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『激走戦隊カーレンジャー』感想1

◆第1話「戦う交通安全」◆ (監督:小林義明 脚本:浦沢義雄
「この宇宙が邪悪に襲われた時、車を象った五つの星座が、輝きを持つ5人の若者にクルマジックパワーを与えて、激走戦隊カーレンジャーに変身させる」
改めて基本設定聞くと、驚くほど『キュウレンジャー』(笑)
宇宙幕府……ではなく宇宙暴走族ボーゾックの襲撃を受け壊滅し、花火にされてしまう惑星ハザード。一仕事終えたボーゾックは宇宙酒場で乱痴気騒ぎに明け暮れ、どうしてもヨーダを思わせるダップといい、かなり『スター・ウォーズ』のイメージが浮かぶのですが、小林監督は以前に『巨獣特捜ジャスピオン』第1話でも猥雑な宇宙酒場のシーンを描いており、様々な人や物が混じり合った宇宙世界のイメージなのかも。
話が地球に移ってからはかなりコミカルになるのですが、冒頭、無惨に破壊される惑星ハザード、陰影を強調した映像、肌色を振りまくボーゾックの姫ゾンネット、と酒場のシーンまではかなり退廃的なムードが画面を支配し、そのものが喋っているかのようにブラウン管に大写しになる女の唇、などは凄く小林義明。
「お前達に花火にされた惑星ハザードの戦士、ダップ!」
この酒場に潜入していたハザードの生き残りダップは、ボーゾックが次の標的に定めた惑星チーキュに輝く光を目にし、激走戦隊カーレンジャー誕生の予兆を見ると、クルマジックパワーによりワープ。
ペガサス、という会社で働く5人の若者達が作った夢の車……の模型に宿ったクルマジックパワーに導かれて地球に降り立ったダップは、整備工場内部に勝手に秘密基地を作成(笑)
伝説の実現だ、とテンション高い宇宙生物に引きずられるペガサス社員の5人は腕にアクセルチェンジャーをはめられてしまい、なんだろうこの、リアル手枷感。問答無用でマジックにより取り付けられたのですが、自由意思で外せるのでしょうか、これ。
当時ダップの見た目が凄く苦手だった事を思い出したのですが、今見てもやはり苦手だったので、この感想はダップには厳しい方向になると思います!
その頃、一足遅れでボーゾックも地球に到達し、色とりどりの宇宙暴走族達が地球侵攻を開始。全身タイツの戦闘員ポジションが3色に、幹部以外で別デザインが数体、と混ざり合っているのが雑然とした雰囲気を出しています。
「人間達に飼い慣らされ、戦う事を忘れたチーキュの車達。今こそ目覚めよ、お前達は、兵器だ。兵器となって、人間達を支配せよ!」
総長ガイナモの言葉により、乗用車に消防車、果ては三輪車までが好き勝手に暴走を始め、これを見たダップは「激走戦隊カーレンジャー、出動!」と高らかに声をあげるが、こそこそと物陰に隠れる5人。ダップは5人をマジックでいぶり出すと、縄をかけてボーゾックの元へと連行する。
「ご紹介しまーす! 宇宙の平和を守る、激走戦隊カーレンジャーです!」
酷い(笑)
人間は死んだら直らないんですよ?!
前年がバリバリの職業軍人戦隊だった事との対比もあってか、巻き込まれた一般人として当然の肚が座らない様子は繰り返し描写。
「じょ、冗談じゃないっていうの! どうして俺たちがあんな会社で働きながら、激走戦隊カーレンジャーにならなきゃいけないんだよ! 給料税込みで19万3000円で、どうして宇宙の平和まで守らなきゃいけないわけ?!」
ここで赤一人だけだと通り一遍のギャグにしかならないのですが、4人が次々と給料を自己申告していく、というのが秀逸(笑)
なお一番安いのは、緑。
夢も浪漫も失い給料という名の数字に踊らされる5人に見切りを付けて一人でボーゾックに立ち向かうダップだったが、副長との対決に敗れてしまい、駆け寄ってきた5人に母を失った悲しい過去を語る。
――「惑星ハザードが、滅びても……宇宙の平和は、星座伝説の、激走戦隊、カーレンジャーが、守ってくれるでしょう……」――
ダップが身につけていたペンダントは母から託された物だが、そのダップも今ここに力尽きようとしていた……。
「私は、しんじ、る……君たちが、ハザードに伝わる、星座伝説の……激走戦隊、カーレンジャーで、ある、事を……」
「ダップぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
力尽きるダップの為に嘆く5人、出会ったばかりの変な生き物相手に、基本的にいい人達。
――この時、俺たちの心の何かが変わった。
ここまでなし崩しで振り回されてきた5人が、重大な決断を迫られる土壇場の局面に立った時、逃げ出さずに前を向いて選び取る事が出来る者達、という形でヒーローである事を明示。
使命感や正義感の前に「人と人の交流」をステップとして置く事で5人の心情を納得させやすくしつつ、ハザード星人の容姿を第一印象で感情移入しやすいものにしなかった事で、そのハードルを軽々と乗り越えていく5人のヒーロー性を補強しているのが巧妙です。
「激走!」
「「「「「アクセル・チェンジャー!!」」」」」
ダップが握りしめていた鍵をそれぞれ掴んだ5人はカーレンジャーへと変身し……その姿を見て、ニヤリと笑うダップ。
「だぷー? やったー!!」
倒れたダップが目を閉じたのは、5人の同情を誘い決断を後押しする為の、死んだフリだった!
「最初から素直に変身してくれれば、こんなお芝居しなくてすんだのに」
最低だ、この生き物。
ヒーローとしての5人の在り方は明確にした上で、そう素直に格好いい話には持っていかないという強固な意志を感じますが、ヒーローへの導き手が導入エピソードで死亡する、というパターンは過去に幾つか例があるので、一種のオマージュなのか。
第1話で死亡する導き手が結構な確率で無責任で最低である事を考えると、芝居を隠しもしないダップの堂々とした姿はいっそ清々しい……のか?
「君たちの戦う相手は私じゃない。宇宙の暴走族、ボーゾックだ!」
5人に詰め寄られたダップはうまく責任の所在をすり替え、街でバカ騒ぎするボーゾックの元へ専用ゴーカートで駆けつけるカーレンジャー


