はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第46話

◆第46話「不死身の破壊神」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 強大無比の戦闘力でジュウオウジャーを一方的に蹂躙した破壊神アザルドは、ジニスの元へ。
 「私の気まぐれがなければ、君は今でも宇宙をさまよい続けていた。たまたま地球に来て、封印が解ける事もなかった」
 宇宙を漂うカーボンアザルドの図がまるっきりカーズ(『ジョジョの奇妙な冒険』)なのですが、そういえば井上和彦はカーズを演じた事があるので、これは何か遠回しな中の人ネタなのでしょうか(笑)
 「だから服従しろと?」
 「私は期待しているだけさ。君がこれまで以上に、楽しませてくれる事を」
 「いいぜ。ただしおまえの機嫌を取るゲームじゃねぇ。俺とおまえ、どっちが地球を噛み尽くすか、対等の勝負だ」
 「対等……?」
 「確かに恩人だからな。楽しませてやるよ。だからおまえも俺を楽しませろ。ジニス」
 「ほぅ」
 前回の流れから、ジニスのブラッドゲームの真の目的は、歯ごたえのある遊び相手になりうる破壊神アザルドの復活だった? と推測したのですが、ジニス様の反応を見るにどうやら見当外れだったようで……そうだジニス様に長期的な目的意識なんてあるわけなかった!!
 地球の巨大生物に吹っ飛ばされた、という噂は知っていた癖に、地球に来たのは偶然というのも恐らく本気で、この人たぶん、ダーツとかサイコロで行き先決めてる!!
 「少し前までは、宇宙ローカル路線バス縛りで移動していたものさ……」
 その頃、なんとかマリオハウスに帰り着いた6人は、アザルドへの対策会議。
 「なんか、方法あると思うんだ。死なない生き物なんて、いないんだから」
 つまり、脳に対する執拗な打撃ですね?!
 ……はさておき、破壊神アザルドもあくまで生き物として捉える、というのは今作らしいスタンスです。
 だが話がまとまりきらない内に地球へ降り立ったアザルドが破壊神ビームで大暴れを始めてしまい、とにかく迎撃に出る6人だが、その途中、大和父の勤める病院の方面が攻撃を受けている事に気付く。
 「大和くん、こっちは任せてお父さんのとこ行きなよ!」
 促すアムだが、躊躇う大和。
 「………………いや、今はアザルドを」
 「それを言い訳にしないで!」
 大和が、“戦う為”ではなく“逃げる為”に選んでいる事をアムがはっきりと指摘してきたのは、痛烈な展開。
 面白い物語には「葛藤」と「選択」が付き物で、ここで大和はいっけん、大義と個人の事情を天秤にかけた末に、大義を選択しているように見えるのですが、それは実は、個人の事情から目を逸らす為の消極的な選択に過ぎない。
 「二度と会えなくなってもいいの? 私達の前でそれを選ぶの?!」
 そして、第11話において、ジューマン達が王者の資格を優先してジューランドに帰るのではなく、自分達をうちに帰そうとした大和を助けて残る道を選んでいるからこそ、戦う為に選んだジューマン達の前で、逃げる為に選ぶのなら、それは誇りと友情を裏切る行為だという、両者の関係性の芯になる所が踏まえられていて、とても良い台詞でした。
 基本的に大和は極めて出来のいい主人公であるのですが、そんな大和を最初から最後まで皆を引っ張る出来のいい主人公としてだけ終わらせるのではなく、大和には大和の問題点がある、というのを炙り出した上で殴りに行く、という姿勢は今作の素敵な所です。
 また大和は、言ってみれば物わかりのいい長男キャラなのですが、常識人のリーダーとして丁寧に好感度を積み重ねてきた主人公に敢えて“ひずみ”を与え、大人びて真面目な人間が幼少期から抱え込んでいた鬱屈が、思わぬ形でこじれていって重症になる事がある、というのを描いてみせたのは、TVの前に対する、今作の優しさと誠実さであろうな、と。
 「………………わかった」
 番長キャノンをアムに預け、病院へ向かって走る大和。
 「……何か、あったの?」
 「大和くん、おうちに帰れる方がいいじゃない」
 基本構造として、異世界から来たジューマン達がいつか故郷へ帰る(帰らせる為の)物語なわけですが、これまで大和がジューマン達を家に帰そうとしていたのに対し、そのジューマン達が大和を家に帰らせようとする、と形で一回転したのもお見事。
