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『激走戦隊カーレンジャー』感想33

◆第41話「暴走皇帝戦慄の燃料チェック」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久
微妙にズレているのに謎の説得力がある、エグゾスらしいサブタイトル。
エグゾスから浪漫の結晶・大宇宙ハイウェイ計画の完成図を見せられ、カーレンジャー抹殺というミッション成功の暁には永久無料パスを与えるという餌で焚き付けられたボーゾックは、クリスマスの近づく地球に、カーレンジャー宛のクリスマスプレゼントとして強化Gちゃんを送り込む。
「こいつ……前にも来たな」
買い出し中だった恭介達5人は、一応はボーゾック怪人の入っていた段ボール箱を思い切り蹴りつけ、冷たい視線で取り囲むと、目を逸らしている間に変身。Gちゃんが装備したエネルギー吸収唇によってエネルギーを吸われて思わぬピンチに陥るも、ダップの祈りに応えるかのようにエネルギーが回復して勝利を得るが、それを見ていたエグゾスは、クルマジックパワーの供給源が居るに違いない、とカーレンジャーの背後関係に目を付ける。
「奴らにエネルギーを与えている仲間が居るに違いない。奴らを支援する、いわば、6人目のカーレンジャーが」
ボーゾックは初回で大暴れしたダップの存在を覚えており、ハザード星人の名に反応する監督。
「ハザード星人が生き残っていたとは……だが、そやつさえ捕まえれば、カーレンジャー抹殺など、いともたやすい」
エグゾスがダップに狙いを定める中、そんな事は知らぬ当の本人はカーレンジャー達と過ごすクリスマスの計画を練っていたが、5人全員がクリスマス休暇で実家に戻る予定だと聞いてショックを受ける。
「そんなの駄目ダップ! ヒーローは、クリスマスは、一緒に過ごさなくちゃいけないんダップ〜」
「なにそれ? そんなの誰が決めたの?」
それはですね菜摘さん、5年ほど前に、
「○○○○(←好きな悪の組織の名前を記入して下さい)と戦う為には、個人的な感情は捨てなければならないんだっ。 いつまでも○○○(←好きな身分を記入して下さい)気分じゃ戦士とはいえない!」
と宣った方がいらっしゃるので、そちらの窓口でご確認下さい。
そしてそういえば、『鳥人戦隊ジェットマン』にはクリスマス回が無かったよーな。
ジェットマン』は、敢えて“ヒーローの狂気”を明示する事で、「ヒーロー性」「人間性」「社会性」の衝突を克明に炙り出して、そこから「ヒーローとは何か? 人間とは何か?」を徹底してテーマに据えた作品でしたが、ポスト『ジェットマン』の作品として今作が、「一般市民」と「ヒーロー」の間を軽やかに行き来する主人公達を描いているのは興味深い点です。
くしくも同期の『超光戦士シャンゼリオン』では、『ジェットマン』のメインライターだった井上敏樹が、「ヒーローとしての戦い」を「日常」に還元してしまうのですが、異色のコメディ作品と位置づけられる今作と『シャンゼリオン』が、後に東映特撮ヒーロー史において巨大なブレイクスルーとなる『仮面ライダークウガ』へと繋がる、確かな中継地点となっているのは非常に面白い所。
「ダップだって楽しみにしていたのに……みんなで一緒にする、たのしーいクリスマスパーティ」
母は死に、父は消息不明、生まれ故郷も今はない、というダップの抱えていた深い孤独と、当然5人が一緒に居てくれると思い込んでいた子供らしさ、そしてハザード星を花火にしたボーゾックの非道さが改めて強調。大量のギャグでデコレートされていましたが、もともとダップは今作における「狂気」担当であり、今作の根幹に「復讐者であるダップをカーレンジャー5人が救う物語」という構造が存在している事が浮き上がってきます。
エグゾスはカーレンジャー抹殺の為に陸海空の覇者たる3体の巨大ロボをボーゾックへ預け、何やら思うところのあるらしいゾンネットが、交換日記を手に地球行きを志願。微妙に火の玉アタックを思い出す名前の鳥形ロボ・スカイギュギューンへと乗り込んで地球に向かう。
「ゾンネッカー・オン」
で愛車がロボの頭部にドッキングし、小ネタが既に仕込まれていた(笑) ……まあこれぐらいはもはや、パブリックなネタとはいえるでしょうが。
自分たちの休暇を優先して孤独を理解してくれない恭介達の態度にやさぐれたダップ(一般家庭における、仕事に忙しい親と子供の関係性を暗示しているのが秀逸)は指名手配犯みたいな変装で街をふらつき、ダップを探していた恭介は投げ捨てられたダップのクリスマス計画ノートに気付くが、中身を見る前に超神ギュギューンが来襲してしまう。
