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『ウルトラマンジード』感想・第1話

◆第1話「秘密基地へようこそ」◆ (監督:坂本浩一 脚本:安達寛高
淡々としたナレーションの語りで、

昔々あるところで「復活した」ベリアルさんが大暴れしていました
ヒカリさんがものすっごいアイテムを完成させました
でもベリアルさんがとんでもない爆弾を起動しました
山盛りのウルトラ戦士達が棒立ちで地球の消滅を見つめながら「この宇宙は、もう保たない」
かに思われた――

OPで真っ先に出てくるのがウルトラマンキング

という、率直なところ、ウルトラ門外漢としては一番きっつい入り(^^;
好意的に見れば、オールスターものですよ! という宣言とは取れますが、このアバンタイトルが、「あれ? 第1話見逃した?」レベルで単体で成立していない為、ベリアルさん=魔王、と思えばきっと良いのだろうけど、ベリアルさんが“どのぐらい”魔王なのかがわからない事を筆頭にウルトラ知識に欠けている身としては、楽しいテーマパークの入り口に、強固な城壁とウルトラ検定何級かをチェックする黒服のガードマンが立ちはだかっている気分。
それ抜きにしても、OPファーストカットと、ラストカットの中央バックで、見るからにジョーカー的な存在が一番目立っている、というのはどうかと思いますが。
駄菓子屋で働きながら安アパートで宇宙人と暮らすリクは、TVのヒーローに憧れる青年。数年前に謎に包まれたなんとかインパクトとやらがあったらしい世界にある日突然、巨大な怪獣が現れ、駄菓子屋とリクのアパートは無惨に潰されてしまう……。
巨大怪獣が出現するや、すぐさま防災マイクが警報を発し、ラジオやTVで進路情報が報道されるのですが、焼け出された市民達が三々五々と自主避難はまだしも、主人公は友達の所に泊めてもらうアテが外れて野宿を敢行…………ていや、公的な避難所が設置されていないわけないですよね?!
加えてこれだけ公的に怪獣の脅威が報道されている世界で、“怪獣が通り過ぎた区域”だから無警戒とはとても考えがたく、夜間にうろちょろしていたら警察なり自衛隊なりに身柄確保される事請け合いだと思うのですが、ペガッサ星人付きの主人公がそれくぐり抜けたと解釈するにしても、怪獣出現に関する世界のリアクションのAとBが全く噛み合っておらず、一番やってはいけない半端なリアリティの盛り込み方にまずがっくり。
坂本監督ともあろう人がどうしてこれを通してしまったのか首をひねるのですが、最初の怪獣出現の際や主人公とレムの出会いなど全体的にタメがなく、かといって監督得意の疾走感があるわけでもない全体的に低調な演出で、脚本の調理に手間取ったのか、最近引っ張りだこでさすがにオーバーワーク気味になっていたのか。
それとも、女性キャラの出番がほぼゼロでやる気が出なかったのか。
坂本監督の煩悩とフェチズムには正直だいぶ引き気味のスタンスですが、それでもこの監督からリビドーを抜いては駄目なのかもしれない。
リクが謎の球体と出会っている頃、街では怪獣が現れた時と同様に突然の消滅。それを双眼鏡で見ながら黒スーツの女が「消えた……やったー!」と歓声をあげ、最初、怪獣見て喜んでいるのかと誤解してしまい(少なくともその前の、「先輩、怪獣!」という台詞が興奮したトーンだったので)、いきなり凄くイメージ悪くなりました(^^;
こちらの誤解ではあるのですが第一印象でつまづいた上、横に立つ冷静な先輩との対比にしても、笑顔で万歳という被災シーンとの乖離が激しいリアクションは感じ悪く、今後も場をわきまえなさそうな雰囲気が、辛いキャラになりそうな予感。
謎の球体――レム――に地下秘密基地に案内されたリクは、そのマスターとして様々な説明を受けて怪獣と戦う力を得ると、ジーッとしててもドーにもならねぇ! と自らウルトラマンジードを名乗り、昨年、焼きそば好きの風来坊が嵐のような土下座を繰り返してようやく使用可能になったベリアル先輩の力を、初手からさくっと使用。
カプセルの中にウルトラマンの力が入っている、という今作の変身アイテムですが、機械に詰めた後、首筋にぷしゅっと打ち込むのかと思って超ドキドキした事を告白します。
リクは巨大なウルトラマンジードに変身し、夜の街の中に青白い光に包まれたジードが立つ姿は格好良かったです。
自分の姿を正確に把握できないままのジード(リク)だったが、レムのサポートもあり、DNAの中に眠る記憶できらっと閃いた必殺光線でなんとか怪獣を撃破。
都合良く怪獣の映像が確認できるのは小型ドローン、現場には秘密エレベーターで転移、アイテムや技の名前はリクが自分で付ける、或いはレムが説明する、とよくあるツッコミ所は色々と潰してきているのですが、その前にもっとしっかりこだわるべき部分があるのでは。
そして最後にレムより、「リクは99.9%の確率でウルトラマンベリアルの息子である」と語られて続くのですが、いったいそれは、誰にとっての衝撃なのか?
作劇的には、リクの衝撃に視聴者を同調させる狙いだと思われるのですが、この世界観における「ウルトラマンベリアルとは何か」が全く不透明なので(ペガッサ星人は知っているようですが)、そう言われても特にリクに衝撃を受ける理由はなく、よって見ている側としても、それで? で終わってしまうという、不可解極まりないラスト。
敢えて言えば、メタ的に設定を説明しているだけ、という。
《ウルトラ》シリーズとして積み重ねてきた歴史と方向性、というのが数十年(『ティガ』以降でも20年)あるわけなので、“そういうもの”だと思って見る作品なのかもですが、アバンタイトルからラストに至るまで、感情を動かす前提となる情報が常に物語の外に置かれているのが、非常に気になる作り。
むしろ半端に知識があったり頭でっかちに考えてしまうのが問題で、虚心に見れば、ベリアルという悪い奴が居て、主人公はその子供なんだ! と素直に驚けるのかもしれませんが、それならば一番最初、ベリアルが「倒された」くだりが語られないのに「復活した」から始まる所が引っかかるわけです。
これが「かつて光の戦士達によって倒されたが復活したベリアルが……」で始まれば、まだ印象変わったと思うのですが、最初から前提が物語の外にあるというのが、この作品の方向性を示しているように思えてなりません。
逆に、一度崩壊した(?)宇宙、再構成された(?)地球、主人公が劇中劇ヒーローに憧れている、という要素から考えると、意図的にメタ《ウルトラマン》をやろう、という作品なのかもしれませんが。
せっかく『オーブ』で《ウルトラ》シリーズへの興味が再燃したので、面白く転がってくれる事を期待したい……とりあえず次回、坂本監督がきっと本気。