 第11話は今作最初の山場で、ジュウオウジャーが一つの群れになるエピソードだったのですが、そこでとても印象深かった
 「家に帰る時間が来たんだ」
 という台詞が物語の核としてここまで繋がってきたのも、個人的に凄く嬉しかったです。


 「大和、僕たちはもう、帰れないからここに居るわけじゃない。僕たちの意志で、ここに居るんだ」
 そう言ってくれた仲間達の為に、父の元へ駆ける大和。
 一方で割としれっと無事だったバドもこの攻撃に気付いており、患者の応急処置と避難誘導を行っていた大和父が崩れてきた瓦礫に押し潰されそうになった寸前、間一髪で父を守るイーグルとバド。そして、バドと大和父が旧知であった事が明かされる。
 「俺の……命の恩人だ」
 ――15年ほど前、二つの世界を切り離した後、ニンゲン界に隠れ住んでいたバドは、ニンゲンに襲われ負傷していた。
 「ジューランドもニンゲン界も同じだ」
 以前にジューランドが決して理想郷というわけでない事を示した今作ですが、返す刀でニンゲン界の汚い部分も明示。
 「何もかもどうでも良くなった俺は、死を覚悟した」
 ところが、力尽きかけ道路に倒れていたバドはそこを大和父に拾われ、治療を受ける。
 「なぜ……俺を助ける」
 「生き物は皆、どこかで誰かと、繋がっているものだ。……君は独りじゃない」
 くしくも母親が亡くなったその晩、自分が母親に告げられたのと同じ言葉を父親がバドに告げていた事、父親が母親の死に目に間に合わなかったのは、よりにもよってバドの命を助けていたから、と二つの真実に打ちのめされる大和。
 そしてバドはこの恩義に報いる為に、密かに大和を守り続けていたのだった。
 (俺が、今、生きてるのは……父さんがバドさんを助けたから)
 父は看護師に呼ばれてその場を離れてしまっており、一切の整理ができないまま、響いてきた爆音の方へと駆け出す大和。
 ――この星の生き物は、みんな……どこかで繋がってる……だから大和は、一人じゃない。
 「本能覚醒!!」
 (俺は、俺はぁぁぁ!!)
 大和が父の元へと向かい、バドが隠されていた因縁を明かし、父子の問題がスッキリ解決していざ決戦へと繋がるのかと思いきや、明かされた真実は大和のアイデンティティをズタズタに切り裂き、しかし状況は立ち止まって考える事を許してくれない、という凶悪な展開。
 前回、大和はかつて父にぶつけた厳しい言葉が心に刺さったトゲになっているのかもしれない……と書きましたが、どうやらもっと深刻で、大和は恐らく、父を憎む事で母との死別から心を守り、同時に、出来るだけ早く大人になろうとしていた。人間には何かを憎む事で心を守る機能があるわけですが、その、憎まないとやっていられない相手――下手をするとこの世で一番憎んでいる相手――の行為が無ければしかし、今自分が最も大事にしている繋がりが存在しなかった、というのは実にえげつない構造です。
 その上更に、“父との違い”として大事に抱えて行動指針にしてきた母の言葉を、実は父も実践していた、というのが大和には何よりの大ダメージ。
 大和くんにとっては、ラスボスから「私はおまえの父だ」と言われたぐらいのコペルニクス的転回であり、そこでああそうかと納得して和解するのではなく、それをすんなり飲み込める筈がない、と描いてくる事によって、最後の最後まで攻めに攻めます。
 私まだまだ『ジュウオウジャー』を侮っていました。
 一方、果敢にアザルドに立ち向かっていた5人だが力の差を見せつけられ、故意に弾け飛んでみせるなどアザルドに弄ばれていたが、アザルドが再生する際に中心となるコアのような部分を発見。
 「大和が言っていた通り……死なない生き物なんて居ないんだ!」
 サワオが突撃して弾き飛ばされるも、ジューマンズ4人は改めて変身して4人名乗りを決め、サワオ……ちょっと可哀想(笑)
 「「「「ジューマンを、舐めるなよ!!」」」」
 ここでアザルドが、クジラ大王が倒しきれなかった負の遺産としてジューマンズと因縁付けられ、サワオとクバルの対比に比べると美しさには欠けるものの、物語としては綺麗に収まりました。流れとしては、大和×バングレイ、サワオ×クバル、ジューマンズ×アザルドと来て、地球の群れ×ジニス、という事になるのか。
 ジューマンズが力を振り絞る中、そこへ降臨するイーグル。
 (俺は! 俺はぁ!!)