「まずはその赤いボタンを押してみよ」
生まれた星が違えばVRVマスターと朝まで語り明かせそうなエグゾスの指示に従うと地上に大量の号外がばらまかれ、それを手に取るダップ。
「ハザード星人の、生き残り……チーキュで、大、集……会? え、ええーーっ?!」
ギュギューンは富士の裾野でVRVロボと遭遇するが、ゾンネットはすぐに車を分離して地表に降り立ち、その姿にレッドーレーサーの背中を押して外へと送り出す仲間達が微笑ましい(笑)
カーレンジャー、暴かせてもらうぞ、お前達の弱点を」
赤はゾンネットから交換日記を受け取るが、エグゾスの遠隔操作によりゾンネッカーがギュギューンと強制ドッキングすると制御不能で暴れ出し、ゾンネットは気絶。
このたった数十秒でゾンネットを立派な人質ヒロインのように見せてしまう荒川さんの手管、恐るべし(笑)
「うぁ、ゾンネット!」
「まったく、また喧嘩したわけ?!」
コックピットに戻るやどやされ、男女のお付き合いに関してとことん信用がないレッドレーサーであった。
東京から引き離されたVRVロボがギュギューンと戦闘している間に、グラッチの乗る海の覇者マリンザブーンが地球へ出撃すると、まんまと号外に誘き出されたダップを捕獲。宇宙のどこかではパチンコ帰りのVRVマスターが、景品を詰めた袋が破れた事で不吉な予感に襲われていた。
……今回諸々の露骨な伏線でマスターの正体が行方不明のダップ父とほぼ確定した事を考えると、息子が寂しさから仲間と喧嘩し、息子が家族のぬくもりを求め、息子が大ピンチの時にパチンコに興じていた事になり、凄く最低な感じです(笑)
VRVロボもギュギューンの空からの攻撃に大苦戦し、ロボのクルマジックエネルギーが少している事を確認した皇帝は、ギュギューンを宇宙へと帰還させる。カーレンジャーは交換日記に書かれていたゾンネットのメッセージにより、エグゾスがクルマジックパワーを狙っている事を知るが、一足遅くダップはエグゾスに囚われてしまうのであった……で、つづく。
ここ数話、エグゾスが後援についてからのボーゾックの体制の変化が少しずつ描かれてきましたが、レッドレーサーへの淡い恋心にエグゾスへの反発心、将来への不安なども入り交じったゾンネットが、とうとう明確にカーレンジャーに肩入れ。
思えば最初はレッドレーサーの顔に惚れるというギャグだったものが、地道にラブコメすること30話あまり、遂にここまで来てしまいました(笑)
地球を花火にしたいと言い出した悪女系ヤンキー娘が、いつの間にやら家出中のプリンセスヒロインと化しており、げに煩悩とは恐ろしい。
次回――「急に道路に飛び出すと、車に、轢かれるぜ」。


◆第42話「全車エンスト! 巨大ロボ絶体絶命!!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久
「落ち込んで問題が解決するなら、弁護士はいらない」
基地に戻ってこないダップを探す5人の前に姿を見せたVRVマスターは、ダップは恐らくエグゾスの手に落ちている、と指摘。
一方バリバリアンでは、ダップの処刑を止めたエグゾスがザブーンを地球へと出撃させる。ザブーンは湾内でタンカーを吹っ飛ばし、ここに来てかなり明確な破壊と被害描写。爆破されるタンカーの船員のやり取りを描くなど、今作としてはやや珍しい演出なのですが、これもエグゾス登場後の、“従来作の悪らしい描写”の一貫でしょうか。
ボーゾック警報を受けた5人は、マスターの制止を聞かずにカーレンジャーへと変身。
「本当の戦士なら、人の話は最後まで聞くものだ!」
重ねての制止に足を止めて振り返り、
「VRVマスター。ボーゾックを倒して、ダップを取り返してくる!」
とサムズアップを決めるのは格好いいのですが、話は聞いていなかった(笑)
ザブーンを相手に海中戦へと引きずり込まれたVRVロボはエネルギーが急速に減少し、放水車のポンプを使う機転で、緊急退避。
「本官の許可無く、カーレンジャーをやっつける事は許さん!」
そこへ久々に、シグナルマンがサイレンダーで駆けつける。
「すまないカーレンジャー諸君、名古屋のシャチホコ交通安全センターで、講演会をして、ふふふん、ついさっき戻ったところだったのだ」
ここ数話、話の都合もあってシグナルマン不在だったのですが、一ヶ月ほど名古屋に出張していたようで、癒着、どろどろした癒着の匂いがしますよ?!