「レッドレーサー!」
「ブルーレーサー!」
「グリーンレーサー!」
「イエローレーサー!」
「ピンクレーサー!」
「「「「「戦う交通安全! 激走戦隊、カーーーーーーレンジャー!」」」」」


キャッチコピーは恐らく、到着までの道すがら、みんなで相談した。
カーレンジャーは剣と銃を使って構成員と戦い、総長が作り出した巨大消防車メカも、銃の強化モードで撃破。同じく強化モードの剣で総長に一太刀浴びせ、基本装備を一通り見せた所で、ボーゾックは一時撤退。
「君たち〜、なかなかやるダップ」
全く悪びれないダップに呆れつつも、ついついサムズアップとか向けてしまうレッドであった、でつづく。
第1話の印象は、ダップ酷いに尽きるのですが、民間人戦隊におけるメンバー拉致はそこまで特異な事例とはいえず、乗り込んできて引きずり出す、はその裏返しと見れば正しく伝統的な作法に則ったともいえます。
その上でダップが悪質に見えるのは、星座伝説の名の下に他人の人生を踏み荒らす事に一切の躊躇も痛痒も見えないその姿勢なのですが、ハザード星人の倫理観は地球人とは少々異なるとも取れますし、そもそも惑星丸ごと一つを花火にされた復讐鬼だと思えばむしろ戦隊のDNAに満ち溢れているといえ、これは、戦隊のDNAが一般人の精神を冒していく物語なのかもしれない。
復讐は時に人を狂わせるが、そうではなくては心が守れない時もあるのだ!
次回――道路に飛び出すと、危ないぞ!