 憎んでいた父が母と同じ言葉を口にしていた事、父の救ったバドに命を懸けて救われていた事、そうでなければジューマン達とも出会えなかった事……気持ちの整理がつかないまま、猛然と“戦いに逃げる”大和。
 「言い訳にしない」為に父の元へ向かった筈の大和が、事実を受け入れられずに目の前の戦いを「言い訳にして」思考から目を逸らしており、ここに来て徹底的に大和を追い詰めてきます。
 「貴様等、気迫だけで、勝てると思うなよ!」
 「気迫だけじゃねぇ!」
 「ジューマンパワーがみなぎってんのよ!」
 それは、気迫と何か違うのか(笑)
 いや、自己申告なので、何か違うのでしょうが。破壊神アザルドの描写が描写なだけに、ここはいっそ、前回取り返したキューブアニマルから何やら追加パワーが供給されているなど、露骨に理由付けしても良かったのではと思った所。
 主観映像などを適宜交えての戦闘シーンは、新鮮さがあって面白かったですが。
 ジューマンズ4人が動きを封じた所で、画面外でずっと死んだふりしていたサワオが強襲を仕掛け、クリティカルヒットした所にキューブ銃の一斉射撃で再びアザルドを破壊。しかし不死身のアザルドの崩壊したボディはコアに集まっていく……という光景をカメラを回しながら見せていき、だがそこに番長が! というのは格好いいカットでした。
 しかし必殺の番長キャノンがコア部分に直撃する寸前、横から飛んできたコンティニューメダルがいち早く吸収されてしまい、破壊神アザルドは驚きの巨大化。
 「ジニス様の細胞から抽出したエネルギーです。ふん、意思も記憶も失って、思う存分、暴れなさい。ブラッドゲームからは、絶対に逃れられません」
 これまでブラッドゲームから逃げられないのは、ゲームの舞台に選ばれた惑星及びその住人だけだと思っていたのですが、ここに来て、プレイヤーどころかチームリーダーさえも、究極的には同じ扱いの“ジニスの玩具”に過ぎない、というブラッドゲームの真の本質が明らかになり、ジニス様、とことん邪悪。
 「ジィニィスゥゥゥ……!!」
 「私と対等の遊び相手など、必要ないのだよ。アザルド」
 溜めに溜めて前回あそこまで大暴れを見せ、ラスボス級の強さかと思われた破壊神アザルドさえ、ジニスという邪悪を引き立てる為の踏み台でしかなかったというのは、やってくれました。
 今作に対する評価の基本軸って、手堅い・完成度が高い、というもので、後はどこまで綺麗に畳めるか、という意識で見ていたのですが、第11話&第24話というこれまでの大きな山場の稜線を綺麗に繋げてきた上で、大和とジニスをそれぞれ更に肉付けし、積み重ねてきたコインによる賭け金をこの土壇場で更にレイズしてきたのは驚き。
 巨大アザルドの肉体の限界を超えた力に苦戦するワイルド(以下略)だが、バドが集めていたEXキューブアニマル達が声をあげ、カモノハシ、ヒョウ、フクロウ、シマウマが次々と出撃。
 「今だ! ケタスさんのやり残した事、僕たちがやり遂げてみせる!」
 4体が攪乱している間に放たれた百獣乱舞が直撃し、粉々に吹き飛ぶアザルド。4キューブの使い方といい、これで倒すと呆気ないなと思ったのですが、レオが半ば虚脱状態の番長からキャノンを奪い取り、ジューマンズが外に飛び出してワイ(中略)キングの腕の上からキャノンを発射。カーボンフリーズした所で更に、4人がコンクリートジャングルを立体的に駆け抜けながら突撃し、
 「「「「ジューマン舐めんなよ!!」」」」
 と一斉攻撃で粉砕したのは、中盤何かと割を食い気味になっていた4人の派手な見せ場として良かったです。
 「やった! やったなみんな!!」
 「うぉぉ!! くぅ……!」
 「……大和?」
 そしてこの構造ゆえに、大和がなんの心の整理もつけられないまま戦いに決着が付いてしまい、父への感情と向かい合わなければ、ジューマン達との関係に向き合えなくなってしまった大和が、ある意味で取り残されたまま次回へ続いてしまうのが、物凄い。