囚われのダップは、倉庫に押し込まれていたガイナモ宛ての年賀状の山の中から、占い師スゾグエから届いたラッキー占いを発見。
〔今年のあなたは、あちこちの星を襲うとラッキーでしょう。特に、『は』のつく星を徹底的に壊滅させると良いでしょう〕
そう、その年賀状こそが、ボーゾックにハザード星を襲撃させるきっかけとなったのだ!
「占い師スゾグエ……スゾグエ……逆さから読むとエグゾス! エグゾスが裏で糸を引いていたんダップ〜」
事件の黒幕として暴走皇帝が最初からボーゾックを誘導していた事が明るみとなり、本当に地道。こうなると年に一回ボーゾックが摂取していた“宇宙の邪悪なエネルギー”は、エグゾス由来のものだったのでは、という疑惑が深まりますが、直撃を受けたリッチハイカー教授の頭が金色になったのも、何やらエグゾスの頭の色と繋がりますし。
まあ、どう責任の所在をすり替えても、実行犯としてのボーゾックの非道さは、いささかも揺らぐものではありませんが(^^;
「こんな所で泣いていても、始まらないダップ」
真の敵を見定めたダップが涙をぬぐって立ち上がる一方、なんとか基地へと戻ったカーレンジャーは、VRVマスターからエネルギー切れの原因について聞かされていた。
「クルマジックパワーは、夢の魔法。カーレンジャーとダップの心の絆が、生み出す力なのだ」
「どういう事やねん?」
実と同じ気持ちになったので、過去の感想を読み返してみたのですが、そもそも第1話においてクルマジックパワーが宿ったのは「5人が作った夢の車の模型」だったので、最初からそういう事でした!
クルマジックパワーとは何か、という話は全くしてこなかったので唐突な印象に変わりはないのですが、スタート地点はしっかり踏まえられていて、その辺りはぬかりなし。
クリスマスをきっかけに5人とダップの間に生じてしまった心の溝、それが原因でクルマジックパワーがロボットに届いていない、と説明され、ノートの存在を思い出す恭介。中を見た5人はダップの想いに気付き、恭介はダップの救出をマスターに頼み込んで頭を下げる。。
「VRVマスター、あんた確か、宇宙の一匹狼だよな。頼む! ダップを助け出してくれないか。宇宙に居るダップを助け出す事は、俺たちには出来ない。だから、頼む!」
「マスター、俺からも頼むわ!」
「お願いします!」
「VRVマスター!」
「お願い!」
そもそもマスターは都合の良いジョーカーキャラなのですが、恭介が「自分たちには出来ない」という限界を認めた上で正面から頼み込むという形を取る事で、ひょっこり出てきて万事解決してしまうという都合の良さを和らげるクッションとして機能。
また「一般市民」としての恭介達のダップに対する真摯な想いを見せると同時に、「ヒーロー」としてカーレンジャーが頭を使わないパワープレイで事態を突破してしまう事も回避しており、良く出来ています。
「……虫のいい話だな。ダップの救出を人任せにして、自分たちは何をするというんだ」
「俺たちは……俺たちに出来る事をやる!」
出来ない事を他人に頼んだ以上、出来る事としてザブーンをRVロボで倒す、と「ヒーロー」としてカーレンジャーは宣言。
「――良かろう。悪くない答だ」
ここで盛り上げ音楽が入るタイミングが格好良く、出撃する5人を見送って指を振るマスター。
「ちょっと見ない間に、少しは戦士らしくなった」
BGMの勢いを借り、マスターは宇宙刑事ばりに金色の光球となると、宇宙へと飛翔。
「激走合体!」
カーレンジャーもその流れに乗り、RVロボでザブーンへと立ち向かう。
「ダップ、俺たち頑張るからな!」
一方ダップも救出を待つばかりではなく自力での脱出を図っており、皆が皆、それぞれの「出来る事」をやる事で状況を塗り替えようとしていく、というバランスが秀逸。
ワンパーを相手にまさかの立ち回りを見せるもゼルモダに追い詰められてしまうダップだが、そこへ飛んできたコーヒー牛乳のキャップがピンチを救い、暗闇の中からテーマ曲と共にVRVマスターが姿を見せる。
「てめぇ、何者だ?!」
「敵か味方か――宇宙の一匹狼、VRVマスター」
「俺が一時期住み込みで働いていたチーキュのパチンコ屋で、ドロップばかり交換していったおかしな宇宙人!」
「ドロップ?! 地球のドロップはハザード星の匂い!」
まさかの連鎖伏線(笑)
「ダップ……しゅらしゅしゅしゅだ」
マスターはワンパーを軽く蹴散らし、ダップの援護もあって2人はバリバリアンからの脱出に成功。「しゅらしゅしゅしゅ」という言葉からVRVマスターが父である事を確信するダップだが、その背後に迫り来る暴走皇帝エグゾス!
