早めに6号が出てきて4・5・6合体になるのかなぁ……。
若干不安になるのは、「またなんか来た」って、どこかからメールを受信している事ですが、今作の送信主は命を弄ばない存在だといいなぁ……。
ジュウオウキングは黒い奴を撃破し、ゾウとトラもしっかり援護攻撃を入れているのが、ぬかりなし。だがリンクキューブが砕け、6面を成す<王者の四角>の一つが行方不明な事で、ジューマン達はジューランドに戻れなくなってしまう。そんな4人に、<王者の四角>探しの協力を申し出る大和。
「でも私たち、人間の世界で住む所も無いし」
「俺が、まとめて面倒見る!」
なにこの甲斐性(笑)
更にジューマン達は、キューブの力で人間の姿を得る、が……
「僕は行かない。僕は君の世話にはならない」
一人ゾウのタスクだけが、大和の申し出を拒否するのであった――と、そう来なくては、と気持ち良く転がる感じで、続く。
サブタイトルが往年の有名クイズ番組のもじりである事に少々不安を抱いて臨んだのですが、特に悪ふざけがあるわけでなく、面白かったです。抑えるべき所を抑えた上で、後半にかけてかなりサービス要素も詰め込みつつ、全体としてはテンポ良くまとまっており、戦隊の第1話としては申し分ない出来。
変身アイテムを正六面体と繋げる事で最初から追加戦士の要素を取り込みつつ、鳥男はなぜキューブを盗んだのか? 盗んだそれをなぜ大和へ渡したのか? 大和に宿ったワシの力は鳥男のものなのか? と主人公の必然性と物語のミステリーを絡めているのも秀逸。
1人の現代人と4人の異邦人、という基本構造は『未来戦隊タイムレンジャー』(2000)を思い起こさせますが、次回恐らく、ニンゲン−動物−ジューマンの関係に触れつつ、ジュウオウジャーとはどんな戦隊なのか、を見せてくる展開になると思うので、まずは楽しみ。
おまけに細かい所で、仕方が無いとはいえダンスEDだと、本編でまだ打ち解けていないキャラクターが満面の笑みで踊っていたりするのがいつも気になってしまうのですが、今回、緑の人がものすごーくだるそうなのが素敵(笑) ……いやこれ、単に笑顔の余裕が無いだけで、ずっとこのままかもしれませんが!