 作品の要請(ジューマンズにも見せ場を)と、物語の要請(簡単に解決しえない大和の苦悩)が、見事に噛み合いました。
 なにぶん10年以上分のトラウマとわだかまり、そこから生じたアイデンティティの揺らぎなので、劇的にきれいさっぱり解決しない、という可能性はありそうですし、ここまでやったらそれもまた一つの誠実さになりうるとは思いますが、果たして大和がここからどう向き合い、どんな答を出すのか、『動物戦隊ジュウオウジャー』の真髄が集約されそうで、期待です。
 弓矢基地では、ジニス様は小揺るぎもせずいつも通り。
 「フン……記憶が戻らなければ、いつまでも私の元で楽しく遊んでいられたものを」
 「ジニス様、チームリーダーが居なくなった以上、地球でのブラッドゲームは、ドローという事でよろしいでしょうか」
 従来作品なら、幹部が2人リタイアしていよいよ追い詰められるデスガリアン……という所なのですが、この期に及んで全く違う価値観が見せつけられ、未だに同じ舞台に上がっていない、というのが、また強烈。
 「いや、最後に何か、大きなゲームを仕掛けて終わろうか。折角だから」
 そして最終回直前にも関わらず、ついでノリ、という、ジニス様さいてーが徹底的に強調されて、つづく。
 ……ええとこれ、精神的にズタボロの大和君が選択肢を間違えて、地球壊滅、というバッドエンドルートなのでは?!(おぃ)
 そのぐらい未だまるで糸口の見えないターンジニス様攻略に関しては、以前の
 「あんなものは侮辱の内に入らんよ。……本当の侮辱というのは――」
 というのがキーになってきそうですが、一体全体どうなる事やら、皆目見当がつきません。この台詞は拾ってほしい台詞なのですが、納得のいく形で収まってほしいもので、ラスト2話、楽しみにしたいと思います。
 ここまで来たので公式サイトで監督を確認してみたら、次回は加藤監督になっていたので、ラスト2話は加藤監督で締める事になる模様…………て、4クール目、加藤監督と杉原監督しか入ってないゾ(^^; ちょっと心配になりますが、今作では山場で非常にいい仕事を見せてきた加藤監督、ラストを飾るのにふさわしいと思うので、最終2話、本当に楽しみです。
 3連投になった杉原監督は、総集編クイズや百貫デブ回での踏み外しが気になりましたが、今回はしっかりとした演出で、次作からはスッキリとした気持ちで見られそう。
 ところで今回アザルドとジューマンズがやや強引に因縁づけられましたが、クジラ大王の思い出ムービーだと外来種だという事になっていたアザルド、本当は古代ジューマン達の地球エネルギー濫用によって誕生してしまった公害モンスターだったのでは。
 そう考えると、先祖の不始末を自分達で処理するという形になって、より納得いく形で因縁が決着するのですが、大王、こっそり歴史改ざんしていないか。
 そして、臭い物に蓋をして宇宙に飛ばした古代ジューマン達は、自然エネルギーの枯渇した地球を離れて別次元(ジューランド)へと移り住み、いつか地球が自然エネルギーを取り戻した時に再移住を果たそうと考えていたが、長い時間の中でその歴史は忘れ去られてしまう。その間に地球には新たな支配種族としてニンゲンが誕生し、ジューランドは、既に当初の目的(再移住)が忘れられたゲートを残したまま、ニンゲン界との交流をタブー視するという矛盾した状況になっていた……と考えると私の中で結構しっくり来るのですが、さすがにジューランドについてこれ以上踏み込まれるのは望み薄な気がするので、適当に妄想を(笑)
 まあ、バドがキューブアニマルを探していた理由は、繋がってきてほしい所ですが。
 どこまで風呂敷に収められるのかも、楽しみな所です。
 次回――最後のゲームで開く手札はいかなる役か、『動物戦隊ジュウオウジャー』、いよいよ、Showdown!!