エグゾスの光線を受けて絶体絶命の逃走を続けながらマスターはダップに問いかける。
「ダップ、正義が好きか?」
「好きです!」
ここでVRVマスター(父)はダップ(息子)の「正義」の内容を問わず、ダップが胸に抱く正義を信じている。そう信じられるぐらい、カーレンジャーがダップを支えていてくれた事も信じている。
或いはそんな事を全く考えもせず、父から子への問いかけは純粋に無邪気ともいえるもので、けれどそれは、子供の「正義」は無邪気でいい、と伝えている。そして、その無邪気な正義が正しくあるように子供達が育つ世界であってほしいと信じている。
父と子という関係性を用いて、正義とは何か?を語るのではなく、「正義が好き」なあらゆる人々に、その意味をシンプルに自問させる、今回の非常に好きな台詞。
この一瞬、あらゆる理屈を超えて「正義」という言葉が良き心の在り方を示す“象徴”として機能し――それをなしえるフィクションとして、改めて私は、ヒーロー物が好きで仕方がありません。
色々なものを笑いにしてきた今作が、夢見る正義を――夢見る君がときめく君が明日のヒーローである事を――笑い飛ばさないのは、とても素敵な事だと思うのです。
前回のいい年した5人が揃いも揃ってクリスマスを実家で過ごすというのは少々強引なのですが(年末年始という帰省にふさわしいイベントが近くにあるという無理を承知で、放映時期の関係でこうなったのでしょうが、一方で家庭人としてのペガサス社長の顔が見えるともいえます)、ダップの根幹にあるテーマ性を「家族」と置き、シグナルマン一家という要素も拾いつつ、『カーレンジャー』全体として「父と子」の物語を綺麗に意味づけてみせたのは、お見事。
「どんな辛い時でも、夢を見る自信はあるか?」
「夢?」
「仲間と一緒に見る夢さえあれば、クルマジックパワーに、限界は無い! 忘れるな!」
そして「どういう事やねん?」と唐突さのあったクルマジックパワーの秘密を、一般市民としての恭介達の原動力に重ねて作品初期のテーゼと繋ぎ直し、「一般市民の意志」と「ヒーローのエネルギー源」を結合。
更にその根本原理を、復讐というネガから、仲間と一緒に見る夢というポジへと変換。
仲間と一緒に見る夢があれば、人はどんな苦境も乗り越える事ができ、その力が具現化されたものこそがクルマジックパワーである――だから胸に愛を抱いて車を飛ばしたら、クルマジックパワーに限界は無い! とギャグとギャグの隙間を縫って、『カーレンジャー』の力の源について見事にまとめてみせた上に、お茶の間向けの綺麗なラッピングまでしてみせる、圧倒的芸術点。
小林清志のパワーもありますが、カーレンジャー独特の台詞の勢いにしっかりと説得力を乗せて、荒川さんが持てるテクニックを存分に発揮してきました。
かくして逆転勝利への布石は揃うも、ダップにクルマジックパワーの根源を伝えたマスターはエグゾスに特攻を仕掛けて宇宙の藻屑となってしまい、RVロボサイレンダーも超神ザブーンに苦戦。2大ロボはミサイルの爆発に巻き込まれ、2話続けての深刻な引きで、つづく。……阪神回も含めると、3話連続でギャグ抜きのオチという異常事態(笑)
せっかく助けに来たシグナルマンが、その後なんの台詞もなくザブーンにやられているだけというのは残念でしたが、次回ここまでの流れが美しく着地してくれる事に期待。
次回――聖夜に勝利は舞い降りるのか?!「雪の降る日は道路が滑りやすいから!」「気をつけてねー!」。